裸の木蓮 三たび | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

「裸の木蓮」 

相田みつを

 

いま庭の木蓮は裸です 

枯葉一枚枝に残しておりません 

余分なものはみんな落として 

完全な裸です 

 

しかしよく見ると 

それぞれの枝の先に 

固い蕾(つぼみ)を一ツずつ 

持っています 

 

木蓮にとって 

一番大事なもの 

ただ一ツをしっかりと 

守りながら 

冬の天を仰いで 

キゼンと立っています 

 

キゼンということばを 

独占したかのように 

裸の木蓮は 

寒風の中に 

ただ黙って立っています

 
普段自転車で通る道、ふと止まって見上げてみた。木蓮が葉をすべて落とした裸の状態で聳え立っていた。
 
この冬は暖冬かと思っていたが、小寒前後で一気に寒くなり、本格的な冬となった。
 
冬の木蓮は見るからにして、「毅然」という言葉がよく似合う。
 
 
意志が強く、物事に動じないさま。意志・信念を断固貫くさま。(大辞林)
 
真に美しいものとは、強さを秘めている。
 
年に一度美しい花を咲かせる花々は、花を咲かせる前の姿が、本来最も美しいのかもしれない。冬の寒さに耐え、幹いっぱいにエネルギーを蓄え、その時をひたむきに待つ姿は静かに美しい。
 
人間も、何事も受け入れる柔軟さと、それでもなお自分を失わない信念と覚悟を持ち合わせていたいもの。そのためには、どんな逆境に接しようと、心眼で物事を見極め、冷静に判断し、切り抜けることが大切。心静かにあるべきなのだろう。
 
今年もまた木蓮に教えられた。
 
 
 
「裸の木蓮」
「裸の木蓮 ふたたび」