ミカス・ペトラウスカス(Mikas Petrauskas)リトアニアの作曲家 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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ミカス・ペトラウスカス(Mikas Petrauskas)1873-1937


リトアニアのオルガン奏者、テノール歌手、指揮者、音楽教師、作曲家。

ルドルファス・リーマナス(Rudolfas Lymanas)にオルガンを学ぶ。

1901~1906年、ロシアのサンクトペテルブルク音楽院で学ぶ。

リトアニア(当時はロシア領)に戻った後の1906年11月6月、

リトアニア初のオペラである『ビルーテ』(Birutė)が

ヴィリニュスの市庁舎宮殿にて初演された。

2つの歌劇、20ほどのオペレッタ、その他数多くの歌曲、合唱曲を残す。


【代表作】

歌劇『ビルーテ』(Opera “Birutė“)1906

歌劇『蛇の女王エグレ』(Opera “Eglė žalčių karalienė“)1920

軽歌劇『森の王』(Operetta “Girių karalius”)1919


Mikas Petrauskas - Wikipedia, Lietuvių


Mikas Petrauskas


少し前に、エストニア初のオペラ『ヴァイキング』(Vikerlased)

の紹介をしましたが、今回は、

リトアニア初のオペラの紹介と行きます。






〇バルト3国のクラシック音楽黎明期

19世紀に吹き荒れた欧州の民族主義運動のうねりは

バルト地域でも起こり、まず、

アンドレイス・ユルヤーンス(Andrejs Jurjāns)

ヤーゼプス・ヴィートルス(Jāzeps Vītols)

等により、ラトヴィア国民楽派が開始、推進された。

【注記】

ラトヴィアの歌と踊りの祭典(Vispārējie latviešu Dziesmu un Deju svētki)1873~

アンドレイス・プムプルス(Andrejs Pumpurs)により、

ラトヴィアの民族叙事詩『ラーチプレースィス』(Lāčplēsis)出版1888


続いて、エストニアでも、

ルトルフ・トビアス(Rudolf Tobias)

アレクサンテル・ラッテ(Aleksander Läte)

アルトゥール・カップ(Artur Kapp)

ミヒケル・ルティク(Mihkel Lüdig)

等により、本格的なクラシック音楽の創造が開始された。

【注記】

フリードリヒ・レインホルト・クロイツヴァルト(Friedrich Reinhold Kreutzwald)により、

エストニアの民族叙事詩『カレヴィポエク』(Kalevipoeg)出版1861

第1回エストニアの歌の祭典(Esimene eesti üldlaulupidu)1869


リトアニアでも、

カンタータやオルガン曲などを書いた、

チェスローヴァス・ササナウスカス(Česlovas Sasnauskas, 1867-1916)

オルガニストで合唱指揮者、作曲家の

テオドーラス・ブラズィース(Teodoras Brazys, 1870-1930)

合唱・管弦楽指揮者、作曲家の

ユォーザス・グダヴィチュース(Juozas Gudavičius, 1873-1939)

などがいましたが、本格的なクラシック音楽の創造は、

日本でもよく知られている画家、作曲家の

ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス

(Mikalojus Konstantinas Čiurlionis, 1875-1911)

が最初です。

【注記】

1795年、ポーランド分割により、

ポーランドに吸収合併されていたリトアニアも自動的にロシア帝国領となる。

19世紀、ロシアに対してポーランドと共に蜂起を起こすも鎮圧され、

同化政策を受ける。

20世紀初頭、ドイツ、ロシア、ポーランド等を相手に抵抗運動を展開し、

1920年に第一次リトアニア共和国を建国。


リトアニア初の交響的作品は、チュルリョーニスの

交響詩『森の中で』(Simfoninė poema „Miške“)1900-1901

なので、他のバルトの国に比べれば一番後発なのは否めません。

ロシアのツェーザリ・キュイ(Цезарь Антонович Кюи)は、

リトアニア人の血を引いていますが、

リトアニアを意識した作曲を行っていないので、

リトアニアの曲を書いたとは見なされません。

チュルリョーニスの2つ目の

交響詩『海』(Simfoninė poema „Jūra“)1903-1907

は、リトアニア民謡に似ているフレーズがあると言われていて、

或る意味、リトアニア国民楽派の最も早いオーケストラ作品と見なせるかも?

民謡を用いているのでは無いにしても、

何処と無く土着的な雰囲気を感じます。

因みに、ほぼ同時期に、

ポーランドのカルウォヴィチ(Mieczysław Karłowicz)によって、

リトアニア狂詩曲(Rapsodia litewska, op.11)1906

も書かれています。


久々にCDでチュルリョーニスの交響詩を聴いてみましたが、

やはりいいですね。

しみじみした気分になります。

来年は、没後100年です。






〇ペトラウスカスの歌劇

リトアニア初の交響的作品の登場から僅か5年後に、

リトアニア初の歌劇『ビルーテ』が上演されました。


『ビルーテ』とは何なのか?について調べてみました。

実在の人物を描いた伝説物語。

中世リトアニア大公国のケーストゥティス(Kęstutis)の2番目の妻にして、

ヴィータウタス大公(Vytautas Didysis)の母。

美人と評判のビルーテの噂を聞き、

ケーストゥティスは彼女の許を訪れて求婚する。

彼女は異教の巫女であり

神々に生涯を処女で通すと約束していたためそれを拒否するが、

ケーストゥティスは力ずくで連れ出し、結婚式を挙げてしまった。

1382年、ケーストゥティスとリトアニア大公の地位を争っていた

ヨガイラ(Jogaila)

<後のポーランド王ヴワディスワフ2世(Władysław II Jagiełło)>は、

ドイツ騎士団と手を組み、

ケーストゥティスを捕らえクレヴァ城(Krėva)で殺害するが、

ビルーテの死については不明であるとされる。

同年溺死したのが通説とされるが、

その後神職に復帰し亡くなるまで従事したという異説もある。

因みにヴィータウタスは父ケーストゥティスと共に捕らえられるも、

脱出に成功する。

後にヨガイラと和睦し、リトアニアの統治を任され、

中世リトアニアの領土をバルト海から黒海に至るまでの大国に拡大させた。

Birutė - Wikipedia, English


Birutė


オペラではどの様に描かれているのでしょうか?


ペトラウスカスのもう一つのオペラ『蛇の女王エグレ』は、

リトアニア民話から題材を取っています。

エドゥアルダス・バルスィース(Eduardas Balsys, 1919-1984)

も、1960年にバレエ音楽にしています。


因みに、チュルリョーニスの交響詩『海』は、オリジナルスコアでは、

強弱記号などの指示が殆ど無い等の不備があるので、

そのまま演奏するには差し支えてしまうとして

バルスィースが改訂版を書いていて、

CD等で一般的に聴けるのは、その版だそうです。

が、ギンタウタス・リンケヴィチュース(Gintaras Rinkevičius)

指揮による演奏のCDは、

オリジナル版に基づいているそうで、しかも、

日本ではキングレコードから出されていたそうです。

現在では廃盤となっているようですが、

そっちのほうは残念ながら聴いていません(KICC 76)。






〇CD化について

オペラ『ビルーテ』のCD化については、はっきりとは分からないんですが、

こういった情報があります↓

7 meno dienos > Renginiai > Pirmosios lietuviškos operos "Birutė" kompaktinės plokštelės sutiktuvės

MUZIKA: Pristatyta pirmosios lietuviškos operos kompaktinė plokštelė - 7md


Birutė(Mikas Petrauskas)


CDのジャケットの画像なのかどうか?

リンクしたページでは、

リトアニア語でCDがどうのこうのと出ているんですが、

殆ど読めないので、

はっきりとCD化されているのかどうかは分かりません。


他のリトアニアのクラシック音楽のCD化も、

そんなに芳しい状況とは言えない。

ヴィータウタス・バルカウスカス(Vytautas Barkauskas, b.1931)

などの現代音楽家とか、

前述のチュルリョーニスのCDは数多く出ているようですが。

ロマンティックな作風のマイナークラシック曲が殆どCD化されないのは、

ラトヴィアにも言える事です(エストニアは、ネーメ・ヤルヴィのお蔭で、

割とCD化されています)。

ロマンティックな作風のリトアニアクラシック音楽では、

チュルリョーニスばかりが特別扱いされている感じ。

まあ、時代の先を走っていた”天才”ですから。

でも、もっと他のリトアニアの作曲家にも光が当てられる事を望みます。


リトアニアにもちゃんとレーベルはあり、

リトアニアの作曲家のCDがいくつもリリースされてはいるのですが、

Amazonで取り扱われていないので、

日本で手に入れるのは難しいという状況。

もしかしたら、

マイナーレーベルを取り扱っている販売サイトでなら購入出来るかも、

と思ったら・・・。


リトアニア出版情報センター

(Lietuvos Muzikos Informacijos ir Leidybos Centras)

Mic.lt

より、そのCDの数々(ノルディックサウンド広島)。

Lithuanian New Music Series


大和プレスビューイングルームを訪れたついでに

ノルディックサウンド広島にも立ち寄ればよかったと、

もの凄く後悔(所在地きちんと調べていなかったので)!!






○リトアニア初オペラは1906年だが・・・(追記)

オペレッタは実はそれ以前から書かれています。

リトアニアグランドオペラの初めてが1906年という事のようです。

軽歌劇『アダムとイヴ』(Adomas ir leva, operetta 1905)






【関連エントリー】

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