牧童の溜息 -2ページ目

年代別性欲論

「散りてなお天を突き刺す冬木立」牧童

晴天を突き刺すような冬木立が僕は好きだ。老いてなお、やせ衰えてもなお、凛々しく立っている姿を見上げながら、老いてもかくありたいと思う。

以前、男は偶数、女は奇数の年代になると性欲が強まるらしいという説を紹介したが、面白いと僕は思う。
このような説に対し、個人差があるから無意味だとの反対意見を言う人がいる。血液型判断などにも同様に非難する人がいるが、それは愚かだ。血液型判断を楽しんでいる人たちも、B型すべての人間が同じだなどとは思ってはいない。
まして性欲は年齢差というよりも個人差が激しい。50代でも20代並みの性欲がある人もいれば、全く性欲がない人もいる。
個人差があるということは百も承知の上で、グルーピングし、特徴や他との違いを考察していくことによって、個を考える上でのヒントになるのだ。

性欲に10年周期があると聞いた時、ヘーゲルの弁証法が思い浮かんできた。思い浮かんだと言っても、ヘーゲルなど読んだこともないのだが、ヘーゲル弁証法の基本概念のひとつである《止揚》(アウフヘーベン)を思い出した。
止揚は、あるものを否定しつつも、より高次の統一の段階で生かして保存することを指す。《正・反・合》の流れになる。まず正論を述べ、次に反論を述べる。正論・反論を合わせてて結論を出す。文章の構成でも使われるやり方だ。

性欲旺盛な10年間がある。次の10年は、前の10年と比較することで、もう自分は若くないと否定的になる。次の10年は逆にまだまだ若い、まだやれると肯定的になる。
しかし20年前の性欲よりは確実に衰えているのだが、正・反・合の止揚によって、人間味、経験などが加わり、20年前よりも高品質の性欲になってくるのだ。

◎10代
◆男・弱~身体が男になっても、あれ射精しちゃったくらいで、まだ自分の性欲を認識、把握できない年代。
◇女・強~女のほうが早熟。初潮、春の目覚めとともに性欲を自覚する。

◎20代
◆男・強~セックスの楽しさを覚え、射精しても、出しても出しても、またしたくなる。
◇女・弱~快楽のセックスから、出産、育児重視に心身が変わっていく。若かった自分と比較することで、衰えに対する自己認識が高まり、性欲が落込んでいく。25歳はお肌の曲がり角、もう若くはない、昔はよく遊んだなどと懐古する。

◎30代
◆男・弱~疲れている奴が多い。年齢的にも衰えてくるが、それに仕事や家族の重責が加わるし、酒などの付き合いは逆に多くなる。妻の魅力もなくなる。性欲が衰えていく。20代の自分と比較してしまうから、さらに落込んでいく。
◇女・強~育児にもなれ、妊娠目的から快楽のセックスへと変わり、欲望が強くなる。出産のご褒美として中で逝けるようになる。

◎40代
◆男・強~仕事や生活にゆとりが生まれ、まだまだいけそうだと元気になっていく。馬鹿な遊び方は少なくなるが、心身安定し、女の扱いもうまくなり、性欲は高まる。
◇女・弱~更年期障害などによる心身不調、老化により性欲が衰えてくる。

◎50代
◆男・弱~仕事内容が変化してくるし、体力的な老化、ストレスなどでセックスが面倒になってくる。燃える相手にも恵まれにくくなる。
◇女・強~とにかくすごい!なぜだか元気だ。更年期障害を乗り越え、生理が終わっても性欲は高まる。僕は最後のあがきだと思っている。この時期にセックスライフを謳歌し、きれいに燃焼できれば若さと色気を保てる。

◎60代
◆男・強~定年後の第二の人生を性的に楽しむ。不能にもなれて落ち込まなくなる。
◇女・弱~急速に老化。見た目も老婆に。

女の70代、男の80代は性欲が強くなるらしい。ここらは僕はまだ未知の世界だが、これは老化で理性や羞恥心が衰えることにより、本能的性欲が暴れ出すのではないかと思う。

出るのは汗ばかり

♪潮を吹かそと
 気張ってみたが
 出たのは俺の
 汗の潮

潮を吹かすための基本動作は女の中に指を挿入して、ひたすら激しく摩擦するという極めて単純なものだ。指が痺れても潮を吹くまで中断せずに激しく動かし続けることとマニュアルには記載されている。
つまりは男をいかすための動作と同じで、その三要素は摩擦力、摩擦回数、摩擦速度だ。
特に摩擦速度が大切なのだが、素人女のお口は摩擦速度が遅い場合が多く、もっと早く動かさんかい!と苛立つことがある。ただし、ただ強かったり、早ければいいわけではなく、緩急自在に、とにかくは継続させることだ。
お口はテクニックよりも体力勝負であり、《単調な動きを丹念に》、これが極意なのだ。
また口の動きには女の性格が如実に現れてくる。いい加減にされると元気になれないし、気持ちを込めてしてくれると、愛しくなる。

潮を吹かす場合も、心を込めて、激しく、早く、リズミカルに男は指を動かし続けなければならないのだ。疲れた~などと甘えてはいけない。ひたすら指を動かすのだ。
ただし試みても結局は失敗し、自分が汗をかくだけで終わることが多く、なかなか難しいものではある。

僕もこのテクニックを基本にして、腕を、いや指を磨いている。
このテクニックを知った時、半信半疑だった。
若い頃から、女のあそこは敏感で、か弱い部分だから、優しく扱えと叩込まれてきたし、長年、そう思い込み実践してきた。
ある女に初めて試してみた時、潮は吹かなかったが、「あれ~、なに~、それ~、これ~、気持ちいい~、もっと~」と悦んでいた。
今までの僕の思いは一体何だったのかと、強いカルチャーショックを受けた。
爾来、いろいろな女にそのテクニックを使うようになり、なかなか潮を吹かすまでには至らないのだが、それでも今まで以上に女を悦ばすことができるようになってきた。

乳癌告知

「リストラをされて首巻くマフラかな」牧童

金銭的に貧しいと言われるより、心が貧しい人だなと言われてしまうほうが辛い。
金も心も貧しいのは事実だけどね。

《若い時の貧乏はよい。働く原動力になる。だが老いて貧しいのは良くない。なぜなら、それがその人が生きて来た結果だからだ》という教えがユダヤにあるらしい。

60年の人生の結果がこれなんだよね。

《心貧しきものは幸いなり。天国は汝のものなり》と言われても、天国より温泉のほうがいい。
と思ったら、急に髪を短く切りたくなった。
散髪したら首筋が寒くて、800円でマフラを買った。安物のマフラでも暖かい。

と思ったら、《乳癌になった!》というタイトルのメールが飛び込んできた。
あわてて読むと、彼女が飼っていたモルモットが乳癌だと診断され、手術するよう獣医から言われたそうだ。しかもオスなのに…
死んだ餌ばかり食っている僕らも、いつかは乳癌になるのだろう。

「手術するの?」
「迷っているの」
「本人に告知したの?」
「相変わらず、あんたって馬鹿だね~今は薬飲ませているんだけど、嫌がって飲まないのよ」

その後、モルモットは口に入れられた薬を見事に吐き出す術をマスターし、薬を飲まなくなったら食欲が出て来てよく食べるそうだ。

モルモットよ、君はえらい!

心貧しきものよ。汝は幸いなり。

癌と告知されても死を恐れず、薬など飲まずに死ねるだろう。天国もしくは地獄への特急券は汝のものなり。

これから先の人生のこと、考えて考えて考え続けていると、頭が痛くなり、いつの間にか寝てしまう。朝、起きると何も覚えていない。そんな毎日。