黄班変性症は、網膜色素細胞の光受容体が消失していく病気です。
 
前々回に、サプリの効果が期待される疾患であると、ご紹介しました。
 
視力に最も重要な働きをする網膜に、出血などの病変がおきると、失明につながります。
 
網膜は、酸素を多量に必要とする臓器ですので、抗酸化物質が豊富に集まります。しかし、こうした抗酸化物質は、人は、加齢と共に作れなくなってきます。
 
それで、老人では、個人差があるものの、網膜の色素が減少して、黄班変性症が起きてきます。網膜には、多価飽和脂肪酸も多くあり、これも酸化ストレスに関連するようです。
 
加齢関連眼疾患研究班 AREDS (Age Related Eye Disease Study) をつくっている専門研究者は、世界中で発表される学術論文を根拠に、世界の人々に向けて、眼に関する学術的勧告をおこなっています。
 
この学派の勧告では、進行した黄班変性症には、亜鉛を加えたマルチビタミンが有効であるとしているそうです。ただし、勧告によると、こうしたサプリには、始まりだした初期黄班変性症を完全に防ぐ効果までは、期待できないそうです。つまり、「サプリをつかっていれば、こうした病気にはならない」 とは言いきらないです。
 
人の加齢に伴う健康への影響を調べる研究は、疫学研究、動物実験、細胞研究などの基礎研究にさされられています。
 
本日は、網膜色素細胞をとりだして、実験室で培養して、サプリや、抗酸化薬剤の影響を調べた、カナダ発の論文を紹介します。Clin Ophthalmol. 2012;6:1471-6.
 
人から取り出した網膜細胞(研究用に市販されている)を使って、薬剤と酸化物質を加えて、細胞の生存状態(生き残り数)を調べた実験です。
 
加えた物質は、ビタミンC,E, vitamin C phosphate、propofol, betaxolol, N-acetyl cysteine (NAC) などの代表的抗酸化剤でした。その後、網膜色素細胞に酸化ストレスを加え、生き残った細胞の数を観察しました。5時間の酸化ストレスへの暴露では、細胞の数は25%に減少しました。
 
次に抗酸化剤の効果をみました。かけた酸化ストレスの程度は、約半分の数の細胞が生き残る設定条件でおこないました。
 
加えたそれぞれの抗酸化物質ごとに、どの程度の数の細胞が生き残れるかを検討しました。結果は、ビタミンEと、NACを加えた場合のみ、網膜色素細胞の生存が高まりました。
 
ビタミンEと、NACに、抗酸化効果があるとされました。ビタミンEは特に、高濃度で生存効果が高く、20%程度に細胞の生存を増加させました。

ビタミンCは、むしろ、酸化ストレスだけの時より、さらに、細胞の生存が低下しました。
以上、ビタミンEと、NACの有用性を示す結果でした。
 
しかし、これをそのまま、人にあてはめるのは、注意が必要です。

この実験は、細胞を抗酸化物質と共に、酸化ストレスにさらしたものですが、実際の人での実験ではありませんし、そのまま、人体に同じ効果が期待できるかどうかはわかりません。他の副作用がでるリスクもあります。こうした情報を、鵜呑みにせず、あれこれ、背景を考えるのが科学的思考です。
 
サプリメント業界は、少しでも良い成績がでると、それを拡大解釈して、いつの間には、科学的でない過剰な宣伝になってしまいます。

ネットの動画サイトでも、NACは、40歳すぎたら、取るべきサプリと宣伝されており、その効果も、インフルエンザ、うつ病、統合失調症、アレルギーと、効能は、留まるところをしらず、素晴らしく効くとの宣伝文句です。
確かに酸化ストレスを軽減できれば、すべての病気に効果が期待できるでしょう。
 
物を売りたい人は、その人自身も、どんどん、その気になってしまうのでしょう。
 
専門家の勧告でも、サプリが効く時期があると言っていますので、やみくもに、誰にも効果がでるわけではないのです。
 
このブログ内容はあくまで、論文の紹介にとどめたいと思います。
 
ウィキペィアからの情報
N-アセチルシステイン (NAC) (N-acetylcysteine)はしばしば鎮咳剤として用いられる。これは、粘液中のジスルフィド結合を切断して液状化させ、痰を切れやすくするためである。サプリメントとしても使われる。
昔の人は、体のしくみがわからないことだらけの中で、病気の原因を考えてきた。
 
想像、推定、想定、予想と、あらゆる思考を働らかせて、病気の原因を探ろうとしたであろう。そうした時代でも、医者は必要だった。病気を診る人である医師は、当時も(今も)、人々から過剰な期待があったろうから、医者は、寝る間も惜しんで、あれこれと証拠を集め、病気の道筋を探したことであろう。
 
しかし、東洋医学の手法では、病気の原因解明は不可能で、その中で、派閥、学閥が乱立し、珍説、奇説も多く生まれた。
 
西洋医学は、科学的証拠さがしの手法をみつけ、努力と失敗を重ねて、体の臓器の働きや病気の解明に努めてきた。

西洋医学で明らかになった事実は、世界共通の真実となり、東洋医学にも組み入れられた。非科学的理論は、間違いとして、東洋医学や漢方薬の知識から消えていった。

今に残る東洋医学や漢方薬の考え方は、西洋医学の波にもまれながら残った知識である。
学閥、派閥にこだわる東洋医学は、科学的思考に後れをとってしまった。

西洋医学は科学として進歩し、漢方医学は、西洋医学の知識を取り入れざるを得なく、知識の改変を余儀なくされた。

東洋医学が西洋医学並みにすばらしい学問であり続けるためには、やむをえない選択であったろう。

しかし、まちがいとして消えた東洋医学の考え方には、興味深いものがある。
 
医学の珍説、奇説には、今や、否定された事実であっても、当時の人々が、真実を求めて思考錯誤してきた経過であることは確かである。
そうした、昔の人々の試行錯誤は、病気を考える上でも、現代人の興味を引く。
 
昔の人は、病気をどのように考えてきたのだろうか?そして人々の体や心は、どのように変化してきたのであろうか?漢方医学的な知識には、昔の人の病気に対する思いを感じ取ることができるような気がする。

鎖国が続いた江戸時代といえ、科学の基盤にたつ西洋医学的知識は、少しづつ日本に入ってきていた。
杉田玄白、前野良沢など、今に名前が残る名医たちは、たいへんな努力をして、人体解剖を行い、言語、医学知識を極めようとした。
彼らは、目で見る、手にとるなど、直接的感覚を研ぎ澄まして、臓器の機能を知ろうとしたであろう。
 
そうした西洋医学が入る前から、人々は経験的に体の働きを知っていた。ドキドキする場所が胸にあり、興奮すると胸のドキドキが強くなる経験は誰でも持つ。胸の心臓が血液を送り出す働きをしていることは、予測しやすかったであろう。
 
肛門から便が出てくること、口と腸とつながっていることを知れば、腸は、食物を変化させて便をつくる臓器であるとの考えにたどり着く。
 
しかし、昔の人にとっては、尿がどのように作られるのかを解明するのは、難題だったのではないだろうか?透明な液を尿としてつくる臓器はどこか?をさがすのは、むずかしかったようだ。
尿が、膀胱にたまることはどこまで理解していたの?尿管でつながる腎臓で作られるのか?それ以外の場所で作られるのかは、確かめることができなかった。
 
短命な昔の人は、加齢に伴い、腎臓が悪くなる人が多かった。そのため、加齢は、腎に現れ、腎を強くすることが抗加齢につながると考えられていたようだ。腎臓には、腎気がやどり、これが強い人は、抗加齢能力が高い人と考えられていた。
 
今では、血流とリンパ流の流れがあり、血管や細胞から水がしみだし、リンパ流として血流と別れ、また合流する循環のしくみがあることを、小学生の理科の時間に習う。しかし、昔の人には、こうした機能を考え出すことは、とても難しい課題だったと思う。
 
ここに、三焦と呼ばれる臓器の話が出てくる。以下の赤字はネット情報である。
 
辞書機能のネット情報によると、三焦(さんしょう)とは、漢方で、六腑(ろっぷ)の一。三つの熱源の意で、上焦は横隔膜より上部、中焦は上腹部、下焦はへそ以下にあり、体温を保つために絶えず熱を発生している器官とされる。

あるいは、別の説明によると、三焦は、伝統中国医学における六腑の一つで、大腸・胃・小腸・胆・膀胱は実体が理解できる腑であるが、三焦は、働きだけがあってカタチがないと記されているが実体はリンパ管であるとある。

三焦は、ネット情報によると、五臓六腑は違う実体のない臓器であるのだそうだ。ネット辞書では、三焦は、リンパ組織ではないか?と書かれていた。
 
三焦という言葉が使われた時代には、リンパ節もリンパ流も、その存在も機能も明らかでなかった。三焦がリンパ流を指すというのは、西洋医学から取り入れた知識である。
 
全く、医学の知識がない人にとっては、三焦がリンパ流をさすかもしれないとの発想は出てこない。
生きている人の体内で、血液とは異なり、水成分も流れるしくみは、昔は、知ることができなかった。
 
尿がどこで作られるかの答えとして、三焦が尿の生成にかかわるとの考えがあったようだ。
三焦は、体幹を大きく3部にわけて、上中下としたが、実質的でないあいまいな形の臓器を指しているために、そこで体内水が濾過されて、尿になるとかんがえたのかもしれない。
 
心臓の話しに戻るが、昔、心臓が、血液をくみ出すとの予想はついても、なぜ、ポンプ作用が壊れてしまうのかはわからなかった。
心臓が悪くなる理由として、包む膜がわるくなるからではないだろうかとの考えがあったようだ。

心臓をつつむ心包が機能しなくなるので、心不全になるとの説が通用していたらしい。昔、心臓を包む膜が大事と考えた人が、膜が弱ると、内部の心臓の働きが悪くなって、心不全となるのではないかと考えたのかもしれない。
 
どこにも真実を解明する手段がない時代、学派、学閥などは幅を利かせる。学派とは、似た考え方を共有する人たちが集まり、その中で通用する理論を作り上げるのである。
 
今や、心不全は、心臓の筋肉そのものの働きの低下、電気伝導の障害などにより起きてくることは、誰でも知っている。

そうした時代でも、漢方医学が高みにいるためには、漢方医学的に説明が求められる。そうした時、心包は、今いうところに心包ではない。それは、冠動脈をさしていると、説明をすればよいのである。
 
つまり、漢方医学のの腎に関しても同様に、漢方の腎は、今の腎臓のことを指すのではなく、もっと、大きな気をさすと言ってしまえばよいのである。

昔の人が、体でおこる現象や病気の、どこに悩み、何を解明しようとしていたかをさぐる糸口として、すり替え作業に注目してみるのはおもしろそうだ!
 
昔の医学は、声の大きな自信家の教祖が言えば、どんなに間違っていても、その人の言うとおりの理論になる時代だった。
 
学派ごとに代わる理論は、お花やお茶の流派と同じであるが、科学である医学は、理論はひとつをめざすものである。
 
昔の医者は、わからないことだらけの中で、病気を診てきた。しかし、どの時代でも、病気は診る専門家は、必要とされる。

この先、数十年先の医者は、今の医者の知識や技術を笑うかもしれない。
数十年先の医療がどのような様相になっているのかの予想は難しい。
むしろ、昔の医療や知識を探り、議論し合い、明日の病気を考えていく方が、今の私たちには、やさしいような気がする。
初潮をむかえ、胸が発達してくる思春期の女性にとって、輝ける人生の始まりの時なはずですが、実際の英国の少女においては、この時期に少女たちの幸福感は高まるわけでなく、むしろ、うつ状態が高まってくるらしいです。

今日はこうした事実を研究している疫学研究(ALSPAC)の紹介です。Psychol Med. 2012 Apr 12:1-11
 
女性ホルモンは、女性の脳に、女性たらしめる作用を持ちます。すなわり、不安をかんじやすい女性の脳は、冒険をさけ、おとなしくしている行動をとります。不安を感じる心は、同時に落ち込みやすい心もつくります。
 
思春期に、急激に上昇する女性ホルモンが、少女たちの心に、不安を起こさせる物質として作用している可能性が高いということです。

そういえば、以前、日本にも、青春時代という歌がありました。その歌詞も、青春時代が夢なんて、後からほのぼの思うもの。青春時代の真ん中は、胸にとげさすことばかり・・・だったかな?
 
不景気風の吹く先進国の子どもたちは、思春期は、将来に向けた不安が大きくなる時期であり、人生最良の時として楽しんでいるわけではないのは確かなようです。
 
日本においても、質問表を用いて毎日の生活QOLを調べると、定年後の人とくらべて、若い世代の人のQOLがはるかに悪いことに驚きます。
 
日本で生活QOLが高い人たちは、定年後の男性たちのようです。女性は、加齢によりQOLは高まりません。
 
今回の成績は、英国で長く疫学研究を続けているエイボン研究(ALSPAC)から、導き出された成績です。
 
気分と精神状態に関する質問アンケート(SMFQ)を用いて、10歳半、13歳、14歳の少女2506人に質問をしました。多変量回帰モデルを用いて解析しました。少女たちの性的発達については、胸の大きさ、陰毛の状態、初潮などから評価しました。

女性の年齢と共に、初潮のタイミングより、胸の発達に平行して、抑うつ症状も増強しました。特に、14歳において、胸の大きさと、抑うつ症状の程度には、強い直線的な関連がありました。

抑うつ症状の程度が、エストロゲン濃度の上昇と、関連する事実を示す結果となりました。この時期の女性の抑うつ症状に、性差が目立つ事実が、男女間のエストロゲン濃度の上昇の違いで、説明がつきます。
 
今回の結果から考えると、思春期に上昇するホルモンが、少女のメンタル状態に及ぼす影響と、そのメカニズムを解明することが、とても大事に思われます。
生物に寿命があるのは、加齢に伴い,、新旧の細胞が入れ替われなくなるからです。動物が酸素をエネルギー源にしている限り、生きることは、酸化ストレスを蓄めこむことであり、老化は避けらません。人間ほど、年齢が姿形に現れる動物は、無いのではないでしょうか?
 
高齢者が増加していく日本において、加齢に伴う体の変化を病気ととらえ、不安をあおり、絶大なる抗老化を謳うグッズの広告がどんどん増えています。
 
抗加齢情報は、所詮、玉石混合です。そこには、巨大なマーケットがあります。嘘をみぬき、自ら信じるものを選び出す努力を続けましょう。
 
抗酸化物質のサプリが、巷に溢れていますが、その効果は限定的であっても、人は抗酸化物質さがしに努力をつづけるでしょう。そして、老化をチェックする機器を開発し、新薬発見につなげるでしょう。
 
今は、生体の老化程度を測定する機器がないので、抗酸化剤の効果のチェックができていません。これが、効果のエビデンスが無くても。商品が生まれる理由ではないでしょうか?
 
インターネット時代は、だれでも科学的な目を持つ事を可能にしました。
こうした視点から、抗加齢に関する過去の情報を集めてみましょう。
 
今のところ、人類の老化を防ぐ手段は、みつかりません。それでも、野菜、ビタミンなどは、抗酸化効果を持ちます。
雑食である人種は、抗酸化作用をもつ物質をエネルギー源として利用できるように進化してきたと思います。抗酸化作用をもつ物質による病気の減少は、疫学的なデータにもあります。
 
老化とサプリの糸口となるような話題にふれていきましょう。

ビタミンは体に必須な物質であるものの、それをサプリとして、接取することが、本当に老化を防ぐか?について、議論が続いています。
 
昔から、目の機能にビタミンが、重要であることがわかっていました。網膜の健康は、色素が十分にあることが条件です。加齢と共に色素密度が少なくなり、視力が落ちます。加齢に伴い症状が進みますが、女性において特に進行しやすいのです。元々、女性の方が、色素密度が低いのです。
 
光を用いて、網膜の黄班の加齢を推定する機器が開発されました。測定値の再現性など、機器としては、問題は残るようですが、黄班変性症の治療効果判定ができるとのことで、世界中で使われるようになりました。
 
まず、黄班変性症は、以下の眼科学会のホームページによくかかれています。
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/momaku_karei.jsp
このホームページでも、抗酸化サプリの有効性が紹介されています。
 
黄班変性症は、基本的には、老化による変化ですが、老化は人により、まちまちなのです。
世界中で治療法が検討されています。高価なモノクローナル抗体も治験されています。

ルテイン、ゼアキサンチンと呼ばれるビタミン療法が、目の黄斑を強くするとの成績がでています。
サプリとして接取する抗酸化剤が、効果をだしているという論文です。
 
抗酸化を謳う多くのサプリの多くが、効果評価はされないまま、巷で売られているのに対し、黄班変性症に対して、ルテイン、ゼアキサンチンに若干の効果が期待できるようなので、これに注目してみましょう。
 

網膜にある黄斑は加齢により、変性していくのですが、その程度を黄斑色素密度MPODという数値で評価することができます。
 
Clin Exp Optom. 2010;93:300-8.に載った論文ですが、過去24編のサプリと黄班変性症の効果について、レビュー(書評)しています。
 
使われているサプリは、ルテインとゼアキサンチンであり、これに加えて、ビタミンC,Eなども一緒に使われています。ルテインとゼアキサンチンは網膜の黄斑部に蓄積し、加齢黄斑変性の改善と関連していることが報告されています。黄班変性症は、ヘテロクロアッチクフリッカーフォトメトリー(異色測光計)という機器を用いて測定しています。

まず、論文ごとに、数値の再現性について評価したところ、論文によっては、再現性にばらつきが大きいと指摘しています。つまり、測定条件によって数値が変動し、機械の精度の問題を指摘しています。
 
結果として、斑色素密度MPODは、病気の有無を問わず、サプリを取ると、増加(改善)する人がいるのは確かにいるものの、ほとんと反応がない人もいて、効果は限局的であるとの結論でした。
 
高齢者で効果が出にくく、サプリ前に密度数値の低い人で、上昇しやすかったとのことです。眼科医は、この機器の導入には慎重であれと警告されています。
 
実はサプリ以外でも、卵にその効果が期待されています。米国の論文ですが、食事におけるルテインとゼアキサンチンの豊富な供給源の一つに、鶏卵を挙げています。

1 日1 個、5 週間の鶏卵の消費が60 歳以上の参加者の血清において、ルテインとゼアキサンチルテインとゼアキサンチン・サプリメントで上昇したとあります。
 
限局的にしろ、サプリの効果が確認できたことは、うれしいことです。何からの理由で、接取量が低い人は、サプリで補うと効果があるようですが、抗酸化物質を十分に食事で取れている人では、それ以上の効果は期待できないようです。
 
今後、さらに網膜に抗酸化物質が集まるように、製品の改良が進む期待があります。
今後もウオッチしていきましょう。
今回は、過去に食物によるアナフィラキシーになったことのある患児は、その後もアナフィラキシーを起こすのか?についての論文紹介と、小麦アレルギーとアナフィラキシーとの関連について書きます。
アナフィラキシーの子どもの予後  Vlieg-Boerstra BJ Clin Exp Allergy. 2008;3.
 
過去に、食物アナフィラキシーを経験したことのある子供たち441人に、負荷試験をおこなって、食物アナフィラキシーの経過を検討した。この中で、特に重症な症状であるアナフィラキシーを起こした子供において、その経過を検討した。
 
アナフィラキシーは、食後2時間以内に循環器呼吸器症状のでたものとした。
 
対象は、21人で、アナフィラキシー発症から、平均 4.25年、経過していた。再度、8-14.4歳(平均6歳)になった時に、負荷をして、食物アレルギーの経過を確認した。食物アナフィラキシーの評価法として、精度が高い 2重盲検負荷テストを施行した。
 
6人では、何も起きなかった。 (29%): ミルク3人、卵1人、ピーナッツ1人, 小麦1人であった。
 
陽性でも、重症反応はなかった。 18人は感作が不確実な状態であった。結論として、過去にアナフィラキシーがあっても、その後、確認すると、再度、重症になることは少なかった。
 
域値以下になっている患児においては、再評価を行わなければならない 。PMID: 18771485
 
 
食物依存性運動誘発アナフィラキシーについて、説明をします。

小麦アレルギーは、小児では、卵、牛乳に続く3番目に多い食物アレルギーであり、全体の7%前後を占めます一方、成人の食物アレルギーでは、15%を占めます。(報告により、若干異なる)。

FDEIA(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)は、原因食品を食べた後に運動すると、おこしてくるアナフィラキシーです。つまり、子どもが、学校で食後に具合が悪い場合、走って家に帰らせたりなどすると、さらなる悪化が起こることがあります。そのため、学校などでは知名度の高い病気です。
 
小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーFDEIAは、小児では、 FDEIA全体 の57%、成人ではFDEIA全体 の85%を占めるとされています。
 
さらに、食物、運動、アスピリンが、そろった時に、症状を起こす人がいます。

小麦アレルギーでは、小麦グルテンの主要成分(60%)のグリアジン(特に、ωー5)と、グルテニンが主要アレルゲンと考えられます。小麦アレルギーが治った人では、特異抗グリアジンIgE抗体が低下しています。
 
小麦依存性運動誘発アナフィラキシーでは、血中グリアジンあるいは、血中グルテニンが上昇しています。
 
アスピリンと共に、プラスタグランジン製剤(平滑筋を収縮、血小板凝集剤)を前投与すると、血中グリアジンの上昇の抑制がみられる。 FDEIAには、アスピリンを負荷すると、症状がおきやすく、プラスタグラン投与で起きにくくなります。
前回、妊婦のアナフィラキシーについて書きました。今回は、もう少し一般的に、アナフィラキシーについて書きます。
 
アナフィラキシーは、重篤であるために話題性が高いですが、背景にアレルギーの増加があります。その重症型であるアナフィラキシーも増加しています。日本では、アナフィラキシーの定義が、まだ、混乱しています。又、諸外国で、アナフィラキシーの原因因子の頻度が異なっていますが、アナフィラキシーの診断が難しいことがあることを読み取ってください。
 
論文によるばらつきはありますが、順序として多いのは、以下の3疾患
 
 疫学調査結果(論文)よりアナフィラキシーの頻度を推定した。
  ペニシリンアレルギー0.7% - 10%,
  造影剤アレルギー0. 22%ー1%、
  虫刺アレルギー 0.5%ー5%
 
一方、有名だが、実際には以上の場合より少ないのは
  食物アナフィラキシー 但し、アナフィラキシーとの誤診が多い。
それでは、それぞれの論文の内容を見てみましょう。
 
米国のアナフィラキシー3篇の論文
 
1)NEISSと呼ばれる全米規模の健康障害関連サーベイランスのしくみがある。2003年の2ヶ月間のデータでは、食物関連イベントによる20,821人の病院受診数のうち、アナフィラキシーは2333 人、
 
食物アレルギーによる入院520 人、平均年齢26歳、5歳以下24%、6歳以上では、魚類、5歳以下では卵、フルーツ、ピーナッツ、ナッツであった。
 
診療録では、エピネフリンを受けたのは19%、死亡したのは、ゼロであった。アナフィラキシーと思われる症状の57%は、アナフィラキシーとの診断名はついていなかった。
 PMID: 18206508 J Allergy Clin Immunol. 2008 ;121:166-71.
 
2)1990-2006年にかけて、ニューヨー クでは、20歳以下のアナフィラキシーによる入院が4倍に増えている。男児は、女児の1.4倍に起きていて、ピーナッツが原因が一番、多くなっています。
Ann Allergy Asthma Immunol. 2008 ;101:38

3)25 年間 (1978-2003年)、大学付属のアナフィラキシーセンターの診療録を調査し、質問表を用いて患者を追跡した。
 
601名で評価できた。患者は、1-79歳(平均37歳). 女性が62% を占める.
 
アナフィラキシーの原因は、41%に判明した。食物は131人(22%), 薬剤69人(11%), 運動31人(5%)であった。 223人(37%)は、皮膚テストが陽性のアトピー素因を持ち合わせていた。87%の患者が蕁麻疹と血管運動性浮腫を持ち合わせている。
 
マストサイトーシス(マスト細胞が増加する病気)は、3名にみられた。 アナフィラキシーを一旦、呈した患者でも、時間と共に、アナフィラキシーの頻度や重症度は減弱した。Ann Allergy Asthma Immunol. 2006 ;97:39.

フランスでは、アレルギー関連救急受診は、0.2-1% 。
 重症のアナフィラキシーは、1万人に1-3人、そのうち死亡は、0.65-2%、すなわち100万人に1-3人と推定される。学校における食物によるアナフィラキシーは0.065%と算定.
米国やオーストラリアではもっと数値が多い。 Allergy. 2005 ;60:443 PMID: 15727574
 
英国
アナフィラキシーの頻度は増えていて、2001年には10万人当たりの6.7人から、2005年には7.9人と増えている。一生のうち少なくとも1回のアナフィラキシーを経験した人は、2001年は、10万人に50人の割、2005年には、 10万人に75.5人の割で増えている。
 
この時期にアドレナリンの処方量は、97%上昇している。2005年の終わりには、37,800の人がアナフィラキシーを経験している。英国では、1,333に一人の割で、アナフィラキシーを経験している。 J R Soc Med. 2008;101:139
 
日本
21年人口動態統計では、アレルギー疾患に関連した死亡者数は2,190名であり、「喘息」による死亡は2,139名(97.6%)、「スズメバチ、ジガバチ、ミツバチとの接触」による死亡は13名(0.6%)、食物反応によるアナフィラ キシーショックによる死亡は4名(0.2%)との数値が出ています。
 
ここで、注意したいのは、日本では、分類が異なること。アナフィラキシーであることが明らかであるハチアレルギーに対し、喘息の誘因は多様であり、アレルギーによる死亡とするのは断定できない症例があるはずです。
 
こうした諸外国の統計とは結果が異なる理由は、日本のアナフィラキシー死亡の疫学数値は、多様な立場の医師による診断書を、死亡の基本としているため?
アレルギー医学専門誌(J Allergy Clin Immunol 2012;130:597-606)に、妊娠中に起きるリスクのあるアナフィラキシーについての解説と、注意喚起を促す論文がありました。
 
アナフィラキシーは、アレルギーの急性期反応の重症型で、血圧低下、意識低下、窒息(喉頭浮腫)、心停止などにより、重症であれば、死亡することがあります。
 
1型アレルギーは、本来、生体に飛び込んできた異物(抗原)を、すばやく除去するために発達した免疫反応ですが、それが過剰に強く働くことにより、ショック状態となり、体中へ供給される血液量が低下します。
 
昨今、アレルギーを持つ女性が増えてきましたので、妊娠中の喘息や、アナフィラキシーの危険について、注意喚起する記事が増えてきました。アレルギーの多い外国では、すでに、妊婦の10人に1人に喘息があり、妊娠中の喘息に対する治療検討が続けられています。
 
今回話題のアナフィラキシーは、喘息より頻度は低いですが、妊婦対策としてより重要性が増していると思われます。
 
対策の基本は、その女性の過去の既往や出来事から、アレルギー反応が起きる要因をしっかり把握しておくことと書かれています。当たり前のことですが、案外、妊婦も医師も抜けてしまうことがあるようです。
 
アレルギーの原因は、個々の女性で異なりますので、過去の出来事をしっかり評価して、その因子をリストアップし、妊娠中は特にしっかりと避けてくださいとのことです。そして緊急時には、妊婦自身で注射できるエピペンの用意しておくことも大事です。
 
妊娠の初期におきるアナフィラキシーの原因は、一般女性と同様に、食品、吸入性抗原、ですが、いよいよ、出産時期が近くになると、さらに注意を要するイベントが加わります。
 
例えば、産道感染を防ぐために、出産近くになって開始される抗生剤、医療関係者がはめるゴム手袋など、予め、これらのアレルギーの有無をチェックしておくことが求められます。実際に、以下に書くように、こうした物質が危ないのです。
 
引用論文によると、各国から集めた妊娠中にアナフィラキシーを起こした女性は、23名いました。8人は、抗生剤(βラクタム)、6名にゴム手袋(ラテックス)、その他の薬剤、ハチ毒、蛇毒などがありました。
 
母体の死亡はなかったのですが、1名に胎児死亡、早産を含めて、7名に後遺症が残りました。
 
テキサス大学の60万回のアナフィラキシー女性の調査では、19名に出産時アナフィラキシーが報告され、10万回の分娩に2.7回でした。その主たる原因は抗生剤と考えられました(11/19)。

出産近くになると、抗生剤へアレルギーは、それが頻度は低いものではあるものの、重大なイベントを引き起こすことがあります。

想像できるように、母体にアナフィラキシーが起きると、胎児は低酸素にさらされます。動脈の酸素は、妊婦の1/3 から1/4が胎児に供給されています。ある程度の予備力をもって、酸素が胎児に配られるのですが、母体の酸素低下は、直に、胎児の酸素低下です。
 
低酸素リスクを少しでも避けるためには、アナフィラキシーを起こした妊婦は、左を下にした側臥位をとります。心臓へ血液が戻る量が最大とするための姿勢です。起き上がったり、座ったりは絶対避けたいです。血圧は最低でも90mHgは保ち、子宮への血流を維持します。

この論文では、減感作療法は、妊娠中をさけて、妊娠前後にすることを勧めています。
 
著者感想
食物アレルギーの増加に伴い、食べて治す治療法の減感作療法が盛んになってきています。食物アレルギーは、治りやすい小児期に、これらのアレルギー状態を無くしておくことが求められます。
 
女性は、将来の出産などのことを考えると、アレルギー物質を正確に把握しておきたいです。抗生剤は、必ずしっかりとした名前で記録すべきでしょう。抗生剤は、必要があって投与するものですから、ばくぜんと抗生剤とだけ言っても、医師は困るでしょう。
 
予防を目的とした除去食を避け、離乳食を遅れることなく導入します。以前のブログでも紹介したように、乳児が初めての食べ物を受け入れやすい時期というのがありますので・・・。
喫煙者は、肺のいろいろな病気がおきてきます。女性の喫煙が不利であることを書きました。
 
長い間、刺激的な有害物質を吸い込んでいると、肺はさまざまな免疫反応を起こします。体内は見えずとも、病気にならないための、静かなる免疫の戦いが続いています。
 
そうした反応で、人が寿命を縮めてしまうか、影響が少ないかは、個人差が大きいです。
 
本人はタバコは吸わない、夫も吸わない家庭の主婦でも、長期間の有害性の吸入物質による、健康被害があります。
 
女性が、長きにわたり吸い込んでしまう有害物質とは、何でしょうか?女性は、室内で過ごす時間が長いです。その結果、女性は、冬の暖房時に室内に漂う物質にさらされ、毎日の料理の際に、吸い込んでしまう物質が多いのです。
 
空気をよごさない暖房手段の先進国では、女性における暖房や調理の影響はでにくいです。
 
しかし、発展途上国では、エネルギー源が限られ、室内暖房物質による空気汚染で、女性の呼吸器のトラブルが多くなります。特にバイオマスといわれる生物起源の材料が、そうした有害物質を発しやすいです。
 
女性の肺は、元々気道過敏性が高く(喘息になりやすい)、刺激物質を分解する能力が低いです。

外国の女性の話ですが、遊牧民などで、せまい室内で、動物のフンなどを燃やして、料理をしたり、暖房の材料にする寒い地域では、女性の健康被害が大きいと言われています。
 
そこまででなくとも、石炭なども要注意物質と言えます。肺に炭粉が沈着する疾患を起こすのです。

炭鉱夫に見られたじん肺は、直接に、粉城の石炭を吸い込んでしまいますので、わかりやすいのですが、こうした直接的な場合ではなく、暖房用の石炭からも問題が起きます。
 
しかし、日常的に少しづつ吸い込む物質がはっきりと病気として自覚されるまでは、かなりの時間がかかるため、高齢にならないと発見がされないことが多いです。
 
一般的に、肺に吸い込まれた物質は、リンパ流にのって体外にでていくことが期待できますが、何か他に病気をかかえていると、そうした働きが起きにくくなります。たとえば、糖尿病があるとか、結核があるとかです。
 
昔の日本ではみられたでしょうが、今は、インドなどで、石炭を長く吸い込んだ人で、結核の発症が高くなっています。炭素やケイ酸のある部位には、肺のマクロファージの機能が落ちていて結核菌が増殖しやすいようです。
 
炭の粉をためこんだ肺のリンパ球はやがて破裂しますが、自覚症はありません。そうしてそれをおおいかぶせるように肺の線維化という現象が進みます。線維化の進行程度は、個人差が大きいものです。
 
以前の日本は、炭で暖を取りましたので、リスクは高いかったでしょうが、室内の密封度が低く、冬の期間も限られ、臨床的には問題が少なかったようです。他にも肺の病気が多く、慢性の肺病変は、発見される前に命がつきてしまったのかも・・・。
 
いずれにしろ、吸入する物質については、気をつかいたいものです。セルフのガソリンなども、吸い込まない工夫をした方がよさそうです。
 
又、トイレの掃除の祭には、換気をしっかりしながら、時には手抜きで行きましょう。

禁煙を実行するのは、困難です。一般的に、女性の方が禁煙の成功率が低いと言われています。その理由は、どこまでわかっているのでしょうか?
 
タバコを吸うと、タバコ依存症になるわけですが、その理由は、脳がいつもニコチンを必要とする状態に変化しているからです。
 
喫煙を続けると、脳の細胞のニコチンを感じ取る部分(ニコチン受容体)において、数が増加し、ニコチンを効率的に結合できる状態に変化しています。その結果、ニコチンが少なくなると、受容体はニコチンを結合していない空の状態の受容体となります。すると、脳は、空腹であると同様に、脳が空になったと感じますので、ニコチンを補給したいとの欲望が強くなります。
 
喫煙者では。脳の受容体の数と効率性が増し、よりニコチンをすばやく感じ取れるように変化します。ですから、いつも、ニコチンを欲しがる脳の状態となります。
 
非喫煙者と比べて、喫煙者や禁煙者において、ニコチン受容体がどのような構造的な変化がおきているのかを調べる研究は、盛んに行われています。
 
一般的に、細胞表面に多数存在する受容体は、常に新しくつくられ、そして古くなると壊されて、いつも入れ替わっています。この変化は、受容体のターンオーバーと呼ばれます。
 
喫煙者の受容体は、置き換えのターンオーバーの速度も変化しています。その結果、ニコチンが減ってくると、喫煙者の脳では、ニコチンが受容体に結合していない状態となり、ニコチンを受容体に結合させたいとの欲望が起きます。
 
これが、ニコチン依存症が起きる理由とされていて、喫煙者が禁煙をすることを難しくさせている理由です。
 
喫煙者の脳細胞のニコチン受容体と、非喫煙者のニコチン受容体を比べると、喫煙者では、β2*-ニコチン受容体と呼ばれる部分で変化が起きています。
 
喫煙者が禁煙を始めると、脳細胞のβ2*-ニコチン受容体は、一時的に増加し、約3週間位で元にもどるという現象が観察できます。
ニコチン受容体の変化の研究は、世界的に、ニコチン依存症を治療する薬の開発に利用されています。

Arch Gen Psychiatry. 2009 June; 66(6): 666–676.
喫煙している男26名女28名に、禁煙をしてもらい、その1週後の脳のβ2*-ニコチン受容体の変化の男女差を検討しています。その結果、女性の方が、受容体の変化がおきにくいことがわかりました。つまり、男性脳の方が、体内ニコチンの変化に、すばやく反応できる可能性がわかったのです。
 
β2*-ニコチン受容体が、依存症にどのように関与しているかは、まだ不明な部分が大きいのですが、女性の禁煙をすすめるためには、従来の治療法の抗ニコチン治療では、男性より、女性は効果がうすく、治療に限界がある可能性があります。エール大学からの報告では、女性用の禁煙薬剤の開発が必要であると書かれています。
 
Arch Gen Psychiatry. 2012 69(4):418-27.
性差は、禁煙のためのニコチン療法の有用性に影響します。 禁煙に伴うβ(2)サブユニット(β(2)*-nAChRs)を含むニコチン受容体の変化を調べると、これらの受容体に、性差が存在する様子を観察することができます。男女の喫煙者において、非喫煙者との比較を試みました。
 
デザイン:
男性 26人と、女性28人において、放射線ヨウ化物を用いて、脳の磁気共鳴映像を行いました。同様に、年齢がマッチした男性26人、女性 30人の非喫煙者を対照として、脳の磁気共鳴映像を行いました。
 
結果:
喫煙男性の脳(線条体、皮質など)におけるβ2*-ニコチン受容体は、非喫煙者と比較して、より利用度が増している結果が得られましたが、女の喫煙者は男性のような変化は起きにくいという結果となりました。 女性において、皮質と小脳のβ2*-ニコチン受容体は、検査日の黄体ホルモン(プロゲステロン)値と、負の相関がありました。女性では、禁煙することにより、禁煙に伴う喫煙要望が強くおこり、抑うつ症状も見られました。
 
結論:
脳におけるβ2*-ニコチン受容体は、男性と女性の間で明確に異なるようです、そして、女性では、β2*-ニコチン受容体は、女性の黄体ホルモンの影響を受けています。
 
β2*-ニコチン受容体の構造的な変化が、依存症に及ぼす影響については、全貌は明らかではありませんが、女性の禁煙をより効果的に、進めるためには、ニコチン受容体に作用する薬だけでなく、非ニコチン性の薬物を開発する必要があるのではないかと考えます。PMID:22474108

線条体(せんじょうたい striatum)は、終脳の皮質下構造であり、大脳基底核の主要な 構成要素のひとつである。線条体は運動機能への関与が最もよく知られているが、意思 決定などその他の神経過程にも関わると考えられている。ウキベディアより
アンマスクト ツベルクローシス という言葉を知っているだろうか?
 
そのまま訳すと、暴露された結核という意味だが、結核に感染していることが、表に出ると言う意味です。
 
この現象は、人が菌からの攻撃に対して、症状をだしながら戦っていることを理解する上で、とても参考になる事実なのです。
 
つまり、菌が強ければ、それを治すためには、病気の症状はでるものなのです。本日は、これについて書きます。参考資料は、ヨーロッパ呼吸器学会雑誌からイタリア発の解説です。ERJ 2011;39:1064
 
今回は、日本での病気の話しではなく、エイズと結核が蔓延している外国の話しです。
 
人は症状を出しながら、病気を治していることへの理解です。つまり、治る過程で、病気とされる症状は出るのです。
 
エイズの人は、免疫反応が低下しているために、結核にかかっていても、体が反応しません。
 
すなわち、病気としての症状がでないのです。熱がでたり、咳や痰がでたり、はたまた、肺に陰影や空洞などの変化がおきません。症状がでないというより、出せないと言うのが近いかもしれません。高齢者は重症肺炎でも、熱が出ないのに似ています。
 
エイズの病気が進んでいる人たちに、組み合わせエイズ治療薬cARTを投与すると、結核の特徴的な症状、熱、咳、陰影が出てきます。すなわち、免疫反応が回復してきたのです。

これは、病気が悪くなっているという印象を与えてしまいますが、実は、人は結核菌を排除しようとして症状を出しているのです。
 
エイズの治療薬が、開発途上国でも、広くでまわるようになりました。しかし、このエイズ治療を開始することで、かえって、病気が起きてくるような印象になります。
 
結核菌を抑えるためにおきる免疫反応によって、エイズ患者は苦しむことがあります。調整されていない免疫は、患者にとって、悪い方向に働き、つまり病気が重くなった印象になってしまうのです。過剰で効率の悪い免疫反応があります。
 
先進国では、エイズに治療に伴って結核がおきてくることは、治療を開始したエイズ患者の0.1-1%におきています。ヨーッパ・北米における2万人のエイズの治療では、0.9%に、結核がおきたとの数値がでています。一方、南アフリカなどのエイズ流行地では、5-11%という高い割合で、エイズ治療に伴い、結核が発症してしまうのです。
 
日本においても、以前から、一般人において、結核の治療を開始すると同時に、新たに咳や熱などの症状が、増悪する事実が知られていました。その理由は、菌の排除が抑えられていた人が、治療薬により菌が減って、免疫が回復するためらしいのです。
 
これは、エイズ治療に伴う結核の発症と、同様の現象であろうと思われます。
 
治療することにより、かえって病気が悪くなる事実のことを、覚えておきたいです。もちろん、免疫がうまく働けば、病気は治っていくのですが・・・。されば、人の病気が起きる理由についての理解が進むのではないでしょうか?
 
つまり、医者に行けば、すぐ、薬が熱や咳をとってくれるわけではなく、安静にして待つことが大事であるのです。
 
そうした意味では、体の中に毒があるとした、漢方医学的な病気の考え方には、間違いがあったことも理解しやすいですね。