レティクル座妄想
筋肉少女帯/MCAビクター
大槻ケンヂがエマーソン・レイク&パーマーの「タルカス」を聴き「こんな音楽があるんだぁ」と衝撃を受けたのは、小6の時の友人のウラッコ君の家。ストラトキャスターを持つ兄がいたウラッコ君は、のちにデザイナーになり『レティクル座妄想』のジャケットを描いたという宿命が驚愕。毎年3万人以上が自殺する日本には『レティクル座行超特急』が走りまくっている。レティクル座入口ではジム・モリソンが歌って歓迎してくれるが、罪を背負った人間とつまらない人間は途中で列車を降ろされる。殺そうと思わなくても、窮屈な正論の果てに誰かを殺してしまう社会に生きている者として、殺す側の論理に取り込まれないように。つまらない人間にならないように。→
Pianism II
三柴理/スリーディーシステム
ベーゼンドルファー1台で録る作品の系譜。1996年「ピアノのなせる業と神髄」。2002年「Pianism」。2009年の本作は、曲への情熱、作家への愛がなせる業と真髄。プログレ激弾き一発録りのテンションの合間には、9歳の頃に作曲した?!小組曲がある。『ペンギン』『大山椒魚』『チンパンジー』『河馬』『ねずみ』の計6分だが、トリッキーな描写や、いわゆるコマネズミの指運など技巧的にも、9歳でこれか!と思わせられる。ブライアン・メイ作曲の『Flash』、キース・エマーソン作曲の『タルカス』を自ら編曲。三柴理編曲の楽譜集「ピアノで弾き倒す華麗なるロッククラシックス」は絶版後、異常なプレミア高値で売買されている。→
シューマン:子供の情景/クライスレリアーナ
Vladimir Horowitz/ソニーミュージックジャパンインターナショナル
ホロビッツ知りませんでした!何のジャンルに対しても詳しいわけじゃない。全ては、なんか出会っただけ。シューマンの名演のCDを探していたら、漫画「神童」の中で天才少女うたの人生を変える老ピアニストのロブコウィッツの顔!「実在モデルがいたのね」という無知な私です。上手いだけのCDなら山ほどある。ピアノが楽器として美しく鳴る事と、酒場の調子はずれのピアノが心を打つ事は別。ピアノのポテンシャルを最大に弾き出す演奏家、演奏家のパフォーマンスを頂点に高めるピアノ。心を揺さぶる羽のタッチ、まるで香水の様なトロイメライは聴いたことなかったし、クライスレリアーナは絶品。→
HOME MADE
PSY・S/ソニーミュージックレコーズ
初期Different Viewのシティポップスセンス、Signalからのロック魂、HOLIDAYのナチュラルさ。そして本作の後にテクノロジーで奏でる未来のポップスEMOTIONAL ENGINEを作るとは思えない、全編アコースティック楽器でリメイクされた今までの代表曲。バンドブームだ、片や打ち込みだのと流行りだしたザワザワした頃、先駆者の功績からさらりと飛んで見せ、まさかの ホンキートンクピアノとウッドベース展開。元の詞曲の良さを浮き彫りにしてみせた。松任谷由実がANNで『ジェラシー"BLUE"』をかけて、PSY・Sの「歌」の素晴らしさを話した時も、このHOME MADEバージョンだった。→
マニフェスト
RHYMESTER/キューンレコード
言葉を得るということは自らのアイデンティティを得ることだとMC宇田丸は言う。普段の生活の中にも、自然に言葉が突いて出る瞬間があり、その時こそがその人の真実なのだと今はよく分かる。何か思っても本当の事を喋ってはいけない政府化では、素の自分が投獄されぬよう偽って過ごす時間で、話す言葉を失ってゆくことは、周囲の出来事を何とも思わない究極に閉じた地獄の中でのサバイバル術。黒人奴隷や人種差別の底辺から自分自身を取り戻した言葉ラップ、日本のブラック会社に重ねても理解が容易だ。だから日本語ラップで社畜共へ、負け犬達の『ONCE AGAIN』。世界各国の作品を相手に、2010年ダサいジャケット1位おめでとう。→
TRAVELLER
トータス松本/EMIミュージック・ジャパン
ア~ォ!どこかで聴いたブラックミュージックのアッパーなカバー。琉球アレンジ『Over The Rainbow』がイカス。ブルースマンがハグして軽口を叩き合う挨拶から、インタビューに入ると売れるまでゲットーな生活だったとマジ語り、そんなウェットな黒人音楽に撃ちぬかれる日本人て、どんな素養があるのだろう。達観したゴキゲン感と共に発露する負けてらんねぇ感。トータスはバイト先で知り合ったケイスケとジェームス・ブラウンのビデオを見て「かっこええ~」言いながら大爆笑だったという。中学生だった錦織一清はソウルトレインを見て「男が踊ってもいいんだ!」と開眼。後の少年隊である。それはべつにどうでもいいか。→
途中経過
もう、ディスクレビューに関しては随分前に一区切りついていて、「HIDE YOUR FACE」以降は完全に駄話しでしかないんだけど、4月の「The Temple」に登場するCD屋さんは久々の黒船襲来だった。
人は、10代の時に聴いた曲を一生聴き続けるんだって。実際、働き出すと音楽なんか探している暇ないし、流行りモノなんかそれまででしか無い。それに、音楽にはいつだって「それぞれのあの頃」が詰まってアルバムとなるのだから、多くの人が深層心理の部分では、10代で音楽的な鎖国をするわけ。
幸いなるかな、住んでいる中央線には「こんな品揃え、見たこと無いよ」っていうようなセレクトショップが多数存在し、音楽系もしかり。確実に人生を変えてくれたお店は、【高円寺】サンレインレコード、スモールミュージック、【吉祥寺】33、東風。ほか、【新宿】ロスアンプソン、【高円寺】円盤、【中野】メカノなどなど書き出せばきりがない。今でもその店に出入りしてた人たちとつながってるし。ともかく、住んでるトコロ周辺で、数年に一度、ものすごい鋭さで異文化を注入してくる異常テンションのショップが来航する。
いつも思うことは、お店残ってゆくのってほんと大変なんだよねー。店舗専門の不動産会社でウェブ裏の仕掛け作ってる時に聞いたんだけど、1年に出店するショップが100だとすると3年以内に70は潰れる。しかし、潰れた70の中の50は、またショップをはじめる。そのショップを開店したり閉店したりする人を食いものにする為にそん時は他人ごとだったんだけど。ある時、気づいた。
好きなアーチストを応援するって、レンタルでコピって音楽聞いて「好きー!」ってそれは楽しんでるけど、ファンのするべき「応援」じゃないんですよ。好きなアーチストに、活動費、生活費を渡すのが、共存です。ほんと、引退、解散、雲隠れされたくなかったら、活動させるための支援を考えることです。
好きな、お店が閉店しちゃう時に「無くならないで欲しい、あの場所は街の文化。署名をしましょう」って、アホかって話しで。客が少なくて落ち着くいつも俺しか居ない喫茶店なんて、つぶれますよ。残って欲しい店にはおカネを落とすことです。それしか無いんです。
ほいで、高円寺に久々の黒船襲来だわ。見たことのない海外のダブステップやインディーズ電子音響のジャケットが並んでる。iPadでの試聴機はあるものの、入ってないCDでどうしても気になるジャケットがあったんで店員さんと「これ、情報見つけて、良かったらココのお店で買うので、メモ取っていっていいですか?」とかペン借りて、他のオススメを店のスピーカーで聴かせてもらったりして、もう、ロックに出会った高校生男子かっていう気分を噛みしめつつ、頭のぶっ壊れたスライサーのかかったエレクトロを爆音で聴いて「うぅっっっー、正直、いいのかわるいのか、よくわからないけど、、、ジャケットがカッコ良すぎる!!!」とか、そんな出会い。楽しいねぇ。

さっき買ってきた本がこれ。スペインで出版されてたアート本BELIOのバックナンバー。

この号は〈Music〉をテーマにしたArt Work Book+Visual DVD。ちょーあがるわっ!

2000年代半ば。日本でもこの手のエディトリアルデザインがはっちゃけてたよ。

マドリッド発のデザイナーの仕事が、巡り巡って自分の部屋にやってくる興奮。

クラブはカウンターカルチャーである以上、世界の頂点は取らない宿命だが、

尖った物好きの好事家エヴァンジェリストによって、届くべき人へ届けられる。
そんなわけで、お店で調べてネットでショッピングとか。ネットで情報知ってレンタルで聴くとか。まぁ、その程度のことは普通なんだろうけど、それを続けてたら、街はつまらない。
本当に愛さなきゃいけない対象が見つかったら、そこにケチったらダメってことです。つまらない街、つまらない時代を生きるなんて、ノーフューチャーでしょ?!お前の荒廃したロンドンを燃やしてしまえ!なんて、本当につまんないロンドンに放火したら捕まっちゃうので、セックス・ピストルズのライブにおカネを払ったわけでしょ。面白い人、面白い場所、面白いイベントには、支持投票の一票のつもりでおカネを投じるべき。CDを買うのが偉いってことじゃないよ。自分の周辺をいかに面白く保つかっていう、そっちの視点です。
アイドルCDの握手券ビジネスとか、そっちの話しはじめるとまた長くなるんでこのへんで。
4月のブログは、先月AmazonからCDを何枚か、PC用のスピーカー、マスク、あと前にも同じ買い物されていた方でしょうかペットボトル飲料ダンボール購入などしてくださったあなたの提供でお送りしました。



はいはい、だん吉なおみのおまけコーナー。
適当にBGM貼っておきますよ。
さみしいだけ
誰よりもあなたを
君の好きな花
The Temple

Balkansky/Ohm Resistance
高円寺のツバメヤ眼鏡店の隣に、記号文字で読めない看板のクラブカルチャーショップが出来てた。気さくな男女店員さんが「どういう系が趣味ですか」とか声かけてくれて、店名がHz[ヘルツ]と知る。雑貨、ファッション、アートとある中、CD棚がヤバイ。ダブステップの直近の名盤は直輸入の仕入れだという。いわゆるMIX配信文化で良いトラックが無料ダウンロードされてしまう昨今、CD購買意欲を刺激するのはアートワークでしょう。ブルガリア出身のバルカンスキーを紹介され、印刷物としてもカッコ良すぎ。耳を凝らす繊細さとメカニック音色の破壊的エディット。DJ-MIXよりも1枚のCDとしての作品主義を満足させる。→
Buddha-Bar VI
琉球アンダーグラウンド、Afterlife、B-Tribe、Baul Dimension、Cantoma、Casa Flava、他/Rambling Records
クラブファッションの店西新宿PSYCHEDELIC GARDENには、サイケデリック、ゴアトランス、チルアウトに特化したCD棚があって、オフィス街では絶対見かけない、乾燥マッシュルームに詳しそうなタイプの女性店員さんが一人で爆音をかけている。レインボー2000なムードに「この解放区は俺が守ってやる」と勝手に決意しお買物。『Buddha-Bar』シリーズは民謡歌唱や土着楽器を使うエレクトロハウスを混ぜたコンピ。水タバコの甘い煙が香る音。トリップ系のジャケは座禅が多いな。→
U.F.Orb

The Orb/Universal I.S.
シンセ音がふわっとしていない固めな感触。『Blue Room』の無国籍コーラス、『Majestic』の声の仕掛けはジョン・C・リリー博士の作品のよう。遠くでこどもの遊ぶ声や小鳥のさえずりはKLF的なコラージュ。西洋人が日本文化的な禅の精神や悟りを、修行しないで手っ取り早く体感する目的で編み出したのが、イルカとの交信、アイソレーションタンク、そして、アンビエントミュージックではないだろうか。一曲づつがほぼ10分超えという、浸るには充分な長さ。『Tower of Dub』は宇宙空間のレゲエ。 System7のヒレッジ参加。ダンスのシンクビートでなく、遠くの世界に意識を飛ばす為の正確なリズム。→






