
僕は、およそ8年前に、ワタミに入社するために、神戸から上京しました。ワタミでは、日本企業の運営について学ぶ機会を得て有意義な時間を過ごすことができました。
でも、最も印象的だったのは創業者兼会長の渡邉 美樹氏に出会ったことでした。入社直後、彼の書籍、Date Your Dream!(夢に日付を!)を読みました。ちょうど出版されたばかりで、全社員が読むことになりました。正直に言うと、最初はあまり積極的ではありませんでした。でも、いったん読み始めたら、一挙に本の中にすいこまれました。
本の本質は「夢を実現するための目標設定」でした。夢があっても、具体的な目標を設定しないと、夢はそのままなくなってしまう。これを防ぐために、渡辺会長は手帳を使って、いろいろ計画を設定し、達成に向けた進捗具合を定期的に追跡しています。その本を通して、彼が見事に成功に到達した独自のノウハウを披露してくれます。
まさに、渡邉会長が主張する通りだと思います。しかし、私の経験では、目標設定が重要な第一歩にも拘わらず、それが唯一ではありません。更に重要なのは、それぞれの目標に到達するためのアクション・プラン(行動計画)をもつこと、そして、それらの目標を総合的な事業計画に埋め込むことです。言い換えれば、夢を実現可能にする事業計画を具体的に作成しなければなりません。私は、そのプロセスを次のように呼びたいと思います。Shape your Dream! (意訳:夢を形付ける)。
実は、そうする方法は以前から存在しています。もともと、アメリカの学者が開発したものですが、日本人もアメリカ人の開発者の一人のもとで勉強してから、そのプロセスについて日本語で本を書きました。それにもかかわらず、日本ではあまり知られていないようです。「Discovery-Driven Planning」と呼ばれるこの方法は、自営業を営む者に役立つだけではなく、急激な変化に取り囲まれている大企業の社員にも強力な武器になるようです。こうした思考にもとづき、変化に対応するたに、新規事業や新商品を開発するとき、失敗の危険性やそれに伴う費用や他の損失を最小限にとどめることができます。この思考方法の秘訣は、計画の根拠になる「仮定」にあります。計画を進めるに連れて、各節目で計画と進捗状況を照らし合せ、検証し、または出来ていない場合は、調整をすれば、大きな失敗を避けることができます。具体的の方法として、Rita Gunther McGrath教授とIan C. MacMillan教授は次のような思考プロセスを提唱します。
1. 計画を立てる際に、最低必要な利益率を定める。
この提案はごく常識に見えるかもしれませんが、大企業のこれまでの展開方法の正反対です。一般的に、新規事業の場合、見込みの収入を推定し、費用を差し引くことで、見積損益計算書を作成しています。McGrath氏とMacMillian氏は「逆の見積損益計算書」を提案します。これには、企業が新規事業を通して挙げる利益を決定してから、それを到達するために必要な収入を計算します。目安として最低10%にした方がよいそうです。
2. すべての費用を算出する
新商品の製造、広告、物流に関する全ての活動を検討したうえ、費用を計算します。この方法によれば、見積損益計算書を作成する際に、かなり高精度の数値を得ることができます。
3. 損益計算書の根拠となる仮定を見極める
どの程度、その仮定が正確かを考えます。仮定が間違っていると分かれば、計画全体にどのような影響を与えるかを分析します。それがどのように損益計算書の数字に影響するか見極めます。仮定を変えても、その新事業はまだ収益を挙げることができるかどうか検討をくわえます。
4.検討や議論の上で、決定する
仮定について検討した結果、仮定が正しいと確信がもてる場合、実施に移します。または途中で仮定が間違っていると分かったとしても、調整することで最低目指している収益性に到達できるようなら、実施に移します。できそうでない場合は、計画を中止すべきです。
5. 各節目に、仮定を再検証する。
最初の段階で仮定が確実だと分かっても、予期せぬ環境変化などにより、状況が突然変ることもあります。これが致命的な問題にならないように、最終目標到達に向けて、途中の段階でも中間的な目標を設定します。それぞれの中間目標を達成したら、それらが前提としている仮定がまだ通用しているかどうかを検証していきます。
このように、「仮定の設定→目標の設定→実施→仮定の再検証→目標の再設定・・・→最終目標の達成」を行っても、企業が100%、目標を達成できるとは限りませんが、大きな失敗は避けられると思います。
技術的な変化と激烈な競争に直面する日本企業が、“Discovery-Driven Planning (仮説指向計画法)の効果を早く発見すればするほど、大きな効果を享受できるでしょう。
参考図書
Rita Gunther McGrath & Ian C. MacMillan. "Discovery-Driven Planning." HBR (Reprint 95406). July-August 1995.
Rita Gunther McGrath & Ian C. MacMillan. “Discovery Driven Planning:
Turning Conventional Planning on its Head.” Deep Canyon. August 1999.
小川 康。“Discovery-Driven Planning (仮説指向計画法)の紹介~新規R&Dテーマの意思決定において経営者が納得できる事業計画をどうつくるか?~。研究開発リーダ。 Vol. 9, No. 4, 2012。
英語塾
以下のビデオでは、Discovery-Driven Planningの開発者の一人であるRita McGrath教授が、今年6月に出版した最新の著作「The End of Competitive Advantage: How to Keep Your Strategy Moving As Fast As Your Business」を紹介しています。
Rita McGrath: Columbia Business Professor, Speaker & Thought Leader
この本の主なテーマは何でしょうか。教授の説明を聞きながら、把握できましたか。もし十分に理解できれば、あなたのグローバル・リスニング能力は高いレベルにあると評価できます。
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このブログは、ジョーが執筆し、皆様にお届け致します。ジョーことジョセフ・ガブリエラは、2000年に来日したアメリカ人。格闘技ファンなら誰でも知てる、K-1ファイターのアンディー・フグ氏にそっくり!
1989年米国ペンシルベニア大学ウォートン・スクールを卒業。その後ペパーダイン大学を皮切りに、イリノイ大学、南フリダ大学を卒業。MBAを含め2つの修士号と博士号を取得しました。日米合弁IT関連企業、スイス系証券会社、米系銀行、そして日系外食企業など幅広い業界の勤務を通して様々なビジネス経験を積みました。趣味は、水泳、読書(村上春樹氏の大ファン!)、ピアノ、そして様々な国の言葉を勉強する事です。ちなみに、2年前から新たに中国語勉強に励んでいます!この記事についてのご質問、感想、また意見を歓迎します。また、共同研究者である杉本有造氏とともにコンサルティング業務も行っていますので、お気軽にご相談ください。
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