2016年上半期映画、絶対に観ておきたい珠玉の10本 | 忍之閻魔帳

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ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

2016年上半期 映画


▼今週発売の新作ダイジェスト

Wii U スプラトゥーン セット amiibo アオリ ホタル
07月06日発売■Blu-ray:「キングスマン SPE BEST」
07月07日発売■WiU:「Wii U スプラトゥーン セット amiibo & Amazon限定特典付き」
07月07日発売■WiU:「Wii U スプラトゥーン セット amiibo アオリ/ホタル 付き」
07月07日発売■3DS/Wii U:「amiibo シオカラーズ [アオリ/ホタル]」
07月07日発売■3DS/Wii U:「amiibo アオリ」
07月07日発売■3DS/Wii U:「amiibo ホタル」
07月07日発売■3DS/Wii U:「amiibo ガール(ライムグリーン)」
07月07日発売■3DS/Wii U:「amiibo ボーイ(パープル)」
07月07日発売■3DS/Wii U:「amiibo イカ(オレンジ)
07月07日発売■3DS/Wii U:「amiibo スプラトゥーン シオカラーズセット &
限定新色3体セット & ジオラマキット2種 全部入り」

07月07日発売■3DS:「カルドセプト リボルト」
07月07日発売■3DS:「カルドセプト リボルト Amazon限定カード20種セット付き」



▼2016年上半期映画、絶対に観ておきたい珠玉の20本

2016年上半期 映画

【関連記事】2015年上半期映画、絶対に観ておきたい珠玉の10本

あっという間に2016年も半分終わり。
というわけで、昨年から始めた上半期まとめを今年もやってみたい。
良作率は高かったものの、大傑作が立て続けに出た
2015年に比べるとインパクトは若干薄め。
オスカー関連作品はやはりそれぞれに面白かった。

映画は観賞後にもヒタヒタと身体に染み込み
熟成してから印象が変わることが多い。
時間と共にしみじみと良かったと思う作品もあれば、
時間と共に感動が薄れていくものもあるので、
2016年7月現在の段階で強く印象に残った10本であることを付け加えておく。
作品は1月から公開順の紹介でありランキングではない。

2016年上半期の特徴としては、洋画・邦画共にホラーが大豊作であったこと。
古典から新機軸の作品まで幅広い作品が集まり、
かつ高品質なものが多かったように思う。
ホラーだけで個別にランキングを作れるほどの充実ぶり。



<2016年1月公開作品>


08月03日発売■Blu-ray:「パディントン」
08月03日発売■Blu-ray:「パディントン スペシャルBOX(マスコット&ポーチ付)」

【紹介記事】1年分の”可愛い”を凝縮した映画「パディントン」

人間の言葉を話す紳士的なクマ、パディントンの活躍を描いた家族向けのコメディ。
マイケル・ボンドの児童小説を実写映画化したもので、
パディントンの声は「007 スペクター」のベン・ウィショーが担当。
彼の持つ繊細さ、そこはかとなく漂う品格、茶目っ気が
パディントンと重なって「kawaii」をさらに倍増させている。
他にはヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、
ジュリー・ウォルターズ、ジム・ブロードベント、ニコール・キッドマンなど。

私ぐらいの年齢になると「kawaii」に対するアンテナ感度は相当鈍くなっていて
少々のことではビクともしないはずなのだが・・・。
どうしてくれようか、このパディントンの可愛さ。
一挙手一投足、全てが「kawaii」に満ちている。
あまりの愛らしさに開始5分でノックアウトされてしまった。

家の壁に描かれた桜の木、ハットに隠された秘密とサンドウィッチ、
姉が語学力に長けていることや父親の職業まで全てに伏線があり、
わずか90分ほどの本編でそれら全てを回収する脚本。
家族全員が絶妙な連携プレーを見せつつ、
ひとりひとりにきっちり見せ場まで用意されては
ブラッド・バード(「Mr.インクレディブル」)も形無しであろう。

大人をも悶絶させる「パディントン」は、実写もアニメも含めた
「しゃべる動物の映画」の中でもトップクラスの出来映え。
赤い帽子と青のダッフルコートを着たクマが
まだ始まったばかりの2016年の「可愛い」を1年分先取りしてしまった。
デートムービーとしては100点満点、女性同士でも文句なし、
ファミリーでもどんと来い。ありとあらゆる組み合わせで楽しめる傑作だ。




08月02日発売■DVD:「最愛の子」

金城武主演の「ウィンター・ソング」ではミュージカルを、
ドニー・イェン主演の「孫文の義士団」ではチャン・イーモウも真っ青な
歴史ドラマをプロデュースしてみせたピーター・チャン監督が
近作からガラリと方向転換して撮ったヒューマンドラマ。

3歳の息子を誘拐された父が必死の捜索の果てにようやく発見するも、
3年の間に息子は両親の顔を忘れ、誘拐犯の妻を母として慕っていた。
しかしその妻も、亡き夫が他所の女に生ませた忘れ形見と信じ
愛情いっぱいに育てていた、というストーリー。

粗筋だけ読むと「八日目の蝉」に近いが
こちらには幼子の誘拐と人身売買が横行する中国社会の問題点が凝縮されている。
さらに貧富の差、男尊女卑、法律の不備などが詰め込まれ
誘拐された側=善、誘拐した側=悪という二元論で終わらせないところがミソ。
同調圧力の厄介さという意味では、一部「スポットライト」に通じる部分も。
一番の衝撃は、これが実話であるということだ。

誘拐された母と、夫の子と信じて懸命に育ててきた女。
愛情の深さがイコールであると思わせるある台詞に心が震える。
血の繋がらない我が子を愛する主人公リー・ホンチンを演じるのは
「少林サッカー」で愛くるしい坊主頭を披露したヴィッキー・チャオ。
あれから15年経ち、まさかこれほど素晴らしい女優になるとは。
文句なしのお薦め。



<2016年2月公開作品>


発売中■Blu-ray+DVD:「オデッセイ」

【紹介記事】レッツポジティブ!映画「オデッセイ」より抜粋。

火星での有人探査中に発生したトラブルにより、
ただ独り残されてしまった主人公ワトニー。
救出は早くても4年後、残された水や酸素は極僅か。
食料は31日分しか残されていない。
誰しも絶望に打ち拉がれる状況だったが、
ワトニーは持てる知識を総動員して何としても生き残ろうと奮闘を始める。
傑作SF小説「火星の人」を「エイリアン」のリドリー・スコットが映画化。
主演はマット・デイモン、共演はジェシカ・チャステイン。

本作を重苦しさから解放しているのは、ワトニーの楽天的とも思えるポジティブ精神。
私の世代直撃な懐かしのディスコミュージックを聴きながら
光の挿す方向だけを見て生き延びようとする姿には感動を覚える。

「エイリアン」「ブレードランナー」など、数々の名作SFを手掛けてきた
リドリー・スコットだが、「プロメテウス」を発表した2012年に
実弟で映画監督のトニー・スコットを自殺で失っている。
本作で「必ず還って来ると信じる仲間(ファミリー)との絆」を
重点的に描いたのは、「孤独の中にあってもお前は一人じゃないんだぞ。
お前を待っている人はこんなにたくさんいるんだ(いたんだ)」という
兄からのメッセージのように思えてならなかった。

近年のハリウッド(の台所事情)では避けられないとはいえ
唐突に中国が絡んでくる点に違和感を覚えないわけではないが
こんなにも楽しい気分にさせてくれるSF映画は
(アメコミやコメディを除き)貴重なので広くお薦めしたい。




09月02日発売■Blu-ray:「ヘイトフル・エイト コレクターズ・エディション」

ハリウッドで異彩を放ち続ける鬼才クエンティン・タランティーノ監督の
最新作は前作「ジャンゴ 繋がれざる者」に続いての西部劇。
大雪により足止めを喰らった男女8人が小さなロッジに集まり
互いの過去を探りながら意外な繋がりが明らかになっていく。
出演はサミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、
ジェニファー・ジェイソン・リー、チャニング・テイタム、ウォルトン・ゴギンズ、
デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン。

ここまでやってくれれば、もう誰の何へのオマージュだのはどうでもいい。
重箱の隅を突く元ネタ探しをしなくても単体として十分に楽しい。
ゲーム好きにとっては、「かまいたちの夜」を彷彿するストーリーだが
ミステリー、残虐性、爽快感、人間ドラマのどれを取っても一級品。
「キル・ビル」のストーリーを1本に凝縮(と言っても168分あるが)し、
「ジャンゴ」からさらに洗練された復讐劇として
オスカーノミネートも納得の仕上がり。

残虐描写もハンパないので誰にでもはお薦めし辛いが
真っ白なオープニングから真っ赤なエンディングに至るまで
タランティーノの美学が貫き通されており
私的にはタランティーノ史上最高傑作と言ってもいいほどのフェイバリット作品。



<2016年3月公開作品>

マジカル・ガール 映画

サン・セバスチャン国際映画祭でグランプリ、
スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で最優秀主演女優賞などを獲得し
鬼才ペドロ・アルモドバルも絶賛したブラック・ユーモア満載の作品。
白血病の娘の夢『魔法少女になりたい』を叶えようとした父親が
予想もしなかった事態に巻き込まれるサスペンス。
監督はこれがデビューとなるカルロス・ベルムト。
ギレルモ・デル・トロやポン・ジュノと同じく
日本文化をこよなく愛する監督らしく
劇中に登場する魔法少女のテーマソングを探しまくり
アイドル時代の長山洋子が歌っていた「春はSA-RA SA-RA」に辿り着いたという。

娘のために奮闘する父親の感動秘話かと思いきや、
これが面白いほどにストーリーが明後日の方向に転がっていき全く先が読めない。
挙げ句には娘の病気すら置き去りにされてしまうが、
魔法少女の顛末も含め、演出に一切の躊躇がないのがいい。
魔法少女の響きに釣られて「まどマギ」ファンが足を運ぼうものなら
肉体的にも精神的にもグロテスクな本作の毒気にやられてしまうだろう。

エンディング、どこかで聞いたなと思ったら「黒蜥蜴」じゃないか。
しかもピンク・マルティーニとは、やるな。
早くBlu-ray(DVD)が出て欲しいが未だに国内発売の報はなし。




09月02日発売■Blu-ray:「リップヴァンウィンクルの花嫁」
09月02日発売■Blu-ray:「リップヴァンウィンクルの花嫁 プレミアBOX」

【紹介記事】「Love Letter」以来の傑作。映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」

「Love Letter」「花とアリス」など、繊細な映像とストーリーで
日本のみならず海外にも多くのファンを持つ岩井俊二監督の最新作。
目下映画やドラマに引っ張りだこの黒木華を主演に迎え、
綾野剛、原日出子、地曵豪、金田明夫ら安定感のある役者と、
Cocco、毬谷友子、りりぃら飛び道具女優を要所要所に配置する豪華布陣。
タイトルにも使用されている『リップ・ヴァン・ウィンクル』とは、
日本では「西洋版の浦島太郎」として知られている19世紀に書かれた寓話。

主人公の七海が岩手県は花巻の出身で、
使用しているHNがクラムボン(宮沢賢治の作品名に同名作品あり)なのは
「花は咲く」の作詞者としても知られる岩井監督なりのメッセージだろうか。
だが本作はそういった東北への想いは物語の後ろへと引っ込めて、
東京で暮らす若者のリアルな姿を切り取ろうとしている。

哀しみも怒りも心の奥底に沈めたまま静かに静かに進行する物語は、
真白の母・珠代の登場で一変する。
娘とは長く疎遠になっていた珠代と
詐欺的な行為で小銭を巻き上げてきた安室と、真白と心を通わせた七海。
表面張力ギリギリに保っていた均衡が一気に崩れ去る。
決して起伏のあるストーリーではなく、進行もまったりしているのに
全く間延びしない演出力は岩井俊二の新次元。
2時間半を超えると「30分切れただろう」と思ってしまう私が
180分の間、一度も「長い」「無駄だ」と思う箇所がなかったのは奇跡的。
「Love Letter」から21年、岩井俊二の新たな傑作が誕生した。



<2016年4月公開作品>


09月16日発売■Blu-ray:「ルーム」

【紹介記事】天窓の向こうが、僕の住む惑星。映画「ルーム」

7年もの間、狭い部屋に監禁されているヒロインと
生まれてこのかた部屋の中しか世界を知らない5歳の息子の物語を書いた
エマ・ドナヒューの原作小説「部屋」を映画化したもの。
主演は「ショート・ターム」で注目されたブリー・ラーソン。
監督は、2014年度公開映画・忍的ベストテン
6位に選んだ「FRANK -フランク-」のレニー・アブラハムソン。
器用に生きられない人間への温かな視点が持ち味の監督と
繊細な若者達に寄り添って生きる女性を描いた作品で世界に注目された主演女優。
出会うべくして出会った組み合わせと言える。

単なるサスペンス映画ならば脱出成功をクライマックスに設定するのだろうが、
本作は犯人の隙を突き、脱出を成功させるまでを一部、
警察に保護され、祖母の家で暮らし始めてからを二部とした二部構成になっている。
ビタミン剤で補給しなければ満足に栄養も摂れない侘しい食事でも
ジャックにとって決して不幸ばかりではなかった。
そのことを観客にも印象付けるために、一部にもたっぷりと時間をかける。
祖母の家で暮らし始めてから「僕だけのママ」は
「ひとりの女性」「祖母の娘」という新しい顔を見せる。
新しい生活は二人きりで完結していた世界を破壊し、
ママとの絆を薄めるものでもある。
しかし、この痛みを超えた先に、本当に新しい世界が広がるのだ。

特筆すべきは、新しい人間関係や環境を受け入れる子供の柔軟さ。
大人ならば振り返る(思い出す)ことすら避けてしまう
あの小さな部屋に感謝と別れを告げ、少年は新しい世界へと駆け出してゆく。
ピュアな眼差しに何度も何度も涙腺が緩んだ。
軽いノリで観られる作品ではないが、年間ベスト級の1本であることは保証する。




09月07日発売■Blu-ray:「スポットライト 世紀のスクープ」

教会の神父が30年間に渡り子供に性的虐待を行っていたという
衝撃的なスキャンダルを暴き出し、世界中を震撼させた
ボストン・グローブ紙『スポットライト』チームの執念を描いたサスペンス。
出演は「はじまりのうた」のマーク・ラファロ、
「バードマン」のマイケル・キートン、
「アバウト・タイム」のレイチェル・マクアダムスと出演者も豪華。
監督は「扉をたたく人」のトム・マッカーシー。

教会のスキャンダルを描いた作品と言えば
フィリップ・シーモア・ホフマンとメリル・ストリープが火花を散らす
名作「ダウト」や、ペドロ・アルモドバルが自身の半生を投影した
「バッド・エデュケーション」などが挙げられるが
スキャンダルの内容で言えばもっとも近いのは韓国映画の「トガニ」だろうか。

本作で描かれるのは、
アメリカにおけるカトリック教会組織の影響力と田舎町特有の同調圧力。
住民の大半がクリスチャンであるボストンでは教会を訴えたところで勝てない。
我が子への性的悪戯よりも近所から孤立することを恐れる両親達によって
問題は長く隠蔽され、貴重な証言や証拠は次々に握り潰されていく。
トラウマを抱えたまま成長した被害者を口説き落とすのは至難の業だったろうが、
根気づよい取材と裏取りで巨大な壁に蟻の一穴を開けた
「スポットライト」の記者達を見ていると
ジャーナリスト精神の正しい使い方を見せつけられた思いがする。
本作がオスカー作品賞に選ばれたことは、アメリカの良心と言えるかも知れない。




08月24日発売■Blu-ray:「ズートピア MovieNEX」
08月24日発売■Blu-ray:「ズートピア MovieNEX プラス3D」
08月24日発売■Blu-ray:「ズートピア MovieNEX Amazon限定 ジュディのニンジンペン付」
08月24日発売■Blu-ray:「ズートピア MovieNEX プラス3D Amazon限定 ジュディのニンジンペン付」

【紹介記事】任天堂に「ズートピア」は作れるだろうか

映画「ズートピア」は人種のるつぼであるアメリカを
動物世界に置き換えた、ディズニー映画史上もっともメッセージ性の強い作品。
彼らの住む世界の平和が非常に危ういバランスの上に成り立っていることを踏まえ、
肉食動物を暴走に駆り立てる危険薬物の存在や
警察内部ですら平然とまかり通る職業差別、
徒らに大衆を扇動するマスコミや権力者の思惑などなど
私達の住む世界と何ら変わらない問題を次々と発生させてゆく。

生身の人間で作った途端に生臭く説教臭い話になりそうだが、
ウサギながらに警察官を夢見た主人公ジュディと
本来は捕食者であるはずのキツネのニックがバディを組み
様々な困難に立ち向かう姿に大人ながらに胸が熱くなる。
差別問題を描いた作品に多く出演している
オクタヴィア・スペンサーがオッタートン夫人を演じ、
レバノン系マケドニア人の父と、カタルーニャ系の母を持つシャキーラが
主題歌「Try Everything」を歌っているのも
肌の色も生まれも性別も、あらゆる多様性を受け入れようという
本作のメッセージをさらに力強いものにしている。

初期のCGアニメに動物モノが多かったのは
人間の動きを精巧に再現するのが難しい故の
苦肉の策だと聞いたことがあるが、
本作は明確な狙いがあって敢えて動物に置き換え、
ナマケモノや小動物達を絶妙なアクセントに使いながら
子供は屈託なく笑えて、大人は唸らされる作品を見事に作り上げた。
ひとつの作品に7人もの脚本家を揃え
あらゆる角度からディスカッションを重ねた上に出来上がった「ズートピア」は
「アナ雪」も「ベイマックス」も遥かに超えた
2000年代ディズニーアニメの最高傑作と言えるだろう。
子供に見せたい映画No.1として、全家庭に1本は持っておきたい。



<2016年5月公開作品>

海よりもまだ深く 映画 チラシ

【紹介記事】もう一歩だけ前に。映画「海よりもまだ深く」

「歩いても 歩いても」(2008年)の
阿部寛x樹木希林x是枝裕和のトリオが8年振りに顔を揃えた家族ドラマ。
夢ばかり追い続けるダメ亭主&ダメ父親の中年男が
老いた母の家で過ごす一晩の出来事を切り取っている。
共演は真木よう子、池松壮亮、リリー・フランキー、橋爪功、小林聡美など。

是枝監督が実際に過ごしたという団地を舞台に
選び抜かれた「何気ない言葉達」と共に人生の機微が紡がれる。
どこから見ても100%「ダメな男」の良多を、是枝監督と阿部寛は
中年に差し掛かった男なら誰しもが共感する部分を持った憎み切れない男にしてしまう。
これを可愛気と言ってしまうと、世の女性達に叱られるだろうか。

槇原敬之が「意識してすごいことを言おうとしなくても、
僕達は日常会話の中で気付かずに名言をたくさん使って会話している。
その自然な空気をそのまま歌にしたい」と言っていたことがある。
是枝監督の脚本もまさにそれと同じで、他愛も無い会話の中に
時に愛情深く、時に差別的な表現がすっと入り込んでドキリとさせられる。
夢見た未来との乖離に悩みもがきながらジタバタするだけの男と、
夢見た未来との乖離を受け入れて今を愛そうとする女。
ささやかな日常の中にこそ、人生の教訓がたくさん詰まっている。

「歩いても 歩いても」は「もっと親孝行をすれば良かった」という
是枝監督の悔恨を、母親への強烈な思慕の念と共に込めた傑作だった。
どこを切っても母親が主役で、
良多とその家族はどちらかと言えば脇役だったのだが、
本作での母親は、命の灯が消えるその瞬間まで息子の味方であろうとする
最大の理解者であり、海よりもまだ深い愛情を注ぐ存在として描かれている。
主役はあくまでも良多なのである。
妻に三行半を叩き付けられ、叶いそうもない夢を未だに追い続ける良多が
人生のホロ苦さを味わいながら
『もう一歩だけ前に、もう一歩だけ前に、あと一歩だけ前に』
(ハナレグミの歌う主題歌『深呼吸』より)
進もうとするその背中に、またしても泣かされてしまった。

20代以下の方にどこまで伝わるかは分からないが
30代後半以上の男性ならば心が揺さぶられること間違い無し。



今年劇場で観た作品のリストも最後に掲載。
我ながら「オススメ」マークが多過ぎる気もするが
良作以上、傑作未満の作品が多かったのは事実。

「キャロル」「リリーのすべて」の2大マイノリティ映画も素晴らしかったし、
アメコミ2本も面白かったし、貞子伽倻子も抜群に楽しかった。
「アイアムアヒーロー」「ヒメアノ~ル」のコミック原作も大健闘し
まさかのSF展開で度肝を抜かれた「団地」や
二階堂ふみの演じる幻想的な金魚と、高良健吾の芥川度に舌を巻いた「密のあわれ」、
舞台劇のような臨場感とピントのズレた笑いがツボにはまる「ふきげんな過去」と
珠玉の20本にすれば良かったと今になって後悔するほど充実した上半期。
これでもまだ見逃した作品がたくさんある。
下半期も良い作品に巡り会えますように。

<1月鑑賞作品リスト>
2016年01月08日公開「ブリッジ・オブ・スパイ」
2016年01月08日公開「クリムゾン・ピーク」
2016年01月08日公開「イット・フォローズ」
2016年01月15日公開「パディントン」
2016年01月16日公開「白鯨との闘い」
2016年01月16日公開「最愛の子」
2016年01月16日公開「インシディアス 序章」
2016年01月23日公開「ザ・ウォーク」
2016年01月23日公開「サウルの息子」
2016年01月30日公開「残穢 -住んではいけない部屋-」
2016年01月30日公開「猫なんかよんでもこない。」
2016年01月30日公開「ブラック・スキャンダル」

<2月鑑賞作品リスト>
2016年02月05日公開「オデッセイ」
2016年02月11日公開「キャロル」
2016年02月12日公開「スティーブ・ジョブズ」
2016年02月13日公開「ライチ☆光クラブ」
2016年02月19日公開「SHERLOCK / シャーロック 忌まわしき花嫁」
2016年02月27日公開「ザ・ブリザード」
2016年02月27日公開「ヘイトフル・エイト」

<3月鑑賞作品リスト>
2016年03月04日公開「マネー・ショート 華麗なる大逆転」
2016年03月05日公開「幸せをつかむ歌」
2016年03月12日公開「家族はつらいよ」
2016年03月12日公開「エヴェレスト 神々の山嶺」
2016年03月12日公開「マジカル・ガール」
2016年03月12日公開「人生は小説よりも奇なり」
2016年03月18日公開「リリーのすべて」
2016年03月18日公開「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」
2016年03月19日公開「ちはやふる -上の句-」
2016年03月19日公開「僕だけがいない街」
2016年03月25日公開「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」
2016年03月25日公開「暗殺教室~卒業編~」
2016年03月26日公開「無伴奏」
2016年03月26日公開「リップヴァンウィンクルの花嫁」
2016年03月26日公開「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」

<4月鑑賞作品リスト>
2016年04月01日公開「あやしい彼女」
2016年04月01日公開「蜜のあわれ」
2016年04月02日公開「のぞきめ」
2016年04月08日公開「ルーム」
2016年04月09日公開「モヒカン故郷に帰る」
2016年04月09日公開「ボーダーライン」
2016年04月15日公開「スポットライト 世紀のスクープ」
2016年04月22日公開「レヴェナント:蘇えりし者」
2016年04月23日公開「アイアムアヒーロー」
2016年04月23日公開「ズートピア」
2016年04月23日公開「太陽」
2016年04月29日公開「テラフォーマーズ」
2016年04月29日公開「ちはやふる -下の句-」
2016年04月29日公開「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」

<5月鑑賞作品リスト>
2016年05月07日公開「64-ロクヨン-前編」
2016年05月07日公開「カルテル・ランド」
2016年05月14日公開「殿、利息でござる!」
2016年05月14日公開「世界から猫が消えたなら」
2016年05月14日公開「HK / 変態仮面 アブノーマル・クライシス」
2016年05月21日公開「ディストラクション・ベイビーズ」
2016年05月21日公開「海よりもまだ深く」
2016年05月21日公開「少女椿」
2016年05月27日公開「スノーホワイト / 氷の王国」
2016年05月28日公開「ヒメアノ~ル」

<6月鑑賞作品リスト>
2016年06月01日公開「デッドプール」
2016年06月03日公開「サウスポー」
2016年06月04日公開「団地」
2016年06月04日公開「FAKE」
2016年06月10日公開「アウトバーン」
2016年06月11日公開「64-ロクヨン-後編」
2016年06月11日公開「エクス・マキナ」
2016年06月17日公開「10 クローバーフィールド・レーン」
2016年06月18日公開「クリーピー 偽りの隣人」
2016年06月18日公開「貞子vs伽椰子」
2016年06月24日公開「ダーク・プレイス」
2016年06月25日公開「ふきげんな過去」
2016年06月25日公開「二重生活」

<Blu-ray/DVD鑑賞作品リスト>
「口裂け女 in L.A.」
「ポルターガイスト」
「ローズマリーの赤ちゃん」
「フッテージ デス・スパイラル 」
「パラノーマル・アクティビティ 5」
「アノマリサ」



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