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ニューアルバム

ニューアルバム

DOTAMA/術ノ穴
 Amazonの「コレが好きならコッチも好きでしょ?」というレコメンドが、もっと広く働いたら良いのに。例えば、音楽アーティストの写真で着ている服や靴をおすすめしてくるとか、歌詞の中の岬の一泊旅行を勧めてくるとか。あるものを取り巻く、興味の派生。その点、映画ファンのロケ地紹介のブログ更新とか凄いね。レコメンロボットよりも「個人の好き」の勝利が見られる。必ず最後に愛は勝つ的な、情報ではなく実感のホームページ。あぁ、実はそこが問題だよねっていうザワザワするテーマを扱うDOTAMAのPV付きのイチオシ曲を見終わったら、本当に紹介したかった曲『イオンモール』をレコメンドで出してくれ。頼むぞYouTubeのレコメンド機能。

Adhesion

Adhesion

Loop Stepwalker/Ad Noiseam
 「まだ知られていない電子音楽の作品を、広めたいんだ」と語り始めた新宿のビル中二階レコード屋の店長に「ダブステップとかどうですか?」と尋ねたら「あれはダメだ、うるさすぎる」って言われました。店潰れろ、クソが!でも、不動産会社の税金対策でやってるレコード屋だから売上が無くても潰れないのなー。ブルガリアのダブステップアーティストの本作、ジャケットワークから購入を決めた事もあり、PVのクセのある芸術性とかかなりツボ。音楽以前のサウンドロゴ的な効果音や、見せたいもの聞かせたいものを登場させるまでのブランク、間合い。期待感が高めるカリスマ性。ハイレベルのなんだこれは!?は新しい音楽にある。

都はるみ プレミアム・ベスト2014

都はるみ プレミアム・ベスト2014

都はるみ/日本コロムビア
 以前、平成盆踊りの定番になった荻野目洋子『ダンシング・ヒーロー』に注目したが、振り返えると自分の町内では「◯◯音頭」以外で鳴り響いていた盆踊りの歌謡曲は、都はるみの『好きになった人』だった。曲を聴けば体が動き全部歌えてしまう郷愁のダンスミュージックなのだ。NHK紅白で引退のラストシーンも見た、復活も見た。比較という事ではないが、バンドブームで解散したバンドの再結成復活ライブに「凄い声、パフォーマンス」との絶賛に触れると「ウチんとこのはるみちゃんも一旦、普通のおばさんに戻ってからカムバック、70歳を前にして凄いんだからね!」と、ファンの対抗心が燃えてしまう。ドリフもベストテンも消え、時代が流れても歌は残る。

文學少女

文學少女

 

BURNOUT SYNDROMES/Handmade Music

 膨大な数のFONTを知ってて「これはモリサワの新ゴじゃなく、DTP以前の写研ゴナですね。それはNendo GraphicがLAOXのロゴをパクった英字フォントでラオックスのクレームで即削除され、持ってる人は僅か」と答えを教える博士役を自ら降りた。その件について経験が無く愛情が薄い人たちへの説明が面倒なので「へー知らない」で流す。反面、お互いに興味の熱量がある、知っている者同士が白熱する会話のなんと楽しいこと。『文學少女』の「ラストシーン…君以外に伝わりませんように」には漱石や太宰の引用でなく、彼女の視点の引用を使って、会話の入口に立ったであろう物語のトキメキがある。

 

 

 

バンドマン

バンドマン

 

ミオヤマザキ/Sony

 結成年数制限の無いTHE MANZAIがコンテストを止め、参加規定結成◯年までのM-1グランプリが復活。創設者島田紳助は、10年やって売れないやつに辞めるキッカケを与えてやるのがM-1と証言し、実際売れずに10年以上で参加資格を喪失した者や、予選に落ちて廃業する芸人の多いこと。一方、M-1選考員のおもんない作家の評価で人生決めていいの?と語る売れた芸人。自分のキャパという現実はバンドもそう。芸人ロマンへの滞在「いつか売れると信じてた客が二人の演芸場で、夢は捨てたと言わないで他に道なき二人なのに」とは夢か呪いか。決めた道、後悔はすんな。人の答えでなく自分で考えなきゃいけないことが沢山入ってる唄『バンドマン』。

 

 

 

馬市

馬市

折坂悠太/のろしレコード
 モンゴルで馬に乗ってきました。遊牧民の少年に数分ほど手綱を習うと先導してもらい平原へ。両足に挟んだ馬の胴から歩く筋肉の動きを感じる。やがて走りだした途端その揺れに冷や汗。ビビっちゃダメ、言葉を交わさず目も合わせず、だが生き物同士分かり合うのだ。遥かな大平原を、自由に走って風になった。いやその時私は馬になった!日本に帰ってから、あの馬のことを想う時の、なんとも恋しい甘い気持ち。体を命を預け、臆さず意思を伝えようとした、生涯最高レベルの積極。折坂悠太の『窓』という歌を探していたら、美しいPVの『馬市』を発見して胸がドキドキ。日本古来、仕事の最中に唄われた民謡かと思えるほど、歌声や曲のテンポ、全てが馬恋しい歌。

きみの死因になりたいな

きみの死因になりたいな

ヒロネちゃん/術ノ穴
 「きみの死因になりたいな~♪」って聞こえて、本当はなんて歌詞なのかと思ってググったらそのまんまだった。合ってた。カロリーメイトしか食べない子もいれば、ビスコしか食べない少女もいて、私は森永ラムネを食べ続けた時期があった。選択肢に迷わず楽だった。急な徹夜ある仕事場に森永ラムネのケースが貯まった。他に食べたいものは無いそれは悟りで、この粒の糖分塩分で充分という信仰だった。ある時ケースが千本貯まったら、イカダを作って海に出ようと決めた。それが救いだった。積もったゴミに意味が発生し、千本で仕事を辞め旅に、そして次の生活へ漂着。だから、カロリーメイトしか食べてない人にも、積み上げた成果が訪れる気がして、止めはしません。

ヒマワリが咲くヨテイ

ヒマワリが咲くヨテイ

NakamuraEmi/independent*
 愛の無い正論を聞くのはとても居心地が悪い。一方で、好きかどうかで論ずる人の声の熱量たるや、それは魂だ。好きだという対象への興味を超えて、語り手のファンになるほどの熱。中村絵美の唄。女と男の物語を超えて、この歌い手の愛情論の渦に巻き込まれる。「大好きだから生きている」ってところへ、いつの間にか立っていたら、不安も覚悟も「好き」でしか解決できない。誰の明晰な助言も他人事の日、ただ一筋、心に差し込んで来るのが花の咲く姿だったりして。「肝心な時に自分の気に止まったそれは自分の鏡なんだよ」とか男子的な結論は不要の、聞いて聞いての女子トーク。この歌声、愛情論のグルーヴに完全に巻き込まれている。

Tokyomelancholy

Tokyomelancholy

シナリオアート/KRE
 劇場版ガンダム3部作の1と2.哀戦士編では、戦争の視聴感に大きな差があった。ポイントは沢山あるが、マ・クベが援軍を渋った事による、青い巨星ランバ・ラル隊の孤立した戦い。1981年の少年たちは、合体ロボのヒーローバトルを見るつもりが、番組内で始まったゲリラ兵の白兵戦に取り込まれ「戦いに敗れるとはこういうことだ!」と叫びながら自決する軍人を見てしまった。敵のアムロにも父の様に声をかけてしまうラルが何者であったのか。戦火の中、アルテイシアを抱き上げた説明なき回想シーンの意味。機動戦士ガンダムTHE ORIGINで刮目せよ。シナリオアートの『アオイコドク』でリフレインされる「ラル」は青い巨星ではないらしい。残念ね。

歌謡紀行13 〜島根恋旅〜

歌謡紀行13~島根恋旅~

水森かおり/徳間ジャパンコミュニケーションズ
 かつて小谷美紗子が『Stone』の中で「地球上で唯一結ばれないと決まった二人…二人の思い出をギリシアの神殿で石にされてしまいたい」と唄った世界を割く様な悲しい別れが、水森かおり『鳥取砂丘』の「潮の匂いに包まれながら砂に埋もれて眠りたい…鳥取砂丘の風に尋ねたい私に罪があるのでしょうか」と、その心情の機微において完全一致を覚えた。柔らかくしかし強い歌声。技と力に裏付けされた情のこぶし。日本歌謡曲伝統の音色といえるオーケストラとアコギの織りなす豊かな演奏。これにイントロ曲紹介の名調子が加わると、なんというラグジュアリー感だろう。のれる曲、泣ける曲、色々あるが、酔える曲とはこういう歌でしょう。