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ポトス

ポトス

 

ひうらまさこ/Otter Music

 音数も少ない、曲も短いおとなしいピアノと歌物語。「おかしな夫婦、アボガドを育てた、それがなりわいなのさ~♪」東欧民話か、まんが日本昔話か、ではじまる平凡で絵本のような風景。しかし、異世界。すこし、どこかおかしい。おまたせしました。はっきりいって数年振り「私はいいと思うけど世の中にウケるかどうかはわからない」でなく「老若男女、君も買ったら気にいるよ!」と言い切れます。3枚目のアルバムらしいのだけど、この過程でしか聴けないような、ベテランになったら消えてしまう趣の、ただ良いとしかいいようのないキラキラの粉がかかっている。ひうらまさこがライブでピアノ弾き語り、苗字のない「まさこ」だった時代のCDR。

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三柴理 Electric Trio/RED FISH RECORDS
 『ピアノのなせる業と神髄』以来、三柴理の名前がついてるものは「あ、こんな作品出してたんだ。買わなきゃ」と思わせる何かがある。Roland全面強力で、三人のパートの表記にV-Drums、V-Bass、V-SynthとFantom-X6、X8と楽器紹介。セッティングの写真もばっちり。楽器フェアのステージっぽいプログレ。音ごとに左右にパンを分けたり、ピアノアルバムでなくシンセで魅せる。深町純ばりの幻想『森の妖精』『Moon Orbit』。バンド特撮の『ヤンガリー』もトリオアレンジ。三柴アルバムで恒例?ラスト曲の筋少カバーはギター本城聡章フューチャリングの『孤島の鬼』。

Do you like pop music like a ”he, she & I”?

Do you like pop music like a “he, she & I” ?

Quinka,with a Yawn、HARCO、トミーザグレイト、狐の会、Emile、on button down、KIMONO MY HOUSE、残像カフェ、パウンチホイール、V.A/Coa Records

 Coaレコ周辺バンドのカーペンターズ・カバーコンピ。『イエスタデイワンスモア/キンカウィズアヨオン』目的で購入。少ない音でしんしんと降り積もる歌声。正直、他のバンドはピンと来なかったけど、FM番組を映像配信していた「大江千里のLive Depot」でのHARCOとの生セッションが良かった!けっこう感激。当日やってたサンプリング飛び道具入りのカントリー風アレンジ『ジャンバラヤ』ってこのCDに収録されてたの気づいて聴き直した。

Romancing mika

Romancing mika

東京マリー/SuiDream Records
 いきなりクライマックスを冒頭にぶつけ、さっと暗転。そこから時間をさかのぼり、冒頭シーンへの過程を見せてゆく演劇のように、このアルバムは進行する。全編貫くねじれて疾走するギターと真っすぐなストリングスの妙は、恋愛と哲学の織りなす格闘の様相。夢のような恋愛と、恋愛のような哲学。その時の気持ちだけが確かな二人の物語。本気のウソツキ東京マリーの言葉の世界は、聴く者の恋愛体質と同期して華麗なマルチエンディングを迎えるのだろう。という文章を、チビ太さんのイラストのインディーズ盤を私がジャケ買いした縁で寄稿した思い出。宣伝用のチラシはたくさんもらったけど、結局CDのサンプル版はもらえなかった思い出。

Zemankova

Zemankova

 

Zemankova/independent*

 岸田今日子がもしバンドを組んだら?というコンセプトから立ち上がった、ループシーケンサーを核とする電子音響の不定形ユニット。雨音で始まり、電子音楽、造語の歌、語りと展開する1曲目『Pluvo(雨の唄)』がアコースティックギターで盛り上がり、自身の多重コーラスで終わる。予測の上を行く。森に立ちこめる霧や歯車の軋み、機械油や煤汚れなどのデジタル表現では出にくい箇所を見事に表現している。エスペラント語を用いて、指揮者エンジニアのアフロチカが書き下ろす詩も、中世ヨーロッパ的な響きを醸し、物語り性が息づいている。なんというオリジナルな魅力。北欧の幼虫社だ。チェコアニメみたいなPVもマッチしている。

Rolling Boys & Girls

Rolling Boys & Girls

大正九年/AGAM RECORDS
  何年ぶりのリリースかは知らない。たまたま某九年関係者の日記ブログに回想緑が書いてあって、そこでこの復帰アルバムが出たことを知った。そういえば、その九年関係の方と接触したのが、デビューアルバムを紹介した私のWebがきっかけだった。無名だった九年のCD『昼寝』のジャケット画像付き紹介など、ウチしかなくて、本人が見て喜んでくれたと知らせてくれたとこからだったなぁと懐かしみー。より、POPSに寄った楽曲と、向上したテクでの過去曲のリアレンジ。求めているへなちょこ感であって、パワーアップではない。その辺をちゃんと満足させてくれる復活。機材は買い足さなくてもいいから30歳になっても40歳になっても続けろよ。

タイ・カンボジア幻の古楽器

タイ・カンボジア幻の古楽器

若林忠宏/J-MUSIC CORPORATION
 カンボジア系のCDを探していて唯一見つかったこれ。演奏者はタイ・カンボジアに限らず、世界中の独特な楽器の演奏音源を残しておられるようです。ルーツ的なことに思いを馳せると、遙かなるシルクロードからの迷い道でジャングルに離脱した独自の集落で、進化を拒んだ密やかな音楽と言いたくなるような味わい。ガムランみたいなもの、二胡みたいなもの、琵琶みたいなものなど、似ているがそのものとはちょっと違う楽器のハーモニー。インドネシアの濃厚なネットリとした雰囲気にくらべると、若干カラッとした乾いた軽快な太鼓の音が目立つ舞踏音楽です。文化が一度途絶えたところからのクメール文化の掘り起こし伝承は応援したい。

火曜日のボート

火曜日のボート

Quinka,with a Yawn/Coa records
 フロントの鍵盤二人が中央で対峙してて横顔メインなライブ見て、やってる佇まい、手法が好きになった。ライブで知ったので、ツインボーカルかと思ってた。CD並みのコーラスワークが生演奏でも考えられててキレイだった。『サチコ』みたいな掛け合いとかかわいくて見事。このやんわり加減で高田渡カバーやってるし。入口で物販やってたら絶対買ってたけど無かったので、後日思い出して買った。次のCDのリリースの時にインタビューをけっこう見かけて、バンド名にどうしてもヤマハのQYの「Q」「Y」を入れようと思ったと話していて、奇妙な親近感わく。QYとは手のひらに乗る音楽スタジオのこと。

散歩の達人 presents 中央線ソングス

散歩の達人 presents 中央線ソングス

友部正人、武蔵野タンポポ団、斉藤哲夫、久住昌之、高田渡、かねのぶさちこ、よしだたくろう、助川久美子、キセル、峯田和伸、バンバンバザール、はちみつぱい、中山ラビ、RCサクセション、明田川荘之、スイス団、THE BOOM、他/ビクター
 「僕は今、阿佐ヶ谷の駅に立ち~」のCDをやはり手元に置きたくて検索で見つけたら「走り出せー中央線~」は、もちろん「アイデンアンドティティはぁ~」まで入ってればもう、プロの中央線住民にとっての最強コンピでしょう。朝も夕も、もう、誰も飛び込むな。飛び込みたくなった時には『一本道』を聴かなくちゃ。そのとき月が話しかけるはず。中央線のあの駅もあの駅にも住んだけど、最終的に高円寺駅徒歩3分で住宅ローン組みました。

dok-s project

dok-s project

dok-s project/Dog run record
 生ピアノLIVEサーキット2006を始めるまでの3年分の電子音響。一度つくったら後日手を加えないというルールで、日記音楽のストック小品集だが、パンニングの細かい効かせ方など、鳴らした時点で完成調整までもっていってるスケッチの早さを連想させる。80年代坂本龍一初期シンセ盤のような微粒子が飛び交う。このCDが出た後に、収録されてた散文詩を読んでるサンプリングものを、生ピアノに生声でライブパフォーマンスで再現していて、そっちバージョンもかなり良かった。全30曲、平均1分半で無駄な時間は無い。スティーブ・ライヒへのオマージュ『おでんカウンターポイント』はタイトルからしてアホすぎる。