RYUJIのサブカル批評 -543ページ目

銭ゲバ

「『世の中、金じゃない』なんて事を言う奴には腹が立つ」というような事を、矢沢永吉が著書「成り上がり」に書いてたっけ。そんな事を思い出しながら、僕はこのドラマを見ていた。


「世の中、金じゃない」と僕は思わない。人の世は、大抵のものは金で買えるように出来ている。

でも、「世の中はすべて金だ」とも思わない。人の心は金では買えない。まあ、当然の話だ。


お金で人生を狂わされた主人公。平凡で普通の人生を送る事を、家庭の事情により、のっけから否定されてしまった子供の人生。

金に不自由さえしていなければ、送れたであろう幸せな人生と、現実との対比で締め括った最終回は、とても印象的だった。


「世の中、金じゃない」と何のためらいもなく言える。そんな人は、幸せな環境で自分が生まれ育ったのを感謝するべきだろう。この日本で、今でも風太郎のようにお金によるハンデを背負った子供は存在するのだ。


松山ケンイチは、こういう癖のある作品に好んで出演する。話があれば、何にでも出演するというスタンスではなく、面白そうな企画を選んで出演しているんだと思う。

従って、松ケンの出る作品は、この先も要チェックです。企画のしっかりした作品が多いです。

「お金がすべてではない」のと同じように、テレビドラマも「視聴率がすべてではない」と、この作品を見てそう思いました。


採点/75点


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ぐるりのこと。

DVDにて「ぐるりのこと。」を鑑賞した。

もう「二十才の微熱」の橋口亮輔とは言わせない。これからは「ぐるりのこと。」の橋口亮輔だ。


木村多江、リリー・フランキーの主演二人がとても良かった。木村多江は美しく、リリー・フランキーはこの役を地で演じているのではないかと思える程、自然で印象的な芝居をしていた。このキャスティング無くして、この作品の成功も有り得なかったように思う。


自分の身の回りの「ぐるりのこと」、社会全体の「ぐるりのこと」。それらすべてに関わり合いながら人は生きている。時に愛し合い、時に傷つけ合いながら。


実際に起きた事件を背景に、夫婦の物語は進んでいく。ほんの少しでも良い、人を思いやる気持ち。そういったものを無くしてしまった時、人は人を憎み、人を平気で傷つけ、最終的には殺意を抱くまでに発展してしまう・・・・・・。


もう一度、自分自身の「ぐるりのこと」を考え直してみようと思った。そしてまずは、身の回りの小さな「ぐるりのこと」でも良い、もう少し、人を思いやって生きていこうと思った。


採点/85点


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罪とか罰とか

ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督の映画「罪とか罰とか」を見る為、映画館に足を運んだ。


冒頭からケラ監督の世界に引き込まれ、一人でゲラゲラ笑いながら、楽しく映画を見させてもらった。


主演の成海璃子をはじめとして、すべての出演者が良かったが、特に犬山イヌコは出色。と言うか、ケラ作品での犬山イヌコはいつも、とても良い。

犬山イヌコなくして、ケラ作品は成立しない。それ程、良い味を出しているのだ。


作品の難点を言えば、途中ちょっと間延びしてしまった部分があり、テンポの良さをずっと維持出来なかった事だろうか。こういう作品は、テンポ良く、最後まで一気に見せてしまった方が良いと思う。上映時間も90分あれば充分だ。

まあ、それを差し引いても、見る価値のある映画だと思う。好き嫌いが分かれるとは思うが。


映画の内容とは関係ないが、チケットを買うときに、快楽亭ブラック師匠がいた。ブラック師匠は、日本一の日本映画通として知られ、雑誌に映画評を載せたりしている方だ。そんな方が、自分のお金を払ってチケットを買う姿にとても好感が持てた。

僕はブラック師匠の映画評を参考にしていた時期があったので、一瞬、目が合っただけだが、とても嬉しかった。


採点/80点


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14歳〜千原ジュニア たった1人の闘い〜

テレビドラマの「14歳~千原ジュニア たった1人の闘い~」を見た。

これをドラマというカテゴリーに入れて良いものかどうか迷ったが、僕は個人的に千原ジュニアが好きなので、まあ、それは良しとしよう。


訳もなく、壁を殴るシーンが冒頭にあるが、このシーンで、僕は一気にこのドラマに引き込まれた。と言うのも、僕も学生時代(僕の場合は高校1年生の頃)、訳もなく苛立っていて、壁を殴り、拳が血だらけだった時期があるからだ。あの頃は何もかもすべてが不純に思え、完全な人間不信になっていた。

ドラマで描かれる、「矢吹丈のような死」への憧れも、僕が当時思っていた事とまったく同じだった。


千原ジュニアの原作は未読だが、このドラマを見て、原作にかなり興味を持った。

僕の学生時代が、たまたま千原ジュニアのそれと似ている訳ではない。。自己嫌悪、虚無感、苛立ち、孤立感・・・・・・。大小はあるが、大抵の若者はそういう不安定な精神状態の中で生活している思う。


採点が低いのは、ドラマとしての出来は、はっきり言って駄目。このドラマは、殆どが主人公のナレーションで構成されているが、それだったらドラマにする必要はないと思う。原作を読むだけで充分でしょ。


「僕は二十歳だった。それが人生の中で最も美しい季節だとは誰にも言わせない」

これは、ポール・ニザンの小説「アデンアラビア」の中に出てくる言葉だ。
僕は高校の卒業文集に載せる一言にこう書いた。「人生の中で17歳が最も美しい年齢だとは誰にも言わせない」

誰がどう見ても、ポール・ニザンのパクリだ。パクリと言ったら問題があるから、オマージュだ。

この言葉を書いた紙を担任の教師に渡した時、担任は「また、お前は訳の分からない事を・・・・・・」と呟いた。

この言葉を理解出来ない大人。そういう、ちょっとはみ出した人間を受け入れられない社会。そんな大人、社会、肉親、友達の中で、日々、若者達は悶え苦しんでいるのですよ。僕はこのドラマを見ながら、そんな事を思っていた。

要するに、人が言う青春時代とは、そんなに甘く、美しいものではない。

辛くて、苦しくて、醜くて・・・・・・本人にとっては、実はそういう絶望的なもの(状況)なのだ。


採点/60点


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アメリカの夜/阿部和重

僕は阿部和重の小説をすべて読んでいる。阿部和重の小説と言えば、「インディヴィジュアル・プロジェクション」を一番に挙げる人が多いだろう。勿論、「インディヴィジュアル・プロジェクション」も、とても面白い小説だが、僕はデビュー作の「アメリカの夜」が一番好きだ。もしかすると、「阿部和重の小説の中で」と言うよりも、すべての小説の中で一番好きな小説かもしれない。


マンガは読み易く、何度も読み返す事が出来るが、小説はなかなかそういう訳にはいかない。しかし、僕は少なくとも3回は「アメリカの夜」を読み返している。


この小説に関しては、説明するのが難しい。どの部分に触れても、ネタバレになってしまいそうだからだ。だから、あまり余計な事は書かない。とにかく、読んでみてほしいです。ぶったまげます。


因みに、タイトルの「アメリカの夜」とは、映画撮影の際に、カメラにフィルターをかけて、昼間に夜のシーンを撮ってしまうという撮影技法の事を言います。


採点/95点


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ブッダ/手塚治虫

今、手塚治虫のマンガ「ブッダ」の文庫本を1巻から読み返している。

これで読むのは3度目だ。何度読み返しても、面白い。


「ブッダ」(手塚マンガ全般に言える事だが)の特徴は、主要だと思っていた登場人物が、早々に呆気なく殺されてしまうところだろう。

それは戦争の経験が、手塚治虫の作品に少なからず影響していると思う。「死」は理不尽に突然訪れるものだ。

それは、北野武監督の映画にも見られる特徴だ。


「ブッダ」と聞いて、身構えてしまう人もいると思うが、マンガとしてとても面白く、良く出来た作品だと思います。

「良く出来た作品」なんて書くと、手塚フリークの人達は怒るんだろうな。


採点/95点


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僕らのミライへ逆回転

DVDにて「僕らのミライへ逆回転」を鑑賞。

ジャック・ブラック大好き。「スクール・オブ・ロック」も良かったし、「ナチョ・リブレ」も面白かった。この映画でも、ジャック・ブラックはやっぱり、ジャック・ブラックでした。良い意味でも、悪い意味でも・・・・・・。


映画に対する愛が全編に溢れていて、その部分はとても好感が持てました。

ストーリー展開や映像センスは、いかにも「ミュージッククリップ、テレビコマーシャルから出て来た監督が撮りました」的な匂いがする作品です。こちらも良い意味でも、悪い意味でも・・・・・・。


まあ、何て言えば良いのでしょうか。そこそこ楽しい映画です。ただ、それだけです。大爆笑する事もなければ、途中で退屈してしまう程の駄作でもありません。

それにしても、邦題はもうちょっと何とかならなかったのかなぁ・・・・・・。


採点/65点


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パコと魔法の絵本

DVDにて「パコと魔法の絵本」を鑑賞。

中島哲也監督の作品は、「下妻物語」も「嫌われ松子の一生」も素晴らしく、この作品も相当な期待を込めて鑑賞した。

中島作品の特徴と言えば、独特の色彩感覚、ミュージカルの要素を取り入れた大胆な作風、意表を突いたキャスティング、CGを駆使した凝りに凝った画作り等・・・・・・数え上げたらきりが無い。

女優に厳しく演出する監督としても有名だが、出来上がった作品を見たら、罵倒された女優も口を噤むしかないだろう。


中島監督の作品への愛情が強過ぎて、たまに見ているこちらが疲れてしまう時がある。観客の目に入らないような小道具まで凝って、画面の隅にまで気を使った画作りを見ていると、「このシーンにどれだけのお金と時間を注ぎ込んでいるのだろう」等と想像してしまい、ぐったりとしてしまうのだ。


作品に出ている女優は極めて美しく、男優は極めて滑稽で、何とも痛快な作品だ。

土屋アンナは、今までの作品の中で一番良かった。

あと、「誰だ、この綺麗な女?」などと思いながら見ていたら、木村カエラだった。

妻夫木聡も、途中まで誰か分からなかった。

つまり、演出、キャスティングも素晴らしかったという事だろう。


採点/90点


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チーム・バチスタの栄光

テレビで放映していた映画「チーム・バチスタの栄光」を鑑賞。

もう少し、じっくり丁寧に登場人物を描かないと、犯人が判明するラストにカタルシスを感じられない。

ただ、犯人探しのミステリー作品としてはいまいちでも、この作品自体は楽しく見られた。それは、この作品のカラッとした明るさと、役者の演技力に尽きる。あと一歩で秀作となり得た、誠に残念な作品だった。


尺の長さは、118分。160分位で作れば良かったかもしれない。まあ無理だろうけど。

ひょっとすると、僕はテレビ放映バージョン(本編が30分位、カットされてしまう)を見たから、中身の薄い作品に感じてしまったのかもしれない。


竹内結子は綺麗になりましたねぇー。たまに離婚した後、今まで以上に綺麗になる女性がいるけど、元旦那が駄目なパターンが多いんだよなぁ。


採点/60点


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グミ・チョコレート・パイン

今日、ケラリーノ・サンドロビィッチ監督と、緒川たまきさんが入籍したというニュースを聞いたので、お祝いの意味も込めて、ケラ監督の作品を取り上げたいと思います。

映画「グミ・チョコレート・パイン」です。

大槻ケンジの原作をケラが監督するという、夢のような作品です。


僕はテレビドラマの「時効警察」で、ケラ監督が演出したいくつかの回を見て、監督のファンになりました。

ケラ監督の作品には、どこかパンクな空気が流れていて、誰にでも経験があるような「日常」の中に、シュールな笑いを散りばめる作風は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、一度ハマッてしまうとなかなか抜け出せません。何とも言えない、独特な世界観は癖になります。

「お前、俺の盗んだブルマ、盗んだだろ!」と主人公に本気で怒る柄本佑に笑いが止まりませんでした。これが笑えない人は、ケラ監督の作品はちょっと無理かもしれません。


本作には、濃いキャラが沢山出て来ますが、なかでも、犬山イヌコ、柄本佑は強烈な印象を残します。

ヒロインの黒川芽以も良かったです。自分の学生時代にも、あんな感じの可愛い子が確かに存在しました。


両親とか、恋人と一緒に見るのはやめておいた方が良いと思います。友達とゲラゲラ笑いながら見るのがこの映画の正しい見方です。


採点/85点


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