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長野県にある古い望遠鏡が、世界を驚かせる大発見を成し遂げました。
引退も考えられていた機材が、最新のデジタル技術で見事に復活。
太陽系の最果てにある天体に、ごくわずかな大気があることを突き止めたのです。
この快挙は、宇宙の謎を解き明かす新しい扉を開くことになりました。
今回は、そのわくわくするような物語をご紹介します。
引退の危機を救った「最新デジカメ」の魔法!
東京大学木曽観測所にある大きな望遠鏡は、完成から50年がたっています。
かつては世界有数の大きさを誇りましたが、近年は教育用に使われることが増えていました。
一時は引退も検討されましたが、2019年に強力なパートナーを得て生まれ変わります。
その強力なパートナーの名は、1億9千万画素という驚きの性能を持つカメラ「トモエゴゼン」です。
木曽シュミット望遠鏡(写真=東京大学)
デジカメの技術を応用したこの超高性能デジカメ・トモエゴゼンは、暗い星の光を0.5秒という短時間で捉えることができるそうです。
この「速さ」こそが、これまで見逃していた宇宙の姿を映し出す鍵となったのです。
古い望遠鏡に新しい命が吹き込まれ、最先端の研究分野を切り開くことになったのです。
技術の力で、歴史ある観測所が再び世界の表舞台へと返り咲きました。
木曽シュミット望遠鏡
口径1.05 mシュミット望遠鏡を保有する東京大学木曽観測所は1974年に長野県木曽郡に設立されました。本施設は東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターにより運用されています。木曽シュミット望遠鏡は直径9度の広視野とF値3.1の明るい光学系を持ちます。望遠鏡と直径16 mのドーム建物の駆動系はトモエゴゼンによる迅速な広域サーベイと追観測に最適化されています。気象監視システムを持つ自律的制御管理ソフトウエアにより自動・遠隔観測が実現されています。
© 2021,東京大学木曽観測所
太陽系の最果てに「第2の冥王星」を発見!
今回の主役は、太陽系のずっと遠くを回る「2002XV93」という小さな天体です。
直径は約500キロほどで、まさに太陽系の果てにひっそりと浮かんでいます。
木曽シュミット望遠鏡の主焦点に搭載された
トモエゴゼンカメラ(写真=東京大学)
これまでは、このような遠くの天体に大気があるのは冥王星(めいおうせい)だけだと考えられてきました。
ところが、2024年1月の観測で、遠くにある星がこの天体の影に隠れる瞬間を捉えます。
星が隠れるとき、大気がなければ光は一瞬で消えるはずです。
しかし、実際には星の光がゆっくりと、静かに暗くなっていったのです。
これは、天体のまわりにわずかな大気の層がある決定的な証拠です。
気圧は地球の1千万分の1ほどと非常に薄いものですが、歴史的な大発見となりました。
トモエゴゼンカメラ
木曽シュミット望遠鏡の主焦点に搭載されたトモエゴゼンカメラは世界初の天文用広視野CMOS撮像装置です。84枚のCMOSイメージセンサーは20平方度の空の動画を0.2ミリ秒の絶対時刻精度で取得できます。感度を優先するために単色で観測を行います。カメラ筐体は互いに対称的な構造を持つ4台のユニット(Q1、Q2、Q3、Q4)から構成されます。2フレーム/秒の観測時には30テラバイト/夜のレートで動画データが生成されます。
© 2021,東京大学木曽観測所
日本の技術が切り開く「わくわくする宇宙」の未来!
今回の成果は、世界的に有名な学術誌「ネイチャーアストロノミー」にも掲載されました。
古い設備であっても、アイデアと最新技術を組み合わせれば世界一になれることを証明したのです。
(画像=東京大学)
この発見によって、「時間領域天文学」という新しい分野への期待がさらに高まっています。
一瞬で移り変わる星の動きを追いかけることで、まだまだ多くの発見が眠っているはず。
かつて木曽観測所が目指した「広い空を一度に撮る」という考えは、いまや世界の主流となっています。
日本の望遠鏡が築いた伝統は、しっかりと次の世代へと受け継がれています。
これからも、私たちの知らない宇宙の姿が次々と明らかになっていくことでしょう。
宇宙の最果てに漂う大気の謎が、いつか完全に解ける日が楽しみです。
最先端を走り続ける日本の天文学から、これからも目が離せません。
トモエゴゼンは短時間に変わりゆく宇宙の姿を探求することを目的とした世界初の天文用広視野動画カメラと人工知能ソフトウエア群からなる観測統合システムです。計1億9,000万画素の高感度CMOSイメージセンサを搭載したトモエゴゼンカメラは20平方度(満月84個分)の広い空を一度に動画で監視でき、1晩の観測で30テラバイト(映画約1万本分)におよぶ宇宙動画ビッグデータを取得します。トモエゴゼンは観測データを即時に解析し過去と比較することで、天体の明るさや位置の変化を高精度にとらえます。
© 2021,東京大学木曽観測所





