株式投資というものを始めたのは2007年の10月であるから、もう10年以上前のことになる。元々預貯金の利息の恩恵を受けたことがない世代であるため、預貯金というものは元本割れをしないものという認識しかなかった。元本割れのリスクがありつつも、株式投資の方が資産運用をするうえでは魅力を感じた。
経理部門の経験があることから、ネームバリューのある企業の財務諸表を見て、「きれいな財務諸表」を見つけて長期保有をしてきた。2年半の海外勤務もあり(海外居住者扱いになると証券会社によっては取引ができなくなるため)、半年ほど前まで、つまり約10年間一切売買を行っていなかった。
株価は一時下落したこともあったが、半期ごとに配当金も受け取ることがもきたし、銘柄によっては取得額の3倍以上に膨らんだものもあったから、結果的に投資は「成功」した、より正確には「失敗しなかった」と言える。だが、この10年間、証券会社の口座にアクセスすることはほとんどなかったし、株式投資に対する確たる戦略を持っていたわけでもなかった。
昨春友人から資産管理アプリのMoney Forwardを勧められたことを契機として、自分の金融資産の効率的な運用を強く意識することになった。金融資産の大半を占めていた預貯金の非効率性に気付き、その現預金2に対して株式投資を3まで引き上げることに決めた。
ところがいざ株式投資を再開し、日常的に株価を見るようになるとまずは2つの不安にとりつかれることとなった。
①株を購入した後に株価が下落する不安
②株を売却した後に株価が上昇する不安
銘柄選び自体は10年前と同じように「きれいな財務諸表」を見つけることや、将来性のあると思った分野を選んでいたものの、財務状況や将来性とは関係なく株価は騰落した。そのため「売却するのには早すぎるタイミング」で売却したり、「購入するのには早すぎるタイミング」で購入するということが起きた。
前者の場合は結果的に「利益」を得ているわけだから「悔しさ」でしかないが、後者の場合は下落が長期化してしまえば「損失」となるわけで、「損切」をしなければ資産の「効率性」を失うことになる。結局、後者の不安の方が大きいがゆえに短期で値上がりをした銘柄を早期に売却しては別の銘柄を探すということが頻発するようになった。
そこで漫画『インベスターZ』の冒頭で出てくるような、「利食い10%、損切5%」というマイルールを課すことにした。このマイルールに基づけば、かなり機械的に売買を行うことができると考えたのである。ところが、このマイルールを課しても、前述の2つの不安は払拭できず、さらに4つの不安を抱くことになった。
①10%の価格上昇後にさらに値上がりする不安
②10%の価格上昇に至る前に値下がりする不安
③5%の価格下落後に値上がりする不安
④5%の価格下落に至る前に損切りすべきではないかという不安
これらの不安と戦いながらも売買を繰り返した結果、3カ月程度で税引き後で15%程度の利益を確保することができた。しかしながらそれは「異次元の金融緩和」という外部環境によるものや、「運」というものでしかなく、確たる「投資戦略」や「マイルール」に基づいたものではなかった。現在のように市場全体が上昇トレンドにあるうちはおそらく何となく利益を享受することができるが(実際自分が稼ぐことができた利益は日経平均の上昇率とほぼ同じである)、いずれ下降トレンドになれば利益を確保することは難しくなる。「投資戦略」や「マイルール」というものの確立についてよくよく考えることになった。
つづく