イギリス音楽の復興を担った一人である
エドワード・ジャーマン(Edward German, 1862-1936)
をそろそろブログで紹介しようと思って、彼の傑作の一つである管弦楽曲
ウェールズ狂詩曲(Welsh Rhapsody, 1904)について調べてみたところ、
思わぬ発見がありました。
何と、吹奏楽の世界では、この曲の吹奏楽版が結構有名らしい。
ジャーマン本人が吹奏楽版も書いたわけではなく、
ダン・ゴッドフリー・ジュニア(Dan Godfrey Junior)
による編曲だそうです。
【試聴あり】エドワード・ジャーマン作品集~ウェールズ狂詩曲 ウェルシュ・ガーズ・バンド
私思うんですけど、吹奏楽ファンと所謂クラシックファンは、
かなり断絶しているのではないか?と思うんですが。
というのも、吹奏楽の世界で有名と言われる人を、
クラシックファンで知っている人はどれだけいるのだろうか?
と思うからです。
『アルメニア舞曲』(Almenian Dances)で有名といわれる
アルフレッド・リード(Alfred Reed, 1921-2005)
を知っているクラシック音楽ファンは、一体どれだけいますか?
クラシックファンが吹奏楽について語っているのを
あまり聞いた事がありません。
せいぜい、ジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa, 1854-1932)とか、
クラシックの作曲家の作曲した吹奏楽曲、たとえば、
グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst, 1874-1934)の
吹奏楽組曲第1、2番(First and Second Suite for Military Band)
レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872-1958)の
イギリス民謡組曲(English Folk Song Suite)くらいか?
取り敢えずそれは置いといて、
ジャーマンのウェールズ狂詩曲について解説いたします。
-------------------------------------------------------
ウェールズ狂詩曲(Welsh Rhapsody)1904
エドワード・ジャーマン(Edward German, 1862-1936)
ジャーマンがこの曲を書いたのは恐らく、
彼自身がウェールズ系である事や
時期的にイギリス音楽の復興期であった事なども
影響しているのかも知れません。
この辺りは臆測なんで、鵜呑みにしないでください。
アイルランドを意識したクラシック音楽作品には、
・アーサー・サリヴァン(Arthur Sullivan, 1842-1900)の
交響曲『アイルランド』(Symphony ”Irish”)1866
・アイルランド系フランス人女性作曲家
オギュスタ・オルメス(Augusta Holmès, 1847-1903)の
交響詩『アイルランド』(Poème symphonique ”Irelande”)1882
・軽歌劇(ライトオペラ)で知られる
ヴィクター・ハーバート(Victor August Herbert, 1859-1924)の
アイルランド狂詩曲(Irish Rhapsody)1893(1892?)
・チャールズ・スタンフォード(Charles Villiers Stanford, 1852-1924)の
交響曲第3番『アイルランド』(Symphony No.3 ”Irish”)1887
6つのアイルランド狂詩曲(6 Irish Rhapsodies)
・ハミルトン・ハーティ(Sir Hamilton Harty, 1879-1941)の
アイルランド交響曲(An Irish Symphony)1904, 1915, 1924
交響詩『雁の群と共に』(With the Wild Geese)1910
交響詩『アイルランドにて』(In Ireland)1915
などがあり、
スコットランドを意識したクラシック曲には、
・メンデルスゾーン
(Jakob Ludwig Felix Mendelssohn Bartholdy, 1809-1847)
交響曲第3番『スコットランド』
(Sinfonie Nr.3 ”Schottische”)1830-1842
・マックス・ブルッフ
(Max Christian Friedrich Bruch, 1838-1920)
スコットランド幻想曲
(Schottische Fantasie)1880
・アレグザンダー・マッケンジー
(Alexander Mackenzie, 1847-1935)
スコットランド狂詩曲第2番『バーンズ』
(Second Scotsh Rhapsody ”Burns”)1880
スコットランド協奏曲(Scottish Concerto)1897
・ヘイミッシュ・マッカン
(Hamish MacCunn, 1868-1916)
序曲『山と泉の溢れる大地』
(Overture ”The Land of the Mountain and the Flood”)1887
歌劇『ジーニー・ディーンズ』(Opera ”Jeanie Deans”)1894
他
等があります(長かった・・・)。
でも、もう一つのケルト系である
ウェールズの音楽を元にしたクラシック曲というのが
殆ど聞いた事ありません。
そんなわけで、ジャーマンは、本当に良い仕事をしたと思います。
実際にウェールズの民謡を幾つか聴いてみたんですが、
スコットランドやアイルランド等の民謡とは、
ちょっと違うなという印象を受けました。
それでいて、とても親しみやすいメロディなので、
アイルランド民謡やスコットランド民謡に比べて
ウェールズ民謡が聊かマイナーというイメージである事が
勿体無い気がします。
で、やっと本題の『ウェールズ狂詩曲』なんですが、
5種の伝承曲を用いている4部構成です。
数あるウェールズ民謡の中でもとりわけ印象深く
憶えやすいメロディを選んでると感じました。
第1部:王の出立
(The Departure of the King, Ymadawiad y Brenin)
http://www.youtube.com/watch?v=5YTGAivVqbE
第2部:兎猟
(Hunting the Hare, Hela'r Sgyfarnog)
http://www.youtube.com/watch?v=qwWjI79JxXE
アベルダヴィーの鐘
(Bells of Aberdovey, Clychau Aberdyfi)
http://www.youtube.com/watch?v=zj1bYWIUxBM
第3部:白い岩(ホワイトロック)のダヴィズ(デーヴィッド)
(David of the White Rock, Dafydd y Gareg Wen)
http://www.youtube.com/watch?v=jmb6VfcaBwg
第4部:ハルレフ(ハルレッフ・ハーレフ)の男たち
(Men of Harlech, Rhyfelgyrch Gwŷr Harlech)
http://www.youtube.com/watch?v=UYxeWnX8CN0
※上、左から、日本語、英語、ウェールズ語
長くなり過ぎたので、当エントリーを前半と後半とに分けます。
後半をお楽しみに。
【訂正・追記】2016/6/21
肖像写真追加
ハーミッシュ・マッカン → ヘイミッシュ・マッカン
YouTubeに「ウェールズ狂詩曲」が上がっていました。
https://www.youtube.com/watch?v=ODdgFI7In9c
【関連エントリー】
ヤルマル・ボルグストレム(Hjalmar Borgstrøm)ノルウェーの作曲家(2)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10742806893.html
オーレ・ブル(Ole Bull)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10734208188.html
マイナークラシック音楽の手作りCD
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10731560166.html
ヨハン・ペーテル・セルメル(Johan Peter Selmer)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10725583099.html
フランドル狂詩曲集(Flemish Rhapsodies)後半
ジャン・アプスィル(アプシル)(Jean Absil)
アルベール・ルーセル(Albert Roussel)
アウフスト(アウグスト)・ドゥ・ブーク(ブック)(August de Boeck)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10714375619.html
フランドル狂詩曲集(Flemish Rhapsodies)前半
ミシェル・ブリュセルマン(ブリュッセルマンス)(Michel Brusselmans)
マウリス・スフーマーケル(Maurice Schoemaker)
マリニュス・ドゥ・ヨング(Marinus de Jong)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10709699304.html
ミカス・ペトラウスカス(Mikas Petrauskas)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10684039935.html
アレクサンドル・スペンディアリャン(Ալեքսանդր Սպենդիարյան)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10672566289.html
エヴァルト・アーヴ(Evald Aav)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10657958318.html
ピェタル・ガツィ(Pjetër Gaci)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10633174403.html
アンドレイス・ユルヤーンス(Andrejs Jurjāns)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10627679157.html
交響的幻想曲『ウクライナコサックのシュムカ』-ミコラ・リセンコ(2)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10593641635.html
ミコラ・リセンコ(Микола Віталійович Лисенко)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10591197060.html
アルフレーツ・カルニンシュ(Alfrēds Kalniņš)を聴く
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-10583813668.html
マイナークラシック音楽紹介記事アドレス保管庫(5)