(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈萌芽〉 6
その言葉を聞くと、春山は、電撃に打たれた思いがした。
”そうだ。アメリカが広いのではなく、私の境涯が狭く、小さなために、現実の厳しさに負けてしまっているにすぎないのだ。
先生は、アメリカを、決して遠い国とは思っていらっしゃらない。離れていたのは、先生と私の心の距離ではなかったのか・・・”
彼女は、目の前の霧が、すっと晴れていくような気がした。
伸一は、静かに言葉をついだ。
「今日は、ここでアメリカ全体の組織の検討をしたいと思う。
アメリカ総支部は、これまで、十条さんや、清原さんが、総支部長・・・ が、二人とも日本に住んでいる。
そこで、正木君と春山さんに、総支部長、婦人部長をやってもらいたい。十条さんと・・・、総支部の顧問というかたちで、応援してもらうようにしようと思うが、どうだろうか」
「はい!」
二人は、緊張した顔で返事をした。
「よし、これでアメリカは決まった。また、今回はハワイだけでなく、ニューヨーク、シアトルにも支部をつくりたい。
それから、ロサンゼルスには、学会の会館を、設置するからね」
矢継ぎ早に、伸一のアメリカ広布の構想が語られていった。
午前零時を回ったころ、副理事長の十条清らの同行の幹部が、ハワイ支部の地区の構成案や人事案を持ってやってきた。
「先生、組織の原案が出来上がりました」
「そうか、こっちも、アメリカ総支部の布石が終わったよ。では、ハワイの人事を検討しよう。人事は一番大事だからね」
一夜明けて、八日の午前中には、日系人が経営するホテルを会場に、教学部の任用試験と助師を対象とした昇格試験が行われた。