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サラリーマン社長のムービートラベル

「友情」なんて言葉がチープに思えてくる。この二人の関係は何かを超越したもののように思えてきます。2018年アフガニスタン。あの9.11同時多発テロ後、アメリカは報復措置として2001年に1,300人の兵士をアフガニスタンへ送り込みます。その後、派兵は増加の一途をたどり2011年には98,000人にまで膨れ上がります。そのアメリカ兵に協力した地元アフガニスタン人たちがいました。彼らは通訳として同行し時には同じアフガニスタン人と戦います。米軍に協力すれば彼らはアメリカへ行けるビザが約束されました。この地獄のような戦場から「自由の国」アメリカへ。同胞から「裏切り者」と蔑まれても家族のため、自由のため、彼らはアメリカ兵たちに協力します。この物語は小隊の隊長である一人の曹長とアフガニスタン人通訳との物語。二人は運命的に出会い、運命を共にし、そして生死の境を共に渡り歩きます。二人の行動には常に「なぜ」と言う一言が付きまといます。〝COVENANT〟とは契約、約束なんて言う意味があります。けどそれもなんかちゃうなぁ。「戦場」と言う特殊な場所においての使命?信頼?信用?ちがうなぁ。わからんけど観終わった後にこみあげてくる61歳の熱いもの。なんなんやろ?わからん!

2018年。アフガニスタンに駐留するアメリカ軍兵士ジョンキンリー曹長が指揮する小隊の任務はタリバンの武器や爆発物の摘発すること。常に危険とは背中合わせで、その日も同行するアフガニスタン人の通訳が爆発に巻き込まれ命を落とした。キンリーの部隊に新しい通訳が付くことになった。彼は候補者の中から語学が堪能で優秀だが上官に反抗的でなかなか部隊に馴染めないアーメッドを選ぶ。アーメッドはかつてはタリバンと組んで麻薬の売買をしていたが息子を殺されアメリカに寝返ったと言う過去があった。命令に背き、独断専行の行動も起こすが彼は優秀だった。彼の機転で爆弾製造工場の情報を得ることも出来たし、裏切り者を嗅ぎ付け危く部隊が罠にはまるところも救われた。数日後、キンリーの部隊は遂に爆弾の製造工場を発見。だが工場を制圧しようとしたところにタリバンの部隊が次々に急襲してきた。基地からのヘリコプター部隊を要請したがその間にもタリバン兵たちが次々と襲いかかる。必死に応戦するもキンリーの部隊は一人また一人と倒れていく。ヘリ部隊が到着したころにはキンリーの部隊は全滅していた。だが発見された遺体の中にキンリーとアーメッドの遺体はなかった...。

その頃、キンリーとアーメッドはタリバンの執拗な追跡をかいくぐり山岳地帯の森の中に潜伏していた。タリバンの指揮官は「二人を絶対、基地へ帰すな。生け捕って連れて来い!」と兵士たちに命令する。二人は執拗に迫りくるタリバン兵に必死で応戦しながら山岳地帯を逃走していたが遂にキンリーが撃たれる。重傷を負ったキンリーをタリバン兵が連れ去ろうとしたがアーメットが救う。アメリカ軍基地まで100キロ、アーメッドは木で作ったソリにキンリーを乗せ

、途中の村でトラックを買い、山岳部の住民とトラックと手押し車を交換した。険しい山の中を歯を食いしばって手押し車を押す。山中の露店でタリバンと鉢合わせになった時、アーメッドは絶望したがそこへアメリカ兵が現れる。遂に二人はアメリカ軍基地にたどり着いたのだ。キンリーを助けたアーメッドはアメリカ軍では英雄になった。しかし、それは同時にタリバンの大きな怒りを買うことになった。アーメッドは身重の妻を連れ基地を出て隠れ家を転々と移動する。キンリーはロサンゼルスの自宅でタリバンがアーメッドの首に賞金を懸けたことを知る。

 

戦争映画であると同時に社会派ドラマでもあります。物語の最後でアメリカ政府の杜撰な政策を批判しています。2021年にアメリカ軍は兵士をすべてアフガニスタンから撤収させましたが米軍のために働いた協力者、通訳たちの多くはアフガニスタンに取り残されました。こんな事実はあまり詳しくは日本に居ると報道されません。アメリカ人も観て見ぬふりちゃうかな?米軍が撤退したわずか一カ月でタリバンが舞い戻り300人以上の米軍協力者及びその家族までもが殺害されたそうです。その上、数千人と言われてますからアメリカ政府はちゃんと協力者、通訳の数を把握していないんですよね。今でもアフガニスタン国内でタリバンの「狩り」におびえながら身を潜めているそうです。アーメッドのように祖国を捨ててまでも平和と自由を求めてアメリカへ渡りたい。それは皆タリバンの暴力的で残酷なやり方に否定的でどうしても自分の家族のためにアメリカビザを求めて米軍に協力を申し出たんです。アフガニスタン人すべてがタリバン支持ではなかったわけです。しかしアメリカは彼らを見捨てた...。口約束は宛てにならない。それは私が身をもって体験しています...まっそれは横に置いといて。アメリカと言う国はよく言えばおおらか、悪く言えばええかげん。「まあまあ、ええやないか、よっしゃよっしゃ」から「えっ?そんなん言うたっけ?」。これでは話になりません。監督のガイリッチーはロバートダウニーJrを主演に置いた「シャーロックホームズ」シリーズやその他ジェイソンステイサムを世に送り出した「ロック、ストック&トゥースモーキングパレルズ」やベニチオデルトロやプラッドピット、ジェイソンステイサムらが出演した「スナッチ」など独特の世界観でなかなかの秀作を送り出す人。今回は正統派作品。キンリー、アーメッドの関係を熱い思いで描き、いざとなるとなかなか動こうとせず、何とも信用できない軍上層部、政府の姿も描いている。勿論、タリバンには批判的です。彼はイギリス出身の監督さんですが結構、骨太な方ですね。

結論から言うとアメリカがアフガニスタンに取った政策は「元の木阿弥」。どっかベトナム戦争に似ていません?それとこういう作品を観ると暴論ではありますがキリストもアラーもモーゼも万能の神ではありません。皆罪深き者たちです。隣人を愛せよと言うなら彼らが没後、2000年以上にも渡って血塗られた歴史が繰り返されるわけがない。原理主義なんて言葉は存在しないんです。それを「神聖なる...」と言って崇め奉ることは自分にはどうしてもできません。嫌いです。まさに無限ループ、聖戦(ジハード)?ちゃんちゃらおかしい。あんたら信者になにを教えとったんやって話です。

でもとにかく、「友情を豪快に描いた」なんて言葉は使いたくない作品。国籍も違う、宗教も違う、育った環境も違う、考え方も違うそんな最初はぎくしゃくしていた二人が繰り広げるお互いのために命を懸けたこの物語は今年の間違いなくお奨めの一本です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正体不明の男、イケイケ女性検事、元検事の悪徳法律家。三人三様の思惑が交差するクライムストーリー。それが本作「ジェントルマン」。うーん、正直、日本もそうやけど韓国も粋に、カッコよく、だまし絵のように作ろうとするこの手の作品は苦手ですね。国民性と言うのかな、なんか似合わない、違和感を感じます。この作品もそうやけど最後にこの種の作品は謎解きをするんやけど、まあ難解。作る側の自己満足を感じます。しかし、まあ韓国映画にはどの作品も見事な美女が登場します。本作もKYの暴走美人検事に扮するチェソンウンが出演。彼女を観てるだけでまあ満足。動機、不純なんやけど。

興信所を経営するヒョンスはペットの犬を捜索してくれと言う若い女性に依頼を受ける。なんでも元カレに連れて行かれたそう。彼女と共に人里離れたペンションに探しに出かけたのだが何者かに襲われ気を失ってしまう。気づくと側に依頼主のペットらしき犬。そして車の中で手錠に繋がれていた。彼を拉致したのは検事らしい男。依頼主は行方不明。だが男が運転を誤り車は転倒。ヒョンスは咄嗟に男の身分証を手にとりそのまま病院に。

病院で気が付いたヒョンスはなぜか運転していた検事に間違われている。実際の検事は意識不明の重体だそう。依頼主の女性を探すためヒョンスはそのまま検事になりすまし、ほんものの検事が意識を回復するまでそのまま警察と共に捜査をすることになった。そこへ「監察部のイカレ女」こと熱血検事キムファンジが登場。彼女は人身売買と法曹界の闇パーティーに絡む事件で元検事の大手法律事務所の社長クォンドフンを追っていた。どうやら彼が事件にかかわっているらしい。お互いの目的のために情報交換し協力して捜査に当たることになった。ヒョンスにはチームがあった。人知れずターケットを的確に撮影する者、尾行、潜入のスペシャリスト、天才ハッカー。およそ検事らしくないヒョンスをキム検事は訝しんだが彼らを使いこなし的確にターゲットを追い詰めるヒョンスの腕に一目置いた。キム検事とヒョンスのチームは危うい目に会い、危ない橋を渡りながらもクォンを追い詰めていく。しかしヒョンスには別にもう一つの目的があった。

 

多分、作り手さんたちは「スティング」のような「騙し絵」のような作品を作りたかったのだろうけど、どうしてもなんか凝って凝って観る者に伝わりにくくなってしまうんやけどなあ。華麗に、粋に、と言うのはなかなか難しい。「ジェントルマン」と言う題名はそれを現しています。「おもろない」とは言わんけどもうちょっとなんかスマートに...。ちょいセンスがないと言うか、物足りないと言うか、うーん。表現が難しい。「スティング」を観た後にステップしながら映画館を後にする...と言うわけには。最後の車のドライブレコーダーを使ってのことの真相解明や締めのヨーロッパの寝台列車でのシーンなんか観てると...なんかダサイ。ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなりの映画を観てきたけどヴィムベンダース監督の作品ってまだ観てません。彼の代表作である「パリ、テキサス」や「ベルリン・天使の詩」でさえも。あれだけ評価の高い作品やのに。機会がなかったと言うか相性が悪かったたというか。そんなベンダース監督が日本を舞台に撮った作品がこれ。「PERFECT DAYS」。ただ単に公園のトイレ掃除の仕事をしている初老の男性。彼の日常をほんまにただ淡々と描いているんですよ。ただそんな日常にもほんの小さなさざ波のような波紋が起こるわけです。聞けばこの人、小津安二郎監督を師事しているらしいですね。まあ小津安二郎って言ったって我々の世代でもなかなか知っている人がいない。「小津組」と言われる作品の中でしょっちゅう出ていた役者さんが笠智衆さん(りゅうちしゅうと読みます)。と言っても若い人は知らんやろね。「寅さん」に出てくる「御前様」って言った方がわかるかな。この人名優なんですよ。話は横にそれましたがなんせ「ほのぼの」とした日常を描く人。そんな日本人監督を師事していたと言うのは嬉しいですよね。この作品にもそれが反映されてます。役所広司が演じるこの清掃人の男、平山の日常をカメラは追います。日が昇る前から起きて公園のトイレ掃除に出かける。丹精込めて一生懸命トイレを磨く、そんな姿を淡々と描くんですよ。映画を観終わった後、ふと気づくんです。これって昭和の高度経済成長期に日本を支えた日本人の姿やないかってね。昭和の時代のような古いアパートに住み必死になって働く。手を抜かずに。夕方になると居酒屋へ行って一杯飲み、本を読みながら寝る。日本人が昭和の時代に忘れてきたものをこの令和の時代にこのドイツ人の監督がわざわざ昭和へ出向いてとって来てくれたような作品です。

渋谷の公園のトイレ掃除をしている平山はまだ夜が明けきらない時間、外で近所の年寄りがほうきを掃く音で目が覚める。押上の古いアパートを出てワゴン車を走らせ、スカイツリーを横目に渋谷へ。公衆トイレを一軒、一軒、丁寧に心を込めて便器を磨く。いつもの人波、子供の声、そしてなぜか気になるホームレス。同じ地区を担当している同僚のタカシは今どきの若者。仕事はいい加減だし、好きな女の子の尻ばかり追いかけて挙句の果てに金の無心。腹は立つけどどこか憎めない。仕方なしに金を貸してやる。昼はいつもの公園でベンチに腰掛け、木々の間からこぼれる木漏れ日を眺めながらパンと牛乳で昼食を取る。気に入ったアングルがあれば手持ちの小型カメラで写真を撮る。公園に気に入った草木があれば根元からそっと掘り起こし持ち帰って育てる。ささやかな趣味だ。午後からの清掃が終わると家へ帰ってから、今度は自転車で風呂屋へ。風呂屋の帰りに地下街の居酒屋で野球や相撲を観ながら一杯やる。家に帰って横になる。本を読みながらまどろみの中眠りに落ちる。そして、ほうきの音...。

たまの休みの日は作業着の洗濯にコインランドリーへ。写真屋で公園でとった写真の現像。古本屋で女性店員の書評を聞きながら本の購入。夜になったらお気に入りのママのいるスナックで手料理を頂きながら一杯やる。

そんな何の変哲もない毎日を過ごす平山だったがある日、家に帰ると、姪のニコが訪ねて来ていた。久しぶりに会った彼女を家に泊めてやるがそれをきっかけに平山の日常がほんの少し揺れ動く。

 

最初、役所広司のセリフが殆んどありません。「寡黙な男」とはまさに彼のこと。無駄口は叩かない。ただひたすらにトイレを便器を磨く。まさに昭和の人。まだ暗いうちから起きて車を走らせると下町にそぐわないスカイツリー、渋谷へ行けば令和真っ只中の若者たち、不潔なイメージのトイレであるはずのこのモダンな作り。すべて日本なんですよ。下町を見下ろすようなスカイツリーも綺麗なトイレもすべて日本が作り出したもの。その原点には昭和の男たちが懸命に働いた痕跡が残っているわけです。それは令和になった今も脈々と続いているんです。平山は正直、時代に取り残された人間です。妹は運転手付きの車に乗ってるような人間、その娘は親に歯向かって叔父である平山を何故か慕う。今の時代、日本人はそぐわない生き方をしてるのでしょうか?平山は妹や年老いた父親と何かがあって疎遠になっている模様。彼になにがあったのか?もとは違う仕事をしていたのか?もともとこの仕事を選んだのか?父親と何があったのか?姪を迎えに来た妹を抱きしめ(このへんは日本人がしない行動。少々違和感なんやけどやっぱり西洋の国の監督やからかな。それでもなんかこのシーンは印象的)、妹と姪が去った後泣き崩れる。この平凡な日常を描いた作品で唯一、気分が高揚するようなシーンです。平山になにがあったのか知りたいですね。彼のバックグラウンドをどのように思い描いていたのかベンダース監督に聞いてみたい。

この作品、本年度のアカデミー賞国際映画賞(昔の外国語映画賞)の候補に挙がっています。すでに役所広司はカンヌ映画祭で最優秀男優賞を獲得しています。現在はイギリス映画でありながらドイツ語作品である「関心領域」と言う作品が優勢だそう。なんでもアウシュビッツ強制収容所の隣に居を構えたナチ高官の家族を描いたものらしい。この作品も面白そう。けど「PERFECT DAYS」にはぜひとってほしいですね。受賞すれば「ドライブ・マイ・カー」以来2年ぶり。

本作といい、「ドライブ・マイ・カー」といい、そして「おくりびと」もそう。黙々と仕事をする日本人が海外では好まれるよう。私は「ゴジラー1.0」が日本代表と思ったんやけど。

なにはともあれドイツ人監督が日本人の日常を大げさな脚色もなく淡々と描いてくれたのがうれしい。某ハリウッドの監督の様に「ええ、これって日本?」と言うようなシーンもなかった。淡々とただ淡々と日本の下町を、その下町で生きていく日本人を描いてくれてます。