俺は書きかけの歌詞とにらめっこ

戒はそんな俺をずっと見ていて

カリカリ…

じー…っ

すげぇ気になる

カリ、カリ

じー…っ

カリ、


「なに?」


『なんでもない』


俺はまた視線を机に戻しペンをとる


室内は筆音のみが支配していた


カリカリ

じー…っ


俺がペンを動かしだすと
また戒の視線が痛い


(集中できねぇ…)
「何なのお前」


『見てるだけだもん』


拗ねた声
俺何かしたか?


「何拗ねてんだよ」


『拗ねてないもん』

何だこの押し問答は


「はぁ」


俺は握っていたペンを投げ出し戒と向き合う

俺のあからさまなため息のせいか
戒の目には涙が溢れていて


「俺、何かしたか?」


声をかけても首を横にふるだけ
そんな戒を俺は抱きしめる


『嫌いにならないで』


弱々しい声が耳に届いた


「嫌いになんてならねぇよ」


『俺、ワガママで泣き虫で…』


「俺はそんなお前も好きだから」


お前の泣き虫もワガママも
ぜんぶ俺にかまって欲しくて
俺に気にかけて欲しくてやってることぐらい分かってる


だから
嫌いになんてならない
いや、なれねぇよ


だって
俺の胸で涙を流しているお前を
こんなにも愛しいと感じてるんだからな
今日も校門前には厳しい鬼の集団たち


俺は絶対止められることが分かっていて直進する


目指すはだるそうにくわえ煙草をする人のもと


『おはようございまーす』


「はよー…って通れるわけないわな、猪狩クン」


『遅刻してないはずなのにおかしいなぁ』


「毎日止められて理由がわからんとは頭を心配するなー」


『煙草吸いながらお説教もねぇ』


「うるせぇ」


頭上に落とされたげんこつは全然痛くなんかなくて


『いったー』


わざとこんな反応をしてみたりする
痛がってるフリをしてても
先生にかまってもらえて嬉しい俺は


「何ニヤけてんだ?

お前、殴られて喜ぶとか相当だな」


『うるさいよっ』


見られたことはこの上なく恥ずかしかったけど


「うりうり、泣けこらww」


先生が楽しそうに俺の頬をつねる姿は


『いひゃひ、ひゃら!!』


「言葉になってねーwww」


とってもかっこいい


「はい、お仕置き終わり

早く教室行け」


全然生徒に指導出来ない先生


そこがまた
たまらないんだけどね!!
愛する貴方と2人なら

例えどんな地に逝こうとも

決して後悔はしない



「ねぇ、本当にいいの?」


『うん、麗とならどこへでも一緒に逝くよ』


季節外れの線香花火

いつか皆で奏でた曲のよう


「貧しかったね」


『皆の心がね』


受け入れられないことなんて解ってた

ただ理解して欲しかった


こういう愛もあるのだと


やがて火種は堕ちる


「さぁ戒、最初で最後のハネムーンへと向かいますか」


そう言って差し出された手


『うん、俺
暖かいとこがいいなぁ』


「逝けるよ2人でなら」


冷たく冷え切った手を堅く握り合い


極寒の海へー…







「馬鹿だな2人とも」


「あぁ」


「こんなことのために
あの歌を作ったんやない…」


「あぁ、俺もこんな結果を望んでなかったよ」


大海の上でたゆたう2本の百合は
儚く消えた恋人たちへの贈り物


社会という
荒波に飲まれた

悲しき恋人たちへの手向けもの






『麗大好きだよ』


「俺も戒くんが大好き」
ー…カラン


「いらっしゃい」


何時もの日
何時もと同じ時間に
何時もの場所に座る


『え、と…』


「何時もので?」


『お願いしま…す』

僕の頼む珈琲は
何時も砂糖とミルクがたっぷり入ったもの

正直、珈琲なんて呼べるものじゃないけど

(こうでもしないと飲めないんだもん…)


此処は珈琲専門店で珈琲以外のものを置いていないから
他のものを頼めない

だけど
店員さん
(名前は咲人さんって言うらしい)に一目惚れした僕は
咲人さんに会うために
苦手な珈琲を飲みにいく


「お待ちどうさま」


『ありがとう』


「ごゆっくり」


咲人さんは僕に珈琲を渡すと
すぐに戻ってしまうけど


(ここからだとよく見える…)


何回も来て見つけた場所

大好きな貴方の見える場所



大好きな人を見ながら飲む珈琲は

とっても甘くて好き


(今日もかっこいいなぁ)


香ばしい珈琲の香りと
ゆっくりと流れる時間に
トクントクンと弾む僕の心臓


あったかい
まだまだ片思いな僕だけど


いつかこの温もりを咲人さんと共有できたらいいのにな
「戒は俺のもの」


『うんっ、俺はきぃちゃんだけのもの』


暗い部屋
2人抱き合って
囁きあう


『きぃちゃんは俺のものだよね?』


「あぁ、俺はお前のものだ」


『嬉しいっ』


暗い部屋で
重なり合う2つの影


月明かりに浮かぶのは白い肢体


舞踊れ
その身が果てるまで

謳え
その声が潰れるまで


罪深き2人
共に堕ちるとこまで墜ちてゆこう


愛故に狂い
愛と共に朽ちる


『きぃ、ぁっ…』


最高じゃないか


「っー…くっっ」


体中に咲いた紅い華も
背徳の飛沫で彩られた秘部も

全部ぜんぶ


「綺麗だよ、戒」