「これsionin8じゃん!ってなったミステリー小説があるよ」

と友達に言われたのでさっそく読んでみました。

 

 

『神の値段』一色さゆり

 

 

著者のデビュー作であり、2015年に第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した長編。

 

物語の舞台は東京の現代アートギャラリー。若くて美人で強気なオーナー唯子が運営する、川田無名という覆面アーティストの専門ギャラリーです。

ある日、倉庫で唯子が殺されているのが発見されます。無名の初期傑作がギャラリーに届いたばかりでしたが、唯子以外に無名の居場所や連絡先を知っている者はおらず、唯子が作品をどうするつもりだったのかもわかりません。

問い合わせが殺到し、事後処理に追われるアシスタントの佐和子(主人公)。犯人は誰なのか、目的は何なのか、そもそも無名というアーティストは存在するのか? 謎を追ううち、アートの魅力やマーケットの不思議にも迫っていくアートミステリー。

 

 

 

ミステリーはあまり好きなジャンルではないので、正直期待していなかったのですが、かなりおもしろかった!

 

ミステリーとしてどうなのかはさておき、現代アートの世界を知るのに優れた入門書だと思います。(ちなみに謎解きと種明かしは、ちょっとやっつけ感があって拍子抜けかも…。が、それでも読む価値のある内容です)

 

友達が言っていたとおり、私の勤務先ギャラリーを取材したのかと思うくらいリアルに現場のことが書かれていました。紐の結び方やフェアの設営など、細かなところが的確に描写されていて、思わず「そうそう!」とうなずいてしまいます。コレクターの扱い方やオークションの作法は、私のような新米アシスタントにとっては勉強になりました。

 

これは実際の経験に基づかないと書けないのでは、と思っていたらやはりギャラリーに3年勤めていたとのこと。今は美術館で学芸員をしながら小説を書いているそうです。

 

 

ギャラリーの事情だけでなく、美術史や現代作家への理解も感じられました。私も美術を学んで研究してきたので、そのあたりの知識が焼付刃だったら白けてしまったと思います。

 

アートへの情熱も伝わってきてとっても好感のもてる作品でした!

現代アートの世界をのぞいてみたい方にぜひぜひおすすめの一冊です。

 

第二作、第三作もすでに出ているようなので、読んでみようと思います!