石田順裕 地獄から天国！
海外に弱い日本選手。米国では勝てないアジア選手。そんなジンクスを吹き払ったのがマニー・パッキアオ(比）。そのパッキアオが全米にその名を轟かせた、１０年前のSバンタム級王座奪取戦も、石田選手と同じMBMグランドのリング。
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石田選手は２週間前に来た話に飛びついての勝利。パッキアオも代打出場であった。その日のメインを張ったスパースター、オスカー・デラホーヤと拳を交え、勝利するとは一体誰が考えただろうか。
まさしく、「因果よのう」である。
「石田君勝ったって。いいねェ、アメリカンドリームだねェ。やっぱり、ボクシングはそういうのなくっちゃダメだよ！」
国内ではメインを張ったこともなかった西城正三(協栄）選手が、ロサンゼルスで世界フェザー級チャンピオンの称号を得るまでの時間は僅か９ヶ月。ロスで世界ランカーを破り、自力で世界ランク獲得。
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フェザー級王座を奪ったばかりのラウル・ロハス（米）の、ノンタイトル戦相手に選ばれたのが幸運の始まりだった。ロサンゼルスはロハスの本拠地。先代金平正紀会長は大事にいきたいと考えたようだが、西城選手は強気だった。
シンデレラボーイの出世街道は皆様ご存知の通り。王、長嶋の年俸よりも稼いでいた。野球選手より、世界チャンピオンの時代。
「そんなに海外でやりたい、やりたいっていうなら、相手がどうのこうのじゃなく、行ってやってみればいいんだよ。一生懸命頑張ればチャンスはやって来るさ。俺だって何にもなかったんだから。今のヤツは口ばっかりだからなァ」
日本人選手で、世界ボクシングの殿堂入りを果たしているのはファイティング原田（笹崎）選手のみ。次に殿堂入りするのはこの人ではないのかと思うのが、海外で２階級を制覇した柴田国明（ヨネクラ）選手。
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名王者ビセンテ・サルディバル（メキシコ）を攻略しフェザー級王座を獲得したのは、メキシコ国境の街ティファナのリング。Sフェザー級を制覇したのはハワイ。地元で活躍する強打の世界王者ベン・ビラフロア（比）との真っ向からの打ち合いを見事に制した。
世界フライ級王者大場政夫(帝拳）選手は初防衛成功後、米テキサス州サンアントニオのリングに上がっている。メキシコ王者ロッキー・ガルシアとのノンタイトル戦は、世界王者が倒される波乱のスタート。
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しかしここからが、日本人世界王者の真骨頂。鬼気迫る怒涛のラッシュ攻撃で９回逆転TKO勝利。激闘を制した大場選手は、米国人ファンの心をしっかり掴んだ。
”永遠のヒーロー”・大場政夫・生誕６０年
石田選手のサポート役を務めたノリ隆谷氏は広島県出身の日本人。石田選手のトレーナーを務めるルディ・エルナンデスは、チーム隆谷氏のリーダーである。１９７４年６月、輪島功一（三迫）選手を完膚なきまで打ちのめし、世界Sウェルター級王座を奪っていったオスカー・”ショットガン”・アルバラード(米）が、隆谷氏が初めて手がけた世界王者。
隆谷氏とアルバラード。
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１９７０年代。ロサンゼルへ遠征する日本人選手、関係者は皆隆谷氏のお世話になっているはずだ。協栄ジムからも何人もの選手が隆谷氏を頼りロスへ長期遠征している。シゲ福山(協栄)選手もそのうちの一人。
最初のロス遠征でまずまずの成績を上げ帰国すると、大きな期待を賭けられた。元々先代会長が、「いずれは世界王者に」と考えていたほどの逸材である。勢いに乗って東洋フェザー級王者 金 弦 （韓国）のベルトを狙い釜山へ遠征するが、１０回KO負け。
逃げ帰るようにロスへ渡った福山選手はまるで勝てない。金戦以来、ひとつの引き分けを挟み５連敗。すっかり見放された存在となったが、半年間の休養で心を入れ替えた。２年ぶりの勝利。
こうして福山選手は後の世界フェザー級王者ダニー・ロペス(米)との対戦を迎える。７４年９月ロサンゼルス・オリンピック・オーデトリアム。ロペス２４勝（２３KO)１敗。世界王座への挑戦が既に決まっていた。
だがここで、福山選手はでっかい勝ち星をあげる。我慢比べの打ち合いで、先に音をあげたのはロペスの方。調子に乗った福山選手はロペスを打ちまくる。グロッギーのロペスは９回開始ゴングが鳴ってもコーナーを出られなかった。
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第２のシンデレラボーイ誕生。ロペスに変わって世界挑戦権を獲得した福山選手は、嘱望されて帰国する。西城トレーナーとのコンビで世界王座奪取を期したが、デビット・コティ（ガーナ）挑戦では、ダウンした際に足首を骨折するというアクシデントで敗れてしまう。
福山戦から４ヵ月後。コティが王座を明け渡した相手はロペス。これもなんとも因果な巡り合わせ。福山選手は惜しくも夢へは一歩及ばなかった。しかし、ロスで銭の稼げるボクサーになった。
ダニー・ロペス/どん底から這い上がれ！
シゲ福山・D・ロペスのどん底Ⅱ
アメリカン・ドリームを求めて。石田選手に続く、日本人選手の米国出場が増えそうです。西岡選手、下田選手、期待したいですね。ボクシング界も新しい時代を迎える。
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