横断歩道でもない道路を、いきなり確認もせずに横切ろうとしたとして車道を走行中の自転車や車に接触したとしても、従来は前方不注意や安全運転義務違反等、車両運転者だけが処罰を受けていましたが、今では営業用のタクシーやバス・トラックにはほとんどドライブレコーダーが装着されていますから、歩行者や自転車の無理な道路横断や信号無視、一時停止違反に無灯火走行といった、歩行者や自転車側にも過失責任が問われるような原因の証明が可能となりました。
私がお付き合いのある運送会社で起きた交通事故では、ドライブレコーダーの装着がドライバーと会社を救いました。
夜間に4トントラックが片側2車線の国道を走行中、信号のない車道で左側の歩道から人がいきなり目の前に走って進入、ドライバーの急ブレーキも間に合わずトラックと衝突した結果、相手は重傷になるいわゆる人身事故になりました。
ドライバーはいきなり飛び出してきたので避けられなかったと主張しましたが、警察官の取り調べ調書は、ドライバーの前方不注意が原因の、100%運転者の過失だという前提で厳しく取り調べを受けたそうです。
交通事故も交通違反もない優良ドライバーでしたから、会社の信用も厚いドライバーの話では、自殺したかったのかと思う位、トラックめがけて飛び出してきた、との事。
確かに、運送会社で速度や急発進・急ブレーキ・距離や停車駐車状況が記録されるタコグラフや前方とドライバーの両方の音声や映像が記録されているドライブレコーダーを確認してみても、法定速度は遵守していますし、よそ見や作業をしている様子もなく、いきなり飛び出してきた歩行者に反応してあわてて急ブレーキをかける様子が映っていました。
私も確認させてもらったのですが、これで100%運転者の過失では、ドライバーも運行管理者である運送会社も納得できません。
改めて証拠としてこれらの記録媒体を提出した上で警察の判断を仰いだ結果、前方不注意は免れなかったものの、交通違反切符のみで、免許停止や取り消しといった行政処分は受けずに済みました。
全ての事故がケガをさせた側に責任があるとは限らない交通事故。
ドライブレコーダーはドライバーだけではなく家族や会社も守れるという事を実感しました。
それ以来、その会社のドライバーたちの通勤車両にも、ドライブレコーダー装着率が向上したのは言うまでもありません。
私は早くからドライブレコーダーを装着していて、みんなに付けた方が良いよと言っていたのですが、身近に起きた事故でようやく必要性に気付いたようです。
運転免許ありきの職業ですから、それが奪われると生活に大きな支障がありますから、自己防衛としての必要性を感じたのでしょう。
自分の運転が記録されているという事で、自制して無理な運転をしなくなるという効果もありますし。
当初は管理者側の都合、ドライバーのスピード違反や運転操作ミス、居眠り・スマホ操作など脇見運転による事故の増加から、その防止策としてドライバーを監視・管理する目的で導入することも多かったのですが、前後の様子が録画録音される事で、後方から追突されるくらい近寄ってきたり、左右に大きく動いて威嚇したりする、いわゆる“あおり運転”や、バスやタクシーの乗客による暴力行為や無賃乗車などの証拠にも利用されるようになりました。
自動車事故が起きた際に、契約者や相手の人・モノの損害を補償する任意加入の自動車保険も、映像証拠があると相手との示談交渉や裁判での証拠として有効な事から、自動車保険の保険料にドライブレコーダー割引を適用する保険会社もあります。
自動車や自転車・歩行者が、路肩などから急に飛び出してきて衝突した時、これを避けきれなかった事が証明されれば、加害者とされる自動車運転者の過失割合や相手への賠償にも大きく影響してきます。
従来なら、子どもだから、高齢者だからと、それが子どもや高齢者の違法行為や危険行為が原因だとしても、ある意味片目をつぶって弱者救済と保険会社が支払っていた損害賠償金も、法律を根拠とした本来の保険金支払いとなれば、保険会社が負担する払うべきではなかった支出も抑制できますから、安全運転で事故もなく保険金の支払いがない優良な運転者の保険料をもっと安くする事も可能でしょう。
自動車保険の本来の目的である、法律上賠償義務が生じる、加害者が支払うべき金銭的な支出を、契約を締結した保険会社が契約者に代わって支払うという、本来の自動車保険の目的になれば、多くの自動車保険の契約者にも恩恵はある筈です。
車を乗り替えたら保険料がすごく高くなった・・・というのは、運転者の年齢や過去の事故経験だけでなく、車両ごとに事故・盗難・安全性能・ケガや死亡率などのリスクが異なるからです。
自動運転になれば事故は減るという考えも間違いではないのですが、すべての車両が自動運転になり、道路上で起きる動物や人間の突発的行為も無くなればの話でしょう。
今は実証実験が行われている自動運転も、事故・故障・停電や災害といったハプニングには対応できるとは限りませんし・・・
また、ドライブレコーダーの普及は社会生活にも良い影響が出ています。
地域の警察・行政と協定を結び、走行中の映像データを事故・事件・災害時の証拠として提供できるようなり、動く防犯カメラとしての役割を担う取組みも始まっています。
どんなに交通ルールを守って安全運転をしていても、高速道路の逆走や信号無視など、いつどこで第三者が突発的に起こした行動で身の危険が生じるかもしれない現在、証拠となるドライブレコーダーの存在は大きいでしょう。
それでも、悪質なあおり運転など危険な運転をする輩はいるのですから、せめて自己防衛だけはしなくては・・・