★★★★⭐︎

序章の大火の描写と謎かけに一気に引き込まれたのだが、第一部の前半は話の芯が見えず、フラストレーションを感じた。

第一部は、主人公の大路を出さずに、様々な証言だけから珠緒の姿を形作っていくことで、話の流れをシンプルにしているのはわかるのだけど、せめて、大路の父からの依頼する場面だけでも前に持ってきてくれてたら、フラストレーションにはならなかったんじゃないかな。


一人の、決して恵まれているとは言えない人生を追っていく中で、様々な要素と、様々な人生が絡み合う。

人は誰しも、色んなものを抱えて、苦しんで、階段を昇ろうともがいて、うまくいかなくて、そうして生きているんだと、ときには自分の人生とも重ねながら、考えさせられた。


結末が気になって、週末を使って一気に読んだくらい面白かったが、お祖母さんは興信所を使うときにナゼ静代に目を付けたのか、静代の方もナゼそれだけを大事に?…が消化不良だった。


著者は、「罪の声」と「騙し絵の牙」を書いた方だと読後に知った。
なるほど、文章上手いし、会話の中の小ネタも冴えてるわけだ。


終盤、大路と、父と、岸本の3人での会話に、メモしたくなるものが幾つかあった。

・「手紙は面倒なようでも、人の心へ言葉を届けるには、一番の近道なんやよ」

・「やっぱり掲載判断には「マス」の視点が必要なんですが、そこで思考停止になってしまうと、個というか、個の尊重が消えてしまうように思うんです。」

・「今、人々が「マスの視点」に感じているのは「驕り」だと思うんだ。… 集団になるとズレちゃうとこってあるじゃない」

・「空振ったとしても、現場に行くことには意味がある」

★★★★⭐︎

「100%騙される戦慄」との宣伝文句があったが、50%ぐらい…かな。それでも十分騙されてるが(笑)。

前半を読んでるときは、「店員さんだろ、わかったぜ、ふっふっふ…」と思ってたけど、見事にハズレた。

途中から、これは…かなと思っていたのは当たったが、ただそれをどう繋げていくのか、と。

う〜ん、なるほど。

でも、だったら、あんたが勇気を出して警察に一言でも言ってれば…特にバイトのことは…とツッコみたくはなるが、
 「あんなことを平気でできる人間に、普通の人間が、まともにやりあってかなうわけがありません。説得なんて無理です。逃げるしかないんです。」
…ということだった。

最後の終わり方は良かったな、自然で。
読書の想像にお任せしますなんだけど、消化不良の変な感じはしなかった。


★★★⭐︎⭐︎

人気シリーズのようなので、期待して読んだが、あまりハマらなかった。

シリーズの4作目みたいなので、主要キャラの人物像をわかっている前提で書かれているのかもしれないが、人間性が良くわからなかったり(特に事務官の増田)、誰が話してるのかピンとこなかったり、だった。

そもそも、なぜ架空の街を使うのだろう。実在の街や土地を使った方がリアリティが出ると思うのだが。

話もあまり盛り上がらないし。


…と、ダメ出しばかり書いてしまったが、第四話「信義を守る」は良かった。

親の介護に絡んだ殺人事件で、事実は変わらないが、事件を起こした人間の根底にあるものを、なぜ事件が起きたのかを突き止め、罪をまっとうに裁かせる。

この作者の作品は、短編よりも、中・長編がイイのかもしれない。


★★★★★

勤め先で、労働災害などの対応に関わる身として、非常に参考になる内容だった。

医療業界と航空業界の事例を中心に、両者を対比させながら、事故/失敗に対して如何にアプローチしていくか。

一度読んだだけでは、把握しきれていないし、メモも追いついていない。
繰り返し読んで、学ばせてもらおう。


・改善の最大の原動力は、彼ら(航空業界)の組織文化の奥深くにある「失敗から学ぼうとする姿勢」にある。

・(医療業界と航空業界の)最も大きな相違点は、失敗後の対応の違いにある。… 彼ら(航空業界)は、失敗を「データの山」ととらえる。
 航空事故が起こると、… 事故の調査結果を民事訴訟で証拠として採用することは法的に禁じられているため、当事者としてもありのままを語りやすい。


 ★★⭐︎⭐︎⭐︎

東京オリンピックで銀メダルに導いたトムさんのコーチング。

読み応えはあまりなかったが(笑)、もちろん参考になるものもあった。


現状に即して「アジャスト」する。

193センチの渡嘉敷が怪我によりオリンピックに間に合わない中で、目標を変えずに金メダルを獲る。

そのために、ディフェンスをハーフコートからフルコートに広げ、日本の長所であるスピードと体力を生かして、相手が高さを利用する前に相手のミスを誘う、あわよくばボールを奪う戦術に変えた、と。

他にも、「ヘッドダウンしない」や、「神は細部に宿る」も共感できた。

ターンオーバーしないためにトラベリングを減らす。そのために地味ながらも、インサイドピポットやジャンプストップなどのフットワークの練習を、日本代表の選手が細かく注意を受けながら、毎日やる。


"日本語を話せるアメリカ人"だからこそなところもあり、同じことを日本人が言っていたら反発が大きいようなこともたくさんあったろうが、それを差し引いても、しっかりとした理論と実践を持つ素晴らしいヘッドコーチだと感じた。