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月光 Moonlight

ジャー・パンファン/PACIFIC MOON RECORDS
 ジャー、このやろー!出せば買うと思ってるだろ!まぁ、いいけどさ。タイトルどおり、ベートーヴェンの時代より幾多ある『月光』の名のついた名曲を連想させるピアノのこぼれる感じには心打たれる。寝てる人を起こさないようなゆったりと繊細なストリングスの受け皿があって、粘りを弾く二胡の演奏が滲まずに引き立っている。感情込め過ぎの「顔弾き」みたいな焦りや過剰な人の気配は皆無で、風景だけがそこにある密やかな森の『月光』からの、郷愁を誘う美メロ『郷』が極付けの曲順。『Tango Of Asia』は、情熱ラテン系の意欲作なんだけど、全体のバランスからすると、別のCDに入れた方が良かったかも?

組曲 移動観覧車

組曲 移動観覧車

 

机 a.k.a 幼虫社/浮遊代理店
 演劇のサントラ。初めから音量を上げてCDをかけた。サウンドエフェクトとして、グワッ!と抱囲される音だと聴く前から想像でき、それは当たっていた。発表する作品には職人仕事以上の芸術的精神性を感じる『幼虫社』机ソロワーク。劇場のスモークの微香が鼻に蘇る中、ジッと役者を見ているような、観客に見張られているような時間がゆっくりと進む。まるで歯車の仕掛け舞台をイメージさせるマイナー調の緊張感。ダークな音だが、暗闇でなく聖域を感じさせる。遊園地モチーフの道化師BGMや、歯車を連想させる時計音と音楽の絡み、木の温もりと鉄の硬質感がゆっくり渦巻状に。京都のみで上演されたという演劇『移動観覧車』の舞台を観てみたい。

ROCK AVEC SELFSERVIS

ROCK AVEC SELFSERVIS

YASUO MACHINE/eri-rin
 サンプリングロック。イイ感じの横ゆれ入ったグルーヴィートラックス。おしゃれ度高し。なんだろ、ループループループの展開なんだけど全体的に機械臭のしない「機材マニア」とは全然逆ベクトルの「音楽マニア」な印象音の選択。ファンキーなレコードとかたくさん聴いてそうだなぁーという盛り上がり。これのおかげで、うちのCDラックにも、パフィーの歌が入ったCDがささってるということになった。アグレッシブなドラムループも全部楽しげ。ファンク・オルガンのリフとブラックっぽいコーラスの、サンプリングネタの出し具合が気持ちよすぎてニクい。YASUO MACHINEのCDは、あと3種類位あったはず。彼の消息知りたい。

朝

 

田中亜矢/SAL DISC
 このギターと声で出続ける限りは買い続ける信頼の良盤。シンプルなフォーク。雨、雲、河、Rose、ホワイトリリーなど身近な自然をモチーフに、遠くへ行った人、離れた思い、君の涙、春は終わった、と大切な思い出になった悲しい事を歌っている。失恋でなく回想の歌だ。「深い川はどこまでも流れて、どんな闇も映してゆらめきつづける」という『闇夜』。流れ続ける時間は必ず傷を癒して、注いだ愛を誇りに変えるんだね。「ルルルル~」という純ハミングの良さも特筆したい!新宿ヴァージンメガストアのレコ発を見に行って、ギターの音色にも驚いたんだ。清水が湧き出て足を浸すような、これがマーティンの響きかと、その時初めて名器の偉大さが分かった。

男友達の部屋

男友達の部屋

 

原作:佐藤愛子、朗読:中野良子/パルナス

 エッセイの朗読で、コツコツ集めているシリーズ。とりあえず、佐藤愛子。遠藤周作は満州から日本へ来た中学生時代、隣の女子校の綺麗な娘を「マドンナ」と呼び、モテない男3人組でヒューヒュー言いながら尾行などをしていた。なんと、その時の美人マドンナが佐藤愛子だ。二人は年を経て作家として再会する事になる。彼女が離婚をして『男友達』になった元夫の話や、遠藤周作とのエピソードを語るにあたり、エッセイの中ではそれぞれ、ひつじくん、たぬきくん等の匿名で登場するが、遠藤周作側のエッセイでは本名で派生エピソードが語られていて、ファンにとっては相関関係が読み取れる。遠藤周作の若さ故のバカさ、貧乏自慢が描かれている。

エレファントカシマシ単曲全集

エレファントカシマシ単曲全集

エレファントカシマシ/台北盤
 悲しみの果てには何があるのだろう、悲しみの果てを俺は知らない。シングルCD2枚ならんでるだけのジャケットだったので、帯の画像をのせてみました。この台湾製造ベストCDは、もう700以上の種類が出てるのですね。ロック、アイドル、アニメ、演歌、なんでもありです。日本でアルバムになる前にシングル集めて、ニューアルバムつって出すんですから台湾、香港おそるべし。でも気をつけないとカラオケトラックばっか入ってるのもあるよ。エレカシのシングル全集なので、ブレイク前の曲とか、誰もが知ることになった曲とか、たんまり入っている。頭をもしゃもしゃ掻きながら、古地図を持って、くだらねえとつぶやいて、冷めたツラして歩てもみるよ。

YMO単曲全集

YMO単曲全集

YMO/台北盤
 シングル4枚ならんでるだけの、このジャケットは何でしょう?台湾製造の詰め込みベスト盤。その昔、ファミコンやゲームボーイのカセットで秋葉原の路上で売ってる50 in 1とか100 in 1カセット的な、著作権無視のクレイジーバリューパック。中身はYMOのシングルヒストリーといった選曲『Technopolis』『Solid State Survivor』にはじまり『以心電信』『希望の河』までポップなYMOを掻い摘まみ全18曲。買いの一枚だけど、買っちゃダメ絶対。とりあえず買って中を見ると、歌詞カードの日本語間違いが多すぎで涙。ところで、数年ごとに出るYMOリマスター盤ってどう思う?あんなのこそ買ってる場合じゃないよね。

ミラクルトレンズ・サウンドトラック

ミラクルトレンズ・サウンドトラック

エーツー、他/ノーブルママ
 エーツー結成五周年で行われたイベント『エーツーよかったよ』で行われたヒーローショー「ミラクルトレンズ」サントラ。公演は、露骨キット、ハズレッシヴ、おうさわくん、トウキョーなど、彼女を取り巻く当時最強の布陣だった。エーツーのカセットテープからのボーカルアカペラトラックを中心に、リミックスの手法はインスタントテクノでもワンタッチハウスでもない、高度なスタジオワークスで、ガシガシのヘヴィーメタルミックスを実現!しかも曲間にライブ歓声。オフィスぎゃふん公認の完全限定で関係者のみに配られた。ジャケットは『ExTEND』のフライヤーでお馴染みのヒタチトロニクス描き下ろしのエーツーリーダーと2号。奇跡のブートレッグ。

No Damage

No Damage

佐野元春/エピックレコードジャパン
 やっぱり愛すべき曲は『サムデイ』『情けない週末』だけど、一番初めの憧れは『グッドバイからはじめよう』だった。「ちょうど波のようにさよならがきました。言葉はもう何もいらない、ただ見送るだけ」こんなことを唄った歌があるのだな、こんな歌があってもよくて、レコードになっているのだと、感動しつつ芸能界ではなく音楽界の存在を知る。そうだ、音楽界と芸能界というものが世の中にはあって、この人は雑誌には出てるのに、なんでテレビには出ないのだろうかとか、そういう疑問を持ち始めるほどの僕は年齢だったし、そのアーティスト然とした佇まいと、歌謡曲では体験したことのない佐野元春の節回しに、音楽界を覗くドアを開けたのだった。

幸せの骨頂

幸せの骨頂

清水ミチコ/MIDI inc.
 1987年のライブ生録。うわっでた!矢野顕子弾き語りモノマネ。しかも、ネタ系のマネでなくアンコールでマジ完全コピーあっこちゃん炸裂。桃井かおりと矢野顕子のマネは神の領域。一方、ぜんぜん似て無いのがドラえもん「ボク、大山のぶ代!」。これをレパートリーの一つと言い切るずぶとさも好き。ドラえもんが新しい声優になっても、伝統芸として続けて欲しい大山ドラ代。CD収録ライブでは声真似だけでなく「ドだけのジャズ」や「有名歌手のアレンジするネコ踏んじゃった」等、ピアノ名人芸も披露している。永六輔さんに背中を押され、真面目にやってきてよかったねー、矢野顕子と連弾で唄ったんだもの、ものまね界のジャパニーズドリームだよ。