ラ・ラ・ランドは、
二人の男女が、
夢と愛の間で、
笑い、泣き、
相手を心から思う、
素敵な物語。
徐々にすれ違っていく二人のココロの動きを
表現していきたいと思います。
主人公の一人、セブ。
ジャズピアニストで、
夢は、チキンとジャズを提供する自分のお店を出すこと。
お店では、自分の好きな曲を、好きな時に、好きな方法で演奏することを夢見る。
セブが開店したいお店の場所は既に決まっており、
ヴァンビークという、昔、著名なジャズミュージシャン達が演奏を行っていたお店。
今は、ジャズではなく、タパスとサンバを提供するお店に”なり果て”ている。
それでも、セブは往時のお店を懐かしむと同時に、
いずれはあのお店で、自分の店を開くべく、
お店が見渡せる向かいのパーラーでコーヒーを飲みながら、
嬉しそうにお店を眺めるのが楽しみになっている。
ちなみに、セブが、チキンにこだわるのも、
好きなジャズミュージシャンが、
birdというあだ名がつくほどにチキンが好きだったから。
それくらい、セブにとって、
昔の古き良きジャズへの思い入れや憧れは強く、深い。
ただ、ジャズへの思い入れが強すぎる一方で、
定職にはつけず、
生計を立てるためレストランやパーティーのBGMを演奏し、何とかやりくりしている毎日。
そのため、姉からは、ジャズの店を開きたいなどというロマンティストが抱くような夢は捨て、
早く社会人としてまともな生活をするよう諭されている。
また、セブはどちらかというと一匹狼で、
自分だけの世界に浸る傾向があり、男にありがちな面も持っている。
一方、もう一人の主人公、ミア。
女優を目指して、大学を中退し、
ロサンゼルスに移り住んで6年。
何百回もオーディションを受けては落ちることを
繰り返している。
広大な敷地に様々な映画セットが設置されているエリアで、
女優になることを夢見ながら、
コーヒーショップでバイトする毎日。
彼女が女優を目指したのは、すでに他界している女優だった叔母の影響。
叔母は、どんなに人からバカげていると言われようが、夢を追うことがいかに大切かをミアに教えてくれた。
また、ミアはルームメイトやボーイフレンドなど、
ミアの周りにはいつもミアを支えてくれるヒトがいる。
こんな主人公二人が、偶然出会い、恋に落ち、
互いの夢について語り合ったり、
互いの夢の実現に向けて応援する。
しかし、転機が訪れる。
たまたま、故郷にいる母親と電話をしているミアの会話が、
何となく聞こえてきたセブ。
セブについていろいろ質問をする母親に
受け応えするミア。
セブはいい人で、店を開く準備をしていること、
(お金の心配をする母親に)多分貯金があるのだろう、
(仕事は定職についているかの問いに)定職はこの時勢厳しい、
等々、セブをかばうやりとりをするミア。
これを聞いたセブは、
決意する。
愛するミアとこれからもいっしょにいるため、
本当にやりたいことではないが、
安定した収入が見込める仕事をしようと。
仕事は成功する。
仕事の内容は音楽ではあるが、
セブの好きな音楽ではない。
好きではない仕事で忙しくなるセブ。
一方、自作自演の舞台の準備に夢中になるミア。
ミアとの愛を育むために好きではない仕事に就き、“大人”になろうとするセブ。
好きな女優の仕事をするために、一念発起したミア。
二人の人生に対する考え方にズレが生じ始める。
仕事で長い間留守にしていたセブがサプライズで一時的に帰宅し、ミアと食事を共にする。
仕事で出かけることの多いセブは、
自分といっしょに来ないかとミアを誘う。
ミアといつまでもいっしょにいたい、
ただそのためだけに好きでもない仕事をやっており、
セブからすれば自然な申し出。
そう、彼の人生の真ん中は、
“夢”ではなく、“ミアへの愛”になっていたのだ。
一方、ミアが愛していたのは、
夢を追い求めるセブであり、
セブが夢を諦めていたことを初めて知り、
セブに夢を諦めるな、
夢への情熱が人の心を動かすのだとセブに説く。
一方、セブは、それは甘い考えで、“大人”になろうとミアを諭す。
愛のために夢を諦めたセブと、
夢を追い求める中で互いの愛を育もうとするミア。
二人はすれ違う。
ミアの単独公演は終わり、
失意のミアは実家に戻る。
ミアの単独公演を観に来た配役会社のディレクターからセブに、
ミアに今度撮影する大作映画のオーディションを受けるよう、
オファーの連絡が来た。
そのことをセブはミアに告げる。
ミアは、次落ちたら立ち直れないから
オーディションは受けないと言う。
セブは、人家に聞こえるほど大きな声で、
「What!!」と叫ぶ。
それは、ミアの夢が叶うことを世界中の誰よりも願い、応援している男の魂の叫びだった。
驚くミア。
納得いく説明を言ってみろと迫るセブ。
自分には才能がない、
女優に憧れていただけだ、
もう傷つきたくないと告げるミア。
君は赤ん坊だと言うセブ。
夢を諦め、現実的な仕事をすることを“大人”と言っていたセブの考えが、
ミアが好きだったセブの考えに戻った瞬間だった。
そう、セブは、
夢を追い求めることが、
人生を歩む上でいかに尊く、すばらしいものか、
これまでの葛藤から改めて気づいたのだ。
そこに
大人だとか子供だとか、
そんなものは関係ない。
ひとがこの世に生を受け、
生きるということは、
好きなことを好きなようにやること、
あるいはそういう生き方を目指すこと、
そういう姿に意味があるのだ。
彼が、以前、ミアに、
自分の夢は、好きな曲を好きな時に好きな方法で演奏するジャズバーを持つと言っていたように。
ミア、君が正しかったんだ!
それでいいんだ!いや、それが人生なんだ!
だから君はそのまま歩むべきだ、
僕が歩んだ道ではなく。
明日、ミアが来ようが来まいが、
迎えに来ることを告げるセブ。
ミアは翌日のオーディションを受け、力を出し切る。
オーディション後、
ミアはセブに問いかける?
「Where are we?」
私たちの関係は、今、どういう関係?
問い直す、これからどうする?
しばらくは全力で女優の仕事に専念すべきと言い切るセブ。
その後はしばらく様子を見ようと言い、
互いに愛していると告げる二人。
5年の歳月が流れ、
ミアは大女優に、セブは大繁盛のジャズの店を持っている。
どちらも思い描いていた夢を実現している。
しかし、ミアの夫はセブではなく、
夫との間には、2歳くらいの可愛い女の子を授かっている。
一方、セブは、夢は実現したものの、独身の寂しい生活を送っている。
セブの店の壁には、
ミア主演の次回作の大きな広告が掲載されている。
そう、セブは、
今でもミアを心から愛し、ミアの夢がいつまでも実現し続けられるよう、心から願っているのだ。
セブのミアへの愛は、
ミアの夢を応援するというカタチ。
セブは、この5年間、ミアと連絡を取ろうとはしなかった。ミアが求めた時ですら、連絡を取らなかった。
セブは、自分の何気ない言動でミアが夢を諦めてしまうことを恐れた。
かつての自分がそうだったように。
ミアのことを心から愛しているからこそ、
ミアの夢が実現することを誰よりも切に願っているセブ。
セブは、自分も夢を実現し、
互いに夢を実現した上で、
再びいっしょになる日を秘かに夢見ていた。
そんなセブの思いを知る由もないミアは、
セブへの気持ちが次第に薄らぎ、いつしか優しく自分を包み込んでくれる男性といっしょになる。
セブの心の中にずっとあった思いだった。
初めてミアと出会った時の曲を弾き始めるセブ。
もし、時間がまき戻せるなら。。。
今とは違った夢の叶え方があったかもしれない。
互いの夢を実現しつつ、同時に愛を育めるあり方があったかもしれない。
いや、あったはずだ。
もし、そうならば、今頃、私たちは。。。
ピアノの演奏が終わる。
今になって、
全てを理解したミア。
時は巻き戻せない。
事情など全く知らない優しい夫は、
まだ聴いていく?と優しくミアに尋ねる。
これ以上このお店にいることはココロがもたないミア。
いいえ、行くわと応える。
去って行くミアに気づくセブ。
出口まで来た時、セブへの愛があわくよみがえり、
振り返るミア。
見つめ合う二人。
夢を叶え、5年ぶりに僕の前に現れてくれたミア。
今でも僕が心から愛しているミア。
「ミア、君はあれだけ心から望んでいた夢を叶えられたんだね。心からおめでとう。やっと僕はそれを君に伝えられる。」
心の中でそうつぶやき、
微笑むセブ。
全てを理解しつつも、
まだ動揺を隠せないミア。
私が心から愛し、
私を誰よりも心から愛してくれていたセブ。
そう、今この時まで。
動揺しつつも、
「ありがとう、セブ。そして、あなたも、あれほど夢中になって私に語っていた夢を叶えた、よかったわね、セブ、おめでとう。」
微笑むミア。
その気持ちを理解し、
「ありがとう。僕らは夢を叶えたんだ。僕たちはこれでよかったんだ。」
そうミアと自分に言い聞かせるように頷いてみせるセブ。
本当にこれでよかったのか、ミアには分からない。
それでも時は巻き戻せない。
立ち去るミア。
また一人になったセブ。
この5年間、いつだってミアが心の真ん中にいた。
ありがとう、ミア。そして、さようなら。
「ワンツー」
セブが新たにピアノを弾き始めた。
The End
(この記事の冒頭にある、星空の下で二人がダンスしている画。星は“夢”を現し、二人が、それぞれの夢、二人の夢を抱きながら、楽しく交わる、そんな夢を目指して生きる二人の淡く切なく、美しい瞬間を現している。)