離れて行かないで
置いて逝かないで

1人は嫌なの
独りは怖いの


咲人…
どこにいるの?







「ひつ、ひつ起きて」

『さき、と…』

「怖い夢でも見てたの?」

『ふぇ…』

「泣かないで言ってごらん
怖い夢は人に話すと怖くなくなるから」

『咲人が、どこにも居なかったの

いっぱいいっぱい探したのに
独りは嫌だっ』

「大丈夫
俺はひつから離れていかないよ

だから、もう泣かないで」








どこにもいかないって約束したのにね

咲人の嘘つき
俺、独りぼっちだよ

咲人どこにいったの?
いつになったら帰ってくるの?

あんなに独りは嫌って言ったのに

ここは寒いよ








「ひつぎ」

『咲人?』

「どうして…」

『咲人咲人咲人咲人っ』

会いたかったの
抱きしめて欲しかったの
そばに居たかったの

夢でしか会えないなんて嫌なの









「ひつ…」


まただ
またこの夢だ

今じゃ起きてても柩がそばに居るような気がする

夢か現か
現か夢か


「置いて逝ったのは俺じゃなくて


柩、君なのにね」


柩が俺に捕らわれているのか
俺が柩に捕らわれているのか


「どっちだろうね」



あぁ

「『貴方に逢いたい』」
ずっと一緒にいるから、


なんて空っぽな言葉

守れるわけもないのに


先のことなんて
誰にも解らないのに

ずっと

なんて言わないで


弱い俺は
叶わないと解っていても
その言葉に縋ってしまう


きっと俺は重荷になる

そんなのは嫌だ


「そんなに深く考えることか」


『考えちゃうよ、
永遠なんてくだらない言葉
苦しくなるだけだもん』


「夢がねぇなあ」


『だって…』


夢見た分だけ
失った時の辛さが大きくて

約束した分だけ
守られなかった時の喪失感が大きいんだもん


「お前は本当に臆病だな」


『叶わない夢も
守られない約束も
苦しいだけじゃん』

「でも
叶った時、守られた時は嬉しいだろ」


『屁理屈だよ』


「どっちが」


不器用な俺は
ひねくれ者で臆病者

いつになったら
素直になれるかな?
「いい歌だ…」


『何いきなり…』


「今ねHYのNAOを聞いてたんだよ」


『うん』


「まさに俺の心そのままだよ!!」


『へー』


「Naoさんにはちゃんと伝わってるのかなっ」


『NAOはいい歌だと思うけど…

沙我君が言うと、ねぇ』


「どうして!!」


『キャラじゃないよね』


「うぐっ」


『気取ってるって言うのかな?』


「ぐはっ」


『きもい』


「ぷぎゃっ」








「Naoさん、なかなか酷いんだなっ」


「さわらぬ神に祟りなしだよヒロト」


「沙我も楽しそうだしいいんじゃないか」


「2人共変わってるんだな!!」








なんだこれ。
高校生にもなれば
確かに興味もわくだろうけど…


どうして
俺の家に持って来るかな!!


『な、にコレ』

「みりゃあ分かんだろ」

「男のバイブル?」

「お前も持ってんだろ」

「出してみぃや」


『俺をお前らと一緒にすんな!!!!

そんなもの持ってねぇよっ』

「まじで?」

「お前いつもどうしてんだよ」

『何もしてないよ』

「それは男としてどうなん?」

「もしかして…
チェリー?」

『ほんとうるさい!!
ほっといて!!』

「いや、それは出来ねぇ」

「俺らが楽しさ教えてやるよ」

『は?』

「まぁそのために来たんやし?」

『どういう…』

「まぁ、違う方向だけど」

『な…なんなの』

「「「「ヤらせて!!」」」」

はぁあぁああ?!!

『まじ死ね。』

「だって女よりも戒君のが可愛いし」

「俺ら戒君大好きやし」

「減るもんでもないべ」

「気持ち良くしてやるよ」

『ー…っ』


俺が慌てて逃げようとしても

腕を葵君に取られ
動きを封じられてしまった

「逃がさへんよ?」

『いやあぁあぁぁっ』
「あれ…」


右の頬を伝う一滴


「ひつが泣いてる…」


悲しくないのに流れる涙

きっとこれは
ひつの気持ち


「寂しがってるんだ」


行かなくちゃ
ひつのところに








「ひつ、ひつ」


扉の前で何度も名前を呼ぶ


『こんな時間に…


黄泉?』


開いた扉の向こうには愛しい柩の姿


『こんな時間に…

何泣いてるの?』


「ひつが寂しいんじゃないかって…」


『そっか…
ありがとう、寒かったでしょ?
中入って』


ほら、
ひつと俺は以心伝心
双子以上に心が解る

ひつが寂しい時は俺も寂しい

ひつが悲しい時は俺も悲しい


暖かい部屋
ひつの匂い


ほら
もう寂しくなんてないよ


『黄泉、何かあったの?

話、聞いたげるから』


ボロボロと流れる涙


温もりを求めていたのは


ひつじゃなく俺だった