癌患者が最も緊張する「瞬間」の1つは「検査結果を聞く」時である。
治療効果は?大きさは?今後の見通しは?、、等々、どれも命に関わる事なのに
通常「ああ、サイズ不変なので効果出てますね、、」程度の説明しかされない。

CTから癌の成長速度を類推するのは通常難しい。癌の成長速度は体内環境や
治療効果に大きく作用される上に測定点も少ない。添付図はあくまでも一般論
とたった2点の(私の)治療前データを表したモノである。
腫瘍増大

エラーバーの取り方もデータ点のプロットもデタラメである。もしも学生や若い
研究者がこの図を書いてきたら小一時間は説教をせねばならないであろう。

図は平均的な肺癌の細胞分裂速度「30日に1回」でプロットしたモノである。
正確な評価は難しいが私の場合、標準よりも「高速タイプ」の様に見える。
強引にフィッティングを試したら「24日に1回」が最も合う事が判った。

画像上は「肺癌は3ヶ月で倍増」「乳癌だったら1年で倍増」と言われる。
見た目の印象は当然「現在の腫瘍径」により異なる。3mmから6mmになるのは
我慢できても10mmが20mmになるのを冷静に眺められる人は少ない。

ただ(大雑把な)0次オーダーの近似とはいえ、幾何学的な原理を一応知って
おくと心の準備はできる。例え「15mmが30mmになった」としても、それは
急激に悪くなった訳では無い。増殖の速度はあくまでも「一定」なのである。

例えば「10mmの肺転移が3ヶ月で12mmに微増」という状態は患者にとっては
著しく不安である。が、図を眺めていると「悪くない結果?」と思えなくも無い。

余談ではあるが、この図を信じると肺転移が起きたのは2004年10月頃と類推
される。同程度の期間が原発巣の成長に必要だったとすると私の癌化がスタート
したのは2002年8月頃と推定される。あるいは原発発生後数ヶ月で転移した、
と考えれば2004年の夏頃かも知れない。

ただしGompertzianのモデルでは増殖の初期では「成長が遅い」との事なので
もう少し前の事かも知れない。臨床的には腫瘍径が大きくなると中心付近では
酸素不足による癌細胞の壊死などが起こると考えられている。モデルによると
腫瘍径30mm前後から図の点線の様に成長速度が遅くなるとの事である。

腫瘍成長図は自分の余命を推定する事にもなるので不愉快な図ではあるが、
あれこれ考えるには示唆に富んでいて(甚だ不謹慎ではあるが)興味深い。