(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈萌芽〉 5
春山は、次第に自信もなくなっていった。誰かに指導を受けたくとも、周りには相談する人もいない。
山本先生に指導を受けたいー 彼女は心の底から、そう思った。そんな時に、山持会長がアメリカを訪問することを知ったのである。
彼女は、山本会長に会った時には、これも報告しよう、あれも相談しようと思っていたが、実際に伸一を前にすると、何も言葉にならなかった。
それを察してか、伸一の方から彼女に語りかけた。
「春山さん、アメリカはどうだい」
次の瞬間、こんな言葉が口を突いて出ていた。
「先生、アメリカは広いんです・・・」
それは、動いても動いても、目に見える結果を出すことのできにでいた栄美子の実感であった。
伸一は、笑みを浮かべながら言った。
「そんなことは、わかっているよ。でも、私からみれば、アメリカといっても、庭先のようなものだ。大事なことは、自分の境涯の革命だよ。
限りなく高く感じられる石の壁も、飛行機から見れば、地にへばりついているような、低い境目にしか見えない。
同じように、自分の境涯を変われば、物事の感じ方、とらえ方も変わっていくものだ。
その境涯革命の原動力は、強い一念を込めた真剣な唱題だ。題目を唱え抜いて、勇気を奮い起こして行動し、自分の壁を打ち破った時に、境涯を開くことができる。
南無妙法蓮華経は大宇宙に通ずる。宇宙をも包み込む大境涯に、自分を変えていくことができるのが仏法だ」