きみの死因になりたいな

ヒロネちゃん/術ノ穴
「きみの死因になりたいな~♪」って聞こえて、本当はなんて歌詞なのかと思ってググったらそのまんまだった。合ってた。カロリーメイトしか食べない子もいれば、ビスコしか食べない少女もいて、私は森永ラムネを食べ続けた時期があった。選択肢に迷わず楽だった。急な徹夜ある仕事場に森永ラムネのケースが貯まった。他に食べたいものは無いそれは悟りで、この粒の糖分塩分で充分という信仰だった。ある時ケースが千本貯まったら、イカダを作って海に出ようと決めた。それが救いだった。積もったゴミに意味が発生し、千本で仕事を辞め旅に、そして次の生活へ漂着。だから、カロリーメイトしか食べてない人にも、積み上げた成果が訪れる気がして、止めはしません。→
ヒマワリが咲くヨテイ

NakamuraEmi/independent*
愛の無い正論を聞くのはとても居心地が悪い。一方で、好きかどうかで論ずる人の声の熱量たるや、それは魂だ。好きだという対象への興味を超えて、語り手のファンになるほどの熱。中村絵美の唄。女と男の物語を超えて、この歌い手の愛情論の渦に巻き込まれる。「大好きだから生きている」ってところへ、いつの間にか立っていたら、不安も覚悟も「好き」でしか解決できない。誰の明晰な助言も他人事の日、ただ一筋、心に差し込んで来るのが花の咲く姿だったりして。「肝心な時に自分の気に止まったそれは自分の鏡なんだよ」とか男子的な結論は不要の、聞いて聞いての女子トーク。この歌声、愛情論のグルーヴに完全に巻き込まれている。→
Tokyomelancholy

シナリオアート/KRE
劇場版ガンダム3部作の1と2.哀戦士編では、戦争の視聴感に大きな差があった。ポイントは沢山あるが、マ・クベが援軍を渋った事による、青い巨星ランバ・ラル隊の孤立した戦い。1981年の少年たちは、合体ロボのヒーローバトルを見るつもりが、番組内で始まったゲリラ兵の白兵戦に取り込まれ「戦いに敗れるとはこういうことだ!」と叫びながら自決する軍人を見てしまった。敵のアムロにも父の様に声をかけてしまうラルが何者であったのか。戦火の中、アルテイシアを抱き上げた説明なき回想シーンの意味。機動戦士ガンダムTHE ORIGINで刮目せよ。シナリオアートの『アオイコドク』でリフレインされる「ラル」は青い巨星ではないらしい。残念ね。→
歌謡紀行13 〜島根恋旅〜

水森かおり/徳間ジャパンコミュニケーションズ
かつて小谷美紗子が『Stone』の中で「地球上で唯一結ばれないと決まった二人…二人の思い出をギリシアの神殿で石にされてしまいたい」と唄った世界を割く様な悲しい別れが、水森かおり『鳥取砂丘』の「潮の匂いに包まれながら砂に埋もれて眠りたい…鳥取砂丘の風に尋ねたい私に罪があるのでしょうか」と、その心情の機微において完全一致を覚えた。柔らかくしかし強い歌声。技と力に裏付けされた情のこぶし。日本歌謡曲伝統の音色といえるオーケストラとアコギの織りなす豊かな演奏。これにイントロ曲紹介の名調子が加わると、なんというラグジュアリー感だろう。のれる曲、泣ける曲、色々あるが、酔える曲とはこういう歌でしょう。→
T H E
tricot/SPACE SHOWER MUSIC
メロディに合わせた瞬間に、もう替えることの出来ない言葉の音があって、それが「ポンチョに夜明けの風はらませて♪」でも「おちゃんせんすぅすー♪」でも、ガッチリとハマったら、他の歌詞を考えても覆せない。メッセージよりも強いパンチ力の言葉の音。ビッグバジェットを動かすメジャーアーティストが、良いメロディをストックしたあげく、数々の事情やプロの納得をして「シチューを食べよほー♪」というシチュー販促ソングを作ることを考えると、由来を知ったところで意味のない『おちゃんせんすぅす』という歌詞だけで発表した、音楽に対しての純情、衝動、耳ざわりに胸を射抜かれ。もう、気になって気になって仕方がないよ。→
メジャー
SANABAGUN/Victor Entertainment
TV放送のアニメ制作者の「ベッドシーンはNGなので、代わりに男女の食事シーンを意図的に入れてる」との話に、メジャーの難しさは規制の枠、それを感じさせない表現かと。深夜フリートークで「こんな雨の日は一日中部屋で彼とヤりまくりたい」と気さくに話す歌姫も、メジャーではカブトムシやテトラポットに置き替えて「こんな夜にお前に乗れないなんて!」的に暗号化する訳で。サナバガンの1stアルバム『メジャー』の中の『人間』で、重い腰を上げ立ち上がるメタファーが「トイレットペーパーで、お尻をさぁ拭いて♪」って唄うの聴いてたら、メジャー表現の既成概念を軽~く飛び越えてサウンド共に格好良かった。→
MAP

group_inou/GAL
Googleマップは電車の乗換えを調べるしか使ってなかったけど、久々にカイロタワーや死海の衛星写真を見たら、すごいキレイになってるのね。以前は撮影されたコンディションがバラバラで、パッチワークの様だったけど。今は都市部なら街並みの上空に迫っても、複数写真の貼り合わせが解らないほど見事なバーチャル空間。ストリートビューの方は、まだ貼り合わせ箇所が目立つけど、それも数年後にはズレも圧縮ノイズも無くなるのでしょう。Hi8ビデオの様に、当時の新鮮な最先端技術は時代の思い出に。まだ画像が荒い2015年のストリートビューをフルに使って地図上を疾走するPV、未来からのノスタルジーを既に秘めている曲が「EYE」です。→
センチメンタル オア ダイ

デラ☆センチメンタル/ローヤルベイベーレーベル
ボーカロイドならではの表現として超高速の早口があるが、それでもギリギリキーワードを聞き取れなくてはならないマナーがある。歌詞カードを見て腑に落ちる程度の高速。昭和歌謡曲『帰って来たヨッパライ』で、録音テープの回転数を上げ、ピッチとスピードコントロールが用いられた事を思い出すが、それ以上に忘れちゃいけない早口バンドがデラ☆センチメンタル。インディーズバンド華やかかりし00年代。深夜テレビで「この娘はいったい何を早口で言ってるんだ」とCDを買った頃、ようつべも歌詞DBも無くTVは4:3だった。今改めて聴くと、この人の生声がつくるスピードリズムは、既にボカロが話す様な最良の高速限界だった。→
LOVE LETTER

小松玲子/independent*
1964年東京オリンピックの開会式開始の時に鳴り響いたサウンドはサヌカイトの音色でした。約2万年前の縄文時代、金属器の伝来まで日本列島に住む人類は、サヌカイトという火成岩で石器を作っていた。水晶より硬いが、もろく壊れ易い。やじりやナイフ形にして使われ、断面は鋭い切れ味だという。香川県で採取され、讃岐岩が由来のサヌカイト。野ざらしの石をハンマーで叩くとクリスタルボウルの様な音が響く採掘場の風景はなんとも神秘的。2万余年を経て、武器として重宝された石は楽器になり、戦闘行為が微塵も無い心の静寂を促す響きを醸し出している。これは遥か昔、マグマが冷えて固まった岩。人類の祖先が手にした石器。と想像しながら。→
ディア・ポップシンガー

荻野目洋子/ビクターエンタテインメント
ドドンガドン!!外国人労働者の多い美濃加茂市で、盆踊りに老若男女と世界の方々も踊れる音頭といえば、荻野目洋子の『ダンシング・ヒーロー』が定着していて、既に全国に広まりつつある。ディスコミュージックの日本語カバーであるこの曲が、盆踊りの現場で、和太鼓のドドンガドン!!に完璧な親和性を成し、子どもたちには盆踊りの曲として知られている。多国籍を巻き込んでグルーヴを作り出す様子は圧巻で、1曲のダンスミュージックが辿り着いた彼岸としても感動する。そして、2014年発売の荻野目ちゃんの新譜は、かつてのヒット曲のボサノヴァカバーみたいな穏やかな大人編曲は皆無で、最新のダンスミュージックとして再録している。→

