YAMINABE
そこに鳴る/マーガレットミュージック
人間が黄金を特別視するのは、古代より金の輝きに太陽の巨大な力を見るかららしい。では、青緑のエメラルドの持つ神秘性は、どんな古代記憶とリンクしているのか。日本の信号機の製造を依頼された設計士が、青と指示されたのにもかかわらずスピリチュアル的に安全運転を翡翠に祈願してエメラルドグリーンにしたというのは、今私が考えた嘘なのだけど。オーロラの光を放つ信号機により守られていた日本という見出しで拡散することで、フェイクニュースが成立するだろうか。裏付資料を提示する文化人と陰陽師のバックアップによりドキュメンタリー番組が作られたら、ED曲はそこに鳴るの『エメラルドグリーン』。歌詞の嘘のくだりで字幕を出して。→
エメラルド

おやすみホログラム & Have a Nice Day!/オモチレコード
おやすみホログラムがきっちり堂々とテクテクくるくるしているMVが好きなのだけど、Have a Nice Day!とのコラボ曲でのライブハウスでのMVは完全に射抜かれた。これくらいのキャパシティ、これくらいのライブ装置、これくらいのビデオ画質、「過ぎてみたら一番楽しい頃」を真空パックにした現場タイムカプセル。ちらっと映るシンセ、寄りで撮られた化粧っ気、誰かの汗、技巧的とはいえない数秒カットの何もかもを最高の時間として化けさせてしまう、繰り返される『エメラルド』の魔法力。世界は美しい、そして、夜遊びは楽しいという永遠の気付きが初々しい言葉でサウンド化されている。→
青春のエキサイトメント
あいみょん/ワーナーミュージック・ジャパン
『スターウォーズ』が、物語を買いまくって自社製品化するD社の手に渡った。シンデレラや白雪姫はグリムが、人魚姫はアンデルセンが創作したことすら知らない子どもたちが居るように、いずれルーカスも知らず、Dズニーリゾートで楽しまれるようになるだろう。ライトセーバーのレプリカを探したら、愛好者のオフ会写真を見つけた。そのジェダイたちの楽しそうなこと。さらに、通販サイトのリンクには、「LEDライトセイバーの殺陣でエクササイズ!映画のシーンを再現!」これ、集まってくる人絶対話しが早いし、楽しそう。さて、何色を買おうか。あいみょんは赤いセイバーが似合うな。それぞれの正義の中で、我を通す者に相応しい色だ。→
こんにちは赤ちゃん

源川瑠々子/ビギナーズ・レーベル
幼少期はポップスとして『こんにちは赤ちゃん』をよくラジオで耳にした。今は、放送局では自主規制ソングだそうです。理由は、赤ちゃんを失ったお母さんが聴くとドキッとする、と投書批判があったらしい。歌自体がやりきれないフォーククルセダーズの『悲しくてやりきれない』や、アーティストの生涯がやりきれないZARDの『負けないで』は放送できる。でも『こんにちは赤ちゃん』は放送しませんて、この判断、そりゃ少子化にもなりますよね。しかし『こんにちは赤ちゃん』を2013年にカバーされている源川瑠々子さんを見つけて、絶望しないですみました。歌は唄うそばから音は鳴り終え消えてゆくのだけど、歌い継いでる限り誰かに届くのです。→
絶対直球少女隊

絶対直球女子!プレイボールズ/Richum record
今の世界情勢ってどうなってるのか誰かガンダムに例えてくれないか?今回の選挙ってプロレスでいうとどういう勢力図?自分に対するフックが2、3個あればスーッと理解できるんですよ。それで、若い子たちが何話してるか意味不明って敬遠してる松坂世代にも優しいこのアイドル絶対直球女子!プレイボールズ。どれだけピンチか、どれだけチャンスか、どれだけ真剣か!全部野球語で打ち込んでくる。『狙い撃ち』『サウスポー』『Sunny Day Sunday』の遺伝子を彼女らに見てしまう桑田清原世代も、今プレイボールズを気にかけ始めることで、いずれ甲子園やドームで定番になった時に、頬を熱いものが流れるはず。→
The landscape of my dreams ~夢をみてたの~
小栗久美子/independent*
トルンという名のベトナム竹琴。楽器の佇まいがすでに風景。マリンバを縦に吊るすというか、ハロン湾に浮かぶ帆船?!えーともっと身近なサイズの、干して、乾かしているような、港町できれいに吊るされ整列された魚の干物を見た時の、いい匂いのあれだ。加わる少しの力で、楽器全体をつなぐ糸が振動し、音は出さないままゆらゆら揺れているのがまたいい。竹筒を叩く「コン!」という音の集合。コンが、コロンになり、ラララになる。継続音に聞こえてくる音色の、衰退カーブを裏切るように盛り上がるトレモロ。陸上短距離走者がスタート何歩かで走りを変えている繊細な制御よりもっと細かく、身体能力でエモーショナルな音のカーブを描いている。→
私のはじめかた
RETO/Rocket Beats
必殺のライム、グッとハートを掴む歌詞をパンチラインといったりする。少ない文字数なのに広がってく!っていう短文いいよね。心の掴み方は、熱さだったり冷たさだったり。「やられたー!」と勝ち負けを感じた曲紹介文で、再生回数稼ぎのアイディアは、RETO『あのね』の動画に添えられた「このMVの中に11個変わったところがあるの見つけられた?」っていうリードコピー。間違い探しがあって正解者に叙々苑の食事券が当たるとか。再生回数が階段を上る要素なのだし、ファンサービス、初見の人へのユニークさ、バンドの遊び心、長文にせず一文で。やられたー!3回見たもん。一度切りのネタでなく、このアイディア繰り返しても面白いと思う。→
うん
虎の子ラミー/TORANOKO RECORDS
イチローも悩むし、たけしも事故るし、マイケル·ジャクソンなどひとりで死んでしまった。あのスティーブ·ジョブズでさえ病気で死んでしまう。成功して、なんでも手に入る社会的地位の人にも悩みは存在する。穀潰し者の「なんか平和だけど、将来が不安」は、ロクデナシな生活が要因でなく、どのクラスで暮らすクラスタにも等しく危機感不安感がある。「寂しさには名前がない」とはよく言ったもので、ノルマとしての量だけがついてまわる。それならば、ヒモになりたいぜ。彼女にパチンコ代をせびる後ろめたさ、後ろ指、後ろ髪…立派に働いていても、背負うべき悲しみノルマとして感じるのだろう。それならば『ヒモになりたいZE☆』。→
Marble Machine
Wintergatan/Sommarfagel
昨今の「YouTuberになりたい」という流行り言葉は、「BANDやろうぜ」に近いものを含んでいる。自分発信の企画や主張よりも「自分が受け手として楽しんだものに成りたい」というほのぼの幼稚な憧れ水域。だけど、見ていた誰かを目指す人ではなく「俺の考えたこれどうですか!」と、クレイジーな演者が存在する。多くの人の心を撃ち抜いてしまう憧れの家元。しかも、それがある程度以上の熱量や技術を伴っているとゾクゾクする。ハンドルを回して、3000個のビー玉を転がし、ベルトコンベアで運んだりして、プログラム演奏をする異形のアナログマシンてなんだよ。衝撃映像は発想か結果か、駆動音を含めていい音楽ですね。→
きぼう

石原可奈子/Kanako Records
パーフェクトヒューマンからのオリエンタルラジオは、漫才でもコントでもなくて、あれは音ネタと呼ぶのも違う。あれは音楽だ。お笑い枠を獲得したオリラジが、自分たちの腕と挑戦をEDMに詰め、持ち時間の数分に放り込み、やがてNHK紅白歌合戦へと道が続いていったのだ。エコ検定の合格者が活動を登録するページから、太陽光発電で野外演奏する石原可奈子さんを発見。エコ枠アーティストだから、森がやすらぎ水が癒やしっていうのだろうとゆるく見ていたら、『3/4の月』ではまるでピアノをジャックする様な激弾き姿がルナティック!かっこいい。エコ枠で知ったのだけど、枠を通り抜け、腕も挑戦も込めた渾身の音楽がこちらに届いた。→





