RAINBOWMAN

新宿フォーク/コロムビア
「次はどこ行くの?」集まる度にしていた海外旅行の土産話も今は昔。旅をしなくなり東京から一歩も出ずに4年も経った。サーチャージ憎し!である。中央線者の郷愁は新宿にある。海外から帰ってきた電車、西の大ガード上、西武ペペの裏手を通過する風景に「あぁ、帰ってきた」とホッとする。殺伐池袋、魔窟渋谷と並列に語れない新宿のぬくもり感は異常。アフロ頭のファンクバンドがスローバラード『準急』で、小さなアパートの一人暮らしと消息散ってゆく仲間を唄うという取り合せ。スクービードゥーの刹那を煮詰めた様な、高層ビル街隅の飲み屋横丁が産み出したジャパニーズソウル。新宿フォークとはよくぞ名乗った。多くの人の第二の故郷新宿が滲んでくる。→
OUR LAST DAY -CASSHERN OFFICIAL ALBUM-
椎名林檎、HYDE、ACIDMAN、鬼束ちひろ、THE BACK HORN、GLAY、宇多田ヒカル、鷺巣詩郎、他/EMIミュージックジャパン
音楽の会話をすれば、大概の相手の自分語りを受けて返せるので、話し相手はその実、鏡を見ていて「センスいいね」と言ってくれる。けどそれは、君のセンスなんだよ。映画は『CASSHERN』が好きというと「え?あの変な駄作」と言われる。物質で落ちてきた雷、舞台の様なセリフ回し、原作置き去り。あの変な駄作だけど、テーマに撃たれ、結末も共感した。私のセンスはそのラインです。紀里谷和明監督が2時間22分かけた内容を、僅か4分半で唄いきる『誰かの願いが叶うころ』を宇多田ヒカルが産み落とした。傑作映画だと思う。→
100% DISCO HITS!SUMMER PACK

the telephones/EMIミュージックジャパン
Rolandから何年かぶりのショルダーキーボードの新機種発売。レジーナに関してはプロモーション情報ばかりで使用者の純粋な感想が皆無なのだ。それで、使っているバンドを見つけ出してキーターの比較とか、好きなプレイヤーを聞いているうちに、最終的に「テレフォンズのキーボードの踊りが凄いんだ」と熱気を帯びて訴えられた。「見てくださいよ。最も影響を受けたキーボーディストです」。小室哲也がtrfで魅せたディスコミュージックとは別経路。SAMのダンスとは交わりもしないミラーボールの下での発狂ダンス。正気か?!っていうボーカルと、鍵盤ロックにあってキーボディストがどうハイになるべきかの極北。→
BEST of BEST TAKASHI SORIMACHI

反町隆史/ユニバーサルJ
「GTO」グレートティーチャー鬼塚、EXILEでリメイクと聞いて、EXILEが『POISON』唄うかと思ったら主題歌違うの。ダメだろが!寅さんのチャララ~が、GTOのポインズンなのに。ショックで反町ポインズンを聴いてたら、すげぇツボって完全に面白くなってきた。正調ジャイアニズム唱法。ギター助っ人がリッチー・サンボラなのは有名だけど、アルバム曲ではテナーサックスが頑張ってたり、急に語りがあったり、ちょっと10代のカリスマで白黒写真のあいつを意識した様相。このベスト、映画版で出たドラムンベースMIXの『POISON 2000』収録。ベースは太くないが、あの歌はそのままなのでJ-POP DJの勝負球で使えそう。→
Vespertine

Björk/One Little Indian
ある暗黒時代。胸糞悪い体育会のなれの果てみたいなパワハラ酒の席に仕事だから居なきゃいけない不毛。女に対する下卑た話題で腹を割った同士になる儀式?フィリピンパブ武勇伝ですか?あなたがたは稼いでいらっしゃる。こちとら本業だけじゃ食えないし、副業のバイトはクビだしバイクはローンだし、埋められない差があるし。どんな女がタイプかっていうしょーもない話題に、薄っぺらい答えも言わねばならない。でも、ゲスい喫煙に巻き込まれたくないじゃん。女友人の助言「ビヨークでいいでしょ」に納得し、そう答えてた。だが盲点、ゲスな話をしたい人たちが「誰?知らない」という。面倒なのでレニーハートに変えた。嘘はつけない。→
Hurtbreak Wonderland

world’s end girlfriend/Human Highway Records
この時代にエレクトロ専門CDショップが開店するとは。大きなソファーの試聴サロン完備。こんな音が好きと告げると、店長自身のアーティスト活動PRを交えつつ色んなCDをかけてくれる。「ワールズエンド・ガールフレンド知ってるよね。有名になる前にボクの企画コンピに1曲入れてたんだよ」そう、同世代デデマウスにしてもデモテープの送付から今の地位に至ったのだ。多くの人に気に入られるには、その数百倍の人の耳に届き、好き嫌いの評価を受けなくてはいけない。店長の話しを聞いた3時間、私以外に来客は無く、早く店の名前と場所を多くの人に知らせないと消えてしまうと思った。→
うれしくって抱きあうよ

YUKI/ERJ
荻窪ルミネの屋上でデザイン事務所の元同僚夕子と再会。傍らには小さな女の子。あれか!夕子のおなかがスイカの様に大きくなって、朝出社して「ダルい」って、半個室のパーティションの向こうで寝息をたてて、夕方5時にムクリと起きて、ちょっとだけ働いて帰ってた、あの時のおなかの娘か!君のママは、すごく仕事をサボってて、それでもフルタイムの給料もらっていたんだから、言ってみれば少女よ、君は俺が働いて買ったオムツをはいて育った娘だ。って、一瞬の走馬灯が頭によぎって、夕子の娘とハグして『うれしくって抱きあうよ』。出社して堂々とサボるな!って日々が、こんな嬉しい出会いになったよ。夕子は最高にムカつく永遠の『ミス・イエスタデイ』なんだ。→
JOAO VOZ E VIOLAO

Joao Gilberto/Polygram Records
FMから流れる全ての曲に、ホニャらかさ~ん♪という歌詞を当てて唄う朝子。半個室状態の私のパーティションに貼ってあるポスターを見ながら「これ、ジョアン・ジルベルトですよね。彼の娘が今度来日してライブできる所を探してるんですけど無いですかね?」って「お前、何者?」。ジョアンは、アントニオ・カルロス・ジョビンとともにボサノヴァを作った人、伝説だぞ。でも、毎日夕方5時に「遅い御飯は太るから」って同僚たちとカップ春雨にお湯を入れ待つ間、4人で『イパネマの娘』をホッニャらか~♪ってハミングしてるのを聴いてるうち、朝子はホニャらかさんっていう音楽の新ジャンルを作りだした伝説の人かも。→
葬ラ謳

MUCC/DANGER CRUE
ジャケットイラスト伊藤潤二、イェー!ただ怖いだけならともかく、怖いもの見たさの内角高めにバンバン放り込んでくるからまがまがしてるよ。「うずまき」くらいなら読めたけど、油がニュルニュルみたいなグロ恐怖は本に触れなかったもの。家に置けないから借りてだけど。ムックの『およげ!たいやきくん』カバー、なんで演ったのか知らないけど、桃色珊瑚というワードのもつヴィジュアル感。目玉もくるくる回っちゃ~う~♪の伊藤潤二感。原曲からマイナー調であった『およげ!たいやきくん』の顛末、焼かれる鉄板から逃げたけど、釣られて、結局食べられちゃう絶望物語を「んんなー、どぇぇー」という過剰なV系歌唱でこれでもかと叩きつけてくる。→
奇蹟のニューヨーク・ライヴ/ブラームス:交響曲1番

小澤征爾、サイトウ・キネン・オーケストラ/ユニバーサル ミュージック クラシック
桐光学園時代に指揮法を師事したのが斉藤先生。青年時代の名も無き小澤がバイク1台で世界を旅して、海外の指揮コンクールで華々しい成果を上げたことは「サイトウ・メゾットでタクトを振れたことで世界的に優位な立場に立てた」と証言している。また、サイトウ・メゾットが指揮者の基礎の動きについて完璧な理論であることを証明したのは、小澤の実績によるという相互の輝き。そのサイトウの名を冠したオケが「奇蹟のニューヨーク・ライヴ」で、渾身のブラームス。岩城宏之も黛敏郎も亡くなってしまいましたけど、小澤征爾が大病からの復活で名演をするのですから、生きた同時代を味あわなくては。→