あさひのブログ -12ページ目
平凡なサラリーマン達が事故で無人島に流れ着いた…!
コメディタッチのサバイバル物語。

「一出好戯」(2018年 監督/黄渤 主演/黄渤、舒淇)
134分

※日本語版はまだありません。

――馬進はどこにでもいるような冴えないサラリーマンだ。同僚の姗姗に片思いだが全く相手にされてない。ある日社員旅行で水陸両用バスに乗り込んで出かける。スマホをいじっているといつも買っている宝くじがなんと一等六千万元に当選していることが判明!大浮かれするがその時大津波が襲ってきてバスは飲み込まれてしまった…。

気が付くとバスは無人島に乗り上げていた。奇跡的にみんな無事だ。見渡す限り周りは海でスマホの電波も届かない。同僚の一人が世界は海に沈んでしまったのではないかと言い出す。というのもつい先日NASAがある隕石が地球に向かって飛来しているというニュースを発表していたからだ。隕石で自分達以外の人類は滅亡してしまったのではないか…!?
バスの雇われ運転手の王はくどくど嘆くことしかしない社員らをよそに、自ら島を探索し水や果物を確保してきた。そうして幾日か過ぎるが社員らは相変わらず働こうとしないので王は腹を立て、生きるために働く気がある奴だけ自分についてこいと宣言する――

[ここからネタバレ-----
王は木登りが得意で腕っぷしも強くとにかくサバイバルにかけては皆の中で間違いなく一番だった。社員らは彼をリーダーとして生きて行こうと合意する。普段偉そうな顔をして顎で使って来たサラリーマンらを今度は自分が従えるようになった王は、だんだん調子に乗ってきて彼らを叱責したり無茶なノルマを課すようになってきた。
数十日が経ち、王を頂点とするピラミッド型のバワーバランスが築かれていた。その底辺にいる馬進らの間には不満が募る。ある日同じく底辺にいる張社長が王とは別のやり方で生きていきたいと決別を宣言する。馬進ら十余名が張社長に従いグループを離脱した。張社長はひそかに見つけていた隠れ家へ案内する。それは転覆して乗り上げた巨大船舶で、中には缶詰の食糧や漁網、日用品も多く残されていた。

張社長のグループが大量の魚を持っていたと知った王のグループはすぐに巨大船舶へやってきた。張社長は欲しいものがあれば物々交換に応じようと提案する。そしてトランプのカードを紙幣替わりとして運用し、労働に見合うだけカードを与えカードで食糧を手に入れるというルールを作った。王はそんなやり方はまっぴらだと怒って去っていった。一方で馬進は結局張社長が以前のように自分達の上に立ちこき使われる生活が戻って来るのかと腹を立て興と二人で離脱した。

川沿いにあった壊れた小型船舶を住処に暮らす馬進と興。宝くじの換金期限は90日間だがもう60日が経っていた。一日一日と期限は迫って来る。いよいよ宝くじ引き換え期限残り1日。一等六千万元だけが生きる希望だった馬進は茫然として河原に佇む。と、突然激しい雨と共に大量の魚が降って来た。沖で竜巻に巻き上げられた魚が落ちて来たのだ。
宝くじはだめだったが、別の宝を手に入れた…。馬進は大量の魚を一夜干しにして王のグループへ持って行き何でも物々交換してやった。そしてメカに強い興に工夫して発電機を作らせた。
丁度その頃物資の尽きて来た王のグループは行き詰まり巨大船舶へ行き物資を強奪しようとして大乱闘となる。その時、馬進が発電機を使って船舶のライトを点けた。皆はその光に茫然となる。馬進は世界は滅びこの島の物資には限りがあるのだから我々は協力して生きて行かなければならないと説いた。その声に皆は賛同し、王と張社長も皆で協力していくことを約束する。

馬進は水車を作って水力発電機を作り、電気は皆の生活をより一層豊かにした。皆は馬進に感謝しあの姗姗も尊敬のまなざしを向ける。得意になる馬進だが、ある夜妙な音がするので王と一緒に音の鳴る山の頂上へ行くと、なんと沖で一隻の客船が花火を打ち上げていた。王は助けの船が来たと大喜びする、世界は滅んでいなかったのだ!だが馬進は諦めた宝くじのことを思い出すと腹が立って仕方がない。さらに世界が滅んでしまったと思っているからこそ一致団結している皆が事実を知ればまた諍いが生じるかもしれない。馬進は王が気が触れて船舶の幻影を見たのだと言いふらした。船が来たとおおはしゃぎする王に皆は憐れみの目を向ける。
興はスマホに残っている張社長の幼い娘の動画をネタにして張社長を強請り、彼に全ての財産を譲ると一筆書かせた。馬進はやりすぎだと非難するが興は冷たい視線を向ける。興は二日後に船舶がこの付近を通る情報を得ていた。この機にこっそり島を出るというのだ。
馬進はついに皆の前で世界は滅んでおらず助けの船が来ると明かすが、皆は彼が王と同じように気が触れてしまったのだと思った。

馬進は王に二日後船舶が通ることを告げ協力を仰ぐ。二日後の夜、馬進は浜辺で宴会を催す。皆が焚火を囲んで酔っ払っている間に王は巨大船舶の機関内部のパイプを壊し重油を流出させた。その頃、馬進は皆にまた世界は滅んでおらず今日迎えの船が来ると皆に叫ぶ。馬進が油の流出した船舶に火を点けようとしていると気づいた皆は制止するが、その騒ぎに船舶から出てきた張社長の煙草の火が燃え移り、果たして船舶は巨大な炎に包まれた。これで沖の舟は自分達に気づいてくれるはずだ!馬進は山を駆け上がる。だが突然切り立った崖に出て来た馬進は崖から転落した。その最中に沖で花火を打ち上げる船舶の姿が見えた…。

気が付くと海岸に打ち上げられていた。浜辺には燃え尽きた巨大船舶の残骸が。そしてその手前にはいくらかの食糧が集められている。物音がして振り向くと、岩の上に姗姗が座っていた。皆は助けに来た船に乗り、彼女は馬進が生きていると信じて一人島に残っていたのだ。(終)
----ここまで]

ちょっと長いけど良かった、面白かった。
現代人の集団が突然サバイバル生活を強いられて…という設定こそ漫画的だけど、ほんの少しのユーモアを交えた人間ドラマで人の欲を描き出し、最後までしっかり満足できる作品だった。
サバイバルものでも差し迫った命の危険はなく、人間関係・社会性に焦点を当てていて、原始的な社会生活から徐々に文化的な生活を手に入れていく、その中で新たに発生する問題とか、人類の文化の発展の縮図みたいになってるのが風刺的で面白い。失って手に入れるものと、手に入れることによって失うものを今一度考えさせられる。

コメディタッチなんだからそこまで頑張らんでもというくらいセットが凄くて、リアルなCGや、転覆した船舶という設定で天地が完全に逆さまの船内は目を見張るばかり。コメディなのに物語の設定以外に安っぽさがないんだよなぁ、キャスティングにしても。
監督・主演のホアン・ボー(黄渤)は「西遊記-はじまりのはじまり-」でひょうきんな孫悟空を演じていた人。コメディ俳優らしいけど、今作でのお芝居はシリアスな面でもとっても良い!コメディ俳優さんはどうしても喜怒哀楽を大げさに演じがちだけど、彼はごく自然に表現してる。今回はそういう役だからってのもあるけど彼は引き出しが多そうだ。
同じく「西遊記-はじまりのはじまり-」で共演していたスー・チー(舒淇)がヒロインを。彼女はおいしい作品にばっか出てるなぁ、さすが大女優。
脇役なのにどうしても目が行ってしまう小王役のワン・バオチャン(王宝強)。その軽い身のこなしはさすがにただの運転手なわけないだろうとツッコミ入れたくなるけど、とにかく彼はカワイイのよねぇおばちゃん大スキ!最初から最後まで活躍(?)するのでファンの方はぜひどうぞ。
他にもなんか見た顔ばっかり出て来るのでかなりお金のかかった作品なのではと思う。

サバイバルものが好きでこういうのついつい見てしまうのだけど、サバイバルに必要なのは食糧の前に精神力、心の強さだよなぁといつも思う。
日本の芸能界を干された小出恵介がこんな所で頑張ってます。

「戦神 ゴッド・オブ・ウォー」(2017年 原題「蕩寇風雲」 監督/陳嘉上 主演/趙文卓)
129分


倭寇を撃退したことで有名な明代の将軍・戚継光の功績を描いた、日本・香港合作歴史アクションもの。

――明代。東南海沿岸部は倭寇に悩まされていた。ある村が倭寇に占領され明軍が奪回を試みるも自然の要塞に阻まれ幾度となく失敗してきた。実はこの倭寇の中には松蒲藩の精鋭が紛れていた…倭国は松蒲藩の武士らを倭寇に偽装して送り込み明国への侵略の足掛かりにしようと図っていたのだ。松蒲藩藩主の若殿も修業のためこの作戦に参加していたが、まっとうな武士が倭寇(=海賊)のような荒くれ者と共闘することに葛藤を抱いていた。

時代の変遷に伴い明軍にも新しい戦い方が必要だと考えていた戚継光の元に知州の胡宗憲がやって来てすぐに倭寇から村を奪回してこいと命じる。戚継光は有無を言わさず現場へと送りこまれた。
戚継光は雨の降った日の翌朝早朝に奇襲を仕掛けた。夜襲はないと油断していた倭寇らに対抗する術はなく、松蒲軍を指揮する熊澤は早々に撤退を命じる。戚継光は追撃させるが松蒲軍の周到な罠により行く手を阻まれまんまと逃げられてしまった――

[ここからネタバレ-----
村の奪回に成功したが、長らく倭寇と戦ってきた兪将軍は彼らがただの海賊ではなく倭国の軍兵が混じっている事を戚継光に告げる。そこへ胡宗憲が近衛兵を率いてやってきて、両将軍が敵と通じて倭寇をわざと逃がしたと弾劾されていると伝える。戚継光は憤るが兪将軍は素直に従い自ら牢へ入った。すぐに彼らは罪を功で帳消しにするということで復職できたが、兪将軍は全ては朝廷の権力争いのせいで、誰かの昇進を常に誰かが妬み陥れようとしており、胡大人はむしろ我々が倭寇と戦えるよううまく立ち回ってくれているのだと戚継光に教える。
戚継光は鉄砲などを駆使する倭寇に対抗するためには新しい軍隊が必須と考え、胡大人が融通してくれた資金を元に新兵を集め今までに研究していた戦法戦術を叩き込んだ。

熊澤は二万の兵を三つに分ける作戦を立てる。寧海を攻めて敵の主戦力を引き付けておきその隙に台州府を攻め、さらに明軍の家族がいる新河を攻めるのだ。圧倒的戦力があるのにわざわざ凝った戦術を練る熊澤に若殿は不審を募らせる。
二万の倭寇が集ってきているという情報に胡宗宪は何かあると警戒するが、しかしこちらが動かねば相手も動くまい、戚継光は自ら鍛えた三千の兵を率いて寧海へ向かい、胡宗憲らは台州を固く防衛し様子を見ることに。

寧海で戚継光は新戦法によって倭寇に大勝した。だが直後に倭寇の別部隊が新河に向かっているとの報せが。兵達は家族を守るために戻ろうと言うが、倭寇の真の狙いが台州と察した戚継光は兵の半分だけを新河へ遣り自らは台州へと向かう。
台州に着いた戚継光の兵は待ち構えていた熊澤の罠にかかり包囲される。戚継光は屋根に上り本陣の場所を探し当て兵士らを誘導する。その動きに気づいた熊澤は戚継光らを大通りへと誘導させる。四方から取り囲まれた戚継光らは必死に盾を構えて身を守るがもはや時間の問題だった…。
その頃念のためと後方の警戒に回された若殿は、浪人衆の頭から藩主の息子ならあんな老人の命令におとなしく従っている必要はないと唆され、戚継光の首をとるため自らの鉄砲隊を率いて大通りへとやってきた。時間をかけて弱らせてから確実に勝利を得ようと思っていた熊澤だが血気はやる若殿を止められないとみて好きにさせる。
鉄砲隊の激しい発砲に辺りはもうもうと煙がたちこめる、そこへ浪人衆が突撃をかけた。だがその時後方から戚継光の新戦法の一つ、大砲隊が現れ浪人衆を一網打尽にした。
大勢の犠牲者を出したがかろうじて台州は守られた。胡宗宪は残った兵をすぐに新河の救援へと遣る。
新河にいる戚継光の妻は避難しろという官吏を無視して村の女らを集め武装させた。女衆とわずかな軍勢で城壁を守るがついに倭寇に突破された。だがその時戚継光の兵がかけつけた…。

新河の倭寇を撃退した戚継光は撤退する熊澤らを追う。倭寇らは急ぎ三つの船に乗り込み海へ逃げようとする。一番手前の船に追いついた戚継光の姿を見た熊澤は若殿に船に乗り逃げるよう促す。若殿は相手との兵力差にかまけて慎重を欠いた己を猛省していると熊澤に陳謝し共に逃げるよう説得するが、熊澤は敗戦の恥を抱えて故国には戻れないとその場に残るのだった。
熊澤は戚継光と一騎打ちする。激しい戦いの末戚継光が熊澤を追い詰め投降を促したが、彼は自ら切腹し息絶えた。(終)
----ここまで]
(※原語で見たので多少誤りがあるかもしれません。)

なんじゃこりゃ。
つまらなくはないしちゃんと最後まで見れるし、アクション迫力あって金掛けてるし、中国映画にありがちな「そんな日本人いねーよ!」ってツッコミ所もなく文化的な面はしっかり考証されててよくできてる。けど、物語がショボすぎません?
主人公がちっとも格好良くないし彼がなぜ凄いのか一寸もわからんかったのだけど。笹の葉生やした槍とか沼地でしか使えないスケートボードとか言うほど役に立ってないし、彼の練兵した新兵とそれまでの兵の違いも日本人にはさっぱり…。(ウィキペディアで調べればああそういう事だったのか、と理解できるけど。)

倭寇役は日本人がやってるおかげで変な日本語もほとんどなく(ただ棒読みの人は多かった)違和感ないけど、とにかく物語が違和感ありまくりでね。最初に倭寇らは明軍のヒネリのない戦術を笑いものにするシーンがあるのだけど、逆に明軍が倭寇を攻める時に彼らのたいしてヒネリもない戦術に対していとも簡単にやられてるし、正直どの口が言うよって…。[ここからネタバレ含む----戚継光は寧海で戦って台州でも死にかけで戦いまくってさらに休まず新河行って戦って、その上倭寇を海まで追撃に行きますか!?----ここまで] 無理すぎるよなぁ物語的に。
戚継光と奥さんのやりとりも何かドラマティックなオチがあるのかと思いきや何も無く、単に戚継光が恐妻家だったって事実を描きたかっただけっぽいし、途中で死んだ文人らしい白い着物の青年になんでそんなわんわん泣くのかも意味不明だったし。

主人公はいわゆるイケメンではないしなんでこの人が抜擢されたのか…多分中国武術ができるからじゃないかと思う…アクションは確かに格好良い。序盤の兪将軍役・サモ・ハン・キンポー(洪金宝)との棒術での手合わせも見ごたえあり。
でも圧倒的に、敵役の熊澤を演じる倉田保昭が光り過ぎてる!!いわゆる世界が大好きな日本のサムライ像にちょい悪オヤジテイストも入って、とぉーにかく格好良いのだ!悪役だけど悪に見えないジャパニーズBUSHIDOを体現。
なお小出恵介は松蒲藩藩主の若殿(山川という役名)で、共闘する浪人衆が女を強姦する様を見て憤るという、日本人的にはまたどの口が言うよって、ねえ?


「天盛長歌(全56話)」第五十一集27分頃から。※ネタバレ注意!
父帝の命に背いて大悦へ行った寧弈はやっと帰国する。皇帝が激怒して彼に釈明の余地を与えず殺すのではないかと心配した姚英や辛子硯らは淳于鴻将軍に協力を仰ぎ兵を率いて寧弈を護らせた。謀反にすら見えるその様相に皇帝も兵を率いて彼を待ち構える。だが寧弈は父帝に対面すると護衛の兵たちを十丈(約30m)下がらせた。

* * * * *

「父上に申し上げます、双生虫の術は解けました。」
「何だと。」
「父上とわたくしに同命相連の定めを追わせる双生虫の術は解けました。父上はもう自身の安全のためにこの寧弈の命を奪えないということはありません
(*1)。」
皇帝は剣を寧弈の胸に突きつける。
「寧弈、おのれで数えてみろ、何度わしに逆らって来たか、幾度詔に抗い従わなかったか。あァ!?お前は全てが双生虫のせいだとしてこのわしがお前を罪に問わないとでも思ってるのか!?」
「もしそのせいでなければ、この双生虫のせいでなければ、父上の今されていることは何ゆえですか。今もう虫はこの中にいます。父上はご自身の事は何も心配なさらずこの寧弈に罪を問い罰を下すことができるのです。この身体は父母から授かったもの、父上がそれを取り返したいというのなら、寧弈は当然(その命令を)お受けしましょう!」
「殿下、殿下!もう陛下を刺激なさいますな。陛下は本当に世界と社稷のことを考えておられるのですよ。これ、もうッこの双生虫めが引き起こした騒ぎ、事件もこれでもう解決いたしましたね。(これからの事)全てはしっかり協議してからがよろしいかと。」
「趙淵!」
「はい。
(*2)
「こやつために仲裁者のような真似をするのはやめよ!」
「陛下…。」
「寧弈の後ろを見てみろ、いつでも(こやつのために)忠信を尽くすこやつの天盛大軍を。この十丈以内でも敵の首級を簡単に上げることのできる上将軍を
(*3)。こんな双生虫など、こやつの方便にすぎぬ!(*4)
「父上は(将軍との距離が)十丈では安心できないとおっしゃる、では百丈では?千丈では?」
「寧弈、お前はこのわしを笑いものにしたいのか。お前は蒲城で大軍を動かし皇帝の命令に背いたのだ、今更尺も丈もあるものか!
(*5)
*1 直訳:父上はもうご自身を顧みてこの寧弈の命を保てなくできないと心配をする必要がないのです。
*2 直訳:わたくしはここにおります。
*3 淳于鴻の事。
*4 直訳:この双生虫がなくなったという事は、よりいっそう彼が事を行うための方便にすぎないのではないか。(反語)
*5 直訳:尺と丈の違いなど今更言う事ではない。(同じだ。)



「この寧弈は三軍を動かした、私一人の過失です。父上が尺丈がどうであれ安心できないというならば、寧弈は下がれるところまで下がりましょう。」
「何をもって下がると。」
寧弈は懐から二つの符を取り出す。
「どうぞ陛下、(あなたから)賜ったこの皇子の魚符と兵部の麟符を回収してください。この寧弈は自ら庶民となり自ら皇籍を外れ、二度と都へは戻ってまいりません。」
「お前これはどういう意味だ。」
「どういう意味?この寧弈は、わたしはこの人生で数え切れない苦難を経験してきました、なのに母親には会えないんですよ、陛下。」
「お前(のこの所業)はわしを恨んでいるからか、わしが憎いせいだと言うのか、皇帝であるわしの子になどなりたくなかったからだと言うのか!!」
「いいえ。わたしが恨むのはわたし自身。私はなぜ皇家に生まれてしまったのかという事を、(他の奴らと)一緒になって権力を追わねばならない事を!母上と同じく長年囚われ、しかもその子(自分)は(母も長年囚われていた事を)一切知らなかった事を恨んでいるのです!!陛下!お願いです、母様を返して下さい。二十年だ、陛下あなたはもう充分恨んだでしょう!でもこの二十年は寧弈にとっては、わたしは来る日も来る日も一時も欠かさず考えていたんだ母さんの事を!この時間はすごく長かった。おれは怖くなってきたんだ、目を閉じるのが。(次に)目を覚ました時に母さんの記憶がぼやけてしまうのではと。怖いんだよ!!おれは怖いんだ、母さんの目がぼやけて見えるんじゃないか、おれを見る目が、おれに微笑むその笑顔が!おれのために泣く顔がぼやけてくることが!!父上、父上!母さんを返してください。おれの母さんを返して…。」
皇帝は剣を手放す。
「返して下さい、母様をわたしに返してください。母様をその子供に返して下さい。お願いします。」


* * * * *
ここも名シーンの一つだけどみどころは寧弈というよりは皇帝。すれ違う親子の情を描きそのカギとなっているのがこの皇帝の表情。

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「天盛長歌(全56話)」第四十二集26分頃から。※ネタバレ注意!
魏王寧斎が鳳皓の正体に気づいてしまったと知った辛子硯は楚王の関与を否定するために自ら秋明纓の持っていた証拠の品を皇帝に差し出した。だが先手を打っていた魏王のせいで一層疑念を持たれることになった。皇帝は魏王と辛子硯に秋明纓を尋問するよう命じ、二人は監獄へやって来た。

* * * * *

「大夫どのどうぞ(お入りください)。」
「魏王殿下どうぞ。」
「わたしは外で大夫どのの審問を聞いて(対策を)考えさせてもらいますから。」
「わかりました。」
やって来た辛子硯の姿を見て秋明纓は駆け寄る。
「辛…」
「し、辛苦(苦労)は(みんなお前の)宿命だな!」
「…ご苦労様です。わたくし喉が渇いております、一杯の水をいただけませんか。」
「跪け。」
外では魏王が獄卒になにやら命じている。
「わかりました。それがしがすぐに行ってまいります。」
中では取り調べが始まる。
「容疑者秋明纓、今日はわたくしの問いに確実に答えるように。一杯の水だとか、錦衣玉食(豪華な衣服や贅沢な食べ物)の話などするな。」
「わたくしがどうして錦衣玉食などを求めましょうか。ただひたすら御大官様のお慈悲で、罪をわたくし一人に収め、秋家の者を皆お許しくださいませ。」
「お前は何の罪を犯したかわかっておるか。」
「わたくし秋明纓は、確かに大成の血浮屠の指揮使・顧衡の妻でございます。夫がこの世を去り、長兄の府中で庇護にあずかり、双子の娘を大人になるまで一心に育ててまいりました。身分(正体)を偽った罪は、全てわたくし一人がしたことで、娘たちは何も知りません。御大官様どうがご明察のほどを。」
「あァ、お前は双子の娘というが、ただの顧衡の血脈か?別に隠している事があるのではないか?」
「!……御大官様、それはどういう意味で?」
辛子硯は机の上に水で「記」と書く。
「長孫皓とは何者だ。今や全ての証拠は陛下の手中にあるのだぞ。顧夫人はまさか本当に無関係の人の跡継ぎのために自分と家族が生きていく路を絶とうと思っているのかね?この天下は全て王の領土、世界のいかなる場所でも王の臣下でない者はいない。お前が今日もし供述しないことにこだわるなら、秋氏は全て、遠い閔海にいる鳳知微も、天子がひと度怒れば、卵のように簡単に砕けるのだぞ!!」
「……鳳皓は……長孫皓です、大成の第九皇子です。」


* * * * *
ここも恐ろしいまでの名シーンです。秋明纓を演じるリウ・ミンタオの女優オーラが凄すぎる(二回目)。セリフはたったこれだけなのにっ!!つかセリフでは全然凄さが伝わらない…。

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「天盛長歌(全56話)」第四十一集3分頃から。※ネタバレ注意!
彭沛から鳳皓が所持していたという令牌を預かった辛子硯は秋府へ赴き、鳳皓の荷物の中から出て来た庚帖(*1)と合わせて秋明纓の前に突きつける。

* * * * *

「言い訳はしなくていい(*2)私はもう鳳皓の体にある(生まれつきの)あざを見た。
「そういうことでしたら、辛院首はどうして陛下に報告に行かれないのですか。(その上)証拠品をこの明纓の元へ持ってきて、あなたはわたくしに何をさせようと?」
「お前に何をさせるかだと。私はお前に結局の所何をしようとしているのかを問いに来たのだ。あの鳳知微を楚王に近づけたのもお前の狙いではないのか。お前達は何をしようとしている?お前は本当に(たったの)一家三人で天盛をひっくり返せるというのか。お前に訊く、鳳皓は自分の正体を知っているのか。
「…知りません。」
「ならいい。大成の遺児を隠していたのは、結局何のためだ?」
「辛院首はまだお分かりでないのですか、皓がなぜ何も知らないのか。知微もです、あなたは知微が自分の身上を知っているとお思いですか。もしわたくしが本当に陰謀を図っているならば、まだ皓を国の復興の念頭に置かせているならば、どうして今まで彼らに(その正体を)黙っていたのか。
「ではお前はなぜこのような(二つの)物を未だに残していたのだ。」
「これは亡き夫がこの明纓に遺した唯一のもの、私はこれを(破壊して)捨てることができなかったのです。この庚帖では、院首にとっては皓は大成の遺児かもしれませんが、私にとっては、彼はただの我が子でしかないのです。この庚帖上に、彼の本当の生年月日があっても。これは私の婦人の仁(*3)です…。」
秋明纓は辛院首の前に跪く。
辛院首、わたくしの死後に、どうかこの庚帖を破棄し、皓の体にある(生まれつきの)あざを消してやってください。そうすれば、この世に皓の本当の身分を知り得るものはいなくなります、この世に大成の遺児はもういなくなります。私はただ二人の子供がしっかり生きて行ってくれることだけが望みです。普通の家の子供と同じように、一生穏やかに暮らせれば。院首どうかお願いいたします。」
秋明纓は深々と土下座する。
「……お前の話、この世に大成の遺児はいなくなる、その言葉を(しっかり)覚えておけ。」
「!ありがとうございます、わたくしどう御礼を申し上げればよいのか。(*4)
「私はお前に恩を与えるわけではない、ただ楚王が困難に陥らないようにしたいだけだ。お前達は楚王の恩徳を常に忘れるな。くれぐれも、後々に彼(楚王)を巻き添えにしてこの私に今日の"婦人の仁"を悔やませることのないように。…今晩亥の三刻に順平門の外に鳳皓を迎えに来なさい。
*1 庚帖…八字(生年月日時間から算出した干支のようなもの)を記した書類。
*2 直訳:あなたがもしまた何か否定する言葉を探そうとしているならその必要はない。
*3 その場限りで思慮の浅い温情。
*4 直訳:院首の大恩にこの明纓は報いることができません。


* * * * *
名シーンの一つです。秋明纓を演じるリウ・ミンタオの女優オーラが凄すぎる。

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