すみのえとすみよし | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

○前回、ブログ『すゑよしのすみよし』として枕詞「すゑよし」の話をした。ただ、ブログ『すゑよしのすみよし』でも言及しているように、『すゑよしのすみよし』ではなくて、『すゑよしのすみのえ』である可能性も高い。と言うか、本来は、『すゑよしのすみのえ』だったとする方が、妥当なのである。

○それは表記「住吉」を何と読むかに関係してくる。現在、私達は、普通に『すみよし』と読むけれども、古代に於いては、『すみのえ』と称したことがはっきりしている。このことについては、以前、「古事記」と「日本書紀」と「万葉集」の全記録を検証したことがある。

  ・テーマ「吉野山の正体」:ブログ『吉野山は何者か⑪ー古代国語の音韻に就いて』

  https://ameblo.jp/sisiza1949/entry-12519937527.html?frm=theme

  ・テーマ「吉野山の正体」:ブログ『吉野山は何者か⑫ー「可愛・吉・延」の表記法』

  ・テーマ「吉野山の正体」:ブログ『吉野山は何者か⑬ー「可愛・吉・延」の表記法2』

  https://ameblo.jp/sisiza1949/entry-12519937543.html?frm=theme

   ・テーマ「吉野山の正体」:ブログ『吉野山は何者か⑭ー古代国語の音韻に就いて2』

  ・テーマ「吉野山の正体」:ブログ『吉野山は何者か⑮ー「可愛・吉・延」の文字使用例』

  https://ameblo.jp/sisiza1949/entry-12519937568.html?frm=theme

○「古事記」と「日本書紀」と「万葉集」の全記録に見える「吉」の表記例は、次のようであることが判る。

        き・きち   よ・よし     え   
  古事記     20     10      0   計   30例
  日本書紀   128     89     11   計  228例
  万葉集    244     93     31   計  368例
    総数   392    192     42  合計  626例

○これらの表記から、吉備・吉野・住吉の地名と吉師・吉士の役職名を除くと、次のようになる。
        き・きち   よ・よし      え
  古事記      0      5      0   計    5例
  日本書紀    12     16      0   計   28例
  万葉集    244     60      0   計  304例
    総数   256     81      0  合計  337例

●つまり、「吉」字は、古事記・日本書紀・万葉集において、「吉」の全表記例は626例存在するけれども、吉備・吉野・住吉の地名と吉師・吉士の役職名を除くと、半減して337例になってしまう。
●古事記・日本書紀・万葉集に、「吉」字を「え」と読む例が42例存在するけれども、それはすべて「住吉」の表記であることが分かる。古事記・日本書紀・万葉集には、「住吉」以外に「え」と読む例は存在しない。また、古事記には「住吉」の表記例は全く存在しない。
●吉備・吉野・住吉の地名と吉師・吉士の役職名を除くと、「吉」字の使用例は古事記でわずかに5例、日本書紀でも28例しかなく、万葉集には、304例が存在する。
●ただ、万葉集の中では、「き・きち」の読み方と「よ・よし」の読み方は一様に現出しているのではない。一字一音の万葉仮名の場合は、「き」の読み方がほとんどであるのに対して、漢字を二音以上で訓読する場合は「よ・よし」の読み方がほとんどである。つまり、万葉集には、二通りの表記法が存在していることの証明にもなっている。

○こういう古事記・日本書紀・万葉集の表記を検証すると、やはり、住吉は「すみのえ」と読んでいたことが判る。もちろん、それは八世紀の話である。つまり、八世紀当時、住吉神を斎き祀るところは、すでに河口付近に来ていたことが判る。

○上流部にも住吉神を斎き祀る社が存在したことも間違いない。大淀川で例を採れば、それは金御岳(472m)と言うことになる。住吉山(267m)とは大淀川を挟んで対峙する山である。大淀川の源流は、この金御岳にある。

○諸県(二之方)からは、両方に川が流れて行く。いわゆる水分(みくまり)である。北へは大淀川、南へは菱田川。その両方で諸県(二之方)だと言うことになる。北側が北諸県郡、南側が南諸県郡と言うことになる。

○大淀川の上流にあるのが住吉山(267m)で、大淀川の河口近くに鎮座ましますのが「筑紫の日向の橘小戸の阿波岐原」の江田神社であり、住吉神社である。ただ、注意すべきは、住吉山(267m)近くにも檍原が存在する点である。禊の場は必ずしも海では無いのである。

○住吉山(267m)近くには、嫁坂が存在する。これは黄泉(よみ)坂が訛って嫁坂となったと言われている。なかなか日向国は面白い。