勝てない。連敗。自信をなくす。気持が小さくなる。どん底・・・。ここで、踏ん張れる選手と、消えていく選手。この分かれ道の判断は難しい。
6連敗から新人王、日本王者。10回戦初の勝利で日本王者。4度目の同じ顔合わせで初勝利、日本王者。負け越しの世界王者。いろんなケースがあります。
海外での典型的例が、元世界フェザー級王者ダニー・リトルレッド・ロペス(米)。世界タイトルを8度も防衛した名王者ですが、不遇の時代がありました。しかもそこには日本人選手が絡む。下写真は、恩師ステンドラー・マネジャーと。不遇時代を支えた恩師は王者になったのを見届けるように、世を去った。
デビュー以来21連続KO勝ちで、ロスの人気者となったロぺスに挑んだのが元日本バンタム級王者・黒沢元三(野口)選手。この黒沢選手も日本王者についたのは実に49戦目。デビューから3敗1分。9試合を消化して2勝6敗1分から日本王者にのぼりつめた苦労人。
1974年1月17日ロスのリングに立った黒沢選手は、ロペスの連続KO記録を阻止します。黒沢選手の脅威の頑張りが絶賛されています。
続く2月3日の試合を10回KOで勝利したロペスは、ロスの人気を二分していたボビー・チャコン(米)と対戦。これはもの凄い好カードでした。結果はチャコンが9回KO勝ち。ここからロペスの長いトンネルが始まります。
失意のロペスの再起戦の相手を務めたのが、ハワイのリングで華々しい活躍をした事もある豊島政直(SB川口)選手。連続1ラウンドKO記録の初代保持者で、23勝中1ラウンドKOは実に11。「真っ黒くて、からだ振って左フック、ブーン、ブーン」「カッコよかったなぁ」大竹マネジャーがよく言います。
リングキャリアのラストを迎えていた豊島選手にとっては願ってもないチャンス。8月8日ロスのリングに乗り込みました。試合は1ラウンド豊島選手がいきなり2度のダウンを喫します。2回も凄まじい打ち合い。
そして迎えた3回目。豊島選手の”右”でロペス痛烈なダウン。カウント”9”で試合続行が告げられた時には、ロペスはこれから起き上がろうとしている始末。たまたま観戦していた輪島功一(三迫)選手も「あれはロングカウントくさい」
止めを刺しに行った所に、ロペスの右がカウンターとなってしまい豊島選手はカウントアウトされてしまいます。「くやしい」豊島選手は引退。命からがら生き延びたロペスでしたが、内容はほとんどKO負けに近い。地元だから、それも運でしょうか・・・。
次の試合でこのロペスに挑んだのが、協栄ジムのシゲ・福山選手です。
続く・・・。