ここ最近、
ノルウェーのマイナー作曲家の管弦楽曲集CD登場ラッシュが著しい。
等など・・・
何故なんでしょうか?
いずれにしても、レアクラファンにとっては嬉しい限りです。
ボルグストレムについては以前ここ で紹介しているので、
詳細はそちらをご覧ください。
では、今年(2010)出たばかりの
ボルグストレム新作CDの紹介と行きます。
全体的な感想ですが、
期待していたよりもちょっと『地味』な印象を受けました。
元々映画音楽的というか、華やかな曲が好きなので。
その上、以前聴いていた
歌劇『リーモルのトゥーラ』(Opera ”Thora paa Rimol” 1894)
がとても魅力的なメロディのオンパレードだったので、
そのイメージで期待していたから、期待通りでなかった分、
地味に感じたのかも知れません。
でも、落ち着いた感じではあるものの、
メロディは皆それなりに魅力的です。
交響詩『ゲッセマネのイエス』
Symfonisk dikt”Jesus i Getsemane” op 14 (1904)
ボルグストレムは、20世紀初頭に、立て続けに交響詩を連作します。
まるで、晩年のドヴォルジャークみたいに。
ここに列挙してみます。
・交響詩『ハムレット』(ピアノと管弦楽)
Symfonisk dikt for klaver og orkester”Hamlet” op 13(1903)
・交響詩『ゲッセマネのイエス』
Symfonisk dikt”Jesus i Getsemane” op 14 (1904)
・交響詩『ヨン・ガブリエル・ボルクマン』
Symfonisk dikt”John Gabriel Borkman”op 15(1905)
・交響詩『死者の夜』(ピアノと管弦楽)
Symfonisk dikt for klaver og orkester”De Dødes Natt” op 16(1905)
交響詩『思考』
Symfonisk dikt”Tanken” op26(1916, 1917?)
その内の『ハムレット』と『思考』は既にCD化されていますが、
現在は廃盤になっている上に入手は極めて困難と思われます。
【NKFCD 50026-2】
さて、ゲッセマネとは、言わずと知れた、新約聖書の福音書に於ける、
イエスがイスカリオテのユダに裏切られて捕らえられた場所。
そのイエスが捕らえられる場面を描写した音楽と思われます。
全体的に悲劇的な雰囲気が漂っています。
でも中間部ほどに登場する、
独奏ヴァイオリンやハープ等によって奏でられる旋律は、
優しく繊細で、とても美しい。
その後に、遠くでトランペットやフルート等によって
行進曲風のメロディが鳴っている描写がでて来ます。
恐らく、ローマ兵による捜索隊を描写したものと思われます。
遠くでメロディが奏でられる様な描写は、
歌劇『リーモルのトゥーラ』にも見られます。
20分以上もする、息の長い曲。
でも、映画でも観ているようで、感情移入してしまいました。
巧みなオーケストレーションが際立っています。
交響詩『死者の夜』(ピアノと管弦楽)
Symfonisk dikt for klaver og orkester ”De Dødes Natt” op 16(1905)
交響詩『ハムレット』と同様、ピアノと管弦楽による曲。
サン=サーンスの交響詩『死の舞踏』
(Camille Saint-Saëns, Danse macabre, 1874)
を彷彿とさせます。
『死の舞踏』の場合は独奏ヴァイオリンと管弦楽ですが、
『死者の夜』ではピアノと管弦楽なわけです。
やや不安げで不気味な雰囲気をたたえた、
おどけた楽しい舞曲風の曲です。
何を描写しているのか具体的には分かりませんが、
ピアノによる躍動感溢れる描写が見事!!
『死の舞踏』に於ける丁度シロフォンの役割にピッタリだとも思いました。
最後は、ムソルグスキーの交響詩『禿山の一夜』の終結部の様に、
牧歌的な雰囲気の清々しい夜明けの描写で締めくくられます。
ヴァイオリン協奏曲ト長調(3楽章)
Konsert for fiolin og orkester i G-dur, op 25(1914)
全体的には、北欧的な清澄な雰囲気を湛えた落ち着いた感じの
二流ロマン派ヴァイオリン協奏曲?
第1楽章にはこれといって特徴的なメロディが無いので、
ちょっと地味で退屈な印象を受けます。
他の人はどう思っているかは知りませんが、
超絶技巧的な描写が無かったり、
何か特徴的なものが無いヴァイオリン協奏曲は、
地味な印象なので聴いていてとても退屈です。
ですから、ブラームスとかベートーヴェンの
ヴァイオリン協奏曲には退屈さを感じます。
お世辞にも傑作とは言い難い。
ネームバリューで傑作だと言われている気がする。
でも、第2楽章は、瞑想的な美しいメロディがとても印象的。
映画か何かで聴いた様な・・・、という感じもする。
第3楽章は、第1楽章とは違ってメリハリの利いた明るいメロディ。
往々にしてロマン派Vコンは、
第3楽章のメロディがはっきりしている場合が多い気がする。
だから、地味な印象なので正直好きではないブラームスのVコンは、
第3楽章だけは好き。
ボルグストレム:ゲッセマネのイエス/死者の夜/ヴァイオリン協奏曲
ヴァイオリン独奏:ユーナス・ボートストラン(Jonas Båtstrand)
ピアノ演奏:ニルス・アンネシュ・モッテンセン(Nils Anders Mortensen)
演奏:ノルランド歌劇交響楽団(Norrlandsoperans Symfoniorkester)
指揮:テリエ・ボイエ・ハンセン(Terje Boye Hansen)
SIMAX【PSC 1311】2010
【追記】2016/7/3
ヨーン・ガブリエル・ボルクマン → ヨン・ガブリエル・ボルクマン
【追記:2022/12/1】
アンデシュ・モッテンセン → アンネシュ・モッテンセン
テリエ・ボイェ・ハンセン → テリエ・ボイエ・ハンセン
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