ギリシャの作曲家と言えばまず、現代音楽家の
ニコス・スカルコッタス(Nίκος Σκαλκώτας, 1904-1949)
や、ルーマニア生まれの
ヤニス・クセナキス(Ιάννης Ξενάκης, 1922-2001)
辺りが有名だろうと思います。
ギリシャ国民楽派の確立者として、
マノリス・カロミリス(Μανώλης Καλομοίρης, 1883-1962)
もよく知られています(NAXOSから管弦楽作品集が出ていますね)。
ギリシャ国歌『自由への賛歌』(Ύμνος εις την Ελευθερίαν, 1828)
を作曲した、
ニコラオス・マンザロス(Νικόλαος Μάντζαρος, 1795-1872)
も有名の内に入るでしょう。
でも、せいぜいそれぐらいですかね。
(追記:ミキス・テオドラキス(Μίκης Θεοδωράκης)を忘れていました。)
しかし、一般のクラシック音楽ファンで上記の作曲家を知っている人は、
一体どれくらいいるのか?甚だ疑問でもあります。
恐らく、ベートーヴェンとかモーツァルト、
ブラームス等といった有名所しか知らない人は、
上記の作曲家を悉く知らないと思います。
“有名”というよりは、“ギリシャの作曲家の中では最も知られている方”
と言った方が良いでしょう。
そこで取り敢えず、ロマン派真っ只中の19世紀に活躍した、
一般的に無名ではないか?
と判断したギリシャの作曲家について調べてみました。
まともに聴けるのが殆どありませんでしたが、
今回紹介する作曲家は、
5人中4人はYouTubeでその曲を聴く事が出来ます。
<生年順>
コンスタンティノス・アガトフロン・ニコロプロス(1786-1841)
Κωνσταντίνος Αγαθόφρων Νικολόπουλος
Konstantinos Agathophron Nikolopoulos
画像はココから拝借↓
Δημόσια Κεντρική Βιβλιοθήκη Βέροιας (リンク切れ)
スミルナ(Σμύρνη)生まれ。
パリで育つ。
彼の作品の幾つかは、古代ギリシャ語のテクストに基づいていた。
1841年、パリ歿。
Κωνσταντίνος Νικολόπουλος (συγγραφέας) - Wikipedia, Ελληνικά
オリュンピア祝勝歌第2歌(詞:ピンダロス)
Δεύτερος ὀλυμπιόνικος(Πινδαρος)
http://www.youtube.com/watch?v=z19u3QYrMyM
荘厳さと威厳さ、躍動感に溢れた曲。
スピリドン・クスィンダス(クシンダス)(1812-1896)
Σπυρίδων Ξύνδας
Spyridon Xyndas
画像はWikipediaより拝借
ケルキラ(Κέρκυρα)生まれ。
ニコラオス・マンザロスに学ぶ。
歌劇『議員候補者』(Όπερα “Ο υποψήφιος Βουλευτης” 1867)
は、ギリシャ語による初のオペラである。
アテネ(Αθήνα)歿。
Σπυρίδων Ξύνδας - Wikipedia, Ελληνικά
ネットで色々調べてはみたのですが、
ギリシャ語初オペラの作曲者にしては、
不遇な扱いを受けている気がします。
CDを見つけられないのです。
歌劇『議員候補者』(1867)より、終結部(吹奏楽アレンジ版?)
Όπερα “Ο υποψήφιος Βουλευτης”,Επιλογή
http://www.youtube.com/watch?v=fg0kD0XLaHg
様々な表情を見せ、中々深みのある、
無名にしておくのは勿体無いメロディの数々。
特に、11:30を過ぎた辺りの、イングリッシュホルンと思われる楽器による
跳躍的な舞曲風メロディなど、
民族主義的な要素を感じる印象的なメロディが随所に現われます。
パヴロス・カレル(1829-1896)
Παύλος Καρρέρ
Pavlos Carrer
画像はWikipediaより拝借
ザキントス島(Ζάκυνθος)生まれ。
1850年代、ミラノのカルカーノ劇場(Teatro Carcano)や
カノッビアーナ劇場(Teatro alla Canobbiana)で、
彼の初期のオペラやバレエが上演された。
1857年、ザキントス島に戻る。
彼の最後の歌劇
『マラトン - サラミス』(Όπερα “Μαραθών-Σαλαμίς” 1886-1888)
の初演は、2003年である。
ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi)
等のイタリア音楽からの影響を受けながらも、
ギリシャの伝統音楽やポピュラー音楽の要素を取り入れ、
ギリシャ語のテクストによる声楽曲も書いた。
ザキントス島(Ζάκυνθος)歿。
Παύλος Καρρέρ - Wikipedia, Ελληνικά
Wikipediaを信じるならば、
ギリシャ国民楽派をかなり早い時期に体現した作曲家といえます。
歌劇『デスポ』(Δέσπω, 1875)
がCD化されているようです。
Despo, Pavlos Carrer - CD / DVD / Books - Xilouris.gr
円舞曲『パルテノン神殿』(1851)
Παρθενών, βαλς
http://www.youtube.com/watch?v=kEROzEE-IPY
余り“パルテノン”という印象は受けません。
どちらかというとヨハン・シュトラウス2世という感じです。
書かれたのが若い頃なのでしょうがないとは思いますが、
メロディは中々凝っていて聴き応えあり。
スピリドン・フィリスコス・サマラス(1861-1917)
Σπυρίδων Φιλίσκος Σαμάρας
Spyridon Filiskos Samaras
画像はWikipediaより拝借
ケルキラ(Κέρκυρα)生まれ。
アテネ音楽院(Ωδείο Αθηνών)で学んだ後、パリ音楽院で学ぶ。
その後、イタリアへ渡り、オペラの作曲家として活躍する。
『オリンピック賛歌』(Ολυμπιακός Ύμνος, 1896)
の作曲者として知られる。
アテネ(Αθήνα)歿。
Σπυρίδων Σαμάρας - Wikipedia, Ελληνικά
オリンピック賛歌の作曲者だったとは知りませんでした。
(今調べて分かりました)
という事は、そんなに無名ではない?
でも、殆どこの曲だけしか知られていない様な・・・。
イタリアでオペラの作曲家として活躍していたとの事なので、
イタリア語風に『スピロ・サマラ』(Spiro Samara)という名前の方が、
馴染みがあるかも知れません。
歌劇『殉教』(1894)より、間奏曲(吹奏楽アレンジ版?)
Όπερα “Η Μάρτυς”, Ιντερμέδιο
http://www.youtube.com/watch?v=ykJTy-reXi4
「ルーマニア風間奏曲」(Intermezzo Romaniesca)と出ています。
ルーマニアの民族的要素に溢れた、躍動感みなぎるメロディ!!
とても印象深いと思うので、
余り知られていないのは勿体無いと思います。
ディミトリオス・リアリオス(1869-1940)
Δημήτριος Λιάλιος, Dimitrios Lialios
パトラ(Πάτρα)生まれ
王立バイエルン音楽院(現:ミュンヘン音楽・演劇大学)
Königliche Bayerische Musikschule
(Hochschule für Musik und Theater München)
で、ルートヴィヒ・トゥイレ(Ludwig Thuille)に学ぶ。
管弦楽曲、室内楽曲、歌劇、宗教曲など、数多く作曲。
アテネに歿する。
Δημήτριος Λιάλιος - Wikipedia, Ελληνικά
この作曲家は
『辺境・周縁のクラシック音楽2 中・東欧編』(青弓社)
で知りました。
恐らく、マノリス・カロミリス以前の、
本格的なギリシャの作曲家と言えそうです。
管弦楽作品がCD化されていますが、
Amazon、HMV、TOWER RECORDS等で取り扱われていないようで、
手に入れるのは容易ではないと思います
(下に示した画像)。
また、YouTubeにもリアリオスの曲が出ていない様です。
ディミトリオス・リアリオス 真夜中の夢-南国にて
演奏:パザルジク交響楽団(Симфоничен Оркестър Пазарджик)
指揮:バイロン・フィデツィス(Byron Fidetzis)
【LYRA 0721】
【追伸】
こちらでは、ギリシャの作曲家のCDを沢山取り揃えています↓
Classical Greek Composers - Studio 52
※ギリシャ語の日本語表記について。
「Δ」の発音は、現代ギリシャ語では、
英語の「th」の有声音に近くなるそうですが、
便宜上分かりやすくするため、
敢えて「ザ」行ではなく「ダ」行で表記しました。
「θ」の発音も、「t」の発音として日本語表記しました。
【追記】2012年7月7日
・コメント欄にて、もにりくちなしさんより、
パヴロス・カレルとスピロ・サマラは
『辺境・周縁のクラシック音楽2』で紹介済みとのコメント。
情報量が膨大なため、全てを把握していなく、うっかり見落としていました。
その他にも同書には、
ディオニスィオス(ディオニシオス)・ロドテアトス
Διονύσιος Ροδοθεάτος, Dionisios Rodotheatos (1849-1892)
ラヴレンディオス・カミリエリス
Λαυρέντιος Καμηλιέρης, Lavrendios Kamilieris(1874?,1878?-1956)
ゲオルギオス・アクスィオティス(アクシオティス)
Γεώργιος Αξιώτης, Georgios Axiotis(1875?,1876?-1924)
ゲオルギオス・ランベレット
Γεώργιος Λαμπελέτ, Georgios Lambelet(1875-1945)
など、気になる作曲家が沢山紹介されていて、ワクワクしました。
19世紀、或いは19世紀から活躍した作曲家だけでもこんなにいます。
20世紀も含めれば、もっといるわけです。
ギリシャのクラシック音楽、奥が深いです!!
【追記】2016年2月10日
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