シーフードを食べることは、健康に良いと言われています。しかし、シーフードを食べるのではなく、吸い込んだり、皮膚に付いたりする時は、その影響はどうなのでしょうか?
 
空気中に多くの魚抗原が浮遊しています。魚の臭いがする場所では、魚アレルゲンが浮遊しているのです。シーフードアレルギーがあって、すし屋で、除去メニューを頼む人がいますが、すし屋に入った時から、すでにそうした魚アレルゲンの暴露をうけています。
 
魚に対する反応は、魚そのもの以外にも、魚の分解物質、魚に付着した寄生虫、細菌、真菌など、魚以外のアレルゲンにも要注意です。
 
まぐろなど、大きな魚のすり身などで反応した場合、その魚ではなく、魚がえさとして食べたエビカニがアレルギーの原因なるなども、考えられます。
 
魚アレルギーは、成人が多いですし、治りにくい面がありますが、好きで食べているうちに、アレルギーが治まる人もいます。
 
魚アレルギーに関しては、いくつか、興味深いことがありますが、まだ、未知の部分は多いです。
魚種では、大型の回遊型の魚(まぐろ、鮭など)の方が、じっとしている魚より多いと、東京薬科大学 殻の報告がありました。

魚アレルギーは、パルブアルブミンより、コラーゲンに対するアレルギー反応が主体となる人もいます。コラーゲンは、皮、腱、骨などに多く含まれ、蛋白構造がほぐれるとゼラチンとなります。
 
米国では、成人の2%位と考えられていますが、日本は、一般人の全体的調査が少ないですが、外国より少ないのではないでしょうか?
 
サンマ、サバ、マグロなどの赤身の魚に含まれる遊離ヒスチジンが微生物の脱炭酸酵素作用をうけて、ヒスタミンを生成し、これが食中毒症状(アレルギー類似症状)を起こす機序も考えられます。
 
こうした魚によるアレルギーを、解説したレビュー論文を紹介します。
Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2010 Apr;10(2):104-13.PMID: 20179585

シーフード加工を作業する人たちには、職業性アレルギーが起こり、代表的な病気は、シーフードアレルギーによる喘息です。シーフードの缶詰作業に従事することにより、シーフード(筋肉、内臓器官、皮膚/ムチン)由来のたんぱく質などが、微粒子となって、空気中に浮遊します。
 
人が、こうした魚蛋白を吸い込んだり、皮膚に付着したりすると、1型のアレルギー反応による職業性の喘息が起きます。魚喘息は、硬骨魚では2-8%に、甲殻類では、4-36%に起きます。
 
空気中に浮遊する微粒子の量は、環境の違いにより、0.001-11.293mg/m3とかなり幅のある数値ですし、アレルゲン量としても、0.001-75.748ug/m3と、こちらもかなりの違いがあります。
 
さらに、シーフードについているアニサキスや、魚由来の生体反応物質(プロテアーゼ酵素、毒素と防腐剤)も、人の免疫系に作用します。魚の代表的アレルゲンであるトロポミオシンとパルブアルブミンは言うまでもなく、他に、セリン・プロテアーゼのような物質も重要ですし、1型アレルギー以外で、菌由来のエンドトキシンが喘息を引き起こすことなどが想定されています。
アレルギーの発症機序に向けて、世界規模で疫学研究がつづけられています。

ニューイングランドジャーナルオブメデシンNEJMには、あまた疫学研究のうち評価の高いものが掲載されます。客観性と精度が高く、対象は多数人数で公正に判断され、結果の影響力が大きい論文が選ばれます。
 
2003年のNEJMには、すでにピーナッツ蛋白の経皮感作が話題となっています。
 
昨今では、日本でも、小麦入り石鹸事件以来、皮膚から入るアレルギーは、かなり知名度も上がってまいりました。しかし、新聞広告には、皮膚からアレルギーになるリスクのある商品にあふれています。
 
広告には、若くなる、美しくなるの言葉にあふれていますが、アレルギーのリスクについて書かれていません。
 
今回は、2003年の、英国発のピーナッツ蛋白による皮膚感作の論文を紹介しましょう。
N Engl J Med. 2003;348:977

要約
背景: ピーナッツアレルギーの有病率は、ここ数十年間で増加したようです。 ピーナッツアレルギーの発症に関連が予想される、家族歴、アトピー素因、生活環境について、研究しました。
 
方法: 13,971人の未就学の子供たちを追跡するコホート研究であるエイボン追跡研究のデータを使いました。
 
生後6ヶ月子ども自身に湿疹があるか、あるいは母に湿疹の既往があるグループと、無作為抽出の湿疹のない小児グループの2群において、質問票により両親から、詳細な情報を集め、ピーナッツアレルギーの発症に関連する因子をさがしました。
 
結果: 49人の子供たちに、ピーナッツ・アレルギーの病歴がありました。ピーナッツの負荷テストを36人の子供たちに行い、23人にピーナッツアレルギーを確かめました。
 
ピーナッツアレルギーは、出生前の母の食事内容とは関連しませんでした。ピーナッツ特異IgEは、臍帯血中には検出されませんでした。 ピーナッツ・アレルギーの発症は、豆乳を飲むことと関係していました(オッズ比、2.6; 95%信頼区間、1.3~5.2)。

ピーナッツ・アレルギーの発症は、関節や皮膚屈曲部に、湿疹がある(オッズ比、2.6; 95%信頼区間、1.4~5.0)、及び、ジクジクした湿疹部分があることと関連しました(オッズ比、5.2; 95パーセント信頼区間、2.7~10.2)。

ピーナッツ・アレルギーの発症は、ピーナッツオイルを皮膚に外用剤として使用することに関連しました。(オッズ比、6.8; 95%信頼区間、1.4~32.9)。

結論: 以上の結果より、ピーナッツ蛋白質への感作は、炎症のある皮膚(湿疹部位)にピーナッツオイルの塗布をする行為と関連することがわかりました。
 
ピーナッツ蛋白質と、大豆蛋白質とは、共通のエピトープ(分子的な構造体)が存在すると想定できました。 PMID: 12637607
 
一般的に、幼弱乳児では、細菌感染症に抵抗力が低く、重篤化します。
乳児は免疫がまだ脆弱ですので、人工的に乳児に細菌に対する免疫をつけさせるが、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザ菌ワクチンです。
 
これらのワクチンは、髄膜炎、敗血症予防には有効ですが、この2種の菌によっておきる日常的な感染にはワクチン効果が期待できません。
 
しかし、ウイルス感染症やアレルギー疾患では、必ずしも、乳児が弱いわけではありません。
 
麻疹、水痘がその例ですが、生涯1度しかかからないタイプのウイルス感染症では、成人がかかると、小児に比べ重症化します。食物アレルギーにおいても、成人や年長児の方が、より強い生体反応がおきてしまうことがあります。乳児の方が、一過性のショックを呈しても、自然回復力が強く、代償的な生命維持機能は優れています。
 
乳児の食物によるアナフィラキシーは、アナフィラキシーとして繰り返すことは少ないです。
一方、年長児のアナフィラキシー反応は、より重篤となる事実には注意すべきです。
 
要注意の年長児のエビカニアレルギーですが、皮肉なことですが、エビカニアレルギーがあっても好きで食べているうちに治ってしまう人がいます。1型アレルギー反応は、減感作という現象が起きるからです。
しかし、一方で、だんだん、強くなってしまう人もいたりして、免疫の個別性には注意です。

乳児の免疫は、月齢と共に急速に変化していき、外界からの異物となりえる新しい食べものでも。胃腸が受け入れをスムーズに行うようになります。そうしたバランスが悪いのが、食物アレルギーという病気です。今回は、食物負荷を行う時に、エピネフリン注射を要する反応が起きる頻度について、調べた論文を紹介します。

J Allergy Clin Immunol. 2009 Dec;124(6):1267-72.
食物アレルギーのある子供たちに、1273 回の食物負荷を行ったところ、そのうちの436 回に何らかの反応が見られた。(436 /1273 、34%)。食物負荷時、エピネフリンを使用した回数は50回であった。その頻度は、全体の食物負荷のうちの3.9%であった。エピネフリンを使用した頻度は、陽性食物反応の11%であった。
 
陽性反応において、エピネフリンを使用する状態となった数とその頻度は、それぞれ食品ごとに、以下のとおりである。卵 15(16%)、 ミルク 14(12%)、ピーナッツ10(26%)、木の実4(33%)、大豆3(7%)、小麦3(9%)、魚1(9%)であった。
 
以上の結果から、負荷テストの時に、エピネフリンを使用した頻度が高い食物は、木の実33%、ピーナッツ26%であり、この頻度は、卵16%、ミルク14%に比べ高く、木の実、ピーナッツは、エピネフリンを要する反応が起きやすいと言える。
 
エピネフリンを使用した子供たちの平均年齢7.9歳、使用しない子供の平均年齢5.8 歳と、エピネフリンを要した子供は、年長であった。
 
負荷テストした50人の子供のうちの3人に2回のエピネフリン注射を要した。2相性の反応(食後すぐの急性反応と、遅れてでる症状の両方起きること)は1名にみられた。
小麦による慢性腸炎のセリアック病は、欧米では多い病気です。
 
小麦を離乳食に導入する月齢が、早すぎても、遅すぎてもいけないと言われています。
 
欧米の離乳ガイドラインでは、母乳を飲んでいる時期の、生後4-6か月で、小麦を食べ始めるようにとの指針をだす国が多いようです。スウェーデンの子供たち向けに、2004年までには、すでにそうした指針がでていたようです。これに関する論文の紹介です。2012年の、現在の順守度は、わかりませんが、論文がありましたら、ご紹介します。
 
Acta Paediatr. 2004 Apr;93(4):464-70.
スウェーデンの異なる3地域において、12ヵ月の乳児検診に受診した467人において、アレルギーのリスクと、離乳食の状況を調べました。ミルク、オートミールがゆ、魚、卵のそれぞれにつき、乳児の離乳食への導入時期について親に聞きました。
 
結果: 離乳指針では、 4―6ヵ月の間にグルテン(小麦)を投与するように指導されていますが、実際のデータでは、45%の子どもで、生後6ヵ月までグルテンは投与されていませんでした。
 
アレルギーがあるとする親の33%は、生後1年以内の魚を避け、親の23%は、生後1年以内の卵を避けました。
妊娠中の母は、50%は妊娠中にピーナッツを避けました。 しかし、ピーナッツを避けても、ピーナッツアレルギーの発症には関連しませんでした。
 
以上の結果から、グルテンの導入時期に関しては、離乳食指針はそれほど、守られていなことがわかりました。PMID: 15188972
前回、このブログで、本物の食物アレルギーは無くとも、人々が食物アレルギーがあると思いこんでいる場合があることを紹介しました。
 
食物に対する反応性は、実証できないことがあり

(その食品がどのような経緯で作られたのか?何が含まれているか?はわからない・・・)
 
人が食物に反応してしまう時、機械ではないため、時と場合で違ってくるので、あいまいで未解明が多いと言えます。
 
そうした食物アレルギーをめぐる疑問は、日常でもしばしばあります。科学の力で、そうした病気のあいまいさを少しづつ解明する努力が続けられています。これからも、客観的事実をつみかさね、診断技術の向上させたいです。

病気を明確化できれば、医師ごとの診断と治療のばらつきは、減っていきます。
 
オーストラリアの小児科研究グループは、生後半年の乳児が、食物を受け入れやすくなる時期であることを証明し、この限定した期間を、ウインドウ期間と呼ぶことを提唱しています。
 
つまり、この時期は、アレルギー反応が起きても、固定化することがなく、むしろ流動的で、アレルギー反応の再現性が低い時期とみなしています。
 
今回の論文の食物負荷の際、オープン法でも、二重盲検法でも、6-9ヶ月の乳児の陽性率は低く、むしろ、9-12 ヶ月の乳児の方が、陽性率上昇していることが興味深いです。
 
6-9ヶ月の乳児で、アレルギー反応の再現性が高くなるのは、IgEが上昇し、反応が固定化するからでしょうが、一方で、年齢と共にアレルギー反応が減弱する様に、乳児の体が変化していきます。
 
すなわち、アレルギーを進ませる方向と、それを止めようとする方向へと、乳児の免疫細胞が、互いにせめぎあっているわけです。
 
そして、多くの乳児は、健全なかたちに修正される能力を持ち、食物アレルギーから逃れられるのだろうと思います。
 
今回は、乳児の食物アレルギーに関する診断の問題をとりあげます。
親から、食物アレルギーがあると申告にあった乳児で、実際にその食品を食べさせて、反応がおきるのかどうかを見ました。再現性をもって実証できた食物アレルギー頻度は、申告頻度の数値より低かったとの結果です。
 
J Allergy Clin Immunol. 2006;117:111 PMID:16675341
 
以下が論文です。

背景:生後1歳までに発症する食物アレルギーの頻度に関する調査は極めて少ない。コホート研究(n=969)で、生後3、6、9と12ヵ月に、栄養法とアトピーの状況の有無を、両親から報告してもらった。子どもが、1歳になった時に、アレルゲン皮膚テストを受けた。症状のある子どもは、実際のその食物を食べさせて、症状が起きるかどうかを確かめるチャレンジ検査をした。
 
結果:親から報告では、食物に対する反応は、乳児が3ヶ月の時点で132人 (14.2%) 、6ヶ月で 83人 (9.1%), 9ヶ月で49人 (5.5%), 1年で65人 (7.2%) の頻度であった。
1歳になった時に、アレルゲン皮膚テストでは、吸入性抗原に陽性率は、1.0% (8/763)は、食物抗原に陽性率は2.2% (17/763)であった。
 
オープン法による食物負荷チャレンジテスト(検査医師は原因食品が含まれていることを知っている)をすると、6-9ヶ月の乳児では 1.4% (14/969)、9-12 ヶ月の乳児では2.8% (27/969)の陽性率であった。
二重盲検プラセボ対照食物チャレンジテスト(原因となる食品が含まれているかは、医師も本人も知らない)では、6-9ヶ月の乳児では0.9% (9/969)、9-12 ヶ月の乳児では2.5% (24/969)であった。
 
1歳までの食物アレルギーの累積率は、オープンテストで4% (39/969; 95% CI, 2.9% to 5.5%)、二重盲検プラセボ対照食物チャレンジテストでは、3.2% (31/969; 95% CI, 2.2% to 4.5%)の間であった。.
 
結論:生後1年間に、食物過敏症は、2.2%から5.5%の間で起きている。しかし、生後1年に、親から報告される食物反応の頻度は、客観的に評価された数値よりかなり高い数値になっている。 
病気の調査法のひとつに、電話調査というのがあります。
 
病気の実態を、偏りなく把握するために、無作為に選んだ電話番号に問い合わせの電話し、家族の病気の実態を教えてもらうものです。回答を断わる人については、調査はできません。この方法は、病気の調査法としては、客観性が高いとされています。
 
カナダの電話調査による、食物アレルギーの実態の論文を紹介します。
 
食物アレルギーは、世界的にも診断間違いが問題になっていて、悩みは全世界共通のようです。この論文は、そうした点についてもふれています。
 
このカナダにおける調査によると、小児は、ミルク、ピーナッツ、木の実が主要な原因食品で、日本のように鶏卵が年長児まで多くないようです。日本での除去が、日本の卵アレルギーの多さに関連しているのかもしれません。
 
2010年に、ピーナッツ、木の実、魚、甲殻類に対するアレルギーの実態を調査するため、無作為に選んだ全カナダの家庭に、電話による調査結果を発表しました。研究のネーミングは、SCAAALAR研究です。
 
10か所のカナダの地域において、ランダムに電話番号選び、電話します。2008年‐9年3月の間で、電話インタビューを行いました。家庭の誰かに、食物アレルギーがあるかどうかを尋ねました。
 
予測因子は、多変量回帰分析によって確認しました。調査を完了した10,596人の家族のうち、3,613人が調査を終了しました(35%の回答率)。回答の対象となった人の総数は、9,667で、成人7,469人と小児2,198人でした。 9,667人のうち、8.07%(95%のCI(7.47%-8.67%))は、少なくとも1つの食物アレルギーを報告しました。
 
成人における、単独のミルク、卵、小麦、大豆アレルギーは、他の診断名の病気が入る危険がありますので、それをさけるため、除いた検討をしました。
 
食物アレルギーの頻度は、全体で6.69%(95%信頼区間CI(6.15%-7.24%))となりました。
子供たちの食物アレルギー7.14%(95%信頼区間5.92%-8.36%)
、成人の食物アレルギーは6.56%(95%信頼区間5.99%-7.13%)でした。
小児では、ミルク、ピーナッツ、木の実が多く、成人では甲殻類、フルーツ、野菜でした。
 
食物アレルギーがいると報告した回答者の家族は、そうでない家族と比べて、教育程度が高く、生まれはカナダの人が多かったです。
 
オーストラリアの研究は、高学齢やオーストラリア人の生まれの人に、喘息、アレルギー、アトピー罹患率高い理由として、次のような要因が考えられるとしています。

(1) 食物アレルギーの知識がある。
(2)抗生物質を多く使用し、衛生環境が良いと、アレルギーの起きやすいTH2反応が優勢になる
(3)米国の小児科学会が、アレルギーを起こす食品の導入を延ばすような勧告を以前はしていたので、離乳食への食品の導入が遅れた (今は米国も改訂されている)
 
このような考察の結果、本論文では、以下のように結論します。
 
カナダ人の6.67%が食物アレルギーを報告しましたが、実際は、本物の食物アレルギーは、もっと少ないのではないかと思われます。実際にアレルギーはなくとも、アレルギーであると思っているだけの人は、不必要な食事制限を続けているもしれません。
食物アレルギーに関して、正しい診断とフォローアップが重要です。
海外では、病気を持つ人たちに、質問票を用いて、病気の認識や心の状態をたずね、その結果を評価する研究が盛んです。患者学と言えるものかもしれません。
 
食物アレルギーを持つ人の中で毎日のQOLが悪い人たちは、どのようなタイプなのかを調査したフランスの研究を紹介します。Pediatric Allergy and Immunology 2012;23:412–419
 
方法は、0–12 歳の食物アレルギーの患者の親、及び8–12歳の食物アレルギー本人に、食物アレルギーに関する質問票に答えてもらいました。使用した質問表は、学術的に正当であると評価されている英文の質問表をフランス語に訳したものを用いました。

結果です。
QOLに関しての親と子の答えは、良く関連しました。
0–3歳の乳幼児食物アレルギー児におけるQOLは、年長児より良好でした。
QOLの悪い食物アレルギーの子どもの特徴は、年長児であること、重症の食物アレルギーであること、アレルギーのある食品の種類が多いこと、過去に重症のイベントがあったこと、母親にも食物アレルギーがあること、兄弟にも食物アレルギーがあること、及び、性は女性でした。

食事は、日常の楽しみであることを考えると、食物アレルギーのQOLの向上を望みたいです。特に年長児では、年齢と共に軽快していくことが期待できにくいグループであり、悩みは深いようです。
世界でコホート研究が進行中で、アレルギーの経過が観察されています。
今回は、ドイツの4都市(ミュンヘン、ライプチヒ、ヴェーゼル、バート・ホンネフ)に住む親子が研究に協力して、検討されているLISA出生コホート研究を紹介します。
 
妊婦を募集し、子どもが生まれてからは、生後半年、1年、1年半、2年、4年、6年と子どもを追跡し、親に配られた質問票により、子どものアレルギー症状の有無や、医師の診断名を答えます。
 
この地域では、生後0-4か月で、子どもに離乳固形食を与える割合は、32%、5-6か月では49%、7か月以上では19%との数値です。4か月の時点では、まだ固形食を与えない割合は、約7割ですが、固形食として与えている食事種は、1-2種が17%、3-8種が13%との数値でした。ドイツでは、果物、野菜は離乳食として早期に導入されており、魚、卵は後期に導入されていました。

4か月の時点で、母乳限定は60%、混合は35%でした。
6歳になった時の子どもに食物アレルギーがある確率は12%、一方、花粉ハウスダストなどの吸入性アレルゲンに感作がある場合は、26%となっています。

医師から診断された病気のある子どもの頻度は、湿疹で8.5%、喘息は2%でした。6歳の時に湿疹症状があるとする子どもたちは、4%、喘息症状があるとする子どもたちは、10%でした。
 
研究の目的: アレルギー予防ガイドラインには、離乳のための固形食の導入を遅らせるものがありますが、その正当性を調べる必要があります。
 
今回のコホート研究において、生後4-6ヵ月を超えて、離乳固形食を遅らせると、その子どもが6歳になった時に、湿疹、喘息、アレルギー性鼻炎、食物・吸入抗原感作に、どのような影響を与えるかを調査しました。Pediatrics. 2008 Jan;121:e44-52. PMID:18166543
 
方法: LISA出生コホート研究において、2073人の子供たちを追跡調査し、6才になった時のアレルギー状態を分析しました。 多変量ロジスティック回帰分析により、離乳固形食とアレルギーの因果関係を考慮しました。
 
どもが早期にアレルギー症状を出すと、その後の離乳開始時期が影響される可能性を考慮し、生後6ヵ月の時には、皮膚にトラブルの無い子供たちを選び出して検討しました。
 
そして、子どもたちが、6歳時になった時のアレルギー徴候の有無を検討しました。

結果: 生後4-6ヵ月より、遅れて離乳固形食を導入しても、6才時の食物・吸入アレルゲン感作には影響がなく、又、喘息、アレルギー性鼻炎の発症にも影響しませんでした。 むしろ、導入が遅れた子どもたちで、食物感作が増しました。

食物感作は、4カ月以後の導入群は、4か月前で導入した群と比較して、3倍に増加しました。離乳固形食の導入のタイミングと、湿疹の関係は、明白でありませんでした。
 
生後6か月過ぎに、離乳固形食を遅れて導入するやり方や、生後4ヵ月以内の乳児食を多様化しないやり方は、アレルギー予防にはつながりませんでした。

 乳児期早期に皮膚のアレルギー徴候のない子供たちだけを選んで検討した場合の結果についても同様でした。
 
しかし、生後の4ヵ月以内の食事が多様化していた子供たちは、その後に、湿疹はでやすい結果となりました。

結論: この調査により、6歳時の喘息、アレルギー性鼻炎、食物または吸入性感作を避けるために、4-6か月以後に、離乳固形食を始めるやり方は、成果がありませんでした。
 
 湿疹の頻度については、食事の導入時期には、矛盾した結果がでました。離乳固形食導入時期と、食物感作の関連については、慎重な解釈が必要ですが、遅れて離乳固形食を始めることに、利点はないようです。

以上が論文内容です。
一般的にドイツでは、喘息の診断に慎重です。つまり、医師が喘息と診断することは、親のストレスを高めるために、子どもが年長児になって、喘息が明確化してからの医師診断が多いようです。
 
日本でも、いつの時点で喘息と呼ぶかは、医師によりかなりばらつくことがあります。
2012年4月に書かれたオーストラリア家庭医41巻に掲載された論文を紹介します。

オーストラリアは、喘息の罹患率が高い事で有名で、吸入性、食物性のアレルギー疾患が他国と比べて多いことがしられています。

このオーストラリアのおけるアレルギー増加は、先進国特有の傾向のひとつですが、その原因は、いろいろ推論があります。先住民も移民も、近年の衛生環境の大きな変化が、人の免疫系に影響しているのではないかとの推論があります。

オーストラリアでは、この20年間で、食物アレルギーが2-12倍に増え、その原因の9割がピーナッツと卵です。ピーナッツアレルギーは3%、卵アレルギーが8.9%です。原因のひとつとしてかんがえられることが、離乳時期に、食品の導入が遅れることではないか?が浮上しています。

オーストラリアは、世界でも先駆けて、乳児の免疫の変化をコホート調査で証明した国です。乳児期の限定した生後半年前後が免疫反応しにくい時期とのことです。これをウィンドウ期間と呼びます。

実際に、生後4-6か月にピーナッツ導入することで、アレルギーの発症が減らせたとの論文があります。

WHOは、2001年、母乳のみ限定栄養が望ましい時期として、従来の生後4-6か月までを、生後6カ月までに変更しました。その根拠として、母乳影響が長い乳児においては、胃腸・呼吸器病の減少、乳児突然死の低下、IQの向上、糖尿病、アレルギーの減少などが期待できるからでした。

セリアック病(小麦蛋白による消化管における免疫病)も、小麦の導入が生後6カ月後の遅れることにより、その発症が高まるとしています。

つまり、生後4-6か月の乳児は、母乳以外の食品を受け入れる胃腸のしくみが整うようになるとのことです。ですから、この時期が、食品にアレルギーになりにくい時期と考えられているのです。
 
WHOは全世界の子どもを対象にメッセージを発信しています。衛生状態の悪い発展途上国では、無菌状態の出たての母乳を赤ちゃんが飲むことにより、感染症のリスクを避けられます。衛生状態が悪い国では、飲料水も含め、子どもに安全な離乳食を確保できません。
 
又、低い衛生環境で生まれた赤ちゃんは、母親から引き継いだ免疫系が、悪い衛生状態に耐えられるための能力を、赤ちゃんに授けます。病原体からの攻撃の多い発展途上国の子どもは、アレルギーが少なくなっています。

ところが、こうした環境汚染による免疫刺激は、先進国には期待できません。

オーストラリアでは、乳児栄養法について、WHOとは若干、異なった指導要綱になりました。

母乳の継続は望ましいとするものの、2011年に、乳児のウィンドウ期間を根拠に、離乳食(固形食)を、6か月前後(その後、4か月も)に導入した方が、アレルギーやセリアック病を減らせるとしました。この時期には、母乳栄養と併用するのが望ましいとしたのです。
病は、気からという言葉がありますが、薬も気から効果はでるものと思われます。
 
いわゆる民間薬、代替治療薬というのは、お国柄が影響し、つまり、その国で良いと(宣伝)されているから、良いと感じやすいです。効果の普遍性はなく、国ごとに良いとされるものが違ってきます。
 
中国では受験勉強の学生にアミノ酸の点滴などが使われているようです。日本ではにんにく注射と言って、にんにくは入っていないが、似たようなにおいの出るビタミンB入りの点滴があります、忙しい人が、しばし、ベットに体を横たえ、点滴により体内環境が変化すれば、元気がでたような気がしてくるでしょう。ビタミンBによる影響かの実証はむずかしいものです。
 
アレルギー病もこうした代替治療薬のえじき?になりやすい病気と言えます。生体活性物質である漢方薬は、理論的に、アレルギーを誘発する側面が考えられます。しかし、アレルギーは、ストレスが増悪因子となりますので、心が落ち着けば、アレルギー症状に良い効果がでるとも考えられます。
 
漢方薬は、自然からの精を受け取るなどと使用者が感じれば、効果が期待できそうです。薬草の匂いなどは、薬草の評価を決める物とされており、漢方薬は、脳の働きに影響される部分も大きいようです。人の脳は匂いで、反応が変わります。
 
植物由来物質は、脳を落ち着かせたり、腸を動かしたりする生理活性物質です。動物が植物を利用して、体が動くように、細胞を作ってきたともいえるでしょう。
 
漢方薬は、本人が好んで飲む時こそ、良い効果が期待できそうです。たくさんの成分が入っているとする植物イラストなども、脳に影響を与えそうです。
 
しかし、親が良いと思ってイメージを膨らませても、漢方薬が苦くて、つらいと感じて飲む子供には、どの位、効果が出るものなのでしょうか?親の気合を感じた子どもなら、同じ様な効果がでるということも考えられなくは無いですが・・・。
 
日本の子供たちの食物アレルギーに、代替治療薬がどの位使われているのかの論文を紹介します。対象になったのは、アレルギーセンターの専門病院に通院中の食物アレルギーの子供たちです。調査の結果、代替治療薬の使用頻度は、8.6%でした、使用者(親)では、効いていると答える人のいる一方で、副作用があると答える人も多くなります。つまり、代替治療薬の評価は、ばらつくものです。
 
Int Arch Allergy Immunol. 2012 Jul 27;159(4):410-415背景:
不明な部分の多い、日本の食物アレルギーの小児における、代替治療薬の使用状況を調査しました。
 
方法:日本の小児アレルギー専門医のいる14か所のアレルギー・センターにおいて、代替治療薬の使用状況をアンケー質問票にて調査しました。

結果:質問表による調査が、962人の小児食物アレルギーの患者の両親/保護者宛てに行なわれ、回答が回収されました。

食物アレルギーを治療するための代替治療薬は、8.4%に使用されていました。代替治療薬療法の内訳は、ハーブのお茶(22.2%)、漢方薬(18.5%)、乳酸菌(16%)でした。回答者の11.1%が、代替治療薬は、数種類の副作用があるとする一方で、13.6%は、使用中の代替治療薬を有効と考えていました。

この論文によると、米国での食物アレルギーに、代替治療薬は、17%に使われているそうです。日本で使われる主要なタイプは、米国で使われるそれらと異なりました。 つまり、経験的な治療は、国の文化的なものが反映されているということを示しています。
 
子どもの薬は、本人が使用するのとは異なり、根拠をしっかり示していくことが、求められていくでしょう。
PMID: 22846790