★★★★⭐︎

序章の大火の描写と謎かけに一気に引き込まれたのだが、第一部の前半は話の芯が見えず、フラストレーションを感じた。

第一部は、主人公の大路を出さずに、様々な証言だけから珠緒の姿を形作っていくことで、話の流れをシンプルにしているのはわかるのだけど、せめて、大路の父からの依頼する場面だけでも前に持ってきてくれてたら、フラストレーションにはならなかったんじゃないかな。


一人の、決して恵まれているとは言えない人生を追っていく中で、様々な要素と、様々な人生が絡み合う。

人は誰しも、色んなものを抱えて、苦しんで、階段を昇ろうともがいて、うまくいかなくて、そうして生きているんだと、ときには自分の人生とも重ねながら、考えさせられた。


結末が気になって、週末を使って一気に読んだくらい面白かったが、お祖母さんは興信所を使うときにナゼ静代に目を付けたのか、静代の方もナゼそれだけを大事に?…が消化不良だった。


著者は、「罪の声」と「騙し絵の牙」を書いた方だと読後に知った。
なるほど、文章上手いし、会話の中の小ネタも冴えてるわけだ。


終盤、大路と、父と、岸本の3人での会話に、メモしたくなるものが幾つかあった。

・「手紙は面倒なようでも、人の心へ言葉を届けるには、一番の近道なんやよ」

・「やっぱり掲載判断には「マス」の視点が必要なんですが、そこで思考停止になってしまうと、個というか、個の尊重が消えてしまうように思うんです。」

・「今、人々が「マスの視点」に感じているのは「驕り」だと思うんだ。… 集団になるとズレちゃうとこってあるじゃない」

・「空振ったとしても、現場に行くことには意味がある」