レッツポジティブ!映画「オデッセイ」 | 忍之閻魔帳

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映画 オデッセイ マット・ディモン



▼レッツポジティブ!映画「オデッセイ」


02月05日公開・「オデッセイ」

決してタイムリーだからこの言葉をタイトルにしたわけではなく、
心の底からこの言葉がぴったりなSF映画が昨日より公開中。
火星での有人探査中に発生したトラブルにより、
ただ独り残されてしまった主人公ワトニー。
救出は早くても4年後、残された水や酸素は極僅か。
食料は31日分しか残されていない。
誰しも絶望に打ち拉がれる状況だったが、
ワトニーは持てる知識を総動員して何としても生き残ろうと奮闘を始める。

傑作SF小説「火星の人」を映画化したのは「エイリアン」
「プロメテウス」のリドリー・スコット。
主演はマット・デイモン、共演はジェシカ・チャステイン、
クリステン・ウィグ、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・ペーニャ、ショーン・ビーン。


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SF映画の新時代到来を告げる「ゼロ・グラビティ」と
より深化した「インターステラー」の登場で、今SF映画がアツい。
技術的な問題をクリアし、様々な表現が可能になったことで
これまで作家やクリエーターの脳内に貯め込んでいたアイディアが
一気に具現化し始めたように感じる。

無人島生活ならぬ火星での単独生活を追った本作もまさにそのパターンで
火星生活で起こる諸問題とその解決法に
「なるほど」「そうか」と思わせるだけの説得力とリアリティがある。
火星で採取した土に仲間の人糞を混ぜて畑を作り、
船内でジャガイモを栽培しようなどという突拍子もないアイディアが
実際に実現可能なのかは私には分からないし、その過程で出てくる言葉も専門的で
良くわからないものが多い。
それでも、マット・ディモン演じるワトニーが何に向かって行動しているのか
ちゃんと理解が出来るように作られているのだから凄い。

本作を重苦しさから解放しているのは、ワトニーの楽天的とも思えるポジティブ精神。
私の世代直撃な懐かしのディスコミュージックを聴きながら
光の挿す方向だけを見て生き延びようとする姿には感動を覚える。
アンテナの突き刺さった腹から破片を取り除く手術など私には無理。
と言うか、自分ひとり火星に残されたと分かった時点で絶望するに違いない。
自分が生きていることを伝えようにも手段がなく
伝わったとしても4年後まで救助がない状況で
絶望の淵に沈ませなかったのは何なのだろう。

ここで「あれ、私はSF映画について書いてるんだったよな」と気付く。
そうなのだ、本作を観た後の感想は
「黄金のアデーレ」や「ブリッジ・オブ・スパイ」に似ている。
つまり、ワトニーなる人物が実在していて
今は地球で静かに老後を送っているかのような錯覚を覚えるのである。
SF映画を観たはずが、観終えた後の印象は伝記映画に近い。
それほどこの物語や登場人物にはリアリティがある。
「ゼロ・グラビティ」でここまで来たかと思わせた表現の数々が
当たり前の光景としてそこに在り、
今やその光景の中でどんな物語を展開させるのかの域に達したのだ。

もうひとつ、本作の監督はリドリー・スコットである。
「エイリアン」「ブレードランナー」など、数々の名作SFを手掛けてきた
リドリー・スコットだが、「プロメテウス」を発表した2012年に
実弟で映画監督のトニー・スコットを自殺で失っている。
本作で「必ず還って来ると信じる仲間(ファミリー)との絆」を
重点的に描いたのは、「孤独の中にあってもお前は一人じゃないんだぞ。
お前を待っている人はこんなにたくさんいるんだ(いたんだ)」という
兄からのメッセージのように思えてならなかった。

近年のハリウッド(の台所事情)では避けられないとはいえ
唐突に中国が絡んでくる点に違和感を覚えないわけではないが
こんなにも楽しい気分にさせてくれるSF映画は
(アメコミやコメディを除き)観た覚えがないので、
会心のハナマルSFとして広くお薦めしたい。

映画「オデッセイ」は現在公開中。



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