RYUJIのサブカル批評 -544ページ目

セブン

映画「セブン」について。


これは凄い映画だ。まだ観ていない人の為にあまり多くは語らないが・・・・・・。


犯人を追い詰めていく本格ミステリーと思いきや、突然・・・・・・だったり、「銀落とし」という独特の画作りだったり、何よりも実はオープニングに全てのヒントが隠されているという斬新な手法だったり、ブラピが主役なのに「えっ?」だったり。

映画のセオリーを完全に破壊し、新たな可能性に挑戦した恐るべき作品です。


勿論、この作品の評価は高いが、僕から言わせれば、まだまだ足りない。

もっと評価されるべきだ。「セブン」は映画史に残る傑作である。


僕はコレクターズエディションのDVDを購入して、オープニングのクレジットタイトルを何度も鑑賞した。オープニングとクロージングに流れるクレジットタイトルは、僕が今までに観てきた映画の中で、最高にカッコイイ出来だ。

「セブン」の公開後に、このクレジットタイトルのスタイルは他の映画でも多用される事となる。

クレジットタイトルを観るだけでも一見の価値がある。本当に凄い映画だ。


この作品を「面白くない」と言う人に、この作品の良さを一つ一つ丁寧に説明してあげたい。だって、この映画、本当に凄いんだから。


採点/95点


RYUJIのサブカル批評

NARUTO 46巻/岸本斉史

マンガ「NARUTO」の最新刊を読了した。


「NARUTO」は、「ONE PIECE」とは違った意味で面白い。

「ONE PIECE」が「正義は必ず勝つ」的な少年漫画の王道を行く作品であるのに対して、「NARUTO」は「世の中、正義が勝つとは限らない」と言うある意味、残酷な現実を描いている。


主人公のナルトは少年時代、イジメに遭っているし、サスケは両親を殺された過去を持つ。「ONE PIECE」にも、登場人物にはそれぞれの悲惨な過去があるのだが、それらは物語の中で、何となく浄化されている。しかし、「NARUTO」は違う。暗い過去が原因で、更に暗い方向へと話が進んで行き、この物語は「サスケの死」に依ってでしか完結しないような気さえするのだ。


現在、少年ジャンプに連載している最新話では、更に深いテーマを描いている。岸本斉史は少年漫画の質を一歩引き上げた、数少ない漫画家だ。


採点/75点


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Dolls

「辛口批評」を謳っている割には、お薦め作品ばかりアップしているので、今回は駄目な映画を取り上げます。それは、北野武監督の映画「Dolls」です。


僕は北野監督の映画は好きです。海外で評価される前(デビュー作)から、僕は彼の非凡な才能に目を付けていました。北野監督が演出した暴力描写は、その後の映画界に多大な影響を与えました。


僕はファンだからこそ、駄目なものは、はっきり駄目と言える権利があると思います。

お○ぎみたいに、北野作品は良くても、悪くても、取り敢えず批判するという事は決してしません。

お笑い芸人が片手間で撮った映画であっても良いものは良いし、巨匠が何年も掛けて制作した映画であっても、駄目なものは駄目と言います。


「Dolls」は、試写会で観ました。普通に映画館で観ていたら、30分もしない内に席を立ったかもしれません。

他人の評価を気にしながら撮った映画ほど、醜いものはありません。「Dolls」は間違いなく、北野監督が海外での評価を意識しながら撮った作品です。本当につまらない映画になっています。中途半端に芸術している画や、奇を衒った編集は観るに耐えませんでした。意表を突くはずのショッキングな演出も何となく予測出来てしまい、何の衝撃も受けませんでした。


兎に角、観た後に、腹が立った映画は、後にも先にも、この作品だけです。それだけ、僕は北野監督を信頼していたという事でしょうか。


因みに北野映画のベストワンは「ソナチネ」で、95点です。


採点/10点


RYUJIのサブカル批評

僕は森達也が好きだ。

彼の著書は殆どすべて読んでいる。


麻原逮捕後のオウム真理教を内部から撮った森達也監督のドキュメンタリー映画「A」を観て、僕はかなりの衝撃を受けた。


兎に角、この映画は観た方が良い。僕等の住んでいるこの世界がいかに危うい物の上に成り立っているのかを実感出来る。(映画の中で、刑事がオウム信者に暴力を振るう場面に戦慄を覚えました)

正義とは何か?真実は何処にあるのか?


森達也は一時期、俳優をしていた事がある。その事が影響しているのかもしれないが、彼の著書には何処となくナルシシスティックな面があり、理想論が多いと批判される事がある。ただ、僕は、そんなところも含めて、森達也の作品が好きだ。


森の存在自体が体現している。人は一筋縄ではいかない。人間は、たまに「仏」にもなるし、たまに「悪」になったりもする。最初から最後まで、ずっと「仏」のままで生涯を終える人は居ない。だからこそ、人は面白いし、深いし、愛おしいものなのだ。

誰しも、恋人の一般的に言ったらマイナスな面(人当たりが悪い、鼾をかく、ドジなところ等)を、とても愛しく感じる時があると思う。それが人間というものだ。悪人の中にも優しさはあるし、善人の中にも残酷な面がある。

なのに、マスコミは善悪を分かり易く、はっきりと提示する。それに警笛を鳴らす存在が森達也だ。


「オウム真理教の信者イコール悪」という図式だけで解決するほど、世の中は単純じゃない。

「オウム真理教の信者イコール悪」という図式だけで事件を終わらせようとする多くの人達の方が、実は一番恐ろしい存在なのだ。


映画「A2」も必見です。


採点/90点


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A.I.

映画「A.I.」は、リトマス試験紙のような作品だ。


はっきり言ってこの映画は、スタンリー・キューブリックの企画をスピルバーグが監督した作品にしては、評価が低かった。その理由はいくつかあるが、多くの観客はSF娯楽大作として「A.I.」を鑑賞したからだと思う。

確かに、SFXだけを評価するのなら、大した事はない。ただ、この作品の正しい観方はそこには無い。


人は自分達がこの世で最も頭が良くて、知性と愛に溢れた生き物だと思っている。確かにそうかもしれない。ただ、その人間が、愛情を持ったロボットを作り出したとする。人間は生きても100歳まで。でも、そのロボットは何千年、何万年もその愛を貫いたままで動いていたとしたら・・・・・・。そのロボットは、人間を超える存在だと言えないだろうか。


僕はこの映画を観て、深く考えさせられました。「人」と「知性や愛を持ちえたロボット」との違い。

この作品では、ロボットのデヴィッドの方が、彼を取り巻く人間達よりもよっぽど人間らしく描かれている。

どちらにしても、人間はそんなに立派な生き物ではないし、そんなに大した存在ではない。


「A.I.」はつまらない映画だったと言う声をよく聞くが、僕はそういう人の映画評論はあまり信用しない事にしている。現に、僕の好きな映画評論家の殆どの人は、「A.I.」を高く評価している。


最初の言葉に戻る。「A.I.」は、僕にとってのリトマス試験紙のような映画。どっちが正しいとか言う問題じゃない。僕と感性が似ている人か、そうじゃない人か、見分けがつき易い作品という意味だ。


採点/90点


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ねじまき鳥クロニクル 第1部~第3部/村上春樹

「ねじまき鳥クロニクル」を読まずして、小説好きを自認してはならない。


村上春樹の最高傑作にして、日本の文学界に旋風を巻き起こした本作は、間違いなく次世代へと読み継がれるべき小説だろう。


この大作は、書こうと思って書けるものではない。小説の途中で、執筆している村上春樹自身が方向性を見失っている箇所が何度も出てくる。そこがまた不思議とこの作品の魅力へと繋がっている。


「村上春樹は凄い」なんて言うのは、今更だけど、それでもやっぱり凄い。


ゴダールやイーストウッドに映画の神様が付いているとするならば、村上春樹には間違いなく小説の神様が付いている。それが一番実感出来る小説が「ねじまき鳥クロニクル」です。


採点/95点


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人のセックスを笑うな

DVDにて映画「人のセックスを笑うな」を鑑賞。


永作博美の魅力全開でした。中年の女性を美化していなくて、生々しいのが逆に良かったです。

井口奈己監督が女性であり、主人公と同年代である事がこの映画の核となる部分を支えているんだと思います。

そりゃ、中年女性からすれば、松山ケンイチみたいな若い男と遊んでみたいだろうし、家の中をパンツ一丁で歩き回ったりもしますよね。その辺の描写が凄くリアルだったし、男の僕にも共感出来る部分が多かったです。


永作がとてもキュートで、若い男が虜になってしまうという設定に説得力がありました。


蒼井優も「普通の学生さん」って感じで可愛かったですよ。


未読ですが、山崎ナオコーラの原作もこんな感じなんですかね?女性受けしそうな感じですね。


採点/65点
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トウキョウソナタ

DVDにて映画「トウキョウソナタ」を鑑賞。


どちらかと言うと、ホラー映画を数多く手掛けている黒沢清監督のいつもの作品とは毛色の違う映画だった。

しかし、画面から伝わってくるものは間違いなく黒沢作品特有のものだ。黒沢監督は、日本の映画監督の中では間違いなく5本の指に入る映像作家です。


小泉今日子が母親役だったり、裕福と言われていたこの日本で、リストラされたサラリーマンが職安やボランティアの配給に行列を作る場面があったり・・・・・・。時代は変わったなとつくづく思いました。


「家族の崩壊と再生」というテーマは、これまでも多く扱われてきたものなので、やや新鮮味に欠ける。

僕はこの作品に映画「空中庭園」と同じ印象を受けた。(因みに「空中庭園」もキョンキョンが主役です)

でも、黒沢作品は何か良いんだよなぁー。テレビドラマとは一線を画している。「映画を観た」って感じになります。


自分達が必死に守り続けてきた「普通」が崩壊し、戸惑う大人達を尻目に、そんなものを行動力や才能によって軽々と超えていってしまう子供達に希望が湧いてきました。

爽快なラストは秀逸です。素直に感動しました。


意外と言っては失礼だが、アンジャッシュの児嶋一哉がいい味出してた。


まぁー、それにしてもキョンキョンはいつ見ても可愛いです。


採点/85点


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リアリズムの宿/つげ義春

皆さんは、つげ義春の漫画を読んだ事がありますか?

僕は貸本時代の漫画も含めて、殆どすべてのつげ作品を読破しています。

その中で、一番好きな作品は、「リアリズムの宿」です。


「リアリズムの宿」は映画化もされていますが、残念ながら、僕は映画の方は観ていません。観る気もありません。

「リアリズムの宿」は短編なのですが、その作品の中には完璧と言って良い程のしっかりとした物語とテーマがあり、この作品を他の媒体によって作り直す事など、何の意味も無いと思っているからです。


僕は基本的に映画であれ、音楽であれ、漫画であれ、暗い作品が好きです。そういう意味で言っても、つげ義春の作品はすべて暗いです。徹底的に。だから好きです。


つげ義春が、ある本に寄稿した文章の中に「暗さのない映画は駄目です」という一節があるが、大いに共感しました。


つげ義春の漫画は、20年以上も前に発表された「別離」以来、新作が発表されていません。

新作が読みたい。でも、「このまま新作を発表しない方が、つげ義春らしくて良い」なんて事も思ったりしています。


採点/95点


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Wake up!Wake up!Wake up!/the pillows

「Wake up!Wake up!Wake up!」はthe pillowsのアルバムの中で、最も好きな作品だ。

中でも、アルバムの最後に収録されている「Sweet Baggy Days」という曲は、僕が今まで聞いてきたすべての歌の中で最も悲しい歌だ。何度聞いても飽きないし、何度聞いても涙が出てきてしまう。


山中さわおは、一体どれだけの悲しみや苦しみを超えて、ここまでの曲を書けるまでになったのだろう。彼の作るすべての曲の底辺には必ずと言っていい程、悲しみや、寂しさ、心の痛みが存在している。それらが上っ面だけのものではなく、経験から来ているであろう説得力があるので、心にビシビシ伝わってくるのだ。


僕は「the pillowsの曲は嫌い」と言う人とは、多分友達になれないと思う。


採点/95点


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