富山に来たら絶対に訪問したかった、
富山市ガラス美術館にやってきました!
市内に突如現れるとっても素敵な建物。日本が誇る隈研吾氏の建築です。
ガラスや富山の杉がふんだんに使われていて、外も中も光を受けてキラキラ輝いています。
常設のガラス作品展示も充実しているし、ライブラリーもとってもおしゃれで使いやすそうです。
こんな施設、家の近所にあったらいいな〜。
さて、特別展はマルタ・クロノフスカ個展「不思議ないきもの」。
クロノフスカは1964年生まれ、ポーランドのアーティスト。
これが日本初個展です!
原題「Istota」はポーランド語で英語のbeingやessenceにあたるようですね。いきもの、存在、本質、そんなところでしょうか。
クロノフスカの作品は、名画の中の動物や靴をガラスで再現するというもの。
一見ふわふわで触りたくなるようなフォルムなのですが、実際は無数のガラス片の集まりなので、切り口が鋭くとても危険。視覚と触覚のギャップがおもしろく、不思議な世界が展開しています。
作品のモチーフとなっているのは、主に15世紀〜18世紀のヨーロッパの名画に描かれた動物たちと靴。
たとえばルーベンス。
右端のシュッとした犬がモチーフになっていました↓
最近は日本の浮世絵もインスピレーション源にしていて、歌川広重の鯉もありました。
かわいらしくもあり、造形的に美しくもあり、今年見た中でいちばん欲しいアーティストです。
飾るのが難しそうだけど、、、
入り口以外は撮影禁止だったので、ぜひネットで検索して作品画像を見てみてください!
クロノフスカの公式ページはこちら
ここだけ撮影OKでした。
とっても素敵な作品ばかりだったので、もうちょっと踏み込んで考えてみましょう。
名画から取り出された動物は、もとの絵の中では脇役ですが、単独で別の作品となることで全く新しい印象を放ち始めます。
看過されてきたモチーフは、そうやって新たな命を吹き込まれた一方で、ガラス片の中に永遠に閉じ込められているようにも見えます。
18世紀以前というのは写真が登場する以前の時代です。その時代、描かれることによってモデルが絵の中に閉じ込められることと、さらにその絵がガラスの中に閉じ込められることは、重なり合うようにリンクしているのです。
どんなに生き生きと描かれていても、それは切り取られた一瞬にしか過ぎず、一度固定されてしまえばそこに永遠性か付与されてしまう。「実物」は絶えず変化し、朽ちていくにもかかわらず。
クロノフスカの作品を見るという行為は、下記のような構造のうえに成り立っています。
モデル
(画家)
絵画
(クロノフスカ)
ガラス作品
(鑑賞者)
この重層性が、単に「きれいー!」で終わらない深みを作り出しているのではないでしょうか。
さらに言えば、金属の型に接着された無数のガラス片による層も、彼女の作品が持つ重層性を強調しているといえるでしょう。
元となった絵画も合わせて展示されているのですが、元の絵画の見え方も変わってくるから不思議です。それまで注目されていなかった部分が浮き上がって見えるようになります。
ここで見ることができるのは、デイル・チフーリ氏のガラスアート。
1941年アメリカ出身のアーティストで、現代ガラスアートの巨匠とされています。
ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)のシャンデリアも手がけています。
グラス・アート・ガーデンを始めとする常設展示もすばらしいです。
富山まで来たら行かないともったいないですよ
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【展覧会概要】
マルタ・クロノフスカ「不思議ないきもの」
会場:富山市ガラス美術館(富山市西町5-1)
会期:2019年4月27日(土)~9月23日(月) ※終了済
休館日:水曜日
開館時間:9:30〜18:00
公式サイト:http://toyama-glass-art-museum.jp/exhibition/exhibition-2782/