ウェールズ狂詩曲の色々(Welsh Rhapsodies)その2 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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ウェールズ狂詩曲の色々(Welsh Rhapsodies)その1 の続き。

前回から2ヶ月半も経過してしまいました。

エドワード・ジャーマンの『ウェールズ狂詩曲』

に用いられている民謡の背景について

調べてから記事を書こうとしていたんですが、正直難しいんで、

結構掛かってしまったわけです。

完全とは行きませんが、大体の内容は把握出来ましたんで、

その報告と行きます。


Edward German

エドワード・ジャーマン - Wikipedia


●ウェールズ狂詩曲(Welsh Rhapsody)1904

エドワード・ジャーマン(Edward German, 1862-1936)

主にオペレッタを書いた、イギリス音楽復興時代の作曲家による、

珍しいウェールズ民族楽派の手法による管弦楽曲。

吹奏楽の世界では、

別の作曲家によって吹奏楽用に編曲された版が有名らしい。

私は、吹奏楽版は聴いたこと無いけど。

イギリス音楽復興の気運とジャーマン自身がウェールズ系である事が、

作曲の動機ではないかと思う。


5つの民謡を用いた4部構成。

曲選びがとても良い。

もっと注目されて然るべき隠れた名曲。

収録CD→MARCO POLO 8.223726


●第1部:王の出立

(Ymadawiad y Brenin, The Departure of the King)

http://www.youtube.com/watch?v=5YTGAivVqbE

戦地に赴く王を歌ったものらしい。

リンク先のYouTubeには、ウェールズ語と英語の歌詞が出ているものの、

内容が対応していない。

例えば、ウェールズ語詩の一行目に『王』を意味する『Brenin』が出ているが、

英詩の一行目に『King』が出ておらず、

六行目に『ウェールズ』を意味する『Cymru』が出ているが、

英詩の六行目に『Cambria』(ウェールズの古称)が出ていない。


ややもの悲しげで緊張感のある中にも威厳のある雰囲気の曲なので、

出だしには持って来いな曲だと思います。


因みに、リンク先の画像の一部に、

『魔界村』を彷彿とさせるイラストが出ています。

オールドゲーマーは必見!!


●第2部の1:兎猟

(Hela'r Sgyfarnog, Hunting the Hare)

http://www.youtube.com/watch?v=qwWjI79JxXE

打って変わって今度はほのぼのした軽快なメロディです。

英詩版しか見つけられませんでした。

ウェールズ語の原詩でも同じ内容だろうか?

内容的に余り魅力を感じないので、途中で翻訳作業を止めました。


●第2部の2:アベルダヴィーの鐘

(Clychau Aberdyfi, The Bells of Aberdovey)

http://www.youtube.com/watch?v=zj1bYWIUxBM

第2部は『兎猟』の旋律を中心としていますが、

間に何度かさりげない感じに

『アヴェルダヴィーの鐘』の旋律が差し挟まれます。

リンク先のYouTubeに出ている歌を聴いてみると、

おどけたような、とても特徴感のあるメロディであるのが分かります。

どちらも明るい感じの曲であるため、上手く自然に噛み合ってますね。


アベルダヴィーついて調べてみると、

怪談とか6世紀の伝説の王の話とかがある様ですが、

歌詞の内容そのものを調べてみると、恋愛を歌った歌でした。

内容に繋がりがあるのか、別々なのかは不明。

貴重な日本語解説ページ↓

アベルダヴィーAberdovey

こちらに英語による詳しい内容が出ているのですが↓

The Bells of Aberdovey - Angelfire

文字が半端無く多すぎて内容を翻訳する気が失せました。


話をYouTubeに戻しますが、

歌はリチャード・グリフィスという方が歌っております。

その発音なんですけど、

『アベルダヴィ』と発音する筈の『Aberdyfi』が、『アベルタフィ』等と、

ウェールズ語で本来[v]の発音をする[f]が、[f]の発音をしていたり、

『モルヴィズ』と発音する筈の『Morfydd』が、『モルヴェス』等と、

[y]の発音がちょっと英語寄りの発音になっているという気がします。

ウェールズ語は、北部に行くに従って純粋になっていき、

南部に行くに従って英語訛りになっていくらしいので、

多分南部の人なのかな?と、想像しました。


●白い岩のダヴィズ(ホワイトロックのデーヴィッド)

(Dafydd y Gareg Wen, David of the White Rock)

http://www.youtube.com/watch?v=jmb6VfcaBwg

18世紀前半に実在したとされる吟遊詩人、

ダヴィズ・オウェン(デーヴィッド・オーエン)

(Dafydd Owen, 1711? 12? - 1741)

の臨終の場面を歌った歌。

若干29歳で亡くなったという。

この曲が初めて出版物に現われたのは、1794年だそうです。


悲痛なくらいに悲しげで、

尚且つ透き通る様な美しさを湛えるこの名曲の魅力を、

卓越したオーケストレーションで十二分に惹き立たせています。


【歌詞試訳】

(実際に歌った時にメロディと歌詞が合う様に調整して意訳気味)


'Cariwch', medd Dafydd, 'fy nhelyn i mi,

「竪琴を持ってきなさい」とデーヴィッドは言った

Ceisiaf cyn marw roi tôn arni hi,

我が命が尽きる前に歌いたいと

Codwch fy nwylo i gyraedd y tant;

両手を上げ弦を掻き鳴らしてゆく

Duw a'ch bendithio fy ngweddw a'm plant!'

我が妻子に神の加護あれ!


'Neithiwr mi glywais lais angel fel hyn:

最後の夜 天使の声が囁いた

"Dafydd, tyrd adref, a chwarae trwy'r glyn!"

「デーヴィッド 谷を越え我が家へ来たれ!」


Delyn fy mebyd, ffarwel i dy dant!

我が青春の竪琴 そなたの弦ともお別れだ!

Duw a'ch bendithio fy ngweddw a'm plant!'

我が妻子に神の加護あれ!


デヴィッド・オーエンについてもっと説明します。

ウェールズ北部、

ガイルナルヴォン州(Sir Gaernarfon)カーナヴォン州(Caernarfonshire)

ポルスマドック(Porthmadoc)ポートマドック(Porthmadog)

に生まれました。

1712年生まれです。

が、”?”が付されている場合もあるので、

はっきりとは断言出来ないようです。

1711年の可能性も示唆しているページもありました。

1712年であれば、来年は丁度生誕300周年です。

1711年であれば、今年が丁度生誕300周年です。

ウェールズファンは、祝うんですかね?

1741年に没したとの事なので、今年は没後270周年です。


聖カナヤルン教会(Eglwys Sant Cynhaearn, St Cynhaearn's Church)

に葬られているそうです。

が、ちょっと気になった事が・・・。

St Cynhaearn's Church, Ynyscynhaearn - Wikipedia English

というページをご覧ください↑

『アナスカナヤルン』(Ynyscynhaearn)

というのは何でしょう?

『Ynys』(アニス)とは、『島』を意味します。

という事は、『カナヤルン島』でしょうか?

でも、別に島になっているわけでは無いようで。

文脈からしてこういう名前でも呼ばれているという事の様ですが、

どうしてこういう名称なのか、理由は分かりません。


●ハルレフ(ハルレッフ・ハーレフ)の男たち

(Rhyfelgyrch Gwŷr Harlech, Men of Harlech)

http://www.youtube.com/watch?v=UYxeWnX8CN0

13世紀末、英国王エドワード1世(Edward I of England)により、

ウェールズ征服の拠点として

『ハーレック城』(Harlech Castle)が築城されました。

Harlech Castle - Wikipedia English

その後、ウェールズ反乱軍の拠点ともなりましたが、

1461~1468年の7年間の攻囲戦の末、降伏。

この歌は、その時の戦いが基になっています。

とても勇壮でカッコ良く、

『ウェールズ狂詩曲』の締めくくりにとても相応しいです。


Wikipediaによると、この曲が初めて出版物に現われたのは、

1794年だそうです。

『ホワイトロックのデイヴィッド』の初出版と同年です。

しかも、当初は歌詞無しだったそうです。


その後、1830年にウェールズ語の歌詞が出版されると、

英語による異なる詩が数多く作られる事になったとのこと。

Men of Harlech - Wikipedia English


YouTubeには同曲が色々と出ていますけど、

アフリカ黒人とイギリス軍との戦いを描いた画像や映像がよく出てきます。

「何故なんだろう?」と最初思ったんですが、調べてみると、

『ズールー』(Zulu, 1964)

という、”ロルクズ・ドリフトの戦い”(Battle of Rorke's Drift, 1879)

を題材にした映画で、歌詞を変えて使用されています↓

http://www.youtube.com/watch?v=1csr0dxalpI

英国軍辺境警備隊たった100人程度と

4000人ものズールー部隊との攻防戦を描いた映画です。

ズールー戦争 - Wikipedia


確か、子供の頃にテレビで観た記憶があります。

”三段撃ち”の場面が印象的でした。

『長篠の戦い』に於いて織田軍が初めて用いたという話は有名ですが、

実際にやったのかどうかは怪しいと疑問視されているようです。

ロルクズ・ドリフトの戦いでも、

辺境警備隊は実際に三段撃ちをやったんですかね?

因みに、辺境警備隊はウェールズ人部隊だったそうなので、

だから『ハルレフの男たち』が用いられたんでしょうね。

まあいずれにしても、アフリカに対する侵略行為ですからね。

理屈から言えば、英国軍側が”悪”ですよね。


『ハルレフの男たち』は、他にも色々な所で使われている様です。

映画『我が谷は緑なりき』(How Green Was My Valley, 1941)

でも使われているそうなのですが、

YouTubeに上げられている同映画の映像を

一通り見ても該当するものを見つけられませんでした。


Edward German Marco Polo 8.223726

エドワード・ジャーマン:交響曲第2番/ウェールズ狂詩曲

GERMAN: Symphony No. 2 / Welsh Rhapsody

演奏:アイルランド国立交響楽団

National Symphony Orchestra of Ireland

指揮:アンドリュー・ペニー

Andrew Penny

【Marco Polo 8.223726】1995年


(つづく)






【関連エントリー】

ウェールズ狂詩曲の色々(Welsh Rhapsodies)その1

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