イサベル・エルゲラ(Isabel Herguera)バスクのアニメーション作家 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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先日は「バスクアニメーションの父」をご紹介いたしましたが、

今回は「バスクアニメーションの母」という感じですかね?

 

Isabel Herguera - Imaxinaria

 

1988年に制作された初期作品の

「スペインはあなたを愛しています」(Spain Loves You)

は、コラージュやイラストのコマ撮り技法を用いた、

聊か実験映画風の作品。6分。

 

エルゲラさんは、アニメーション作家というよりも、

美術家に近いのでしょうか?

 

過激な諷刺性に満ち、奔放というか、

アナーキーさに溢れていますが、

作中にフランシスコ・フランコが出てきます。

そして、最後に凄いことになります。

フランコって、エイリアンだったの?

 

皮肉タップリなBGMと題名も含めて、

フランコ体制時にバスク文化がどう扱われたかを考えると、

なるほどね、と。

 

印象深かったのは、家族の集合写真のところで、

耳を羽ばたかせて人物が室内を飛んでいるのですけど、

何か「タケちゃんマン」の宿敵「ブラックデビル」に似ていて…。

(家族の集合写真って、フランコの家族なんですかね?

多分そうかもしれませんが、はっきりとは分かりません)

 

 

それと、宇宙飛行士が天使たちに貪られる凄惨な場面。

ラファエロのあの有名な天使の絵でしょうけど、

以前ご紹介したチェコのアニメーション作家、

ヴァーツラフ・メルグルの「ラオコーン」を思い出しました。

ヴァーツラフ・メルグル(Václav Mergl)チェコのSFアニメーション作家

2022年2月10日

 

「死者たち」(Los muertitos)

Los muertitos · Cine de movilidad · Humanidades UC3M

題名はこの訳で合っているのか自信ありません。

指小辞があると意味が違ってくるのか?10分。

 

30年前の1993年に制作されたこのアニメーションは、

アメリカと国境を接する都市ティフアナ(Tijuana)

の墓地に眠る死者たちが、幸運の販売人から、

憧れのアメリカに国境を越えて行く様に説得され、

口車に乗せられてアメリカへ赴くものの、

元の場所へは二度と元へは戻れないというお話。

 

(注:解説にあった、

『Un vendedor de fortunas』『A fortune seller』

を機械翻訳すると『占い師』と出るのですが、

占い師は『Un adivino』『A fortune teller』なので、

念のため『幸運の販売人』と直訳しました)

 

メキシコからアメリカへの密入国の問題が、

今凄い問題になっていますけど、

何だかその話題を先取った感じなんですかね?

(不勉強なのであまり勝手な事は言えませんが)

 

表現が色々とツボっていて面白くて。

スロットみたいな表現とか。

(パチスロには全く興味ありませんが。てか、ギャンブル全て)

 

ヘリコプターに顔が付いていて擬人化されているのとかも。

口から火を噴いたり、スキッドが手の様になって、

ザリガニっぽくなったり。

 

幸運の販売人が、2人に分裂して、

女装して誘ってくる場面とかも、

皮肉が利いていて(このセンス)。

 

BGMというか、効果音も面白くて。

鼓(つづみ)の「ポン」という音や、

ワーナーアニメの冒頭のBGMに出てくる、

エレキギターの「ギュイ~ン」みたいな音とか。

 

〝プロビデンスの眼〟も気になります。

 

いずれにせよ、凄い諷刺性に満ちています。

 

「スルタナの夢」(El sueño de la sultana)

 

El sueño de la sultana (2023) - IMDb

 

El sueño de la Sultana - El Gatoverde

 

Sultana's Dream - Trailer

 

いっぺんに全部とかご紹介するのは、

読者の方々に苦痛を与えるだけですので、

(或いは、記事もまともに読む気力を萎えさせる)

昨年(2023年)公開したばかりの最新作をご紹介して、

今回は終わりたいと思います。

 

ベンガル(バングラデシュ)出身の、

ムスリムだけど女権活動家で作家、思想家、社会活動家の、

ロケヤ・シャカワット・ホサイン(1880-1932)

(রোকেয়া সাখাওয়াত হোসেন, Rokeya Sakhawat Hossain)

によって、1905年に書かれたフェミニストSF小説が原作。80分。

(FORVOで発音を確認すると『シャカワット』と言っています)

 

「インディアン・レディース・マガジン」

(The Indian Ladies Magazine)

に掲載されたとのこと。

 

そしてこの物語をもとに、

エルゲラが監督、脚本を務め、

長編アニメーションを制作しました。

 

ムスリムだけどフェミニストって、いるんですか?

知らなかった!

大丈夫だったんですかね?

 

今のイスラム世界はアレですけど、

昔は逆に理性的で、西洋の方が野蛮だったという。

 

古代の科学や数学、

哲学などの遺産を大切に保存継承し、

科学も発達していました。

 

西洋は、キリスト教を受け入れてから古代の遺産を破壊しまくり、

後になってイスラム世界から古代遺産を輸入するという、

「えっ?」ということをしていましたよね?

 

女性の地位が低いというイメージのイスラム世界ですが、

君主に対して物怖じしない女性を描いた物語があって。

フィトネ(Fitnə)くまとねずみ(Ayı və siçan)アゼルバイジャンのアニメーション

2019年5月17日

 

ラマダンの時期に放映されるギャグアニメーションでは、

カカア天下みたいな描写もあって、

女性がどれくらい抑圧されているのか?

よく分からないところはあります。

(シャービヤット…では、和田アキ子の様な女性が登場)

シャービヤット・アル・カートゥーン(شعبية الكرتون)ドバイのアニメーション

2009年12月15日

 

イラン革命前のイランでは、

ファッショナブルな女性モデルが活躍していたり、

1960年代のアフガニスタンでも女性が極めて開放的で…。

以下の記事の最後に紹介しています。

(開放的だったのはあくまで都市部や富裕層のみらしいですけど)

ちなみに、この記事で取り上げている「アルマン」というアニメは、

超監視社会に対抗する若者を描いたディストピアものです。

アルマン(آرمن)イランのアニメーション

2021年9月20日

 

イスラム世界でも、国や地域によって、

女性の扱いは異なるのでしょう。

 

トルコやアゼルバイジャン、

中央アジア辺りなんかは世俗的なので、

女性は髪の毛を隠さなかったり、

男性は髭を生やさない人がいたり。

 

逆にアフリカ系ムスリムの間では、

〝女子割礼〟が行われているとかいう話も。

(苦痛なだけでやる意味あるんですかね?)

 

…話が脱線したので元に戻します。

 

原作について紹介したWikipediaを読むと、

女性が全てを管理する

「レディランド」(Ladyland)という世界に於いて、

未来の科学力によって〝空飛ぶ車〟も活躍するという。

 

女性の科学者たちが研究で新たな発見をしたり発明したりするが、

一方男性の方は抑圧されているという、

男と女の立場が入れ替わっている内容。

 

Twitter(X)でフェミニストを自称する人が、

暴れまくって男女の分断を図っていますよね?

 

男と女は、お互いに認め合い、

手を携えるべきと私は思っているのですが。

 

でも、女性に対する〝偏見〟を取り除くのが、

この物語の目的のようで。

でもその過程で、

男性に対する〝偏見〟が生まれない様にして貰いたいものです。

〝浮気をしない男〟もいますから。

(一部の人を見て全員がそうだと決めつける人って何なんですかね?)

 

で、アニメーションの方ですが、

欧州に住むイネス(Inés)というインド系の女性が、

女性にとっての理想郷である「レディランド」を求めて、

インド各地を旅行するというお話です。

原作をそのままなぞったというわけでは無い様で。

 

そういえば、植物を使った発電技術を、

オランダの女性が発明したというお話がありました。

以下の記事で触れています。

【イラスト】アウスタちゃんとヒエリーくん(Ásta og Héry)+気になる話題

2020年12月25日

 

バスクアニメーションの母(?)にして、

戦う女性アーティスト(?)のイサベル・エルゲラさんの、

今後の活躍にも期待しております!!

(岡田裕子さんと2人展でもやったら面白いと思います。

会田誠さんも、バスクにちなんだ『ETA vs GAL』を制作していますし)

 

【関連記事】

バスクアニメーションの父、フアンバ・ベラサテギ(Juanba Berasategi)

2024年3月1日

 

バスクのクラシック音楽特集!! アイタ・ドノスティア

2020年2月1日

 

クラシック音楽 女性作曲家列伝!! - その4

2022年2月20日

 

この職業、女性もやっているか?調べてみた

2009年11月6日

 

イサベル・エルゲラの経歴

 

1961年、ギプスコア県(Gipuzkoa)

ドノスティア(Donostia)生まれ

 

ビルバオの美術学部で学んだあと、

ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーで学ぶ。

 

その後渡米し、カリフォルニア芸術大学で修士号を取得。

ロサンゼルスのアニメーションスタジオで数年間働く。

 

1990年代半ばに、

サティンダー・スィン(Satinder Singh)と共に、

アニメーションスタジオ

「ロコ・ピクチャーズ」(Loko Pictures)を設立。

 

2003年、サン・セバスティアンに戻り、

2011年まで、カタルーニャ国際映画祭の監督を務めた。

 

1987年にギプスコア州議会によって設立された

アートセンター「アルテレク」(Arteleku)で、

2007年より、動画研究室プログラムの

デザインとコーディネートを行っている。

 

2005年より、インドのアハメダバードにある

国立デザイン研究所(NID)で、

アニメーションのワークショップを定期的に行っている。

 

北京の中央美術学院(CAFA)の教師を務めている。

 

2011年、

第10回コルトミエレス映画祭(X Festival de cine Cortomieres)

のアニメーション部門において、

2010年制作の「愛」(Ámár)が最優秀短編賞を受賞。

 

2014年の夏、

バスク映画図書館が主催した「バスク映画会議」に、

エルゲラは審査員として参加。

 

2015年、

同年制作の「冬の愛」(Amore d'inverno)が、

バスク映画グランプリを受賞。

2016年にも、

イマジナリア映画祭(Imaginaria Film Festival)

にて、同作品が特別賞を受賞。

 

同年、国際女性と映画フェスティバル

(Festival Internacional Dona i Cinema)

で「愛」が最優秀短編アニメーション映画賞を受賞。

 

同年、

ヒホン国際映画祭(Festival Internacional de Cine de Gijón)の

「ANIMAFICX部門」に審査員として参加。

 

2017年、

「ブラックボックス」(Kutxa Beltza)計画で、

アヌシー国際アニメーション映画祭の短編部門に参加。

 

2024年、

「アニマック2024」(Animac 2024)にて、

名誉賞を授与された。

※「アニマック」は、「カタルーニャ国際アニメーション映画祭」のこと。

 

【作品一覧】

スペインはあなたを愛しています(1988)

Spain loves you

サファリ(1989)

Safari

往復の歌(1989)

Cante de ida y vuelta

死者たち(1993)

Los muertitos

盲目の鶏(2005)

La gallina ciega

愛(2010)

Ámár

枕の下(2012)

Bajo la almohada

船員の墓(2016)

Sailor's Grave

冬の愛(2016)

Winter Love

スルタナの夢(2023)

El sueño de la sultana

 

Isabel Herguera - Wikipedia, la enciclopedia libre

※翻訳間違いあるかもですので、ご注意を。

 

【追記:2024/4/26】

弊記事が、

公式ハッシュタグの「アニメ映画」部門で2位を戴きました!!

どうせなら1位なんですけど、有難く頂戴いたします!!

「バスクアニメーションの父、フアンバ・ベラサテギ」

でも2位を獲得いたしましたが、こちらは記録していません。