(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈萌芽〉 12
伸一は、みんなの質問に丹念に答え、力の限り励ましたあと、こう語った。
「みんなの希望が叶うように、一緒に勤行しよう。私も真剣にご祈念します」
当時、中原は、UCLAへの留学を希望していたが、幾つもの障害があり、実現の難しさを感じていた。
中原は、唱題しながら、必死になってメンバーを守る伸一の背を見て、胸が熱くなった。
”自分のことのように、後輩の幸せを真剣に祈ってくれている。ありがたい。頑張らなければ・・・”
不思議なことに、それから四カ月ほどで、とんとん拍子に、彼の留学は決まっていった。
中原は、それを伸一に報告しに行った。
その時も、伸一は、わがことのように喜んでくれた。
「そうか、よかったな。私も、そのうちアメリカに行くから、向こうで会おう。その時は、必ず迎えに来るんだよ」
伸一は、ほとんどメンバーのいない海外で、信仰を貫くことが、いかに難しいかをよく知っていた。
だから、中原に、一つの目標を与えたかったのである。
それから間もなく、伸一は第三代会長に就任した。
中原が日本を出発したのは、その年の七月の末であった。出発前に、彼は学会本部に山本会長を訪ねた。
伸一は、書籍に「厳護」と認めて彼に贈り、アメリカの人たちと仲良くするとともに、環境の変化に目を奪われることなく、自身の成長を心がけていくように励ました。
伸一は、その中原が、今回も、こうして約束を果たそうと空港に出迎え、しかも、アメリカの青年部の中核に成長しつつあることがたまらなく嬉しかった。