
私のような中年の域にさしかかったアメリカ人は、3人の「超」かわいい男の子が出演する70年代の「Life Cereal」(ライフという朝食シリアル)のテレビCMを懐かしく思うかもしれません。
そのCMを再生する上記のYouTubeビデオをご覧ください。Mikey (マイッキちゃん)の左隣に座っている二人の男の子は、彼らの前にあるLife (「ライフ」)というシリアルについてなにやら話しています。彼らの話をまとめると、この新しいシリアルが健康に良さそうなので、どちらもこの新しいシリアルを食べてみたくないと思っているようです。もちろん、彼らは直接そのようなことは言っていません。しかし、行間からは、「健康に良いものは、まずい」、つまり日本語の「良薬は口に苦し」という示唆がはっかり伝わってきます。
そこで、マイッキちゃんのすぐ隣の男子は、まず、マイッキちゃんに試食してもらおうと思います。そして、マイッキちゃんの前にシリアルボウルを押し出します。もちろん、その男の子は、好き嫌いが多く、新しい食事に抵抗を示すことで評判が悪いマイッキちゃんも、このシリアルを当然嫌うと考えています。
ところが、マイッキちゃんがガツガツ食べる様子に驚きます。CMの最後にナレーターが、シリアルのターゲットになる小さい子をもつお母さんに次のように語りかけます。「ライフ・シリアルを子供たちの前に出すときに、健康によいという点を知らせなくてもいいですよ」。つまり、「健康によく、かつ美味しいシリアル」ということをアピールしているのです。
私は、子供の頃に毎日数時間テレビを見ていたので、このCMをよく覚えています。しかし、大人になるまで、その隠れた意味は理解できませんでした。
アメリカでは栄養分の多いものだけではなく、運動、勉強、予防注射など、要するに人間に良いものは全てつらいという固定観念があります。また、美味しい食事や他の楽しいことは健康に悪いという類似の考え方もあります。私の経験では、日本だけではなく、世界のどこへ行っても、こうした考え方が蔓延しているようです。
でも、こうした固定観念は本当に正しいのでしょうか。私は、必ずしもそうではない、と考えています。たとえば、納豆。納豆は、奇跡の食事だと言えるほど健康に良いもので、私も大好きです。一日に三パッケージ(120グラムくらい)を食べることも珍しくありません。以前住んでいた関西には納豆の嫌いな日本人が多いといわれていますが、大部分の日本人は、私と同じように納豆を大好物といいます。
私が運動(特に水泳)と、勉強が好きです。私のような日本人に出合ったことが少なからずあります。したがって、私が、固定観念では「健康に悪く、苦しい」運動と勉強が好きというのは、私がちょっと変わった外国人だからというわけでもなさそうです。
むしろ、マイッキちゃんのように、新しいものが前に置かれると、できる限り、私の偏見(つまり固定観念)をコントロールして、試してみます。そして、その体験に基づき、好きか嫌いか判断していきます。それだけではなく、初体験で好きではないと考えた場合でも、早計に答えをだすのではなく、じっくり時間をかけて結論を出します。
初めて納豆を食べたときに、好きでもないし、嫌いでもない、と思いました。匂いも食感も、それまで食べてきたものすべてと大分変わっていたので、どう判断したらいいか、すら分からなかったのです。でも、健康によいと聞いていましたので、定期的に食べ続ける結果、大好物の一つになりました。
コーヒーを飲み始めたときも、よく似ている経験をしました。私の両親は、朝ごはんと一緒にコーヒーを飲む習慣があります。しかし、それ以外のときには、あまり飲みません。もしかして、私の母は、コーヒーをたくさん飲むのはいい習慣だと思っていないのかもしれません。そのためか、私は、幼いころ、コーヒーを飲まない方が良いと、母に頻繁に言われてきました。その結果、私が大学院生になるまで、コーヒーをあまり飲みませんでした。
飲み始めるきっかけは、1991年の夏に、初めて来日したときでした。日本はお茶で有名なので、喫茶店
で日本人がお茶を飲むという固定観念をもっていました。友人のみんながアイスコーヒーを頼んだこと
に驚きました。そのとき、わたしもアイスコーヒーを注文しました。それは、私がアイスコーヒーが好
きだというわけではなく、ほかのみんなが注文したからでした。もちろん、そうした行動は、私が実は
コーヒーを嫌いだということを意味しているのではありません。私の人生のなかで、コーヒーを飲んだ
経験がほとんどなく、コーヒーを好きか、嫌いか、どのように判断したらいいのか、わからなかったの
です。濃くて苦いコーヒーの味。それは、(ほとんど)初めての経験であったため、何か不思議に思い
ました。その後、友人たちと外出するたびに、わたしはコーヒーを注文するようになり、コーヒーの味
に次第に慣れてきました。そして、最終的に、わたしはコーヒーを好きになったのです。
ここまで、食事の話をしてきましたが、同じ原則はどの分野の新しい体験にも当てはまります。ですから、固定観念のマイナスの作用を知っていると、幅広い場面で自分を磨くために役立ちます。もちろん、個人的な分野だけに限りません。連邦政府、民間企業、学校などで、組織ぐるみの変革を導入するときにもこの考えは活かせます。なぜなら、いくら大規模な組織の変革であっても、基本的にはそこに属する個人の変革から始まるからです。個人からスタートし、最終的には、一人一人の個人的な変革の積み重ねが、組織の変革として集積されるのです。したがって、リーダーは、組織の変革を目指す場合、個人的な行動の変化に影響を与える下記の3つのポイントを熟知していなければなりません。
1.自分から始める
導入したい変革を自分で個人的に行って、その結果を影響したい他者に見せます。英語ではWalk the talkという表現でこの行動を表現します。日本語に直すと、「有言実行」のような意味ですが、英語の言い回しの方が直接的でインパクトが強いといえます。リーダーはそのような行動をとらないと、組織を変革することはできません。
2.諦めず、頑張り続けることの重要性
最初、何か試してみるときに、うまく行かないことが普通です。でも、諦めず、練習を続けると、あっという間に、上手になっていきます。途中で、発生しがちな「落ち込み」を防ぐためには、変革に苦しんでいる人たちに、見事に変革した「成功例」を示したり、直接その成功事例の対象となる人物の「励まし」や「秘訣」を聴かせたりすることが効果的です。
3.固定観念の力を認識し、それに負けない
フランスに留学したときのことでした。初めて「かえるの脚」の料理を食べたときに、「これは、普通それを食べないアメリカ人にとっては、『いぼ』を与える『かえるの脚』だ」と思ってしまいました。その結果、最初は、その味をまったく楽しめませんでした。しかし、いったん、その嫌な思いをこらえ、大好きなチキンに似ている味だと考えたら、平気で食べられるようになりました。
初めてウナギを試食したときでした。私が最初の一口を食べるまで、ご馳走してくれた友人はそれが何であるかを私には明かしませんでした。しかし、私が一口目を食べながら、「美味しい」と叫んだ途端、彼は「夏の定番料理のウナギだよ」と打ち明けました。このずる賢い(笑)友人は、私が固定観念を働かせる前に、ウナギの美味しさを体験させたのです。私の固定観念が働けば、私の脳は、本当の味がどうであるかにかかわらず、ウナギはまずいと判断してしまったでしょう。
皆さん、いかがでしょうか。マイッキちゃんと同じように、これから自分の固定観念をコントロールしながら、変化に果敢にチャレンジしてみてはどうでしょうか。
ビデオの理解を確認しましょう。
以下にMikeyビデオのセリフを示しました。ビデオを見ながら、リストから、抜けている言葉を括弧のなかに書き入れてください。
L (boy on left): What's this __________?
R (boy on right): Some __________. It's __________ to be good for you.
L: Did you try it?
R: I'm not gonna (going to) try it. You try it!
L: I'm not gonna try it.
R: Let's get Mikey!
L: Yeah.
R: He won't eat it! He __________ everything.
R: He __________ it! Hey, Mikey.
Narrator: When you bring Life home, don't tell the kids it's one of those ___________ cereal's you have been trying to get them to eat.
Words: nutritious, hates, suppose, likes, stuff, cereal
エレベーター・スピーチ入門/我龍社

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このブログは、ジョーが執筆し、皆様にお届け致します。ジョーことジョセフ・ガブリエラは、2000年に来日したアメリカ人。格闘技ファンなら誰でも知てる、K-1ファイターのアンディー・フグ氏にそっくり!
1989年米国ペンシルベニア大学ウォートン・スクールを卒業。その後ペパーダイン大学を皮切りに、イリノイ大学、南フリダ大学を卒業。MBAを含め2つの修士号と博士号を取得しました。日米合弁IT関連企業、スイス系証券会社、米系銀行、そして日系外食企業など幅広い業界の勤務を通して様々なビジネス経験を積みました。趣味は、水泳、読書(村上春樹氏の大ファン!)、ピアノ、そして様々な国の言葉を勉強する事です。ちなみに、2年前から新たに中国語勉強に励んでいます!この記事についてのご質問、感想、また意見を歓迎します。また、共同研究者である杉本有造氏とともにコンサルティング業務も行っていますので、お気軽にご相談ください。
ジョセフ・ガブリエラ 博士/MBA
東洋大学
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「世界のどこでも働ける日本人になろう」
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杉本 有造 博士/MBA
IES全米大学連盟・東京センター
(The Institute for the International Education of Students, Tokyo)講師
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