オーレ・ブル(Ole Bull)ノルウェーの作曲家 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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Ole Bull

オーレ・ブル - Wikipedia


オーレ・ブル(Ole Bull)1810-1880


ベルゲン(Bergen)生まれ


このエントリーは絶対に2010年以内に書かねばならなかったのですが、

何故かと言うと、

2010年というのは、オーレ・ブル生誕200周年

だからです。

でも、今年はあと20日を切りました。

クラシック音楽のレビューエントリーを書くのは結構しんどいので、

躊躇していたらとうとう年末になってしまいました。


2010年と言えば、

ロベルト・シューマン(Robert Alexander Schumann)

フレデリク・ショパン(Frédéric François Chopin)生誕200周年でもあり、

それらの作曲家に対しては、恐らくかなり祝われたんでしょうけど

(メジャーなクラシック音楽シーンに対しては殆ど目を向けていないので

よく分からないのですが)、オーレ・ブルに対してはどうだったんでしょう?

少なくとも、地元ノルウェーでは、

彼に因んだイベントが色々と催されたそうです。

通の北欧クラシック音楽ファンを自認している方々は当然、

オーレ・ブル生誕200周年を意識していましたよね?


オーレ・ブルは、”超”が付く程のマイナーではありません。

ヨハン・スヴェンセン(Johan Svendsen)の例を見ても分かりますが、

地元ノルウェーではメジャーでも、日本に於いては知名度が低い。

でも、オムニバスのノルウェー管弦楽曲集CDには

大抵彼の曲が1曲は入っていたりします。

また、「パガニーニの再来」と言われる程のヴァイオリン演奏の名人として

大成功を収めましたが、グリーグの音楽家としての才能を見抜き、

彼の才能を伸ばしてやるように両親を説得したというエピソードも

よく知られています。

日本では主にグリーグとのエピソードでしか知られていないのが

残念に思います。

「ノルウェー初の国際的大スター」ですからね。

アメリカに渡って新天地を拓こうとするなど(結局失敗したそうですが)、

波乱万丈に富んだ人生には惚れてしまいます。


今回紹介するCDは、まさに生誕200周年を記念して制作されたもので、

彼の主要な作品を網羅したCDは今回初めてなのでは?

2枚組なんですけど、その内の一枚は、ブルーレイディスクです。

最初、演奏風景でも撮影されたものが

収録されているのかと思っていましたが、

音声のみだそうです。

ハイブリッドSACDと共に、計6種類もの音声が愉しめるそうです

(それなりの再生装置は勿論必要ですが)。





セーテルの娘の日曜日(ヨハン・スヴェンセン編)

(Sæterjentens Søndag)

この曲は、オーレ・ブルの曲の中でも最もよく知られているものです。

元は『セーテル訪問』(Et sæterbesøg, 1848-1849)という弦楽合奏曲の

中に使用されているメロディを、スヴェンセンが弦楽合奏曲にしたものです。

オムニバスの北欧管弦楽曲集などによく収録されていたりします。

澄み切った空気を思わせる雰囲気や優しい感じのメロディがたまらない!!

まさに”癒し系”(死語?)!!

セーテル(sæter)とは「牧草地」を意味しますが、

人名や地名等としても使用されています

(例:タニヤ・セーテルTanja Sæter、セーテル駅 Sæter holdeplass)。

その原曲である『セーテル訪問』も、最終トラックに収録されています!!


ヴァイオリン協奏曲第1番イ長調

(Fiolinkonsert nr. 1 i A-dur, 1834)

演奏の秘密が人に知られるのを恐れた為か、

ソロパートをきちんと譜面にしなかったらしく、

複数の種類の楽譜が存在するため、

それらを元に作成された譜面が使用されたとのこと。

第1楽章は、書かれたのが1830年代だけあって、

如何にもその頃に書かれた曲だなあという雰囲気を凄く感じます。

大体1810年代~1830年代の音楽シーンというのは、

古典派からロマン派の過渡期なので、

この頃の曲を聴いてみると、

ロマン派と古典派が混ざった様な作品が結構あります。

で、この曲も、古典派的なフレーズはあるものの、

トロンボーンが強く出てきたり、

大胆なフレーズが出てくるなど、ロマン派的要素もあります。

ヴァイオリン独奏による超絶技巧も、ロマン派的と言えばロマン派的。

如何にも、ヴァイオリンによる曲芸的演奏を見せている(聴かせている)

という曲です。

第2楽章は、一転して悲劇的な雰囲気に包まれていますが、

妙に時間が短いです。

第3楽章へ導入するための”序奏”の様な気も?

第3楽章は、如何にもヨハン・シュトラウスの様な、陽気なワルツ。

後半のヴァイオリンソロによる流れる様な素早い音の動きが心地良い。


ヴァイオリン協奏曲第2番ホ短調『幻想的協奏曲』

(Fiolinkonsert nr 2 i e-moll ”Concerto Fantastico”,1840-1841)

第1楽章は、『夜』(la Notte)と銘打たれています。

ロマンティシズム溢れる怒涛の劇的メロディが心を揺さぶる!!

ヴァイオリンソロによる難度の高いフレーズが、

悲劇的な雰囲気を更に引き立たせている。

第2楽章は、『夜明け』(l'Aurora)と銘打たれています。

哀歌(エレジー)風で、

ヴァイオリンソロが悲しみを歌い上げているようです。

第3楽章は『昼』(il Giorno)と銘打たれ、打って変わって陽気な雰囲気。

ポルカの様な、とても素早いテンポ。

ヴァイオリンソロが、これ以上出せるかどうか分からない位

高い音を出しているのが聴き所?


孤独の時に(憂鬱)

(ヨハン・ハルヴォシェン:ヴォルフガング・プラッゲ編)

(I Ensomme Stunde ”La Mélancolie”, 1863)

(arr.Johan Halvorsen/Wolfgang Plagge)

この曲は、『セーテルの娘の日曜日』と共にブルを代表する曲の一つで、

北欧のオムニバス管弦楽曲集などに、

弦楽合奏曲版がよく収録されていたりします。

元は歌だったのを、独奏ヴァイオリンとピアノの為に編曲し、

それをハルヴォシェンが弦楽合奏曲にし、

又更にプラッゲが弦楽合奏曲版にホルンを加えたものが収録されています。

北欧的な哀愁のメロディが涙腺緩ませる?

プラッゲのホルンを加えたバージョンは、

弦楽だけの版よりも更に深みが増しています。

作曲年について、CDの解説書では「1853」年となっていますが、

「1863」年と紹介している所もあります。

多分、状況からして後者が正しいようです。


幻想曲『サン・フアンのベルベナ』

(Fantasia ”La Verbena de San Juan”, 1846)

聖ヨハネ(サン・フアン)の日の前夜祭を行う6月23日の夜を

『ベルベナ』と呼ぶそうです。

1846年にスペインを訪問した際、

時の女王イサベル2世に献呈された作品だそうで。

ホタ・アラゴネーサ(Jota Aragonesa)などのスペインのメロディが

ふんだんに取り入れられ、

カスタネットやタンバリン等も用いられています。

とても聴き応えあるので、

スペイン国民楽派好きにはさぞたまらないことでしょう。

この曲を聴いて思い出すのは、やはり

ミハイル・グリンカ(Михаил Иванович Глинка)の

『スペイン序曲第1番”ホタ・アラゴネーサによる華麗なる奇想曲”』(1845)

Испанская увертюра № 1 «Блестящее каприччио на тему Арагонской хоты»

でしょう。

作曲年も、ニアミスするくらい近い。

大雑把に言えば、スペイン序曲第1番を、

超絶技巧のヴァイオリン独奏と管弦楽の為の版にしたような感じかも?

ヴァイオリン独奏と管弦楽の為のスペインを題材にした曲と言えば、

ラロ(Victor Antoine Édouard Lalo)の

『スペイン交響曲』(Symphonie espagnole, 1874)が有名でしょう。

その曲よりも20年以上も早いわけです。

リムスキー=コルサコフ(Николай Андреевич Римский-Корсаков)の

『スペイン奇想曲』(Каприччио на испанские темы, 1887)

は最初、独奏ヴァイオリンと管弦楽の為の曲にするつもりだったのを

管弦楽曲にしたそうなのですが、

それでも独奏ヴァイオリンが活躍する場面はあります。

サラサーテやラロの登場以前に、スペイン情緒溢れるクラシック曲には

ヴァイオリンの超絶技巧がよく似合う事を、

ブルはいち早く証明してみせています。

そんなわけで、

この曲が今まで埋もれていたのはとても不思議に思います。


セーテル訪問

(Et sæterbesøg, 1848-1849)

北欧の旋律が色々と出てくる北欧国民楽派好きにはたまらない弦楽合奏曲。

最後に持ってくるのはニクいですね~!!

『セーテルの娘の日曜日』は、この曲の中のメロディの一つです。

この曲に使用されている民謡の一つである

『逆さまの歌』(Den bakvendte visa)は、

スヴェンセンのノルウェー狂詩曲第4番

(Svendsen-Norsk Rapsodi Nr. 4, 1877)や

ラロのノルウェー狂詩曲(Lalo - Rhapsodie norvégienne, 1879)の

第二楽章で使用されています。





セーテルの娘の日曜日(歌バージョン)

ハウス名作劇場のアニソンみたいな歌声?

http://www.youtube.com/watch?v=-DU3BdG_Ung





2L-067-SABD


オーレ・ブル:ヴァイオリンと管弦楽のための作品集

(OLE BULL Violin Concertos)

ヴァイオリン独奏:アンナル・フォレソー(Follesø)

演奏:ノルウェー放送管弦楽団(Kringkastingsorkestret)

指揮:オーレ・クリスティアン・ルード(Ole Kristian Ruud)

【2L-067-SABD】2010


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【修正と追記】

1880 → 1879

ラロの『ノルウェー狂詩曲』の作曲年については

情報によって若干ズレがあります。

1881年と出ているのもありますが、恐らくは『改訂』されたのが

1881年という意味ではないかと>思います(断言は控えます)。

Wikipediaによると、出版されたのが1880年という事らしい。

ノルウェー狂詩曲 (ラロ) - Wikipedia, 日本語


【追記】2016/7/4

肖像写真追加





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