『しのゼミ』 -59ページ目

『しのゼミ』

日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

今日の生検標本を見ていたら,薄く切れてて,染色具合も程良くて,とっても良い具合。

誰が切ってくれたのかなぁ・・・



切片をうす~く切って,それをHEという染色を施して作られる病理標本。

これは実は病理技師さんの手間暇かけた手作業で作られる。

この病理標本,最近は染色が自動化されたので,薄切による標本ごとの差が出やすい。

つまり,うまく薄く切れてれば良い標本に見え,技量を伴わないと厚い標本になって見づらくなる。

この薄く切れてるのは・・・やっぱG君か・・・

折れ曲がって見にくいなぁ・・・やっぱYさんか・・・

標本の裏には検体番号が手書きで書いてあるので,その筆跡で答え合わせができる。



っで,今回のこの「とっても良い具合の標本」の裏を見てみると,あまり見たことない筆跡が・・・。

この見慣れん筆跡はひょっとして・・・新人のOさん作?

Oさんは期待の新人技師だが,最近薄切がツライとこぼしている。

しかし仕事し始めて1ヶ月かそこらなので,向いてないとかキライだとかそんなんじゃなくって,ただひたすら我慢の時なんだが。

ここはひとつ,標本がうまく作れてるってOさんを褒めてあげようか・・・・・

そうすれば,少しは薄切のつらさが和らぐかも・・・・・

そうしたら,シノ先生って案外やさしくって素敵ねって・・・・・



「お~い,Oさん」と声をかけたところ,Oさんの近くにはちょうど皆が集まって何かしゃべっている最中であった。

何事か?という皆の注視の中,手に持った「上手に作られた標本」を示して「これ誰が切ったの?」と聞いてみた。

すると皆の注目は「この標本」に移り,「シノ先生,いつの標本ですか?」とか,「また何か間違ってましたか?」とか,「また何か不都合でも・・・」とか,矢継ぎ早に「この標本」についてのネガティブな質問をされてしまい・・・・・

シノ「・・・イヤ,ただ単に誰が切ったのかな~って」

Oさん「私じゃないですよ(あーよかった,セーフ)」
Mさん「オレでもないわ」
G君「ゲッ・・・これ,ボクです」
Mさん「G君も,たまには失敗するんだねぇ」
Oさん「どこが悪かったんですか?」
Mさん「切り直したら?」
G君「そうですね・・・やり直した方がいいですか?」
・・・・・・



・・・っち・・・ちがうんやけど・・・・・

ただ,うまく切れとるぞヨシヨシ・・・・・って言いたかっただけやのに・・・・・

普段やり慣れんことをするとダメな好例。
「著眼高ければ,則ち理を見て岐せず。」

『出来るだけ大所高所に目をつければ,道理が見えて,迷うことはない。』

(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)






<しの訳>

目のつけ所は高い方がいい。

高ければ高いほど,

迷った時に向かう方向が見つけやすい。



目のつけ所は遠い方がいい。

遠ければ遠いほど,

見えてくる副産物も多くなる。



目のつけ所は変わってもいい。

更に高く,更に遠くなった方が,

またこれからもがんばっていける。
「努力論」とはこりゃまた地味なタイトルやけど・・・・・と手にとってみた。



人生とは努力し続けていくことだけど,

その方向性がぶれたり今日はまぁちょっとってサボったり小さな壁を前に「向いてないかも・・・」って思ったり自棄になったり・・・・・

凡人には凡人の悩みがついてまわる。



本書は「努力しつづけていくこと」の過程を「立志→精進→三昧→艱難→成就」の5つに切って,それぞれについて先人のエピソードをまじえて論じている。

それにしても取り上げられている先人のエピソードには驚愕する。

この心の底から噴出するような,信じて全く疑わないような志の高さはどこからくるんだろう・・・

振り返って自分を見ると,あー情けなや・・・である。

自分っていまだ「精進」程度?いや「立志」もままならんかも・・・って気になる。

せめて「三昧」の境地には至りたいなぁ。



しの的読後感:自分の悩みってなんてちっぽけなんだろう・・・・・恥ずかしい

こんなヒトにお薦め:「壁」にぶち当たってる人


努力論 (ちくま新書 672)/斎藤 兆史

¥714
Amazon.co.jp

「薄切がつらい・・・」という諸兄のためになる?しのゼミ的「薄切が楽しくなる方法」を考えてみた。



その1) 「香りのパラフィン」による毎日爽やかブレンディー!

たとえば「ミント風」「シナモン風」「ラベンダー風」「抹茶風」などの香り付きのパラフィンを作ってもらう。

っで,それぞれの香りのパラフィンを使ったブロックが,香り別に並べてある。

「今日はミントって感じかな~」とか「抹茶とラベンダーのブレンドにしよっか」とか,薄切するブロックを自由に選択ができるようにする。

薄切するブロックごとに違う香りが楽しめて,今度のブロックはどんなかなぁ~ってな感じで次々と薄切がはかどる。

また薄切後の削りカスをまぜこぜにして,「香りブレンディー」を最後に楽しむことができる。

「今日のブレンドはまずまずだけど,ちょっとミントが足りんか・・・よ~し明日はミント多めでがんばろう・・・」っと明日への労働意欲も漲る。

ついでにサ〇ラ精機あたりに,ソフトクリーム製造機みたいな多種類の違った香りのパラフィンが出てくる包埋センターを作ってもらえば,包埋作業も楽しくなるはず。

・・・・・香りだけで明日の天気もわかるようになるイメージで・・・・・




その2) ミクロトーム・スロットル・フィーバー!

カウンターをつけて,ミクロトームのナイフを何回滑走させたかがわかるようにする。

っで,そのカウンターをオンラインでスロットルマシーンにつないでおく。

ミクロトームを滑走させた回数のキリのいいところ(たとえば100回とか200回とか)になったら,スロットルが回りだす。

ゾロ目が出たらなんかもらえるようにする,たとえば777で今度のボーナスプラス5万円とか。

・・・朝8:30の病理部。

いきなりジャーンジャーンジャンジャカジャンジャンと「軍艦マーチ」が鳴り始まる。

「本日もご出勤ありがとーございます・・・」

技師長によるやかましい場内放送が始まって,スロットルがピコピコ回り始める。

「今日も晴れたよお空がきれい,フィーバーフィーバーで・・・・・お~っと3番台のGさん,いきなりリーチです」

・・・・・やかましいけど,血沸き肉踊る殺伐としたイメージで・・・・・





その3) 病理技師王選手権であなたもチャンピオンになろう!

TV東京の番組「TVチャンピオン」で,「病理技師王選手権」の企画をしてもらう。

基本は「薄切がいかに早く正確か」を競う。

高校野球方式で,各都道府県の大会を勝ち抜いた薄切猛者達・・・・・

かれらが向う戦地は,憧れの「甲子園病院病理部」(ほんなとこあるんかいっ?)。

選手権のメニューは,「筋腫早切り」とか「石灰化組織早切り」とか「脂肪組織凍結切片早切り」とか,いろんなものを用意する。

最後は「50ブロック早切り競争」でしめくくる。

戦い敗れたら,涙を流しながら「薄切の削りカス」を持って帰るような演出も考える。

毎年,この選手権に向けて全国各地の病院病理で血みどろの練習が繰り広げられる。

中には,薄切養成ギブスを整形の先生に作ってもらったり,この選手権だけに専念したいあまりに病院をやめるヒトが出てきたりして,ほとんど人気番組「サスケ」レベルになっちゃったりして・・・・・

「技師長・・・・・実は常勤を辞めさせてもらえないかと思って」

「え~っ,またどうして?・・・・・・なんか人間関係のトラブルでも?」

「イヤ,そういう悩みは特に・・・」

「給料に不満でも・・・・?」

「イヤ,できたら6時間勤務の非常勤にしてもらえないかなぁって思ってまして・・・・・」

「そりゃまたどうして?」

「実は・・・・・薄切選手権のトレーニングに専念したいと思いまして・・・・・」

「あ~,あれね,この前は県大会ベスト4で惜しかったね」

「今までは腕立てなどの筋トレに精を出してたんですが,それだけじゃ足りんかなって」

「そうだね・・・・・県大会で優勝した隣病院の〇〇さんなんて,魁皇顔負けの二の腕してるし,ちょっとやそっとではかなわんかもしれんね」

「実は先日,自宅にマイ・ミクロトームも購入しまして・・・」

「ホー,気合入ってるね」

「ハイ,近所の焼肉屋で軟骨ととんちゃんをもらってきて,凍結切片のトレーニングに励んでるんです」

「フムフム」

「どうしても来年は甲子園に行きたくって・・・・・でもそれにはトレーニングの時間が足りないんッス」

「ヨシヨシわかった。まぁ病院の宣伝にもなるし,応援してるよ」

・・・・・ホドホドにしないと放送中止になるくらいのイメージで・・・・・
「聡明にして重厚,威厳にして謙沖。人の上たる者は当に此の如くなるべし。」

『上に立つ者は,次のようにありたい。さとく明らかに物事を洞察し,しかも,おもおもしく穏やかであり,その態度は威厳があって,しかも,へりくだって,わだかまりがない。』

(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)






<しの訳>

人の上に立つには「聡明・重厚・威厳・謙沖」が大事らしい。

中間管理職としての自分はどんなだろうか?

自己評価してみると・・・・・

「広」~仕事内容も,興味の対象も,口出す領域もけっこうだだっ広い・・・・・いい意味でも悪い意味でも。広い分,穴だらけなのは確か。

「浅」~仕事内容も,興味の対象も,口出す領域も浅くって薄っぺら。まぁそんなところでええんちゃう?っと連発して,要はこだわりなしで妥協点が低い。

「転」~けっこう変わり身は早いし移り気。熱しやすくすぐ冷める。新しいものや流行りがあると流されやすい。間違ってたりした時も,すぐに素直に訂正する・・・いちおう。

「放」~自らの気付きが一番大事だろうから・・・っていう理由で,あんましヒトに干渉しないっていうか・・・・・野放し状態かもしれん。「謙」は守れてるかも・・・。

・・・ワザと一斎先生の教えの逆を行ってるわけではないけれど,見事に反意語が並んだような気がするが・・・・・

一揆が起きない様に気をつけよう・・・