東京都美術館で開催しているクリムト展を観てきました。
月曜日はお休みの美術館がほとんどですが、都美は毎月第二月曜だけ開館しているみたいですね。ありがたい!
企画展が混みがちな都美、月曜日の午後とはいえ、空いてはいませんでした。キャプションや小さな作品の前は、並んですーっと通り過ぎながら見る感じ。
でも有名どころのペインティングは大型のものが多いので、引きで見たり近づいて見たり、じっくり味わう余裕がありました。
なかなかいいラインナップでしたが、特に《ベートーヴェン・フリーズ》の複製!
クリムト40歳頃の大作で、全長34mにおよぶ壁画です。
《ベートーヴェン・フリーズ》中央の壁「敵対する勢力」
インスピレーション源はベートーヴェンの交響曲第9番(年末に流れる「歓喜の歌」)。
フリーズというのは建築用語で、古代建築に帯状にめぐらされた装飾彫刻のことです。パルテノン神殿のものが有名ですね。
《ベートーヴェン・フリーズ》の本物はウィーンのセセッシオン(分離派会館)に展示されていて、4年前に見に行きました。
セセッション(ウィーン)
建物の設計はヨーゼフ・マリア・オルブリッヒ。
金細工に飾られたシンメトリーのデザインは、まさに分離派絵画!
ちょうど他の展示室が閉まっていて、この作品しか見られなかったのですが、十分満足したのを覚えています。
本展の模型で感動を再体験することができました。
下調べしておらず、こんな展示があると知らなかったので、嬉しい驚きでした。
本物の《ベートーヴェン・フリーズ》。2015年セセッションにて
ふんだんな金箔はもちろん、よく見たらテュフォーン(猿みたいな怪物)の目や、黄金の騎士の剣の石がキラリと光っていたりして、豪華な工芸品を見ているよう。
それにしてもこの作品、余白が多いんですよね。
描き込まれているところとの差がすごくて、制作途中なのかな?とつい思ってしまうくらい。
歓喜の歌(部分)2015年セセッションにて
だけど全体がゴテゴテキラキラだったら、悪趣味になってしまいそうですね。
ぐっと抑えているからこそ、落ち着いていて、神聖な雰囲気さえ漂う空間になる。
ブリュッセルにある内部非公開のストックレー邸も、いつか公開されないかなー。
ストックレー邸食堂壁画の下絵(オーストリア応用美術博物館)
初来日の《女の三世代》も、所蔵館であるローマ国立近代美術館で見た懐かしい作品。
留学していた頃、なんと10年も前のことです。当時からクリムトは好きなほうだったのですが、イタリアで見られるクリムト作品は少ないので(この作品と、ヴェネツィアのCa’ Pesaroにある《ユディトⅡ》くらい)、「おおー!クリムト!」と嬉しかったことが印象に残っています。
《女の三世代》
クリムトはいつ見ても、すごいバランス感覚だなぁと感心してしまいます。
クリムトだけでなく、分離派の他の作家も、装飾模様やフォントデザインがいちいち素晴らしい。
ひとつひとつのモチーフや模様は単純なのに、配置や組み合わせが絶妙で、「すごいなぁーかっこいいなぁー(語彙が少ない)」と思いながらいくらでも見ていられます。
さらにクリムトが描く人物は、デザインの型にかちっとはめられて不自然にも見える格好になっているのに、血が通っていて強く温かい生命を感じさせるのが不思議です。
官能性は生命の誕生と密接に結びついていますが、露骨に性的な描写のため、ふしだらと物議を醸すことも多かったクリムトの絵画。
ウィーン大学大講堂の天井画、《医学》《哲学》《法学》もポルノっぽいということで大学側から講義を受けました。大学にふさわしいかどうかは別として、クリムトの代表作にふさわしい3作品だったはずですが、第二次世界大戦中に焼失。本展には写真が展示されていました。
《法学》の記録写真
似てると言われることのあるミュシャもいいですが、実物を見て感動が大きいのは断然クリムトですね。《ベートーヴェン・フリーズ》を始め、金箔の盛り上がりや透き通るような肌の色を、ぜひ間近で鑑賞してみてください。
国立新美術館の「ウィーン・モダン」展も近々観に行きたいと思います。
(ところでこの2つの展覧会、紛らわしいですよね…。どっちの前売り券を持っているのか分からなくなりました)
クリムト原寸美術館 100% KLIMT! (100% ART MUSEUM)
3,300円
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もっと知りたい世紀末ウィーンの美術―クリムト、シーレらが活躍した黄金と退廃の帝都 (アート・ビ...
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【展覧会概要】
クリムト展 ウィーンと日本 1900
会場:東京都美術館
会期:2019年4月23日(火)〜7月10日(水)
休室日:5月7日(火)、20日(月)、27日(月)、6月3日(月)、17日(月)、7月1日(月)
時間:9:30〜17:30 ※金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
公式サイト:https://klimt2019.jp/入場料:一般1600円/大学生・専門学校生1300円/高校生800円/65歳以上1000円