
オバマ大統領がG20サミットに参加しないニュースを聞いたときに、僕は、耳を疑いました。世界の唯一の「スーパー・パワー」と見なされる国のリーダーが重要な国際会議に出席しないのは考えられないことなので、一体、何が原因なのか思いました。程なく、数年前から論争の的になってきているアメリカの財政赤字を思い出し、それに関連しているではないかと思いました。僕はあまり詳しくないですが、僕が知っている限りでは、「オバマケア」が問題の中心にあります。オバマ大統領は赤字を削減する必要性を認識しながら、国民に約束した医療保険改革を具体化するオバマケア―の実施に向けて、必要な資金を確保するよう努力しています。一方、それに反対する共和党の保守派の議員がその予算を認めません。つまり、共和党保守派は、予算を武器にして、反対している法律の執行を妨げています。そうした方法はずるく見えるかもしれませんが、歴史的に利用されてきている手法でもあり、アメリカが誇る「checks and balances」(抑制と均衡)制度として、基本的には許されることだと思っています。ちなみに、個人的には、オバマケアが医療保険問題の最適な解決策だとは思っていないので、賛成していません。
ところで、今回の共和党の行動とオバマ大統領の行動には、別の面で、興味深い点があります。なぜかというと、両者ともに同じ作戦をとっているからです。反対派の抵抗を指導する米国下院議長のJohn Boehner (ジョン・ベーナー)が発言したように、彼はこの予算問題は深刻なので、大統領が話を持ちかけるのを期待し、週末もワシントンに残りました。そのときの話し方や態度は、オバマ大統領を責めたような感じでした。直接的に批判した訳ではありませんが、少なくともそれを示唆しました。僕の解釈では、歩み寄りのきっかけを作る責任は、オバマ大統領が負っているとベーナー氏は思っているようです。一方、この時期に行われたG20の参加を突然欠席したオバマ大統領は、国内問題の解決を最優先にすることを判断したと思われます。これに関して、オバマ大統領は、ベーナー氏に話を持ちかける代わりに、間接的に批判しました。大統領は、予算が承認されないため、政府機関が部分的に閉鎖に追い込まれたことに言及しながら、間接的に共和党を批判しました。
The idea of putting the American people's hard-earned progress at risk is the height of irresponsibility, and it doesn't have to happen.
Let me repeat this. It does not have to happen.
All of this is entirely preventable if the House chooses to do what the Senate has already done, and that's the simple act of funding our government without making extraneous and controversial demands in the process, the same way other Congresses have for more than 200 years.
「アメリカの人々が苦労して獲得した進捗を危険にさらすことは、無責任の極みであり、そんなことは起こってはならないことだ。
繰り返します。起こってはならないことだ。
下院が、上院の決定を選択すれば、つまり、過去の議会が200年以上も前からしているように、無駄な論争を要求せずに、我々の政府に資金を提供すれば、こういったことは完全に回避できるのだ」
交渉術の研究と実施方法の研究/指導で有名なハーバード大学を卒業し、尚且つ、交渉が中心となる弁護士でもあるオバマ大統領は、他人を責めることは効果がないと理解しているはずです。今回の摩擦でもわかるように、そうした態度は交渉を困難にさせるだけです。
このような状態は悲しむべきことですが、驚くには値しません。アメリカ人として、認めがたいですが、アメリカ全体が「他人を責める」「他人に責任を転嫁する」国になってしまいました。その意味で、オバマ大統領の行動は、一般的なアメリカ人の考え方や行動を反映しています。以前、このブログに掲載したように(2012年3月16日の掲載に参照)、アメリカ人の肥満症への対策として、ニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長(Michael Bloomberg)が、飲食店で16オンス(473.1ミリ)以上の砂糖入り飲料(いわゆるソーダ)の販売を禁止する条例を導入しました。以前にも、レストランのメニューにそれぞれのカロリー量を掲載する条例を発行したブルームバーグ氏は、このソーダ禁止条例によって、栄養に関する消費者の意識を高めたいと考えました。そうかもしれません。しかし、私の意見では、肥満の人は砂糖入り飲料が高カロリーだと事前に分かるはずです。肥満の理由はレストランが販売しているからではなく、むしろ、それを購入し、消費しているからです。僕はこういった条例のないフロリダ州に帰省しても、このような飲料を飲みません。自分の健康に対する責任を取っているので、他人を責める必要もありません。
25年前に、アメリカ人の自動車労働組合が日本企業や政府を批判しました。アメリカ企業の競争力の衰退が一因になっている事実を認めず、「貿易条件が公平でない」と日本を責めました。最近、中国に注意を向けて、同じように責めています。部分的に、日本にも中国にも批判されるような行為も見受けられますが、アメリカも同じようなことをしています。こうした場合、アメリカが自分の行動を認識し、それを是正する対策を取らなければ、状態は悪化しつづけていきます。そのうえ、日本や中国のような交渉相手が、アメリカの「責めた方が勝ち」「責任を他国に押し付けたほうが得策」という態度を見ると、アメリカの威信は低下している、「アメリカは、本当は自信がないのでは」と思うかもしれません。なぜなら、アメリカに本格的なパワーがあれば、自信を持って、交渉で勝ち取るはずですから。
今回の出来事を見ると、最終的に、予算の問題が解決できたとしても、オバマ大統領のパワー/威信の低下は避けられないと思います。同時に、それぞれのアメリカ人が他人に責任を転嫁することをやめ、自分の行動に対する責任を取らない限り、アメリカ全体の力も低下してしまいます。愛国心をもつアメリカ人である僕は、この点に危機感を感じています。
英語塾
リンクされるビデオには幹部のコーチングを行っているDr. Nourseが影響力について説明します。それを観賞しながら、次の質問に答えてください。なお、最後の質問はビデオの内容ではありませんが、「発散思考」を駆使して返答してください。
“Dr. Kevin Nourse Speaks on Leadership: Power and Influence”
1. What is influence?
2. What constitutes power?
3. What are the two sources of power Dr. Nourse describes?
4. What potential problem that can result from repeated use of formal power?
5. How can you extend your influence with people?
<推薦図書>
本ブログの著者ジョセフ・ガブリエラと杉本有造は、両者ともにMBAの保有者であり、英語と日本語の両方でエレベーターピッチを実施する豊富な経験を有しています。くわえて、両者の経験を活かして、ビジネスパーソンに対して、仕事の現場で直ちに活用できるエレベーターピッチの技法について指導しています。エレベータースピーチのテクニックを習得したいと思われている方に、二人の共著『エレベーター・スピーチ入門~アメリカビジネスで成功するためのプレゼンテーション&自己イメージ作りの技法』を読まれることを強くお勧めします。
エレベーター・スピーチ入門/我龍社

¥1,890
Amazon.co.jp
また、グローバルコミュニケーション能力の養成にご興味のある方は、我々が実施している研修にもご興味をもつと思います。研修の詳細は以下のリンクをご確認ください。
「アメリカ・ビジネスの最前線を切る!!」の目的
皆さんのビジネスリーダーとしての知識欲をさらに刺激するために、毎月、2回の頻度で、「アメリカ・ビジネスの最前線」を主な対象にして、「アメリカ・ビジネスでいま何が起こっているのか」「どのような最新技術に注目が集まっているのか」「日本や日本製品はアメリカでどのように評価されているのか」といった点について、アメリカ人としての見解を掲載します。日本のメディアでは、日本人による単一的(あるいは一方的)な見解が主張される傾向が強いように思えます。このブログ記事では、「世界には多様な考えがある」ということを日本の読者に具体的なテーマで知ってもらうことを意識しています。日本や日本人に対する外国人の見解、考え方を知ることで、読者自身の世界観を広げ、最終的にはビジネスチャンスにつなげてもらえればと願っています。とりあげてもらいたい「旬の話題」や建設的なご提案など、お気軽に著者までご連絡いただければ幸いです。
ジョセフ・ガブリエラ 博士/MBA
東洋大学
gabriella@toyo.jp
jjapan1802@yahoo.co.jp
「世界のどこでも働ける日本人になろう」
「アメリカ・ビジネスの最前線を切る!」
「Venture Into Japan」
杉本 有造 博士/MBA
IES全米大学連盟・東京センター
(The Institute for the International Education of Students, Tokyo)講師
gpmalibu@yahoo.co.jp
© 2013 Joseph Gabriella, Ph.D., MBA. All rights reserved. 無断複写・転載を禁じます。

