<みなさん、さようなら (Les Invasions Barbares・カナダ・2003) > ★★★★☆

 

 

安楽死を描いた作品ですが、内容はコメディ・タッチで湿っぽさはありません。末期癌の老人が家族や友人との交流を楽しんだ末に思い残すことなく安楽死を遂げるとう作品です。カナダ映画ですが、フランス語圏のモントリオールを舞台でタイトルもセリフもフランス語になっています。原題は“野蛮な侵入”というような意味ですが、老人が彼を何とか生きさせようとするのを余計なお世話としてつぶやく言葉です。

 

>元大学教授の父親レミが末期癌を患っているとの知らせを受けて、ロンドンで証券ディーラーとして成功している息子のセバスチャンは婚約者のガエルを伴ってモントリオールにって来ます。レミは頑固者で酒好き、女好きを自負していて、セバスチャンは強く反発していましたが、母のルイーズに頼まれて、父親の最期の日々を楽しいものにしてやろうと決心します。病院は満杯の状態ですが、セバスチャンは財力に物を言わせ、経営者や組合を買収し、広い個室を手入れして豪華な病室に作り替え、父の友人やかつての愛人たちを招き、レミのかつての教え子たちに金を払って見舞いに来させるなどして父を喜ばせます。レミの病状が進み、激しい痛みを感じるようになり、ヘロイン注射しか打つ手なないと言われ、地元の麻薬係の刑事に入手先を相談しますが断られますが、レミの元愛人ディアーヌの娘ナタリーが麻薬常習者であることを知って、彼女をレミの世話係として雇います。ナタリーの入手したヘロインのお陰で小康を保ちますが、友人ピエールの湖畔の別荘で過ごした時が一番幸せだったというつぶやきに、セバスチャンはピエールから別荘を借りて、父に最期のときを迎えさせてやることにして、友人や元愛人たちを招いて賑やかなひと時を過ごします。セバスチャンの妹シルヴェーヌはヨット回送の仕事で太平洋にいますが、父宛にビデオ・メッセージを送って来ます。レミはセバスチャンとガエルに「早く結婚して、お前のような息子を作れ」と言って息子を抱きしめます。やがてレミの容態が極度に悪化、ナタリーはレミの指示通り点滴液に過分なヘロインを混ぜて安らかに息を引き取らせます。葬儀を終えたセバスチャンは父が1人で暮らしていた家をナタリーに貸し与え。ガエルとともにロンドンに帰って行きます。

 

元大学教授というレミは病床にあって体は言うことを聞かなくても女好きという性分は旺盛で、卑猥な言葉を次々に発しますが、周囲も心得たもので言い返すので、カラッとしていて暗さを感じさせません。父親はケベック州独立主義者で、社会主義者を自認していますが、息子は証券ディーラーとして資本主義にどっぷり浸かり、金の力に物を言わせて父親の最後を飾ってやろうとする父子の対比が妙で、映画を重苦しくしていません。ただ、現実問題として、肉親がこうした状況になった時、セバスシャンのように割り切った行動が出来るかどうかは疑問が残りました。

 

後半に登場するナタリーはヘロインの常習者でその危険を十分心得ていて、始めは単に麻薬購入資金欲しさでしたが、レミを楽に逝かせてやりたいという気持ちから次第に介護に真剣味を帯びてゆくあたりがなかなか好演だと思いましたが、見終わってから調べてみたら、演じているマリ=ジョゼ・クローズという女優はこの作品でカンヌ国際映画祭女優賞を獲得していました。