SMART PANEL -16ページ目

群青リフレイン

 

wacci/EPIC Records
 別れた人が他人よりも遠い、地球上で唯一結ばれないふたりになる。ふたりでドアをしめて、ふたりで名前消して、そのくらいの「また逢う日まで」が丁度良かったのに、今は、SNSアカウントがいつまでもビーコンになっている。それで、『別の人の彼女になったよ』である。直接元カレに剛い力で言わなくても、「こちらは次の一歩を踏み出せました」とInstagramの更新で世界に発信できる世の中だ。みんなが主役で、みんなが観客のネット上で、友人半分趣味半分のフォロワー多数に何かを言ってる様子で、実は先日別れたばかりの誰かへメッセージを含んでいる場合だってあるのでしょう。ほやほやで、あっちの様子も気になってるのでしょう。

s.i.n

 

マカロニえんぴつ/TALTO
 『洗濯機と君とラヂオ』のミュージックビデオは2017年1月に公開されている。JR大森駅そばの大森銀座商店街 Milpa 周辺が舞台だ。ここに登場するコインランドリー「ミスターランドリー大森店」は、ドライクリーニングがセルフで行えることで知られており、和装着物を大量に洗濯する方もいたようだが、2019年の3月に、利用者に愛されつつ閉店となった。ここでようやく歌い出しの「最低限の生活には、洗濯機と君とラヂオ♪」という彼と彼女の物語が完成した。曲が発表された2017年前後には、コインランドリーはあったのだから「最低限の生活にはランドリーバッグと君とラヂオ♪」だったのだ。すごくどうでもいい話しですみませーん。

 

ねごと/KRE
 アーティスト登録SNS、MySpaceが2019年に「2015年までにアップされた全ての曲と動画を削除した」と発表。私のお気に入り「アイライクチョキチョキ♪アイライクぱっつん♪」の宅録少女パッチワークサリーも消えた。グーグルプラスもジオシティーズも2019年にサービス終了で完全削除。WEBを通じて世界配信のなんと弱いことか。一方で2019年解散のねごと。高校生で結成したバンドがそのままメジャーで走り抜け、光を残していった眩しさ。一瞬の光なんだ♪どうしたってたどってゆくんだ。『sharp♯』の時にコロコロコミックエイジだった子が、今バイトできる年になり「あの時の曲!」ってプレイリストに入れてる事実が、再会の可能性だ。

Back To The 80's[Explicit]

 

ザ・リーサルウェポンズ/イロモンレコード
 映画「名探偵ピカチュウ」の日本版予告編で流れた、麻倉未稀『HERO』を聴いて、ぼんやりと「この歌、実は日本語より英語歌詞の方がかなり多くて、もしも、全般に渡り日本語と英語ちゃんぽんだったなら、カラオケで唄う人は10倍くらいいたのではなかったか」とか考えていましたよ。その点、ザ・リーサルウェポンズの楽曲は、ネイティブな発音ながら、口に出して言ってみたい英語詞が多く、日本語との比率も絶妙です。THEは「ダ」Fireは「フゥィア」とか、ほんとうの英語を、中高の授業で、熱血教師に教えてもらいたかったです。1stアルバム12曲の中では『熱血ティーチャー』と『80年代アクションスター』が特に好きです。

 

 

 

イーストヒルズ

イーストヒルズ

 

TETORA/ジャパンミュージックシステム

 選挙後「あいつは当選したのに公約を実行しない!」と騒ぐ人がいるけど、私が思うのは、その図太さを武器に本当に私たちのために政治を頑張ってほしいということ。裏切られた恨みを、執念の揚げ足取りにぶつけてネガキャンとか、監視するのはそこじゃない。票を入れた私にとっての理想社会実現が重要。悪意のある周辺国や、世間の狡猾な悪者に対して、誠実正攻法でバカを見ることのないように。ずるい事のできる人がひとつ目的に燃えていたら期待する部分はある。浅はかな人とか、そもそも日本が嫌いなスパイとかそりゃ論外だよ。先手でもカウンターでもTETORAの『ずるい人』は、騙しのスキルでなく、無自覚でずるく心を握っている。

Are you ready?

 

BiS 新生アイドル研究会/日本クラウン

 「あの子が辞めたら私の中では一段落だ」って旧BiSから追いかけて。あの子が辞めてBYSになっても、自分のBiS熱は全然冷めなかった。音のせいだ。2つに分裂された活動も終わり、全員一丸でのリリースが3月のこと。曲は会心の一撃と受け止めた。私用で3月末からネットの無い海外へ行き1週間後に帰国したら、全員の意思で解散というお知らせが入ってて驚いた。炸裂する成長物語、人生全掛けの一挙手一投足、そういう事件の目撃者を巻き込むBiSなりのアイドル活動。今後、誰がどこのリングへ上がるとしても、BiSだった君たちを知っている限り推さざるを得ない。経緯はともかく、君たちは本当にUWFみたいだな。歌のせいだ。

 

 

 

星の宵

 

初恋のテサキ/SMMI
 ドラマ「日本ボロ宿紀行」を見てます。昭和歌謡の一発屋が、当時のヒット曲のCDを背負って再起。おじさん歌手と美人若手マネージャーの二人が地方営業ドサ回り。温泉街で歌いつつ、おカネがないのでボロ宿に泊まると、そこにエピソードがある。だが、CDはあまり売れないというループ。若いマネージャーが枯れ専で、壁のシミや階段の軋み、古い看板に身悶えする様子を見守りつつ、セットではなく現存する大正昭和テイストのロケ地を楽しむ。やがて無くなってしまうか新しくなってしまう街並み、建築物。リアルでは新しく作られたはずの桜庭龍二『旅人』が、ボロ宿紀行のロケ地にマッチする。そこに、ドラマチームのひなびた街に対する愛情をしっかと感じた。

カワキヲアメク

 

美波/フライングドッグ
 Twitterで盛り上がってる=世の中が盛り上がっているのだと錯覚しがちだ。社会のほんの一握りのつぶやく人を、自分で選別したタイムラインだって所が抜け落ちてるよね。SHOWROOMで注目の!も、そのサービス外では知らない。田舎村界隈の住民か否か。それで、SNSでもない圧倒的少数派のAmeba Owndの村の中、アカウント作ってあれこれやってるついでに、オウンドのページ持ってるアーティストをフォロー。その界隈でなければ私は見つけられなかったであろう美波の歌を聴いています。アー写も日記も無いWEB。曲のタイトル覚える習慣無くなったのに曲名が先に頭に残り、後日思い出して聴いたら、昭和歌謡唸りが意外に良くて響いた。

HEY ! 浄土 〜生きてるうちが花なんだぜ〜

HEY ! 浄土 〜生きてるうちが花なんだぜ〜

 

嘉門タツオ/CLUTCH
 結局、一番面白いのは身内の話題でしょう。なんでこんなことで笑い続けられたのか、という記憶は、友だちや家族と共にある。それ以外で、呼吸困難で死ぬかと思うほど笑った体験は、嘉門達夫でしかない。笑い続けながら、やばい苦しい、恐怖したその時の事を覚えている。思えば、小学生の頃にダミ声のコミック歌手として認識して以降、深夜ラジオ独特の語り口で「君たちは知らないと思うけど、こういうのに影響受けて」と、吉田拓郎のマジ歌を熱く歌ってくれたり、子どもの接する大人の入口として最高だった。今でも数十年に渡り、ずっと冗談交じりに笑いと人情を示してくれるこの人は、私の小学生の頃からのイマジナリーフレンドだったのだと、最近気づいた。

ホワイト・アルバム

 

サトミツ&ザ・トイレッツ/Sony Music Labels
 SF映画の未来都市で真っ白な居住空間を見ても、宇宙空間に浮かぶメカニカルな巨大戦艦を見ても、この中で人間が過ごすとしたら、食べるものと寝るところと、トイレが必要なんだと、ぼんやり思う。人間の進化や、テクノロジーの進化は、食べて寝て、トイレを、省略する方に進むのか、効率化して付き合ってゆくのか、もしくは、エンタテインメントとして謳歌するっていう選択肢も当然ある。トイレの機能開発でいうと、日本はかなり進んでいるらしいけど、音楽ジャンルとしてはまだまだだよね。「お腹が空いた腹ペコだー♪」のように、ちょっと歩いてトイレのドアを開けるまでに、誰もが口ずさむ歌が、日本にはまだない。