劇場未公開<不倫する肉体 (Las Oscuras Primaveras・メキシコ・2014)> ★★★☆

 

                   

 

メキシコ映画ということで見ましたが、多少はタイトルに釣られたことも事実でした(汗)

原題の“Oscuras“は英語の”obsure=あいまいな、人目につかない”Primaveras”は”spring=春の複数形“で、”不倫“の”フ“の字もありませんが、まるでAVのような邦題で釣られてしまいました()

女はシングル・マザー、男は同棲はしていますが家計は別々のようなので夫婦ではなく恋人のようで、厳密には不倫とも言えない設定ですが、双方の家庭が無残にも崩壊するという内容でした。セックス・シーンも最後の最後に登場するだけです

 

>シングル・マザーのピナは息子のロレンソを幼稚園に送り出してから出勤しています。同じビルのメンテナスをしているイーゴルはフローラと同棲していますが、彼女は家政婦として働いていて生活費は別々になっています。ある日、ピナはイーゴルと出遭いい、すぐに互いに惹かれあい、イーゴルの働く地下室でペッティングを繰り返しますが、人目もあり、それ以上には進まず、互いに欲求不満となり、ホテルを予約しますが、1度目はピナがロレンソにつかまり外出出来ず、2度目は逆にイーゴルがフローラにせがまれて買い物とすれ違いが続きます。フローラストレスのたまったピナは息子に八つ当たりしていじめます。イーゴルはフローラが愛想をつかして別れようと言い出させるため、彼女の貯金を全額使っていりもしない大きなコピー機を買い込みます。しかし、フローラはそれを使って文書コピーの副業を始めてイーゴルの計画は失敗しますが、イーゴルの浮気に気づいてしまいます。母のいじめにおびえたロレンソは父親に電話し、父親が引き取りに来ますが、ピナは自分が身軽になったことを逆に喜びます。ピナはイーゴルを自宅に招き、人目を気にすることなく激しく情事に耽ります。その頃、幼稚園にはロレンソの姿はなく、フローラは別れを決断して、友人の助けを求めて私物をアパートから運び出していましたが、コピー機を運び出して階段を降りようとして余りの重さに転落し、コピー機の下敷きとなって死んでいました。

 

映画の大半は双方の家庭のいざこざを描いていて、AVどころか深刻なホーム・ドラマとなっています。

イーゴルは、風体もぱっとせず、何でピナがこんな男に惹かれたのか理解出来ませんでしたが、更に自分の心変わりを恋人に言い出せず、わざと愚行をして相手から別れ話を切り出させようとする小心で狡猾な男で共感出来ませんでした。

 

しかし、それ以上にひどいのはピナで、息子が幼稚園の文化祭で重要な役を貰って喜んでいるのに、男に夢中で頼まれた衣装も準備してやらず、息子の大切なおもちゃを全部捨ててしまって怒鳴りちらしたりで、息子がとうとう父親に泣きついて出て行くのをむしろほっとしている始末です。文化祭の前日、ピナはようやく息子の衣装を手作りしてやりますが、息子はそれを着て幼稚園に出ることなく、父親と共に遠い町へ去って行きます。

 

イーゴルがフローラの貯金で買ったコピー機というのが企業で使う大型機なのはちょっと不自然ですが、その重さのためにフローラは押しつぶされて死んでしまい、そうとは知らないイーゴルとピナは激しい情事に耽っており、恐らく互いに“邪魔者”のいなくなった2人は気兼ねなく欲情の世界を堪能するのではないかと思わせる後味の悪い結末でした。