今回のテーマは重いですよね。「ヒンド・ラジャブの声」ってほぼ実録映画です。実際の当時の音声も盛り込まれています。今だ収まらない中東ガザでの紛争。そこにはイスラエルVSパレスチナの国家間の紛争と言うだけではなく、宗教、領土、人間の尊厳等々、すべての負の要素が存在する、まさに言い方は間違っているかもしれないけど「呪われた土地」。正直この作品に限って言えば悪役はイスラエル軍です。私個人の国際情勢の見解を言わせてもらえば悪はパレスチナとは言いません、イスラム原理思想でありパレスチナ人の国際テロ組織ハマスです。まあその話は後回しにして、物語はイスラム圏で活動する人道支援団体が受信した一本の少女からの電話から始まります。車の中、親類の遺体、周りには軍隊、絶え間なく続く銃撃...「助けて、迎えに来て」。少女の悲痛な叫びに歯ぎしりしながら耐え続け、待ち続ける職員たち。人道と正義、たった半日間の出来事を克明に描いた、観ている者は身もだえしながらの約90分間だったと思います。
2024年1月29日の午後パレスチナ・ヨルダン川の西地区にある人道支援組織「赤新日社」のオペレーションセンターの1人オマールが一本の電話を受け取った。電話の主はヒンド・ラジャブと言う6歳の少女。ガザ北部の地区で親族と共に乗った車両がイスラエル軍の銃撃を受けたと言う。周りの親族はすべて死亡、車の近くにはイスラエル軍の戦車がいると言う。彼女はただ、ただ繰り返す「怖い、早く迎えに来て」。受話器の向こうからは彼女の泣き声と共に銃撃音がする。オマールは帰りかけてた上司のラナと共に少女を懸命に励ます。2人は救助隊の要請を救護チームの調整責任者であるマフディに依頼するが許可が下りない。救援隊の救急車は現場から約8分の場所にいたが、安全なルートの確保、生存者の確実な確認がないと攻撃を受ければ数少ない救援部隊の損失にもなる。センター内は苛立ちと不満、少女の命を守ろうとする懸命な努力とでセンターのメンバーたちの精神状態は限界だった。オマールは自らのコネで救援隊を動かそうとするがルールを順守しようとするマフディと衝突、ラナは限界が来て倒れる。夜になり皆が極限状態の中、遂に救援隊出動の許可が下りる。そしてセンター内が歓喜に沸く中、救援隊の車が現場に向かった...
前述したようにユダヤ人の肩を持つつもりはないけど、この度の紛争のきっかけはパレスチナ・ゲリラです。イスラム原理主義者と言うのはちょっと受け付け難い部分もあるしね。しかし、この作品自体はよくできた作品だと思います。センターの建物内からはカメラはラストまで全く出ません。センター内の緊迫感、苛立ち、受話器の向こうからの悲痛な叫びと銃撃音、これだけで人々の精神状態の崩壊と絶望感、そして悲惨な現状、それがものの見事に描かれています。特筆すべきはこの作品のエグゼクティブプロデューサーとしてブラッド・ピット、ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラ、アルフォンソ・キュアロン、マイケル・ムーア、スパイク・リー等といったハリウッドのヒット・メーカーたちが賛同し名を連ねています。それだけ注目されるべき題材だと言うことです。
しかしこれはイスラエル軍が一方的に悪だと言うことで終わらせてはいけないと思います。ふと思うのは上記のエグゼクティブ・プロデューサーの面々の中にはスピルバーグらユダヤ系の名前がない。要するにユダヤ人、イスラエルにはイスラエルの言い分があると言う事。勿論、私はネタニヤフの政策や行動がいいとは決して思わない。
2023年10月23日にパレスチナテロ組織(ハマス)がイスラエル領内に武力侵攻、暴虐の限りを尽くしました(これに関してはネタニヤフがUAEの大統領から事前に警告を受けていたと言う説もあり)。一般紙では報じられていないけどフェスティバルに乱入後、子供たちの首を跳ね、赤ん坊を丸焼きにしたと言う話もあります。この作品のイスラエル軍の行動も酷いけど元にはこういう事もあったんです。これにより1,139人の死亡、250人の拉致、性犯罪多数。あんまりこれに関しては報道が少なく、逆にパレスチナに対する被害の報道の多いこと、これに関しては違和感があります。勿論、イスラエル軍の非道はありますがユダヤ人には大戦中のナチス・ドイツによるホロコースト、民族の浄化、殲滅の一歩手前まで行った過去があります。この経験があるから仕方ないとは言いません。けど終戦直後は悲劇の民族だったのが今は悪役を一手に引き受けてる感じ。この国際世論の矛盾、私は猛烈に感じています。勿論、イスラエル建国以来、78年に及ぶイスラエルとアラブ諸国の確執は遠い島国に住む我々にとってはピンと来ないと思います。せいぜい油が入って来るとか来ないとかその程度。報道一つでああ、イスラエルは酷いことするなぁと思う程度です。こういう事に自分は違和感があるんですよねぇ。
何時のアカデミー賞だったか、エイドリアン・ブロディやったかなぁ、素晴らしいスピーチをしてました。
「イエスの子達にも、アラーの子達にも、ユダヤの子達にも、ご加護がありますように」
原理主義なんて無意味、これがすべてですよ。




